ジョン・ガストの「アメリカの進歩」 ― 2008/11/26 02:17
まずは画像の説明から(クリックで拡大)。
これはジョン・ガスト(John Gast)が描いた「アメリカの進歩(American Progress)」。
1872年頃の作品とされています。
時は西部開拓時代。
工業化の波が押し寄せてくる。
スクール・ブックを手にした女神に導かれる大陸横断鉄道。
追い詰められていくアメリカン・インディアン。
逃げ回るバッファローの群れに熊の姿も。
そして、アメリカン・インディアンが日本人に置き換わった時期もあった。
この前の月曜日(11月24日)。
テレビのチャンネルをクルクルしていたら油井大三郎さんが登場。
NHKの高校講座「世界史」で、この絵を紹介していました。
油井さんといえば岩波新書から『好戦の共和国アメリカ』を今年9月に発刊。
クエーカーにも言及しながらアメリカ戦争史をテキスト風にまとめています。
本文は極めて上品なのですが、
「おわりに」で油井さんの本音がポロリ。
この本音を紹介しておきましょう。
油井さんはアメリカが好戦的である理由として、
軍事力による領土や市場の拡大を当然と考える潮流があることと、
軍事的な「勢力均衡」に維持を重視する「リアリズム」の潮流が存在し、
「均衡」が崩れた場合に軍事力行使を当然視する傾向があると書いています。
特に「正当防衛」と断定した場合にはその戦争を強く支持する傾向があると。
しかし、戦争のきっかけとなった「被害」が、実は「ねつ造」された場合も多々あったと指摘しながら、
真相の慎重な究明が必要であったのに、開戦論の熱狂的な高まりの中で強行された例が多い。
それはアメリカの民主主義にとって、「重大な欠陥」といわざるをえないと書いています。
「ねつ造」された場合でも、いざとなったら女神まで担ぎ出す国。
それがアメリカ。
この絵は変わらぬ今のアメリカの姿をも映し出しています。
<関連サイト>
NHK高校講座 世界史
第28回 17世紀の東アジア アメリカ合衆国の発展 ~西部開拓と工業化~
http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/sekaishi/archive/chapter028.html
<お勧め本>
好戦の共和国アメリカ―戦争の記憶をたどる
http://www.amazon.co.jp/%E5%A5%BD%E6%88%A6%E3%81%AE%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E2%80%95%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%AE%E8%A8%98%E6%86%B6%E3%82%92%E3%81%9F%E3%81%A9%E3%82%8B-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%96%B0%E8%B5%A4%E7%89%88-1148-%E5%A4%A7%E4%B8%89%E9%83%8E/dp/4004311489/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1227633203&sr=1-1
未完の占領改革―アメリカ知識人と捨てられた日本民主化構想
(太平洋問題調査会のことが詳しく書かれています)
http://www.amazon.co.jp/%E6%9C%AA%E5%AE%8C%E3%81%AE%E5%8D%A0%E9%A0%98%E6%94%B9%E9%9D%A9%E2%80%95%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E7%9F%A5%E8%AD%98%E4%BA%BA%E3%81%A8%E6%8D%A8%E3%81%A6%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%8C%96%E6%A7%8B%E6%83%B3-%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%8F%B2-%E6%B2%B9%E4%BA%95-%E5%A4%A7%E4%B8%89%E9%83%8E/dp/4130250752/ref=sr_1_10?ie=UTF8&s=books&qid=1227633203&sr=1-10
<今聴いている曲>
Shenandoah
http://jp.youtube.com/watch?v=N5grgB-dV2o
http://jp.youtube.com/watch?v=yfmws9f865I
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