Google
WWW を検索 「園田義明めも。」を検索

朝日:尖閣有事、米国どう動く ジェームズ・ホームズ=共同行動は義務、熱意には隔たり、トシ・ヨシハラ=抑止力示しつつ、「戦略的あいまいさ」保つ2012/10/11 06:37

朝日:尖閣有事、米国どう動く ジェームズ・ホームズ=共同行動は義務、熱意には隔たり、トシ・ヨシハラ=抑止力示しつつ、「戦略的あいまいさ」保つ


<関連記事>

尖閣有事、米国どう動く 米海軍大2氏に聞く ホームズ准教授・ヨシハラ教授
2012/10/07 朝日新聞 朝刊

 仮に日中が尖閣諸島を巡って衝突したら米国はどう対処するのか。米海軍の教育・研究機関である海軍大学(ロードアイランド州)で、アジア太平洋地域での軍事戦略を研究する2人に聞いた。

 ●共同行動は義務、熱意には隔たり ジェームズ・ホームズ准教授

 ――日米安保条約に基づく米国の対応は。

 条約は確かに共同で「行動」する義務を定めている。しかし、「ある国が攻撃されたらすべての国が戦争に参加する」と書いてあるわけではない。これは、北大西洋条約機構(NATO)憲章でも同じだ。

 ――ではどう行動するのでしょう。

 この問題で日米間にはある程度の「隙間」があるかもしれない。最終的には米国は日本と共に行動するだろう。ただ、米国が特別の熱意を持ってこの島を守るとは期待しないほうがいい。同盟関係の維持という観点を除けば、この島に大きな価値があるわけではない。日米が対応を協議している間、中国は時間的な優位を得るかもしれない。

 個人的には、米国は日本を守るというメッセージをもっと明確にすべきだと思う。同盟にひびが入り、つけいる隙があると中国が判断すれば、戦争の可能性はかえって高まる。ただ、米国には対中関係を損ねることを懸念する見方もあるし、一般の米国民からすれば、これはささいな問題だ。

 ――日本側の対応についてはどう考えますか。

 防衛費の国内総生産(GDP)比1%枠は見直すべきではないか。移動式の地対艦ミサイルを琉球諸島に配備するなど、運用面でできることもある。

 ――衝突が起こった場合の予測を発表しましたね。

 艦船や航空機の数などでは中国が上回っているが、自衛隊のほうが訓練されているし装備も先進的だ。ただ、本土から離れているという地理的な問題や、先に述べたミサイル配備などの措置がまだ講じられていないことから、いま戦えば中国が優位だろう。


 ●初期対応は日本、自衛の意思必要 トシ・ヨシハラ教授

 ――東シナ海や南シナ海で緊張が高まる背景には何があると考えますか。

 根本にあるのは、東アジアで力の不均衡が拡大していることだ。中国は総合的な国力や、特に海軍力の拡大によって、自らの主張や願望を実行に移しつつある。

 もう一つの根底にある問題は、中国が国際法といった規範に従うかどうかだ。中国が「自国近海では例外的な立場が認められるべきだ」と考えるのであれば、米国や日本は既存の国際秩序を守る側に立ち、米中の共存は非常に困難になる。

 ――米軍と比較した中国の海軍力をどう分析していますか。

 現在は近海への接近を拒否しようとする中国軍と接近能力を保とうとする米軍の競争だ。

 実際に現場を知る士官たちに教えていて感じるのは、ここ数年、彼らの態度に変化がみられるということだ。中国の接近拒否能力向上によって、米国の士官たちがもはや安全とは感じられない海域がある。もちろん、中国海軍が、外洋で本格的に活動できるようになるには長い時間がかかるが、現在でも自国の近海では多くのことができる。

 ――尖閣諸島を巡って衝突が起こった場合の日米の対応は。

 初期段階の対処は日本がすべきだ。日本が自国防衛の能力と政治的な意思を示し続ける限り、必要であれば米軍は支援をするだろう。一方、もし日本が自国の島を守るために何もしないとすれば、米軍派遣は政治的により困難になる。

 ◆抑止力示しつつ、あいまいさ保つ

 米国は日中双方に、対話による平和的解決を求める一方で、有事の際は日米安保条約に基づいて行動するという「抑止」のメッセージも送っている。

 ただ、実際に米国が果たす役割については、日本の期待と、米国での一般的な受け止めには隔たりがある。無人の尖閣諸島を守るため米兵を最前線に送り、中国と戦争をすべきだと唱える声は、ワシントンでは聞こえない。

 一方、「尖閣諸島を守らない」という立場を取れば、日米同盟や米国への信頼に大きな傷がつくうえ、中国のさらなる挑発的行動を誘発しかねないことは、両氏が指摘する通りだ。どう行動するかは明言せず「戦略的あいまいさ」を保つのが、いまのオバマ政権の立場だ。

 米国の視点からすれば、尖閣問題は中国の海洋進出にどう対処するかという問題でもある。米戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン日本部長は「根底にある構造的な問題は、中国が(九州・沖縄からフィリピンなどに至る)第一列島線の内側を支配下に置こうとしていることだ」と指摘する。

 米国は南西諸島の防衛に日本がより大きな役割を果たすよう求めている。背景にあるのは、こうした問題意識だ。

 (ワシントン=大島隆)


<画像引用>

INTERVIEW/ James Holmes: Japan should not expect U.S. to defend Senkakus with enthusiasm
http://ajw.asahi.com/article/asia/china/AJ201210090048

INTERVIEW/ Toshi Yoshihara: Japan's defense capability, political will a precondition for U.S. military action to protect Senkakus
http://ajw.asahi.com/article/asia/china/AJ201210090050