デフレ脱却に潜む落とし穴、長期金利上昇リスクに身構える日銀 ― 2012/03/23 07:42
日銀・白川方明総裁
国民の物価観から離れた上昇率をめざせば、家計や企業が大きな不確実性に直面し、「長期金利の上昇を招き、金融機関経営、日本経済全体に悪影響がおよぶ可能性がある」
日銀・森本宜久審議委員
「国民の物価観から離れ、一気にこれまであまり経験していない物価上昇率を目指そうとすれば、家計や企業はかえって大きな不確実性に直面し、長期金利の上昇を招く恐れもないわけではない」
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UPDATE1: 成長力強化など実現すれば、めざすCPI上昇率も高まる可能性=白川日銀総裁
2012年 03月 22日 16:04 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK076297220120322
[東京 22日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は22日午後の参院財政金融委員会で、日銀が消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率で1%をめざして政策運営していることに関連し、今後、日本の成長力の強化が実現すれば、持続的な物価上昇率が高まる可能性がある、と指摘。そうしたことも念頭に、めざすCPI上昇率を見直していく考えを示した。大久保勉委員(民主)の質問に答えた。
白川総裁は、めざすCPI上昇率を1%としていることについて、日本の物価上昇率はバブル期を含めて1980年代以降、一貫して米欧諸国よりも低い状態が続いているとし、「物価が安定していると家計や企業が考える上昇率は、米欧よりもいく分低い」と説明。国民の物価観から離れた上昇率をめざせば、家計や企業が大きな不確実性に直面し、「長期金利の上昇を招き、金融機関経営、日本経済全体に悪影響がおよぶ可能性がある」と指摘した。
一方、将来的には日本経済の構造変化などで、「持続可能な物価安定と整合的な物価上昇率が変化する可能性を意識している」と指摘。今後、官民の成長力強化への取り組みなどが実現すれば、「持続的な物価上昇率が次第に高まっていく可能性がある」と述べ、日銀として「そうした可能性を十分に念頭に置いて、めざすべき物価上昇率を1年毎に点検していく」とした。
また、白川総裁は、デフレ脱却と持続的な経済成長への復帰が日銀の重要な政策課題とし、その実現に「全力を尽くしており、これからも全力を尽くす」と強調。その上で、デフレ脱却は、成長力の強化と金融面からの下支えで初めて実現すると繰り返した。日銀による国債買い入れは、財政ファイナンスを目的としたものではないことも、あらためて指摘した。
一方、金融機関の国債保有量が増加している中で、仮にすべての期間の金利が一律に1%上昇した場合、2011年9月末時点で大手行で3.5兆円、地域銀行で2.8兆円の損失が発生すると指摘。2%なら大手行で7.1兆円、地域銀行で5.7兆円に損失が膨らむと語った。
藤田幸久財務副大臣によると、3月21日時点で残存5年以上の国債発行額は約300兆円で、時価にすると317兆円になる。同期間の国債利回りが一律に1%上昇した場合は33兆円、2%上昇なら62兆円のそれぞれが損失が発生すると語った。
国債などの金利2%上昇→銀行の損失12兆円 日銀試算
http://www.asahi.com/business/update/0322/TKY201203220456.html
日本銀行の白川方明(まさあき)総裁は22日の国会答弁で、国債などの債券の金利がいまの水準から2%幅上がると、国内の銀行がもつ債券が12兆8千億円値下がりし、損失を被るおそれがあるとの試算を明らかにした。大手銀行で計7兆1千億円、地方銀行で計5兆7千億円の値下がりになるという。
日銀が大手銀行(12行・ゆうちょ銀行や外資系銀行を除く)と地方銀行(105行)が昨年9月末時点で持つ国債など債券の保有状況をもとに試算した。
10兆円の追加緩和、財政ファイナンスではない=森本日銀委員
2012年 03月 22日 15:42 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE82L04720120322
[神戸 22日 ロイター] 日銀の森本宜久審議委員は22日、神戸市で記者会見し、資産買入基金による長期国債買い入れは、恒常的な国債買い入れとはバランスシート上で分別管理しているため、財政ファイナンスではないとの見解をあらためて繰り返した。
日銀は2月の追加緩和で基金による長期国債の買い入れ限度額を10兆円増額。この結果、年率約40兆円と年間の国債発行額に近い水準の買い入れを行う計画となっている。日銀の買い入れが財政ファイナンスと見なされれば、市場で国債への信認が崩れるリスクをはらむ。
森本委員は、日銀の買い入れが財政ファナンスではない根拠を問われ、「基金による買い入れは長めの市場金利に働きかけることを目的として実施しており、基金はバランスシート上透明性をもって分別管理されている」と説明。財政ファイナンス懸念を払しょくするため、お札(日銀券)の発行残高を天井としている恒常的な国債買い入れとは別枠であることが財政ファイナンスではない根拠、との見解を強調した。
基金による買い入れと恒常的買い入れの予定額を「たまたま足し算すると確かに40兆というすごい金額になるが、今回増額した10兆円は、しっかり基金として別管理しているとの性格を理解してほしい」と訴えた。
欧州ソブリン問題については、欧州中央銀行(ECB)による資金供給で「(確率は小さいが影響が甚大な)テールリスクは後退しており、ある程度落ち着いてきている状態にある」と指摘。「ギリシャに対する第2次金融支援が正式に決定したことで、一定の時間は確保される見通しになっている」と述べた。
2月に打ち出した事実上のインフレ目標である1%の上昇率が低過ぎるとの見方が一部に根強いなか、「国民の物価観から離れ、一気にこれまであまり経験していない物価上昇率を目指そうとすれば、家計や企業はかえって大きな不確実性に直面し、長期金利の上昇を招く恐れもないわけではない」と警告した。
現在の原油高については、地政学リスクに加え金融緩和も影響していると指摘。原油価格の上昇が日本経済の下押しに大きな影響を与えることは間違いない、と述べた。日銀では毎月の金融政策決定会合でその都度イラン情勢をしっかり点検する、と強調した。
2012年3月22日 13時30分 更新
デフレ脱却は「最重要」、原油高などにも目配り=森本日銀審議委員
http://jp.ibtimes.com/articles/28265/20120322/1332358225.htm
日銀の森本宜久審議委員は22日、神戸での講演で「デフレから脱却し物価安定のもとでの持続的成長経路に復すことが最重要課題」としつつ、原油急騰の可能性などに目配りする必要性について随所で指摘。
強力な金融緩和を進める方針である一方、金融緩和が引き起こすインフレリスクや、長期金利の上昇リスクにも目配りしている印象を与えた。
森本委員は講演後の記者会見でも、現在の原油価格上昇は「地政学リスクに金融緩和も影響している」、原油価格の上昇が「日本経済の下押しに大きな影響与えるのは間違いない」と述べ、日本を含めた先進国による金融緩和が商品市況を通じ自国に悪影響を与えうる点を指摘した。
また2月に日銀が初めて打ち出した事実上のインフレ目標である「物価安定の目途」とされる物価上昇率(1%)が低すぎるとの批判に対して、「国民の物価観から離れ一気にこれまであまり経験していない物価上昇率を目指そうとすれば家計や企業は、却って大きな不確実性に直面し、長期金利の上昇を招く恐れもないわけではない」と反論。高めの物価上昇率を目標に掲げることでデフレ脱却を急ぐことの副作用を警戒した。
日銀は現在の基金による包括緩和政策を打ち出した2010年10月以降、デフレ脱却のため強力な金融緩和を進めると同時にバブル発生など金融面での不均衡の芽を摘む意思も示し続けており、日銀の政策運営姿勢に基本的な変化はない。
しかし、欧州中央銀行による大量の流動性供給で欧州ソブリン問題の緊張度がやや緩み、仮に世界経済が順調に回復経路をたどるのであれば、リーマンショック後の危機対応として先進国が進めてきた金融緩和が商品市況の高騰をもたらし、物価を上昇させる可能性がある。実際、ブラジルのルセフ大統領は今月はじめ先進国の金融緩和について「不公平な競争条件を作り出す為替政策であり、マネーの津波」と批判した。
日銀は2月の「目途」導入と追加緩和でデフレ脱却に向け一段と強力な金融緩和を進める姿勢を示したばかりだが、今後の具体的な政策運営では極めて絶妙なバランス感覚が求められることになりそうだ。
「全原発停止なら経済に影響」 日銀の森本審議委員
2012/3/22 18:49
http://s.nikkei.com/GMcO2N
日銀の森本宜久審議委員は22日、神戸市内で講演し、国内の原子力発電所がすべて停止した場合は「夏場のピーク需要時の電力需給が厳しくなり、経済活動に影響を与える可能性がある」と指摘した。記者会見では「電力供給の不確実性や火力発電への依存が高まると、輸出や生産だけでなく経済活動全体にマイナスの影響が及ぶ」との見方も示した。
原油価格の上昇を巡っては「イランの地政学リスクに加え、金融緩和も影響している」と分析。原油高が日本経済の回復シナリオに与える影響は「イラン情勢をその段階ごとに点検していく。今は原油価格は強含みで動いているが、従来よりも注視していかなければならない」と述べた。
森本氏は東京電力出身で、エネルギー・電力問題に詳しい。
ドル78円半ば、海外勢の円売りと本邦勢の円買いの綱引き
http://jp.reuters.com/article/JPbusinessmarket/idJPTYE81K3QD20120215
「日銀はそもそもFRBやECBに先んじて時間軸を打ち出し、量的緩和を実践してきたが、日本の政治家の目にはなぜかFRBばかりが積極的で、日銀はなにもしていないと映ったらしい」と東海東京証券のチーフエコノミスト斎藤満氏は言う。
日銀の資産は昨年末で143兆円(GDP比30%)で、20%強のECBやFRBの19%を大きく凌駕する。
日本の場合は「当面」1%を目標としているが、「市場がこれを評価し、期待インフレ率が1%で実質金利が1%という正常化に向かうと、長期金利は2%に向かって上昇する。『当面』が外れて日本も2%インフレを目指すと、さらに金利上昇が大幅となり、国債を大量に保有する金融機関は大規模な評価損を、財政当局は大きな金利負担に直面することになる」と斎藤氏は述べ、「皮肉にも、行き過ぎた金融緩和が結果的に日本の財政を圧迫することになる」と予想する。
<画像引用>
政策委員会審議委員:森本宜久(もりもとよしひさ) :日本銀行 Bank of Japan
http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_morimoto.htm/
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