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英国際戦略研究所の「ガスプロム帝国地図」2008/09/20 09:32

英国際戦略研究所の「ガスプロム帝国地図」


英国際戦略研究所(The International Institute For Strategic Studies)が2008年版「戦略概観(Strategic Survey 2008)」を発表。

日経新聞さんが要約を掲載していますので、下に貼り付けておきます。
それにしても、ジョン・チップマン(John Chipman)所長は、「無極化論」を繰り返しておりますなぁ。

日経新聞さんが言及していない点は・・・

・この戦略概観にはこれまでこのブログに登場してきた「北極の資源と航路」についても分析されている。

・これまた再三本ブログに登場してきたガスプロムの詳細マップが掲載されている。
(本記事画像参照)

その他多数


▼引用開始

世界、内向き姿勢強める、市場混乱、安保にも影響――英国際戦略研究所が分析。
2008/09/19 日本経済新聞朝刊


 英国際戦略研究所は十八日、世界の軍事・外交関係についてまとめた二〇〇八年版「戦略概観」を発表した。米国が大統領選の年を迎え政策の不透明性が増していることや、石油、食料、金融市場の混乱という「三重ショック」を背景に多くの国が内向き姿勢を強めていると指摘。安全保障上の主要な国際課題の解決が難しくなっていると分析した。

 記者会見したチップマン所長は「大国の指導者が国内経済問題などに追われるなか、地域の国々が国際問題で一定の役割を果たし始めており、国連安全保障理事会では実現しなかった国際外交の平等化が現実の場で進行している」と発言した。トルコがイスラエル・シリアの和平交渉を後押し、ジンバブエの与野党和解で南アフリカ共和国が大きな役割を果たしたことなどを例として挙げた。

 「戦略概観」の編集責任者であるニコル氏は、大手証券会社リーマン・ブラザーズの経営破綻などの米国の金融危機は「米経済や米金融市場が世界にもたらす影響力の大きさを改めて浮き彫りにした」と指摘した。一方でブッシュ大統領を引き継ぐ新指導者も経済危機への対応に当面追われる可能性があり「(米同時テロ後)七年間にわたり低下が顕著となった影響力回復の作業を困難にしかねない」との見通しを示した。

 「概観」は中国について、指導者がチベット騒乱への対応を巡り国際的な批判を浴びるなか、北京五輪をスムーズに実現させることに全力を挙げたと指摘した。ロシアも大統領の交代で不透明な時期を迎えていると分析した。

 ロシアはグルジア領南オセチア自治州を巡り同国と武力衝突した。欧米とロシアの対立が深まったが、双方とも決定的な対立を望んでおらず「新冷戦」への一歩にはならないとの見方を示した。

 「概観」は結論として当面、世界の構造は流動的な「無極状態」が続くと指摘。米以外の国や企業、非政府組織などが国際関係にさまざまな形で大きな影響を及ぼすと予想。欧州や中東、アジアのパートナーが米国と協力して役割を果たせるかどうかが「ポスト一極時代」の国際平和と安全保障のカギを握ると指摘した。
(ロンドン=岐部秀光)

▲引用終了



<関連サイト>
International Institute for Strategic Studies welcome
http://www.iiss.org.uk/welcome/

コメント

_ どい・としき ― 2008/09/20 13:35

関連するかどうか、英国際戦略研究所の研究員の記事を紹介します。すでに言及されているので、蛇足ならごめんなさい。

「グルジア」に震えるロシア周辺国
踏み絵を踏まされたらたまらない。米欧が頼りにならず、次の標的ウクライナは戦々恐々。
会員誌:FACTA:2008年10月号
by オカサマ・アントネコ(英国際戦略研究所主任研究員)
http://facta.co.jp/article/200810038.html

8月に火を噴いたグルジアとロシアの紛争は、米国のほかOSCE(全欧安保協力機構)やEU(欧州連合)加盟国が、カスピ海と黒海を挟むカフカス(コーカサス)の回廊で戦争が勃発する可能性を予想していたにもかかわらず、未然に防げなかった。

発端は8月7日の夜。親ロ分離派が支配する南オセチア自治州を軍事制圧しようと、グルジアの親米派政権が先制攻撃を仕掛けたことにある。2003年の「バラ革命」で誕生したミハイル・サーカシビリ大統領は、「ロシアの挑発に乗るな」との米欧の制止を振り切り、同州の首都ツヒンバリを砲弾で攻撃した。ところが、短期決着の見込みは外れ、グルジア軍の無謀な攻撃は、ロシアの介入に絶好の口実を与えた。

グルジアが求めるNATO(北大西洋条約機構)加盟を、安全保障の最大の脅威とみなすロシアは、数千人規模の派兵と空爆でグルジア軍を撃滅、南オセチアから駆逐してグルジア領内に進軍、カスピ海産の原油蛇口を締めあげる構えを見せた。

EU議長国フランスのニコラ・サルコジ大統領が、人道支援を理由にロシア、グルジア両軍が戦闘前の配備に戻ることなど「6項目の和平案」を提示して仲介、ようやく両国の停戦合意を取り付けた。ところが、ロシア軍の一部が退去しないまま(9月8日にロシアは1カ月以内の撤退を表明)、一方的にアブハジア自治共和国と南オセチアの独立を承認してしまった。

エネルギー依存がアキレス腱

これによりNATO・ロシア間の軍事協力は全面凍結され、EUは対ロ制裁の検討に入った。ロシア側もWTO(世界貿易機関)への加盟交渉を凍結、「新冷戦」がささやかれだした。しかし、西側諸国がロシアに影響力を行使しようにも、ほとんど期待できないのだ。欧州は石油・ガス供給をロシアに依存しており、対ロ経済制裁に踏み切れば損害を被るのはむしろ西側だからだ。

そしてはるかに深刻な問題がユーラシアを覆っている。バルト海沿岸国から東欧、中央アジアまで多くの国が旧ソ連崩壊とともにその軛を脱し、親西側の姿勢をとってきたが、EUがグルジアへのロシア軍侵攻に即応できず、声明を出すだけで数日も要した事態を見て、対応の遅さと弱腰に失望が広がっている。

私は戦争勃発の翌週に中央アジアを訪れた。街頭では多くの人々がロシア支持を口にし、戦争の引き金を引いたのはサーカシビリなのに、それを認めない西欧を批判していた。中央アジアの年長の人々にとって、ロシアのメディアが流す新たな反西欧のレトリックは、超大国ソ連に属していた時代を思い出させるのだ。

タジキスタンの首都ドゥシャンベで拾ったタクシーの運転手は「もちろんロシアを支持する。若いころは自分もロシア陸軍兵で、安定と尊敬を得ていたし、ロシア中を旅行できたんだからね」と言っていた。

中央アジアの専門家との会合でも、この難局に際し中央アジア各国はロシアを支持すべきだと多くの人が議論していた。ソ連崩壊後もロシアが中央アジア諸国を支えてくれたからだという。ロシアには数百万人の出稼ぎ労働者が入っているし、月々の送金は祖国の貧窮に喘ぐ家族にとって生き残りの大事な手段。もし中央アジア諸国の政府がロシアを批判したら、彼ら出稼ぎ労働者は本国に送り返され、各国で経済危機や社会危機が起きかねない。

他方、インターネットにアクセスして海外メディアを読める多くの人々は、ロシアの介入を強く批判する記事を読んで、ロシアを快く思っていない。とりわけ中央アジアやウクライナの政治家たちは憂慮する。カフカスの紛争の重要な結果は、ロシアが軍事力行使に踏み切る敷居が低くなり、自国の安全保障が脅かされる可能性が出てきたことだ。グルジアと同じくNATO加盟をめざすウクライナは攻撃対象になりやすいと見られている。

たとえばウクライナ領内のクリミア自治共和国の問題がある。旧ソ連政府が不当な形で軍港のあるクリミアをウクライナに移譲したと見るロシアが、領有権を主張しだす可能性がある。NATO加盟でロシアの黒海艦隊にウクライナ撤退を迫るようなことになれば、ロシアが軍事行動を起こすきっかけになりかねない。

中央アジアでも南オセチアとアブハジアの独立承認は悩ましい。問題は、ロシアが旧ソ連諸国の国境を侵犯する先例をつくってしまったこと。パンドラの箱を開けたようなもので、この地域を不安定と紛争の坩堝に突き落としかねない。各国とも相互に国境問題を抱え、ウズベキスタンなどは隣国との国境協定に調印していないからだ。

カフカスでは、アルメニア住民が人口の大多数を占めるアゼルバイジャン領内ナゴルノ・カラバフ自治州をめぐるアゼルバイジャンとアルメニアの対立問題がある。1988年に同自治州でアルメニア系住民がアルメニアへの編入を要求して独立を宣言、アゼルバイジャンと軍事衝突した。90年前半まで続いた紛争の結果、数十万人の犠牲者と100万人以上の難民を出した。この紛争がまた火を噴き、カスピ海の石油生産を脅かす可能性がある。

グルジア紛争を機に、中央アジアが戦々恐々としているのを私は感じた。ロシアと西欧の緊張が急激に高まれば、この地域の国々は人質になるからだ。独立後、せっかく築いた対ロ、対欧、対米、対日関係が水泡に帰し、新「冷戦」のもとで踏み絵を踏まされることになる。これはただでさえ脆い経済を損ない、安全保障を弱めるだろう。

ロシアの圧力で中国にすがる

中央アジアのなかでもカザフスタンなどは西側と緊密な関係を維持したいと考えている。8月28日、タジキスタンで開かれた上海協力機構(中ロなど6カ国加盟)首脳会議では、カザフ、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギスの中央アジア4カ国が、ロシアに追随してアブハジアと南オセチアの独立を承認しようとはしなかった。ただ、首脳会議が発表したドゥシャンベ宣言では慎重に言葉を選び、グルジアによる南オセチア攻撃を非難し、ロシアが行った人道上の対応に支持を表明するとともに、国際法に従って直ちに軍事行動を停止するよう要請した。

ロシアの味方か西側の味方か――というロシアの圧力に直面して、各国が接近したのは中国である。ドゥシャンベ宣言に、分離主義への反対を盛り込み、領土統一とサルコジ大統領が提示した6項目の和平案への支持を表明したのは、国内で少数民族問題を抱える中国だった。

この紛争に勝者はいない。このまま西側との関係悪化が進めば、ロシアも国際社会で孤立化することになる。だから、外交上の対立を超えて協議し協力するメカニズムを模索することが重要なのだ。ロシアは隣国に武力行使をしないと国際社会に再保証する必要があり、西側は紛争が拡大するのを防ぐためにロシアと協力しつつ、新たな現実を踏まえた戦略を練っていかねばならない。日本のようなアジア諸国も、対話を促す主要な役割を担うことができる。

_ Y-SONODA ― 2008/09/21 09:34

どいさんへ

「発端はグルジアの親米派政権が先制攻撃を仕掛けたこと」
これ、おもしろいですね。

グルジア紛争での実際の死者数も不明。
殺したのがどちらかも不明。
不明だらけでもロシアが悪者になる。

メディアのパワーの差ですね。

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