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米ストレステスト公表直前情報:「負債評価益」ってなぁに?2009/05/04 09:07

fas159

5月4日時点で「負債評価益」が新聞に登場したのは下記3記事のみ。
いずれも日経新聞です。

ネットでもさまざまな情報が飛び交っていますが、
適切な解説と呼べるようなものはまだ見当たらないといった感じでしょうか。


<「負債評価益」記事引用>

米大手金融6社、純利益1.2兆円――「負債評価益」利益かさ上げ。
2009/04/23日本経済新聞朝刊

シティなど3社で5200億円 本業の収益力反映せず

 好転が伝えられる米大手銀行の一―三月期決算を巡り、特殊な会計処理の結果生じる「負債評価益」という項目が、各社の利益水準を大幅にかさ上げしているとの指摘が金融専門家の間で出ている。シティグループなど大手三社が計上した同評価益は計五十三億ドル(約五千二百億円)と、三社の純利益の六七%に達する。合法だが本業の収益力を反映しないため「財務の実態が見えにくくなる」との批判がある。

 各社の決算資料によると、特に金額が大きいのがシティ(二十七億ドル)とバンク・オブ・アメリカ(二十二億ドル)。仮にこの評価益がなければシティは十一億ドルの最終赤字に、バンカメも利益が半減していた計算だ。JPモルガン・チェースの評価益は四億ドルだった。

 負債評価益とは、社債など企業の負債の市場価値(時価)が下落した場合に、企業から債権者への支払い義務も同時に減少したとみなしてその分を利益に計上するもの。米会計基準「FAS159」がこうした処理を認めているが、米銀がこれだけ多額の負債評価益を計上したのは今回の決算が初めてという。

 一―三月期は信用不安の高まりで米金融機関の株価や社債価格が急落。シティは社債関連で約二億ドル、デリバティブ(金融派生商品)関連の負債に絡んで約二十五億ドルの評価益を計上した。自社の信用度が下がれば会計上は逆に利益が積み上がる仕組みで、本業の好調を映したとはいえない。

 専門家の間では「合法とはいえ会計処理が決算にこれだけ大きな影響を与えると銀行の収益力が読みづらくなる。決算内容への不信を招きかねない」(藤岡宏明・大和証券SMBCクレジットアナリスト)との声が上がっている。
(国際部 森安圭一郎)


FRB、資産査定結果通知、「問題行」に資本増強圧力、2年先の健全性要求。
2009/04/26日本経済新聞朝刊

抜本的なリストラも

 【ニューヨーク=松浦肇】米連邦準備理事会(FRB)など米金融当局が米大手金融機関十九行に実施した資産査定(ストレステスト)を受け、米金融機関は今後追加的な資本拡充策が必要となる可能性が出てきた。資本不足を指摘された金融機関は身売りや部門売却など抜本的なリストラを迫られる。十九行は全米の銀行が抱える資産の三分の二、融資残高で半分を占めるだけに、結果次第で大手銀の経営が混乱すれば、米景気全体に影響を与える可能性がある。

 ストレステストの結果は二十四日から各行へ通知され始めたもよう。FRBは「(経済・金融情勢の悪化で)いくつかの銀行の資本が著しく減少した」とすると同時に「損失が想定より膨らむ場合に備え、追加の自己資本を手当てするのが賢明だ」と指摘した。結果は来月四日にも公表される見通しだ。

 米銀は通常、融資先が元利金払いを遅延したといった事実の発生に伴って、融資の焦げ付きリスクを引き当てる格好で貸倒引当金を積み増す。米政府は証券化商品など流動性の低い金融商品への時価会計の適用を一部緩和したが、もともと融資に関しては時価会計は適用されていない。

 しかし、今回のストレステストは現時点での融資の健全性でなく、二年先の経済シナリオに応じて融資など保有資産の損失可能性を計算させる「先読み型」。今後二年間で計上するはずの貸倒引当金を事実上の含み損としてカウントし、十分な資本増強を求める点で従来の会計原則より厳しい資産査定となる。

 米政府は「金融機関は景気回復の妨げになるのではなく、(逆に)信用供与への資金流入など景気回復の手助けをしなければならない」(ガイトナー米財務長官)。単に経営破綻を回避できる基礎体力だけでなく、融資を拡大するなど、有効需要創出に貢献できる余力をストレステストの対象となる米大手金融機関に求めている。

 一―三月期決算ではシティグループ、バンク・オブ・アメリカなど米大手金融機関六社のうち、モルガン・スタンレーを除く五行が黒字となった。だが、ウェルズ・ファーゴなど時価会計の一部適用緩和や負債評価益など特殊要因の恩恵を受けて収益をかさあげした例も目立った。

 各行で住宅だけでなくカード、消費者、商業用不動産などの多様なローン債権で貸倒引当金が急増している。シティ、バンカメなど大手四行が今年一―三月期決算で計上した貸倒引当金の合計額は約三百七十億ドルと前年同期の倍の水準。今後二年間も景気低迷が続くならば、収益源の拡充か、予想される貸倒引当金計上の増加に備えた資本強化が必要となる。

 市場では、全米の金融機関で数千億ドル規模の資本不足を予想する向きもある。大手銀は追加増資が必要ないことが判明する「健全行」、増資が必要となる「懸念行」、株価急落などで増資が困難となり事業の統廃合や債務整理などの抜本的なリストラを迫られる「問題行」といったように分類され、今後選別色が強まるとの見方が多い。

 結果次第で当局が公的資金を活用した資本増強を促すこともありうる。ただ、銀行側としては政府管理が強まることに抵抗感が根強い。当局と銀行は見解のずれなどを最終調整するとみられるが、銀行側は公的資金を受け入れるかどうか判断を迫られている。

【表】米政府が公的資金を資本注入した主な金融機関   
   注入額(億ドル)
シティグループ   450
バンク・オブ・アメリカ   450
JPモルガン・チェース   250
ウェルズ・ファーゴ   250
ゴールドマン・サックス   100
モルガン・スタンレー   100
(注)不良資産の政府保証などは含まない   
【図・写真】米政府はシティグループ(写真上)、バンク・オブ・アメリカ(同下)だけで900億ドルを注入した(ニューヨークの両社の店舗)=いずれもAP


負債の時価評価なぜ利益?――社債の市場価格下落、負債減とみなす(Q&A)
2009/04/26日本経済新聞朝刊

 米国の大手金融機関が一―三月期決算で「負債評価益」という特殊な利益を計上したことが注目されている。シティグループなど大手三社が計上した負債評価益は計五十三億ドル(約五千百億円)に上る。負債評価益とは何か。要点をまとめた。

 Q 負債を時価評価する理由は。

 A 米国の会計基準は金融資産や金融負債について時価評価の対象を増やしている。時価評価することでバランスシート(貸借対照表)がより適正になるとの考え方から、借入金などの負債も二〇〇七年から時価評価を認めるようになった。時価評価は毎期行う。

 Q 負債の時価評価でなぜ利益が出るのか。

 A 企業や金融機関は自ら発行した社債などを返済義務のある負債としてバランスシートに計上する。社債の市場価格が下落した場合、発行企業はその分負債が減ったとみなして利益として計上できる。一般的に社債価格の下落は信用力の低下を意味し、資金調達が厳しくなるなど経営にはマイナスだが、帳簿上は社債価格の下落で利益が出るという奇妙な現象が起こる。負債の評価益は現金の流入を伴わない。

 Q 本当に利益といえるのか。

 A 疑問の声がある。市場で社債価格が下落しても、償還時に発行体が実際に返済する金額が減るわけではないからだ。百億円の社債の時価が六十億円に下がり、帳簿上で四十億円の評価益が発生しても、償還時に百億円を返済する義務は変わらない。
 企業側に裁量の余地が大きいことも不透明感を強める要因だ。シティグループは負債を時価評価して二十七億ドルの利益を出す一方、値下がりした保有資産の一部は逆に時価評価を見送り、約六億ドル分の評価損計上を回避した。利益押し上げに都合の良いように利用しているとの見方もある。

 Q 米国企業しか認められないのか。

 A 国際会計基準には同様のルールがあるが、日本では現在は認められていない。ただ、国際的に会計基準を共通化する過程で、日本でも採用するか否かを含めて議論が始まっている。
(証券部 佐久間庄一)


▼日経ネタ元

Citigroup: Did It Really Earn $1.6 Billion? Not Really.
http://blogs.wsj.com/deals/2009/04/17/citigroup-did-it-really-earn-16-billion-not-really/



<画像引用>

fas159
http://www.fasb.org/pdf/fas159.pdf

コメント

_ とおる ― 2009/05/04 09:45

「負債評価益」については、BS-7、BS-11の経済・株の番組で説明していたような気がします。(うとうとしながら聞いていたので内容までは把握していませんが)

_ Y-SONODA ― 2009/05/05 22:41

とおるさんへ

BSでは詳しい解説があったのでしょうか。
ネットにも数多くの意見があるのですが、どれもピンと来ないのです。
そろそろ専門家が登場して欲しいですね。

_ Blondy ― 2009/05/06 01:13


こういうペテンを続けていると近々、市場はThe Thrill is Goneとなりご臨終となるかもしれませんネ。

BB KING The Thrill is Gone Live '91
http://www.youtube.com/watch?v=lt2c9Iyq2UQ

_ ななし ― 2009/05/06 10:50

もはや何でもありになって来ましたねw
時価会計の緩和もそうですが。
日本は資産デフレ下で時価会計、BIS規制導入を米国の外圧で呑まされたのに・・・
しかも現在米国株や国債買い越してるのは日本だけなんでしょ?
2月は他所の国は全て売り越してるのに日本だけは2兆円買い越してるとか。
なんだかな~。

_ とおる ― 2009/05/06 18:37

園田様
> BSでは詳しい解説があったのでしょうか。
簡単な説明だったと思います。
気合を入れて見てなかったのですが、次の質問で書かれている程度だったような気がします。
> Q 負債の時価評価でなぜ利益が出るのか。

_ Y-SONODA ― 2009/05/06 23:40

★Blondyさんへ

やはりペテンと見ますか。
私もいろいろ調べているのですが2~3不明な点があったので、
余計なコメントを控えて専門家の発言を待っているところです。
どうやら以前からFAS159を活用していた形跡もあるのです。

いずれにせよ決算そのものの不透明感が高まることは避けられない。
まさにThe Thrill is Goneですね。

そういえばBBキングも昔コピーにチャレンジしたことがあったなぁ。
今はもうまったく弾けなくなっちゃったけど(汗)

★ななしさんへ

日経さんも書いていますが、
日本企業もこのテクニックwを採用する計画があるそうなので、
文句言えないという事情もあるのでしょう。

中国はブチブチ言いながらも2月は米国債を買い増ししていました。
ブチブチ言えるところがうらやましいですね。

★とおるさんへ

簡単な説明だったのか。
これこそ講習会なり講演会を開けば日本企業が殺到するかもしれませんね。
講師探してみようかなーw

_ けいこ ― 2009/05/10 13:49

非常に初歩的な質問ですみません。
負債を時価評価して負債評価損益を算出した場合、貸借対照表のどの部分にこの負債評価損益は計上されるのでしょうか?
宜しくお願いします。

_ Y-SONODA ― 2009/05/11 01:17

けいこさんへ

どうもはじめまして。
貸借対照表の件、気になりますよね~。
私もシティなどの決算書をしばらく眺めていたのですが、さっぱりわからなかった。

時間がなくてまだ見ていないのですが、
日経さんが指摘した野村ホールディングスの「負債の評価益」の数値を
野村の決算資料と突合せればわかるのではないかと思ったりしています。
それでもわからなかったら野村さんに直接聞いてみるとか(汗)。

近く詳しい方と会う予定なので、聞いてみますね。

日経の野村記事はこちらを参照
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2009/05/07/4290985
野村決算関連情報
http://www.nomuraholdings.com/jp/investor/summary/financial/

_ ゴンベイ ― 2009/05/11 01:53

揚げ足を取るようで恐縮ですが、負債評価益は通常の会計基準運用では有価証券評価益と同様に営業外収益として貸借対照表ではなく損益計算書に記載されるはずです。
相当する額は貸借対照表上の負債の減少となります。今次決算では全体の負債総額が増加しているので、細かい内訳を記載しない大づかみのものでは前期比較でマイナスになることはないでしょうがw

_ Y-SONODA ― 2009/05/11 02:07

ゴンベイさんへ

質問!

貸借対照表上でも負債の減少という形で数値だけは反映されるのではないでしょうか?

_ ゴンベイ ― 2009/05/11 02:51

損益は損益計算書に記載するのが簿記の大原則です。
上記コメントで既に回答済みですが、「細かい内訳を記載しない大づかみのもの」では負債評価益相当額の負債減少はわかりません。注記に書かれている場合もあります。
また、貸借対照表上の負債評価益相当額を含む「当期利益」は合算した結果だけを記載し、内訳は注記にも書かれないのが通例です。
今回の負債評価益計上は特別に注記で説明されているかもしれません。

_ ストレスおじさん ― 2009/05/11 17:50

こんにちは。
確かに負債評価損益は、営業外費用・収益なり特別利益・損失なりに計上されるんだとは思いますが、損益計算書を通して、バランスシートにも当然影響を与えるはず、と思うんですが、いかがでしょうか?
すなわち、負債が目減りする=純資産の増加として処理されるorそれに対応する資産が、バランスシートからそっくり削られる、みたいな事になるのではないでしょうか?
簿記の知識が曖昧なため、おかしなことを言っておりましたらご指摘のほど、よろしくお願いいたします。

_ ゴンベイ ― 2009/05/12 02:31

会計基準変更のフォローが不十分で昔取った杵柄が古すぎるというかウェートトレーニングしておらずに筋力が落ちていたのと、金融会社では勘定科目の扱いが異なっているのに一般事業会社のもので説明したので妙なことを言ってしまった観がありますし、書き方が悪かったと思いますが、いくらなんでも複式簿記の大原則に反するる損益計算書と貸借対照表が連動しないなんてことは言ってません。おさらいをしておくと、BSの構成は資産=負債+資本で、純資産は借方(左)の資産の部ではなく、貸方(右)の資本の部内に計上されます。

次の記事で紹介されている米会計基準159号を適用した野村證券の四半期連結貸借対照表では、負債評価益は廃止された「当期利益」科目ではなく未実現(評価)損益を計上する「累積的その他の包括的損益」科目に計上されるかと思いきや「利益剰余金」科目計上だそうですが、やはり貸借対照表中では明細が示されていません。計上されているのは別表に当たる資本勘定変動表の利益余剰金内訳科目の「159号初年度適用調整額」が捜し求めるものの仮の姿でした。

ややこしいのは、157号で3レベルに区分する内の市場が活発でない金融資産と定義されるレベル3だけが159号適用で分別されることと、負債単独ではなく資産分を含んでいることと。評価損益の発生源である負債の部の短期と長期の借入にトレーディング負債と資産の部の貸付金とトレーディング資産・PE投資は159号レベル3を含む155号適用金融資産を含むと注記されているものの内部構成自体は当然ながら期中に変動するので、その増減を前会計年度末と比較して損益を推定することはできません。

損益計算書には資産科目に相応する「収益」区分中にトレーディング損益とPE投資関連損益がありますが、いずれも△で159号の適用による注記額記載は無く評価損益分がどれだけかは分かりません。負債科目に相応する区分は「金融以外の費用」の「その他」以外に考えられませんが、ここにも記載はありません。

結局のところ報告書末尾P100以降にまとめられた財務諸表注記の3「金融商品の公正価値」で負債評価益の実態がようやく分かります。これによると、長期債務未実現評価益が3四半期累計で1120億円、3四半期単独で910億円、短期債務は3四半期単独のみで50億円を計上していると述べられています。910億円という数値は資本勘定変動表中の注記総額918,162百万円の10億円未満切捨てと一致することで、ようやくそれらしいことが貸借対照表関係にも書かれていたとここで初めて分かりました。それでも159号初年度適用調整額のトータルは5,258百万円にしかならなかったのですから、野村の決算は良心的といっていいのではないでしょうか。

米会計基準の財務諸表作成規制は私が現役で財務審査の仕事をしていた頃の日本のと比べて、さすがというかやはりというか細かい、細かい(冷や汗)、目がシバシバしました。私は会計学の実践的知識習得目的で金融会社の財務諸表を手に入れるために株主になったという経緯もあり、注記もそれなりに読んできましたが、今回は途中に設けられた幾多の障害を乗り越えてのようやくの発見でした。注記を普通の方はまず読むことはないでしょうが、ストレスおじさん氏は見つけられましたか?

_ Y-SONODA ― 2009/05/12 07:39

けいこさん&ゴンベイさん&ストレスおじさんへ

回答は昨日の「野村HDに学ぶ負債評価益~財務会計基準書第159号(FAS159)~」にてということで。

またゴンベイさんの詳しい分析に感謝しております。

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_ ハズレ社会人 - 2009/05/07 15:06

バーナンキ議長は会合において米経済について実現には多くの要因を前提が必要としながらも国内総生産(GDP)が2010年に約2%、2011年に4%成長するとの楽観的な見込みを示している。










[ワシントン 5日 ロイター]米バーナンキFRB議長