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ホッキョクグマが不安そうに見つめる米大統領選の行方2008/08/25 01:02

ホッキョクグマとマケインとブッシュ
今年1月、『アース』という映画を観てきました。ディープ・ブルーの英BBCが製作したとあって、大画面で見る映像の美しさは絶品でした。

キャストはアフリカ象にザトウクジラ、それに地球温暖化の影響で砕けた氷の海をさまようホッキョクグマ。

このホッキョクグマは、米大統領選の行方をビクビクしながら見つめているようです。マケインが勝利すれば、お引越しの可能性があるからです。

7月まではオバマ優勢を示す世論調査ばかりだったのですが、8月20日に発表されたロイター通信と世論調査会社ゾグビーの調査結果では、マケインの支持率が5ポイント上回っています。この結果を見てホッキョクグマは冷や汗タラリ

マケインに吹く追い風を分析すると、グルジア紛争への対応、それに国民の懐を直撃している原油高への対応もあげられます。

マケイン陣営は、エネルギー価格高騰に対処するため、米本土沖の海底油田開発規制の解除を声高に訴え、規制解除に反対してきたオバマを攻撃。

これに対して、オバマ陣営はマケインの政策転換を批判しながら、マケインと石油業界との癒着を攻撃するテレビ広告で応戦します。

しかし、さすがのオバマもエネルギー価格の高騰に苦しむ中・低所得世帯を見捨てることはできない。

8月1日にオバマが打ち出したのは所得税減税を柱とする緊急経済プラン。それにこれまで民主党が守り続けてきた海底油田開発規制の部分解禁まで言い出し、共和党に歩み寄る姿勢を示しちゃった。ホッキョクグマもこれにはアセルアセル

きっかけとなったのは今年6月18日にホワイトハウスのローズ・ガーデンで行われた記者会見。ブッシュ大統領は原油高に対応するため、海底油田採掘の禁止を解除するよう議会に求めます。

これに同調したのがマケイン。マケインは共和党内では珍しい環境派、つまりはエココン(eco-conservative、ecoconservative)なのですが、ガソリン価格の急騰が米国市民生活に打撃を与えていることを意識し、政策転換をはかります。

そして1ヵ月後の7月14日、ついにブッシュ大統領は領海内の沖合海底油田開発を禁止する大統領令を撤廃したと発表します。

大統領令といっても象徴的な意味合いでしかなく、実際に探査を再開するには民主党が主導権を握る議会の立法措置が必要。大統領令撤廃で直ちに開発が開始されるわけではありません。

そもそも、米本土沖の海底油田開発規制は1969年の石油流出事故を契機に社会的関心が高まり、81年には、米国議会がメキシコ湾岸以外での海底油田開発に対するモラトリアム(一時停止)を採択。その後もモラトリアムは毎年議会で更新されてきました。

さらに、ブッシュ・パパが90年に領海内の沖合海底油田開発の一時停止を内容とする大統領令を発令、クリントン政権も98年にこれを10年間延長します。パパが発令した大統領令を息子が撤廃したということになります。

この大統領令撤廃の狙いは、原油高を追い風にしながら、規制解除に反対する民主党、さらにはオバマ陣営に圧力を掛けること。

ということは、ブッシュの取り巻き(特にチェイニー)が、マケインの政策転換を歓迎し、マケイン応援団に加わったことを意味していたのではないかと。おそらく、これを契機に石油業界もマケインへの献金を増やし始めたのではないかと思われます。

しかも、それだけではありません。ブッシュの取り巻きたちは、マケインに踏み絵を迫ります。

踏み絵の内容は、6月18日のローズ・ガーデンで行われた記者会見の発言を読めばわかります。

なんと言ったのか・・・

「北極圏野生生物保護区(Arctic National Wildlife Refuge,ANWR)での油田開発を許可し、米国石油生産を拡大しなければならない」

アラスカ州のANWRでの掘削解禁は共和党の長年の夢。ところが環境派のマケインは一貫して掘削解禁に反対してきました。さすがに今なおこれだけは引き続き反対する意向を示している。

そういえばマケインの顔ってどことなくホッキョクグマに似ているような・・・

ブッシュの取り巻きは「マケインさんよぉ。大統領になったら俺たちの夢を叶えてくれるんだろうな?」とマケインに迫った。

これに対して、マケインは「わかってますよ。海底油田採掘解禁には賛成したじゃないですか。それが第一歩。その次はちゃんとANWRのことも考えますからー」とかわしているのではないかと。

最近の原油価格は下落傾向にありますが、これが再び急騰するような事態になれば、マケインはANWRにも踏み込む可能性があります。

アラスカ開発に着手すると、ホッキョクグマなど貴重な野生動物が生息する自然環境に悪影響を及ぼしかねず、オバマ陣営は自然保護団体を巻き込んで猛烈な批判を繰り返し、ホッキョクグマが大統領選のメインキャストに躍り出ることになるでしょう。

こうした騒ぎの中、一部の生態学者からホッキョクグマを南極に移動させようという提案まで飛び出してきた。ホッキョクグマの強制移住計画ですね。

さて今年5月14日、米内務省は地球温暖化の影響で絶滅の危険にさらされるとして、アラスカ州に生息するホッキョクグマを絶滅危惧種に指定します。

これも環境保護団体が早期決定を求めて連邦地裁に提訴し、判決の期限切れを前にしぶしぶ従っただけの話。内務省のケンプソーン長官はこの指定によりブッシュ政権や石油業界が推進するアラスカ沖の石油・天然ガス開発は影響を受けないことを強調しています。

この米内務省の傘下に米国地質調査所(United States Geological Survey,USGS)という研究機関があります。2007年9月7日には地球温暖化による海氷の減少により2050年までにホッキョクグマの生息数が現在の3分の1になるとの推計を発表しています。

USGSは世界の石油・天然ガス資源に関する情報を最大に有する機関でもある。このUSGSがつい最近北極圏の資源争奪戦を一気に加速させる重大な発表を行いました。

しかし、日本の主要新聞・テレビでこの重大発表を報じたところは一切ありません。ホッキョクグマに続いて、日本人も絶滅危惧種になりつつあるようです。


<関連記事>
映画『アース」
http://www.loveearth.com/jp/film/
President Bush Discusses Energy
http://www.whitehouse.gov/news/releases/2008/06/20080618.html
Bush Acts on Drilling, Challenging Democrats
http://www.nytimes.com/2008/07/15/us/15bush.html
「ホッキョクグマを南極に移動させよう」:生態学者たちが提案
http://wiredvision.jp/news/200807/2008072322.html

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