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「パイプライン戦争」を読み解く2008/08/10 09:39

チョークポイントに囲まれたトルコ周辺地図

グルジアでの戦火が拡大しています。
死者は1500人を超えたとの報道まで。

グルジアはパイプラインの経由地。重要なパイプラインは次の通り。

●バクー・トビリシ・ジェイハン・パイプライン
=BTCパイプライン(石油パイプライン)
THE BAKU-TBILISI-CEYHAN PIPELINE
The BP-led pipeline was opened in 2006.
It can pump up to one million bpd of Azeri crude along the 1,040 mile route to the Turkish port of Ceyhan. It is the first pipeline to carry large volumes of crude from the Caspian without going through Russia.

●バクー・トビリシ・エルズルム・パイプライン
=BTEパイプライン(天然ガスパイプライン)
The BAKU-TBILISI-ERZURUM PIPELINE
Also known as the Shakh-Deniz Pipeline, takes gas from the Shakh Deniz gasfield in the Caspian Sea to Erzurum in Turkey. It is jointly operated by BP and StatoilHydro. It began exports to Turkey in 2007 and will eventually be able to carry 20 billion cubic metres of gas.

現在ロシアが攻撃対象にしているのはBTCパイプライン。世界の供給量の1%以上に当たる石油を輸送しているのですが、このパイプラインによってロシアやチョークポイントであるボスポラス海峡の混雑が障害になっている黒海を通過せずに欧州やアジアなど大市場への供給が可能になった。

資源外交を強めるロシアからすれば、ロシアを経由しないこのパイプラインの存在自体が目障りだったわけです。

しかも、グルジアはロシアの影響下を脱するために北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指していた。

そしてこのBTCパイプラインをジェイハン(トルコ)からアシュケロン(イスラエル)にまで延長させようとまで目論んでいたのがロシア依存脱却を目指すイスラエルだった。

実はこのBTCパイプラインは8月5日夜に爆発事件があったばかり。武装組織クルド労働者党(PKK)が犯行声明を出していますが真偽は不明。この爆発の影響で石油輸送先をジェイハンからグルジア西部スプサに振り分けるなどの措置を取っていた矢先にロシアが空爆を開始したわけです。

「ロシア迂回」を売りにするトルコのエネルギー・ハブ構想。
それに乗ったのがグルジアとイスラエル。
この戦争を「パイプライン戦争」と呼ぶ英国メディアも出てきました。

<関連記事>
Russian jets targeted major oil pipeline: Georgia
http://www.reuters.com/article/GCA-Russia/idUSL961816420080809

FACTBOX - Georgia's importance as an energy transit state
http://uk.reuters.com/article/worldNews/idUKL856888820080808

The Pipeline War: Russian bear goes for West's jugular
http://www.dailymail.co.uk/news/worldnews/article-1043185/The-Pipeline-War-Russian-bear-goes-Wests-jugular.html

エネルギー・ハブを目指して(在トルコ日本国大使館)
http://www.dubai.uae.emb-japan.go.jp/middle%20east_economy_09_07_j.htm

Israel and Turkey study Ceyhan-Ashkelon pipeline project
http://www.animaweb.org/en/actu-detail.php?actu=4048

Turkey, Israel committed to giant energy project
http://www.turkishdailynews.com.tr/article.php?enewsid=109722

<キーワード>
パイプライン戦争、石油、原油、バクー・トビリシ・ジェイハン・パイプライン、BTCパイプライン、バクー・トビリシ・エルズルム・パイプライン、BTEパイプライン、ロシア、グルジア、南オセチア、トルコ、ジェイハン、イスラエル、アシュケロン
Pipeline War
THE BAKU-TBILISI-CEYHAN PIPELINE
The BAKU-TBILISI-ERZURUM PIPELINE

パイプライン戦争:チェチェンからグルジアへ2008/08/10 22:42

バクー・ノボロシースク・パイプライン
共同通信でこんな記事が配信されています。

▼引用開始
グルジアの2港を利用停止 アゼルバイジャン国営石油
http://www.47news.jp/CN/200808/CN2008081001000228.html
【モスクワ10日共同】アゼルバイジャン国営石油会社(SOCAR)は9日、グルジアの2つの港を経由する原油と石油製品の輸出を8日から停止したことを明らかにした。ロイター通信がアゼルバイジャンのテレビ報道として伝えた。
 代替策としてロシアを経由する油送管の利用を検討しているが、グルジア経由に比べ輸送力が劣るという。
 世界有数のカスピ海油田を抱えるアゼルバイジャンには外洋に面した港がなく、隣国のグルジアやロシアを通る油送管が重要な原油輸出ルートになっている。
2008/08/10 11:40 【共同通信】
▲引用終了

この記事をもう少し突っ込んでみましょう。

バクー・トビリシ・ジェイハン・パイプライン(BTCパイプライン)は、トルコ東部エルジンジャン県区間で8月5日夜に爆発があり、火災が発生。石油輸送が15日間停止される見込みだった。クルド系武装組織であるクルド労働者党(PKK)が犯行声明を出したが、真偽は不明。

その直後の8月7日夜から8日にかけて、グルジア軍がグルジアからの分離独立を求める南オセチヤ自治州の州都ツヒンバリに進攻。これに対抗してロシア軍が空爆開始。BTCパイプラインも空爆対象になっている模様。

こうなるとBTCパイプラインは使いものにならない。

よって、共同記事にあるようにアゼルバイジャン国営石油会社(SOCAR)は、グルジアの2つの港を経由する原油と石油製品の輸出を停止。代替策としてロシアを経由する油送管の利用の検討を始めた。

▼この油送管とは・・・、ズバリこれです。
バクー・ノボロシースク・パイプライン
The Baku-Novorossiisk pipeline (Northern Route)

この位置関係を地図の赤矢印で示しておきましたが、ノボロシースクは当然黒海沿岸のロシア主要港。チェチェン紛争はこのパイプラインが原因だった。

ロシアは、ロシアを経由しない、即ち「ロシア迂回」を売りにするBTCパイプラインに群がる連中をまたしても武力によって叩きのめした。しかも今度ばかりは極めて露骨。そして今ロシア経由のバクー・ ノボロシースク・パイプラインに変更させようとしている。

俺達に逆らうとどうなるか思い知らせてやる。その結果民間人を含む多くの死者が出ている。何度も繰り返されてきた石油を巡る恐ろしい現実があります。

任期切れ間近で動けぬブッシュ政権の隙を狙ったロシア。米国に対抗する「極」への野望が再び見えてきました。二つの極に翻弄される世界。そうした中で、ロシアとイスラエルの関係悪化がこの地域での更なる波乱を呼ぶことになるでしょう。

<関連記事>
Azerbaijan halts oil exports from 2 Georgian ports
http://in.reuters.com/article/oilRpt/idINL939138620080809

Azerbaijan Halts Shipments of Oil through Georgian Ports
http://www.kommersant.com/p-13067/r_529/Azerbaijan_Halts_Shipments_Oil_/