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北極でも始まる本物の冷戦2008/08/22 02:54

北極圏のふたつの航路とロモノソフ海嶺


グルジア紛争をきっかけに、米露による“新冷戦(new Cold War)”という言葉が登場してきました。

この新冷戦はどこに向かうのか。世界は米一極から米露二極になるのか、EUや中国も含めた多極なるのか、それとも無極になってしまうのか。日本はどうなる?

先日の記事でその行方を握るのは別の「極」だと書きましたが、これを掘り下げてみたいと思います。

新たな冷戦は別の「極」、つまり北極と南極を巻き込んでいきます。結果として、北極も南極も変わり果てた姿になって、世界は無極になるかもしれません(汗)

南極ではすでに英国が南極圏の大陸棚の管轄権を申請しようとしている。南極圏に埋蔵する石油や天然ガスの開発権を主張するためなのは明らか。これに対して当然アルゼンチンやチリなどの南米諸国は一斉に反発。近い将来、フォークランド紛争再びという事態も想定されます。

しかし、なんといってもすでに熾烈な資源争奪戦の舞台となっているのが北極です。

北極では少なくとも米露の二極がぶつかる。まさに極寒の地での本物の冷戦。世界の極同士が対峙する熱い局地戦も凍える極地戦になってしまう(苦)

皮肉にも地球温暖化の影響(?)で氷が溶けて夏場に深海の資源開発がしやすくなったことから、北極圏の膨大な資源の存在が明らかになりました。

同時に太平洋側と大西洋側を結ぶ北極海の航路も注目を集めます。昨年夏には北米大陸の北岸を通る「北西航路(Northwest Passage)」の海氷が解け、通常船舶でも航行可能に。ロシア沿岸を通る「北極海航路=北方航路(Northern Sea Route)」も部分的に開通します。

この北極をめぐる資源争奪戦に火を付けたのもやはりロシアでした。

ご存知の方も多いと思いますが、昨年を振り返ってみましょう。

2007年8月2日、ロシア北極遠征調査隊の潜水艇が、北極点の下、約4000メートルの海底に到達し、チタン製のロシア国旗を設置します。

この調査隊がモスクワに帰還した8月7日には、国営ロシアテレビは世界初の宇宙飛行士ガガーリンを引き合いに出して偉業を称え、さらに「歴史的な快挙だ」として電話で祝福したのがプーチン大統領(当時)でした。

ここで領海、公海、大陸棚、資源開発などを包括的に定め、「海の憲法」とも呼ばれている国連海洋法条約(正式名称は「海洋法に関する国際連合条約」、1994年発効)を見てみましょう。

この条約によれば、沿岸国は海岸線から200カイリの排他的経済水域(EEZ)を設定できる。それを超えても、自国陸地からつながることを証明し、大陸棚限界委員会(CLCS)の認定を受ければ、最大350カイリまで「大陸棚」となり、地下資源の独占開発権を得ることができる。

ロシアはこのCLCSの最初の申請国になります。2001年に北極海の海底山脈ロモノソフ海嶺(Lomonosov Ridge)など120万平方キロメートルを大陸棚として申請しましたが、データ不足として一度は却下されている。

最終的に大陸棚を認めさせるための申請期限は2009年。

ロシア北極遠征調査隊の隊長を務めたのが、海洋学者にして下院副議長のアルトゥール・チリンガロフ(Artur Chilingarov)。1時間にわたる探査で、土壌サンプルの採取やビデオ撮影を行いました。しかも、ロシア国旗が設置されたのも北極点下のロモノソフ海嶺上でした。

つまり、チリンガロフの探査は、シベリア沿岸からの大陸棚が北極点まで地続きであることを証明するための探査の一環だったのです。

北極というパンドラの箱から出てきたのは、膨大な資源の存在とそれを運ぶ航路、そして、新たな紛争の火種でした。

大袈裟だと思っている日本人が多いでしょうね。確かに日本国内ではほとんど話題になっていません。本当は日本の将来にも大きくかかわってくる問題なのですが・・・

疑っている方は試しにGoogle Newsで“Arctic oil”で検索してみましょう。今何が起こっているのかがわかるはずです。