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FITのうまみで膨らむ「太陽光利権」、始まった経済産業省「自業自得」のバブル退治2013/12/25 07:32

FITのうまみで膨らむ「太陽光利権」、始まった経済産業省「自業自得」のバブル退治


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膨らむ「太陽光利権」 始まったバブル退治 (画像引用)
2013/12/24 7:00日本経済新聞 電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2004I_Q3A221C1000000/

 広い土地に発電用のパネルを敷けば、お金がチャリンチャリンと懐に――。うまみが大きな商売として脚光を浴びた太陽光発電に曲がり角が訪れた。原発事故をきっかけに政府が普及を後押ししてきたが、濡れ手で粟(あわ)を期待して暗躍する事業者があふれれば、いずれ電気料金に跳ね返る。ブームに火をつけた当の経済産業省は、バブル退治に動き出した。

■太陽光の「バブル紳士」も

 雑居ビルの事務所で取材中、そのオーナー社長の携帯電話に何度も電話がかかってきた。匿名を条件に話してくれた社長によると、電話をかけてきた相手は、太陽光発電所用地のブローカー。「社長が持っているゴルフ場の土地を買いたい」と何度も連絡がきているという。

 このゴルフ場は山陰地方の山あいにある。大都市圏から遠く、客足は遠のく一方だった。利益を生まないゴルフ場を手放したくても、これまで興味を示してくる会社は1社もない。ところが、昨年2月、どこで調べたのか、名前も知らない男が突然、事務所に連絡をよこしてきた。

 「太陽光発電所の用地としてゴルフ場を買いたい」

 敷地が広く、平らなゴルフ場の敷地は、大規模な太陽光発電所にうってつけだったのだ。その後は千客万来。この社長が面会したブローカーの名刺は20枚を超えた。バブル時代の「バブル紳士」のように、うさんくさそうなブローカーも混ざっていそうだと思っても、今まで門前払いしてこなかったという。

 取材中にかかってきた電話を切ると、この社長は「土地が売れるなら、先が見えないゴルフ場を細々と続けるよりまし。渡りに船だよ」と苦笑いした。

 このゴルフ場だけではない。熊本県のある自治体の担当者は「山の中の牧場を法外な値段で買おうとする『地上げ屋』が突然、出現した。怪しい話には注意するように喚起している」という。

 誰も見向きもしなかった土地を、売れる土地に変えた太陽光バブル。発生源を探ると、経産省が打ち出した再生可能エネルギーの普及促進策にたどりつく。昨年7月にスタートした「再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度」が、太陽光発電ブームに火をつけた。

■1500万円の元手で4000万円稼ぐ

 制度のポイントは、太陽光などの再エネで発電した電力を「もうけが出る値段」で買い取ること。発電事業者にアメを与えて、普及スピードを一気にあげようとしているわけだ。制度導入が真剣に議論されたタイミングは、東京電力福島第1原子力発電所事故が起きた後。原発への不信が強まる一方、再エネへの期待が高まっていたころだった。

 当時の首相、菅直人は「(買い取り法案を)通さないと政治家としての責任を果たしたことにならない」と訴え、ソフトバンク社長の孫正義は、それに呼応してすぐさま動いた。孫は全国の知事を集め、太陽光など自然エネルギー普及のための組織までつくった。

 しかし、環境に優しいエネルギー社会をつくろう、という理念だけで再エネ、とくに太陽光発電所の計画が増えたわけではない。ブームに火をつけたのは買い取り制度が生んだうまみだった。

 買い取り制度は、再エネでつくる電気を、東電など大手電力会社が一定の価格で買い取る仕組みだ。大型の「メガソーラー」など太陽光発電所の場合、初年度に認められた買い取り額は1キロワット時あたり税抜きで40円。風力や地熱などでつくった電力の買い取り額よりも高く、一般家庭が払う電気料金の単価(20円台)すら大きく上回る。

 しかも、その高い買い取り額が20年間にわたって続く。大手電力が最終的に買い取り代金を電気料金に上乗せして回収するため、家庭や企業にとっては、新たな負担だ。経産省の試算によると、2020年に家庭の負担は現在の2.5倍の月276円に膨らむ。買い取り制度のモデルにしたドイツは負担が月2400円まで増え、制度の是非を巡る論争が起きている。

 裏を返せば、発電事業者に大きなうまみがある制度だ。太陽光発電設備を売り込む家電量販大手の広告を見れば、一目瞭然だ。

 「土地の有効活用を支援します!」――。宣伝文句とともに並ぶのは、魅力的な数字だ。北関東の地方都市で発電能力が54キロワットの太陽光発電設備をつくった場合、初期投資に約1500万円かかるが、1年間で200万円以上(売電価格は今年度の1キロワット時あたり36円で算出)の収入が得られるという。

 単純に計算すれば、買い取り期間の20年間で4000万円の収入が懐に入る。初期投資の費用を差し引いた2000万円を超える額が手元に残る。そのほかの費用が加わったとしても、おいしいビジネスだ。だからこそ、発電プラントを扱うことに慣れたエネルギー大手や大手製造業に加え、経験のない中小企業まで、買い取り制度のアメに吸い寄せられた。

■「取り消し処分」という伝家の宝刀

 これまで経産省が買い取りを認定した太陽光発電所の計画を足し合わせると、出力にして2000万キロワットを超える。実現すれば、国内電力4位の九州電力とほぼ同じ発電能力が生まれるはずだった。ところが、現実は違う方向に向かっている。

 「今のような事態は、想定外だ」

 経産省で買い取り制度を管轄する資源エネルギー庁の幹部は唇をかみしめる。多くの計画に「買い取り認定」を与えたのに、認定した案件のうち、今夏までに稼働したのは1割強ほどにとどまっているからだ。自ら発電設備を設置する気がなく、認定枠の転売を狙ったブローカーやパネルの値下がりを待っている業者が多く、認定枠が単に利権化している実態がうかがえる。

 一因は、買い取り認定の条件が当初は緩かったことにある。買い取り対象に認定するか審査する際、土地の権利を確認する書類の提出すら昨年12月まで義務づけていなかった。ある経産省幹部は「参入者を増やし、太陽光など再エネの普及スピードを上げたかった」と説明するが、放置していては制度の信用すら揺らぎかねない事態に陥っている。

 今までも、経産省は認定を得るために必要な書類を増やしたり、買い取り価格を引き下げたりして巡航速度に落ち着かせようとしてきた。しかし、それでもバブルはコントロールできない。省内では、こんな議論まで出てきている。

 「年明けにも取り消し処分を出すことになるかもしれない」

 いったん買い取り対象と認定した計画も、場合によっては、認定を取り上げる――。許認可権を握る官庁として、伝家の宝刀を抜くというのだ。事実、経産省は周到に準備を進めてきた。

 「太陽電池モジュールのメーカー等と売買契約が締結されているか」

 「(発電事業を行う)土地や建物の権利を取得した日はいつなのか」

 こんな質問が並んだ調査票が、太陽光発電の買い取り認定を受けた事業者に送られてきたのは今秋。A4判で7ページあり、計画の実現性を尋ねる質問が並んでいた。差出人は経産省だった。

■バブル退治の前に売り抜けも

 あるエネ庁の幹部は、この調査票について「調査票の送付先は、出力400キロワット以上の買い取り認定を受けながら、未着工の案件を抱えている事業者。その数は数千になる」と説明する。回答しなかったり、虚偽の記載をしたりした場合は罰則を科すこともあるという。買い取り認定を得ながら着工しない事業者に対し、経産省の目は一気に厳しくなりつつある。

 実際に稼働している発電所が少ないという理由だけではない。発電所の土地取引を巡って異常な事態を太陽光バブルが引き起こしつつあるからだ。

 太陽光発電所の土地取引を担うブローカーのA社。そのホームページには、多くの発電所建設の候補地が並んでいる。なかには、買い取り額40円の認定を受けた「優良物件」であることをアピールした土地もある。

 A社とは別のブローカー幹部によると、「実際につくらなくてもいい、『太陽光発電に最適な土地』を転売できればいい、という事業者が増えている。まともなビジネスをしているとは思えない人が関わっている場合もある」という。

 1980年代後半から日本が踊ったバブル経済の時代。都市部では、「再開発します」とうたって土地を占有しておきながら実際には自ら開発せず、土地取引で稼ぐ不動産会社が続出した。それに似たケースが太陽光発電の世界で広がっているのだ。

 なかには、「バブルつぶし」に出ようとする経産省の意図を先読みして動く狡猾な事業者もいるという。ある金融系投資会社の幹部は、こう解説する。

 「皮肉にも、経産省が調査を始めると分かってから、40円で買い取り認定を受けた土地を売りに出す事業者が出てきている。そういう人たちは、そもそも最初から自分で発電所をつくるつもりがなく、買い取り認定付きの土地を高値で売れるうちに売りたいだけだった」

 一方で、「悪質な事業者ばかりではない。進めたくても進められないケースも多い」という声もある。東海地方で太陽光発電所の工事を展開するライフ空調システム代表取締役の半谷浩司は、「変電所の容量不足から、太陽光発電所の送電網へのつなぎ込みを電力会社から拒否されるケースが増えている」と話す。予定の工事が急きょ中止になるケースも出ている。

■「太陽光離れ」を公然と

 事業を進めたいのに進められないのか。それとも、買い取り認定がついた土地の転売が目的なのか――。たった7ページの経産省の調査票で判断することは難しい。

 11月18日、経産省本館の一室で開かれた総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会。将来の「エネルギー基本計画」を話し合う席上で、省エネルギー・新エネルギー部長の木村陽一は、居並ぶ有識者を前に「伸ばしていかなければならないのは風力と地熱」と断言した。省内からも、「太陽光離れ」を公然と訴える声が出てきている。

 買い取り制度の導入からわずか1年半で狂った太陽光発電の普及シナリオ。出力にして原発およそ18基分に相当する約1800万キロワットの太陽光発電の計画が宙に浮いたまま、「3.11」後のエネルギー政策の論議が続いている。

=敬称略

(宇野沢晋一郎、平本信敬)

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