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櫻田淳=野田前内閣「外交・安全保障チーム」の努力を労うのは当然の礼儀2012/12/28 08:46

櫻田淳=野田前内閣「外交・安全保障チーム」の努力を労うのは当然の礼儀


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【正論】安倍氏は高揚感抑えて船出せよ 東洋学園大学教授・櫻田淳
2012.12.28 03:09
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121228/plc12122803260007-n1.htm

 第2次安倍晋三内閣が発足した。目下、安倍新首相を取り巻くのは、期待、緊張、不安、警戒といったものが複雑に入り乱れる空気である。それは、「高揚感なき船出」と評すべきものであろう。

 ≪野田チームの城明け渡し評価≫

 この期に敢(あ)えて指摘しておくべきことであるけれども、外交・安全保障政策上、特に日米関係の上で、安倍新内閣への「赤穂城・城明け渡し」を恙(つつが)なく進めたのは、野田佳彦首相、玄葉光一郎外相、森本敏防衛相以下、副大臣、政務官を含めた、野田前内閣「外交・安全保障政策チーム」の功績である。

 「城内を不用意に散乱させた」鳩山由紀夫内閣期、「散乱した城内を片付けるにも片付けられなかった」菅直人内閣期の状態のままで、「城」を明け渡されていたら、安倍新内閣は、発足当初から途方もない難題を背負い込むことになっていた。こうした手間を後に残さなかった故に、野田前内閣「外交・安全保障チーム」の努力を労(ねぎら)うのは、当然の礼儀というものである。

 実際、衆院選結果判明直後、バラク・オバマ米大統領は声明の中で、安倍自民党の選挙大勝に祝意を表す一方、野田首相に対しては、「日米関係への貢献に感謝したい」と謝意を示した。これは、日米関係全般を概観するに、公正な評価と見るべきであろう。

 このことは、「政権が交代しても、外交・安全保障政策の基調は変わらない」という原則が、「野田から安倍へ」のプロセスで尊重されたということを意味する。それは、今後の憲政のありようを展望する上では、意義深いものとなろう。

 ≪「勝利の配当」に恬淡たれ≫

 そもそも、安倍新首相は、「危険なナショナリスト」といった類いの評を内外から被(かぶ)せられてきた政治家である。しかし、振り返れば、尖閣諸島国有化を断行し、「日韓通貨スワップ枠拡大」を停止し、武器輸出三原則解禁に踏み切った野田前首相は、なぜ、「危険なナショナリスト」と呼ばれなかったのか。「野田から安倍へ」という対外政策上の「連続」に着目するならば、安倍新首相に対する定型的な評も、相当に論拠が怪しいものだということになる。

 実際、マイケル・オースリン(米保守系シンクタンク、AEIの日本部長)が12月17日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルに寄せた一文に示されるように、そうした定型的な評を覆す見方も出てきているのである。

 とはいえ、事実としては、安倍新首相を「危険なナショナリスト」として警戒し、批判する向きは根強い。故に、今後、安倍新首相が心掛けなければならないのは、「安倍は『危険なナショナリスト』であってほしい。そして、その彼を叩(たた)きたい」という期待に結果として応えるような発言や行動を厳に慎むことである。

 また、第1次内閣期に「お友達内閣」と揶揄(やゆ)されたような政治姿勢の隙も、わざわざ見せてもいけない。安倍新首相に対して、「それ見たことか…」といった言葉を投げ付けたい人々は、内外に決して少なくない。

 加えて、安倍新首相に近い人々を含めて自民党政治家が気をつけるべきは、「勝利の配当」を得ようとするかのような露骨な振る舞いを避けることであろう。

 今後、自民党に問われることになるのは、過去3年数カ月の「自己省察」と「自己変革」が果たして本物であったかということである。安倍新首相に対しても、他の大挙して登場した同党政治家に対しても、相当な程度までの自制と慎慮が要請される。こうした自制や慎慮が働かなくなった途端、安倍新首相の政権運営も党の党勢も、失速を始めるのであろう。

 ≪「時代の要請」にバット振れ≫

 筆者は、第1次内閣期の安倍新首相の政権運営には、総じて批判的な眼差(まなざ)しを向けていた。「戦後レジームからの脱却」や「美しい国」といった言辞を大上段に掲げた往時の安倍新首相の政治姿勢には、民族主義色の濃い理念を先行させた力みや気負いが漂っていた。それは、「右派・民族主義」性向の人々には歓迎されたとしても、実際の統治には益するところが少なかったのではないか。

 「時代の要請」というボールが飛んでこないところに「政策」というバットをいくら振ったとしても、それは、「空振り」にしかならない。衆議院解散以降、円高是正や株価上昇に向けた流れができ上がりつつあるのは、安倍新首相が打ち出してきた経済に絡む「政策」方針が、デフレーション脱却を通じた経済再生という「時代の要請」には確かに応えるものであるからであろう。

 そうであるならば、安倍新首相に期待されるのは、「経済の再生」に加えて「安全保障の確保」という要請に即して、適切な政策を淡々と進めることに徹する姿勢である。現下の日本が必要とするのは、自制、慎慮、禁欲を旨として「佳(よ)い仕事」を手掛けようとする「職人芸」としての統治でしかない。(さくらだ じゅん)


<画像引用>

何思った野田氏?議場にポツン…首相指名選挙前
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20121226-OYT1T01192.htm

衆院本会議場に先に入り、一人ぽつんと座る野田首相(26日午後0時50分、国会で)=冨田大介撮影 

首相指名選挙が行われる直前、たった一人で衆院本会議場の自席に座った野田首相。

 首相官邸から早めに到着した。

(2012年12月27日07時23分 読売新聞)