山陽新聞社説に宮脇昭氏提唱の『みどりの強靱化』 ― 2013/05/11 03:13
社説 みどりの日 多様な木の力生かしたい
2013/05/04 山陽新聞朝刊15版 2ページ
街を歩けば、公園や街路の樹木に若葉が茂り、生気が感じられるようになった。遠くに目をやれば、山の木々が陽光を受けて輝いている。新緑のまぶしい季節である。
心身をなごませてくれる自然の緑だが、最近は公共施設などの建造物でも木材の活用が目につくようになった。身近な例としては、多くの人が利用するJR岡山駅の西口広場がある。3年前に整備が完了したが、2階部分の大屋根をはじめ随所に木材が使われている。明るく、ぬくもりのある県都の玄関口に生まれ変わった。
各地の学校や公民館などでも木材を活用した建物の建設が相次いでいる。背景には2010年に公共建築物木材利用促進法が施行されたことがある。同法は、低迷する林業の振興や森林整備、木材の自給率向上などを狙いに、政府が低層の公共施設を建てる場合は木造にするよう明記し、自治体に対しても「木材利用方針」をそれぞれ定め、庁舎などを木造にするよう求めている。
林野庁のまとめでは、木材利用方針を策定済みの市区町村は1013(3月21日時点)で、全体の58%だった。岡山など12県は全市町村が完了していた。岡山県は促進法制定以前から県産材の需要拡大を進めてきた。促進法ができたことで国を挙げた取り組みとなり、広がりを見せているようだ。
働き手の高齢化や担い手不足が深刻な林業の活性化には、木材の需要拡大が欠かせない。民間レベルでの木材利用の促進を図っていくうえでも、国や自治体の先導的な試みが必要である。
震災復興でも緑を生かした注目の活動がある。がれきを埋めた盛り土に、木を植えて“森の防潮堤”を造る「瓦礫(がれき)を活(い)かす森の長城プロジェクト」だ。高梁市出身の植物生態学者、宮脇昭氏が提唱し、昨年5月に活動の主体となる公益財団法人を立ち上げた。
さる2日には被災した仙台市若林区荒浜で地元住民ら400人が参加し、タブノキやシラカシなどの苗木3500本を植えた。土地本来の多様な樹種を混植してできた森が災害に強いことは阪神大震災や今回の震災でも確認されたという。10年間で東北地方に300キロの森づくりを目指している。
宮脇氏は近著「森の力」(講談社現代新書)で訴えている。「緑の生命力と再生力を活用した市民参加・市民主役の『みどりの強靱(きょうじん)化』という開かれた公共事業モデルを新たに提案します」と。これにバイオマスなども組み合わせることによって「みどりの雇用」を創出でき、林業再生にも役立つとする。南海トラフ地震への防災・減災対策としても検討してみてはどうか。
きょうは「みどりの日」。暮らしに潤いを与え、国土保全から地球温暖化防止にまで資する緑の多様な機能に、もっと目を向けるべきである。
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