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ミサイル防衛とネオコン洗脳2009/03/26 09:04

パトリック・オライリー(LIEUTENANT GENERAL PATRICK J. O’REILLY)


「鉄砲の弾で鉄砲の弾を撃つようなものだ。当たるわけない」

記者団との懇談の席でこのミサイル防衛(MD)見解を披露したのは、
麻生太郎首相の側近中の側近である鴻池祥肇官房副長官だったようです。

さすがに麻生さんも「つまらんことを言うんじゃない。緊張感が足りないんじゃないか」と叱ったとか。

とはいえ、政界には鴻池官房副長官同様の見解を持っている方がかなりいるような気配。

それでも日本政府は3月27日に安全保障会議を経て「破壊措置命令」発令へ。
この「破壊措置命令」は北朝鮮のみならず米国へのプレッシャーが狙いではないかと。

<日本から米国へのメッセージ>
オバマさん、間違って日本の落下するようなことになると本当に迎撃しちゃうよ。
迎撃して失敗したら、MDビジネスまでピンチ。
だからさ、すでに発射台に設置された「テポドン2号」を発射前になんとかしてよね。
空爆が一番確実じゃないかなぁ。
この際米国が迎撃やってくれてもいいよ。

こうした日米間の動きに備えて、
北は拘束中のアル・ゴア元米副大統領の部下である女性記者2人を発射基地に移送中?

さて、ここで思わぬ落とし穴が。
実はオバマ政権はブッシュ政権と違ってMDビジネスにあまり興味がない。

<オバマ政権の日本への回答>
あのさ、今はブッシュ政権ではなくオバマ政権なの!
もうMDやめてもいいと思っているんだ。
だから、この際失敗してもいいよ。
失敗してくれたら、すっきりやめられるもん。
(実際にはやめないとは思いますが・・・)

この予想外の展開を産経新聞さんの記事から見ていきましょう。

▼引用開始

米国防総省、北朝鮮ミサイル迎撃に自信
2009.2.26 23:44
http://sankei.jp.msn.com/world/america/090226/amr0902262345025-n1.htm

 【ワシントン=有元隆志】米国防総省のオライリー・ミサイル防衛局長(陸軍中将)は25日の下院軍事委小委員会公聴会で証言し、北朝鮮の弾道ミサイル発射への対応について、過去に北朝鮮のミサイルを想定した実験を繰り返してきたことを挙げ、迎撃に自信を示した。同局長は多くの迎撃ミサイルを配備しており、北朝鮮が弾道ミサイルを発射しても打ち落とせる確率が高まっていると指摘した。

 オライリー局長によると、同省は昨年12月をはじめこれまで3回、米本土まで到達するとみられている北朝鮮の長距離弾道ミサイル「テポドン2号」を想定した実験を実施した。

 また、国防総省のモレル報道官は25日の記者会見で、北朝鮮がミサイル発射などの挑発行動に出た場合について「われわれは多くの不測の事態を想定した計画を持っており、挑発への準備は十分できている」と強調した。ロイター通信によると、中央情報局(CIA)のパネッタ長官も25日、北朝鮮による弾道ミサイル発射に備えて、監視活動を行っていると述べた。

 国防総省は北朝鮮やイランが米本土を射程に収める長距離ミサイルを保有した場合に備え、ミサイル防衛網の整備に努めてきた。アラスカ州とカリフォルニア州に地上配備型の迎撃ミサイルを20基以上配備している。ミサイル防衛局ではミサイル数をさらに増やす計画を進めているが、国防予算削減の影響を受ける可能性が予想されている。

▲引用終了

米ミサイル防衛の中枢機関は国防総省のミサイル防衛局(Missile Defense Agency;MDA)。

このMDAの局長はパトリック・オライリー(LIEUTENANT GENERAL PATRICK J. O’REILLY)。

このオライリーは先月25日の下院軍事委小委員会公聴会で何と言ったのか。
実は産経さんの記事は重要な点が抜け落ちているのです。

確かに「テポドン2号」を想定した実験をこれまでに3回実施しているのですが、
オライリーはこの実験が「限定的かつ初期段階のもの」であったことを認めています。
あくまでも限定的かつ初期段階な実験で成功しただけで迎撃可能と言った。
これでは説得力がありません。

外交問題評議会(CFR)までもがミサイル防衛(MD)再考論を取り上げたのは、
これまで実験ですら十分に行われていなかったために、
ミサイル防衛の効果は立証できていないとの見方が強くなっているから。

米国ではすでにブッシュの「ミサイル防衛」からオバマの「グリーン」へ大転換。
いずれも怪しげなものですが、
これまでの発言からオバマ本人がミサイル防衛を疑っていることは明らか。

それでも日本にはミサイル防衛信者が大勢いる。
米国がオバマ政権に変わったことを認識できていない。
またミサイル防衛を蘇らせたネオコンの洗脳が解けていないからでしょう。

あとは日本に落下しないことを祈るのみですね。

<関連記事>

U.S. intercepted N. Korean missiles three times in scenarios: Pentagon
By Hwang Doo-hyong
http://english.yonhapnews.co.kr/national/2009/02/26/46/0301000000AEN20090226004200315F.HTML

"Based on the scenarios that we've tested three times, although it's limited and it's in the beginning, those scenarios overlay a launch from North Korea and a response out of Alaska," Gen. Patrick O'Reilly, director of the Missile Defense Agency of the U.S. Department of Defense, told a hearing of the House Armed Services Committee's Strategic Forces Subcommittee.

※米軍産インナー・サークルとネオコンとミサイル防衛(MD)の関係については、
拙著「最新・アメリカの政治地図」を参照下さい。