チェスの天才経済学者が語る恐怖のシナリオ ― 2008/09/27 16:53
先月8月19日にシンガポールで行われた金融関連のコンファレンス。
その席上でこんなことを発言した著名な米国人経済学者がいます。
「米経済は危機を脱していない。金融危機はまだ中間点。最悪の局面はこれから訪れるだろう。」
「今後数ヶ月以内に中規模の銀行が破綻するだけではすまない。大手投資銀行あるいは大手銀行の一つが破綻するだろう。」
この発言から約1ヵ月後の9月15日。
投資銀行第4位のリーマン・ブラザーズが破綻。
同日、銀行2位のバンク・オブ・アメリカが投資銀行3位のメリルリンチを救済合併すると発表。
9月22日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、投資銀行2位のモルガン・スタンレーに最大9000億円を出資することで合意。
9月24日、投資銀行1位のゴールドマン・サックス・グループが、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイから50億ドルの出資を受けると発表。
すでにこの時点で投資銀行の業態そのものが事実上米国から消えたも同然。
さらに9月25日、銀行6位の米貯蓄金融機関(S&L)最大手、ワシントン・ミューチュアル(WaMu)が破綻。銀行2位のJPモルガン・チェースがWaMuの銀行業務と店舗網を即日買収し、全預金を引き継ぎます。
そして、9月27日現在、銀行4位のワコビアが身売りの検討に入り、銀行1位のシティグループ、銀行5位のウェルズ・ファーゴ、スペインの大手銀行サンタンデール銀行などと合併交渉を行っている模様。
こうした緊急事態の中、7000億ドル規模の公的資金による救済を柱とする金融安定化法案をめぐって、米上下両院は選挙休会入りを延期し、28日夜までの合意を目指して大詰めの協議を続けています。
この金融安定化法案は、先程行われた共和党候補ジョン・マケイン上院議員と民主党候補バラク・オバマ上院議員の1回目討論会でも主要議題になりました。
経済学者が指摘した大手銀行の破綻とはWaMuのことだったのでしょうか?
私は他にあると睨んでいます。シティグループの動向がとても気になる。
さて、1ヶ月前にこの米国メルトダウンを明言していた経済学者は、その後も英国メディアを通じて警告を発し続けています。その発言内容が実に恐ろしい。
私が「今こそチャンス」と考えている日本企業に対して、「こういう時はあまり調子に乗らない方がいいと思いますけどね」と書いたのも、この内容を知っていたからです。
その発言内容とは。
「米国には1兆ドルの緊急援助が必要」
「米国の金融安定化法案は厄介な問題を引き起こす。信用問題は米国経済全体に拡散し、自動車業界や学生ローンや商業不動産にまで波及するだろう。」
「米国のリセッションは全く特別なもの。しかも2年間に及ぶ危険性がある。」
現在マケイン候補の政策アドバイザーも務めているこの経済学者の発言は、いずれも緻密な計算に裏付けされたものと受け取るべきでしょう。
なんといってもこの経済学者は6歳から始めたチェスの天才としても世界的有名人なのです。そして現在はインターナショナル・グランドマスター。
しかも、この経済学者の頭の中には、日本の金融危機データも詳細にインプットされています。
日本メディアがほとんど取り上げてこなかったこの経済学者の名前は、ケネス・ロゴフ(Kenneth Rogoff)といいます。
(つづく)
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