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欧州ほぼ全域、ガスプロムの「冷凍ビーム」発射に備え厳戒態勢へ2008/08/19 14:18

ガスプロムの「冷凍ビーム」実績表


時事通信さんが配信した昨日の記事はすばらしい。グルジア紛争分野の最優秀賞があったら、真っ先に推薦したい記事です。

▼引用開始

ウクライナ経由ガスに黄信号=西欧諸国、ロシアの報復警戒
http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=int_30&k=2008081800454
 【ブリュッセル18日時事】グルジア・南オセチア自治州をめぐる同国とロシアとの紛争で、西欧諸国はフランスを中心に和平調停役を果たすなど中立姿勢を取り、米国のようなロシア非難を避けている。ロシアからのガス安定供給に配慮していることも背景にあるが、旧ソ連圏のウクライナが反ロ姿勢を強めており、ロシアがウクライナへの天然ガス供給停止などの報復措置に出れば、同国経由でロシア産ガスの供給を受ける欧州もエネルギー危機に見舞われる恐れがある。
 ロシアは2006年1月、ウクライナとの天然ガス供給価格をめぐる交渉決裂を受け、同国向けの供給をほぼ全面停止した。欧州連合(EU)は域内ガス消費量の4分の1をロシア産に依存、その約80%をウクライナ経由のパイプラインで調達しているため、真冬の供給途絶で一部EU加盟国で暖房用ガスが不足した経緯がある。
 グルジアと同様、北大西洋条約機構(NATO)およびEU加盟を目指すウクライナは先に、同国クリミア半島セバストポリを基地とするロシア黒海艦隊の出入港を制限する大統領令を出した。これにロシアは反発しており、今冬のガス供給交渉で価格引き上げなど報復に出る公算が大きい。(2008/08/18-14:43)

▲引用終了

これから書こうかと思っていたのに時事さんに先にやられたぁー。などと悔やんでも仕方ないので、そろそろ天然ガスネタもいきますね。

この記事に貼り付けた画像を見てください。クリックすると拡大されます。

ロシアの天然ガス埋蔵量は世界最大。このロシアの天然ガスの8割以上を牛耳っているのが、政府系天然ガス企業のガスプロム。ガスプロムは世界最大のガス生産・供給企業で、1社だけで世界の天然ガス需要の4分の1を賄っています。

このガスプロムはロシア政府と組んで、旧ソ連圏で米英に接近しようとする国があれば、情け容赦なく攻撃を仕掛けるのです。

昨日の記事の漫画にあるように、いざとなったらガスプロムは戦車に変身。

この戦車から発射されるのは、いきなりの「ふふふ、大幅値上ね」、さらには「はい、それじゃ供給停止!」という強烈なもの。

そうです。敵を凍らせる「冷凍ビーム」なのです(汗)

しかも、この冷凍ビームの実績表を見てもわかるように、真冬に発射されるのです。それでなくても寒い地域。天然ガスの供給がストップしたら凍え死んじゃう人も出てくるかも。そうなると各国は大混乱。なんとも恐ろしい武器ですね。よって、脅しだけでも充分効き目があるのです。

この冷凍ビームのエネルギー充填レベルは価格に反映されているので、なんともわかりやすい。欧州諸国向け価格に近づいてきた時点でもう発射秒読み状態です。

このガスプロム戦車は「北大西洋条約機構(NATO)加盟」、それになんと言っても「米ミサイル防衛(MD)」に極めて敏感に反応します。

チェコ、ポーランドに続いてウクライナもMD参加をほのめかしている。しかも、ウクライナはグルジアを側面支援するためにウクライナ領セバストポリに駐留するロシア海軍黒海艦隊の出入港を制限する大統領令まで出しちゃった。どうせ二枚舌でしょうけどね。

そうなると、今冬の冷凍ビーム発射に怯えているのはグルジアやチェコやポーランドやウクライナだろうと思いますよね。実は他にもあるのです。

「米国さん、あまり強硬に出ないでよ。なにもこんな時期にMD商談をしなくてもいいじゃないっ!」と内心思っているのがフランスとイタリア。

「ごらぁー、米国。あんたはKYか!」と内心怒っているのがドイツ。

今なおイラク戦争で明らかになった米欧の亀裂が修復されていないようです。

NATO加盟問題やグルジア紛争問題で欧州連合(EU)内の足並みが乱れているのは、ここにも原因があるのです。

これからこのあたりも掘り下げてみますね。

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http://mainichi.jp/select/world/news/20080722ddm007030014000c.html