日経も「リアリスト・大久保利通」待望論=明治の礎を築いた大久保利通のような指導者がいなければ「維新」は所詮夢物語 ― 2012/03/04 10:01
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維新の国政進出に思う(風見鶏)
2012/03/04 日本経済新聞 朝刊
「何も決められない政治」の停滞が続き、地域政党「大阪維新の会」を率いる橋下徹大阪市長の存在感ばかりが高まる――。そんな構図がすっかり定着した。
桁外れの人気だ。維新政治塾には3300人余りが応募。2262人が1次選考を通り、24日に開講式が行われる。次期衆院選に300人擁立し、200人の当選を目指すという。民主、自民の二大政党に対抗する第三極の中心勢力になるのは確実な情勢だ。
塾生が対象になる候補者選びはこれからで、どこまで議席をとれるのかとなると見方は様々。「大ブームを起こすのでは」と警戒する現職議員は少なくない。一方で、候補者公募などに携わってきた各党の実務者は割と冷めた見方を示す。
ある民主党議員は「経験上、いい候補者はそんなにそろわない。せいぜい50人だ。50人当選したらすごいが、そこまではいかないだろう」と指摘する。別の党の選挙担当者もこう語る。「資金面の問題もある。衆院選は供託金を含めて最低でも1500万円はかかる。候補者の負担なら、出馬できる人は激減する」
維新の会は近く衆院選に向けた政策集「維新八策」の骨子を発表する。たたき台を見る限り、選挙公約なのか、党の基本政策なのか判然としない印象だ。
民主党のマニフェスト(政権公約)を反面教師にして、数値目標は盛り込まないようだが、ある程度の工程表は必要だろう。道州制のように、4年間の任期中には実現困難な政策も含まれているからだ。
憲法改正を巡っては改正要件の緩和のほかに、首相公選制や参院の廃止を視野に入れた抜本改革を盛り込んでいる。これも時間のかかるテーマだが、亀の歩みの憲法改正論議に一石を投じた意義はある。
もっとていねいに説明してほしいのは社会保障や地方税財政など、予算編成などにすぐかかわる分野だ。例えば年金政策が挙げられる。積み立てと掛け捨てを併用する新年金制度の具体案も知りたいが、その前に「現行の年金制度はいったん清算」というだけではあまりに説明不足だろう。
現在の年金支給をやめるのか、納めた保険料はどうなるのか、新制度にどう切り替えるのか。疑問は尽きない。今の年金制度をリセットする覚悟をいきなり求められても、有権者は困惑する。項目を並べるだけでは、いざ政権についたときに、民主党の年金改革の混迷を繰り返す恐れがある。
維新の会の国政進出で解せないのは、党首(代表)の橋下氏が国政に出ないと明言していることだ。
大阪府知事から転じたばかりの大阪市長職を投げ出して、次期衆院選に出馬すれば厳しい批判は避けられない。それは確かだが、国政に本格進出するのに、橋下氏が出馬しない方がもっと無責任ではないか。
橋下氏は維新の会の顔であり、記者会見やツイッターでの発信力は群を抜く。維新八策も橋下氏を中心に想を練っていると聞く。最高実力者が大阪に残ったまま、国会対応などを指揮するのはいかにも不自然だ。
橋下氏が不出馬の場合「グレートリセット」と呼ぶ壮大な改革を、誰がリーダーとして実行するのか。友好関係にあるみんなの党の渡辺喜美代表か、石原慎太郎東京都知事か、まさかの小沢一郎・元民主党代表か……。いずれも胸にすとんと落ちないし、塾生から選ぶわけにもいくまい。
本当に出馬しないなら、橋下氏は誰に国政のかじ取りを託すのかを示す責任があると思う。明治の礎を築いた大久保利通のような指導者がいなければ「維新」は所詮、夢物語である。(編集委員 西田睦美)
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