金正日体制崩壊後を睨んだ米中密約を追う ― 2009/05/28 09:11
本ブログ08年9月12日付「北朝鮮崩壊の時、ポチ化する羅津港」を今一度整理。
08年9月、金正日の容体悪化を受けて米国と中国は非公式に体制崩壊後の対応を協議。
この協議は08年1月3日に公表された米戦略国際問題研究所 (CSIS,Center for Strategic and International Studies)と米国平和研究所(USIP, United States Institute of Peace)のジョイント・リポートの内容に沿って行われた模様。
このリポートは中国の政府当局者や研究者の話などをもとに中国の北朝鮮政策を分析したもの。
特に重要な点は、北朝鮮の不測の事態に備えて中国が策定している緊急対応策の内容。
以下簡単に要約。
・北朝鮮が不安定化した場合、中国の優先課題は、国境管理を強化し、難民の殺到を防ぐこと。
・必要と判断した場合、中国人民解放軍を北朝鮮に派遣することもある。
・その場合、国連と緊密に連携し、承認を得たほうが望ましい。
しかし、北朝鮮の急変に対して、国際社会がタイムリーに対応しない場合は、安定回復を図ることを優先。
つまり、独自判断で派遣するということ。
また、北朝鮮に軍を派遣する際の任務は次の3つ。
(1)難民支援などの人道的任務
(2)平和維持や治安維持任務
(3)中国国境付近の核施設から核汚染がおきた場合の汚染除去、核兵器や核物質の安全確保
米国はこの中国の北朝鮮政策を容認。
つまり、米国は金正日体制崩壊後の北朝鮮を中国に委ねるということ。
この際の最も重要な米中合意点は、北朝鮮の現状維持のはず。
その理由は朝鮮半島に火種を残しておく方が米中にとって好都合のため。
北朝鮮に眠る地下資源をめぐる米国への配慮などは暗黙の了解の範疇と思われる。
<追加情報>
・中国が北朝鮮に派遣する軍の規模は10万人単位。
・中国による金正男擁立説あり。
<北朝鮮の不測の事態>
中国の軍派遣の口実としては、北朝鮮のクーデター等の政変による内乱発生がベスト。
ところが金正日はこれを見抜いて核実験にミサイル連発で「今こそ体制固めへ」と粘る。
ここで韓国から浮上してきたのが6月の第三次黄海交戦。
さらに韓国は大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)参加を表明し、北朝鮮を刺激。
韓国は多少の犠牲を覚悟してまで南北開戦を演出しようとしているのか。
背景には「開戦と同時に中国は軍派遣」というシナリオがあるのか。
これは米中韓による新たな口実探しか。
確かに黄海であれば犠牲は最小限。
しかも黄海に接する中国を同時に刺激することも可能。
とはいえ南北開戦を中国の軍派遣の口実にするためにはさらなる仕掛けも必要。
この点で大いに疑問があるのも事実。
むしろ、核汚染の可能性が懸念されるような核施設への電撃空爆の方が口実になるのではないか。
なお、5月20日にCSISは日本部や中国部に続き韓国部の新設を発表。
その責任者にジョージタウン大学のビクター・チャ教授を任命。
このことから韓国も米中密約を承認していると判断。
<メモ>
第二次朝鮮戦争を望んでいる勢力に要注意(ロシア、それに新聞&テレビなどw)。
韓国内部には中国の関与を歓迎しない人たちもいる。
<関連記事>
北朝鮮崩壊の時、ポチ化する羅津港
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2008/09/12/3757140
金総書記の容体重く、米中が体制崩壊後を協議…米報道
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080912-OYT1T00410.htm
U.S., China Laying Plans in Case North Korea Collapses
http://www.foxnews.com/story/0,2933,421201,00.html
★Keeping an Eye on an Unruly Neighbor
Chinese Views of Economic Reform and Stability in North Korea
http://www.csis.org/media/csis/pubs/071227_wp_china_northkorea.pdf
Victor Cha Joins CSIS as Korea Chair
May 20, 2009
http://www.csis.org/component/option,com_csis_press/task,view/id,5792/
米CSIS韓国部の責任者にビクター・チャ氏
http://www.chosunonline.com/news/20090521000022
中韓国防相が北京で会談―北朝鮮問題などで意見交換
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0527&f=politics_0527_003.shtml
ロシアが核戦争に備え予防的な警戒措置、北朝鮮の核実験受け=報道
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-38241720090527
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_ 米流時評 - 2009/05/28 22:14
||| 北朝鮮の軍事行動宣言 |||
北朝鮮の宣戦布告、米国と韓国に対し「軍事行動もあり」と威嚇
朝鮮戦争以来休戦中の、南北朝鮮のフラッシュポイントは公海上
週明けから息つく暇もない。狼少年と多寡をくくられた金正日も、今回ばかりは
何かちがう。非常にシステマチックというか、さすがのオバマ政権も対応しきれないほどのスピードで連射して来る。………今度はいよいよ本気なのか?
という疑問にとらわれていたら、ちょうど同じような危惧を述介しているブログから、タイムリーなTBをいただいた。
編集人の方は、軍事の話題に長じてらっしゃるようで、
右とか左とかの 日本の政界の風向...
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