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中国睨んだ地政学ゲームとして眺めるTPP2013/03/16 08:34

中国睨んだ地政学ゲームとして眺めるTPP


それぞれの国益が入り乱れ、実現不可能と予測しているTPP。
しかも、主導はリストラ候補のUSTR。これではまとまるものもまとまらない。

それでも中国に睨んだ地政学ゲームと割り切れば、プレーヤーであることが大事。
従って、交渉参加の価値はある。

安倍首相は露骨に中国を意識させる作戦を披露。
それは「自由、民主主義、基本的人権、法の支配」と「安全保障」言及に表れている。

「TPP交渉参加を表明できたのは、中国のおかげ」とも言えるだろう。
ならば、中国への感謝の気持ちを忘れずに♪


<関連記事>

平成25年3月15日
安倍内閣総理大臣記者会見 (画像引用)
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0315kaiken.html

【安倍総理冒頭発言】

 本日、TPP/環太平洋パートナーシップ協定に向けた交渉に参加する決断をいたしました。その旨、交渉参加国に通知をいたします。

 国論を二分するこの問題について、私自身、数多くの様々な御意見を承ってまいりました。そうした御意見を十分に吟味した上で、本日の決断に至りました。なぜ私が参加するという判断をしたのか、そのことを国民の皆様に御説明をいたします。

 今、地球表面の3分の1を占め、世界最大の海である太平洋がTPPにより、一つの巨大な経済圏の内海になろうとしています。TPP交渉には、太平洋を取り囲む11か国が参加をしています。TPPが目指すものは、太平洋を自由に、モノやサービス、投資などが行き交う海とすることです。世界経済の約3分の1を占める大きな経済圏が生まれつつあります。

 いまだ占領下にあった昭和24年。焼け野原を前に、戦後最初の通商白書はこう訴えました。「通商の振興なくしては、経済の自立は望み得べくもない」。その決意の下に、我が国は自由貿易体制の下で、繁栄をつかむ道を選択したのであります。1955年、アジアの中でいち早く、世界の自由貿易を推進するGATTに加入しました。輸出を拡大し、日本経済は20年間で20倍もの驚くべき成長を遂げました。1968年には、アメリカに次ぐ、世界第2位の経済大国となりました。

 そして今、日本は大きな壁にぶつかっています。少子高齢化。長引くデフレ。我が国もいつしか内向き志向が強まってしまったのではないでしょうか。その間に、世界の国々は、海外の成長を取り込むべく、開放経済へとダイナミックに舵を切っています。アメリカと欧州は、お互いの経済連携協定の交渉に向けて動き出しました。韓国もアメリカやEUと自由貿易協定を結ぶなど、アジアの新興国も次々と開放経済へと転換をしています。日本だけが内向きになってしまったら、成長の可能性もありません。企業もそんな日本に投資することはないでしょう。優秀な人材も集まりません。

 TPPはアジア・太平洋の「未来の繁栄」を約束する枠組みです。

 関税撤廃した場合の経済効果については、今後、省庁ばらばらではなく、政府一体で取り組んでいくための一つの土台として試算を行いました。全ての関税をゼロとした前提を置いた場合でも、我が国経済には、全体としてプラスの効果が見込まれています。

 この試算では、農林水産物の生産は減少することを見込んでいます。しかしこれは、関税は全て即時撤廃し、国内対策は前提としないという極めて単純化された仮定での計算によるものです。実際には、今後の交渉によって我が国のセンシティブ品目への特別な配慮など、あらゆる努力により、悪影響を最小限にとどめることは当然のことです。

 今回の試算に含まれなかったプラスの効果も想定されます。世界経済の3分の1を占める経済圏と連結することによる投資の活性化などの効果も、更に吟味をしていく必要があります。

 詳細については、TPPに関する総合調整を担当させることにした甘利大臣から後ほど説明させます。

 TPPの意義は、我が国への経済効果だけにとどまりません。日本が同盟国である米国とともに、新しい経済圏をつくります。そして、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々が加わります。こうした国々と共に、アジア太平洋地域における新たなルールをつくり上げていくことは、日本の国益となるだけではなくて、必ずや世界に繁栄をもたらすものと確信をしております。

 さらに、共通の経済秩序の下に、こうした国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にとっても、また、アジア・太平洋地域の安定にも大きく寄与することは間違いありません。

 日本と米国という二つの経済大国が参画してつくられる新たな経済秩序は、単にTPPの中だけのルールにはとどまらないでしょう。その先にある東アジア地域包括的経済連携/RCEPや、もっと大きな構想であるアジア太平洋自由貿易圏/FTAAPにおいて、ルールづくりのたたき台となるはずです。

 今がラストチャンスです。この機会を逃すということは、すなわち、日本が世界のルールづくりから取り残されることにほかなりません。「TPPがアジア・太平洋の世紀の幕開けとなった」。後世の歴史家はそう評価するに違いありません。アジア太平洋の世紀。その中心に日本は存在しなければなりません。TPPへの交渉参加はまさに国家百年の計であると私は信じます。

 残念ながら、TPP交渉は既に開始から2年が経過しています。既に合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がそれをひっくり返すことが難しいのは、厳然たる事実です。残されている時間は決して長くありません。だからこそ、1日も早く交渉に参加しなければならないと私は考えました。

 日本は世界第3位の経済大国です。一旦交渉に参加すれば必ず重要なプレイヤーとして、新たなルールづくりをリードしていくことができると私は確信をしております。

 一方で、TPPに様々な懸念を抱く方々がいらっしゃるのは当然です。だからこそ先の衆議院選挙で、私たち自由民主党は、「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉参加に反対する」と明確にしました。そのほかにも国民皆保険制度を守るなど五つの判断基準を掲げています。私たちは国民との約束は必ず守ります。そのため、先般オバマ大統領と直接会談し、TPPは聖域なき関税撤廃を前提としないことを確認いたしました。そのほかの五つの判断基準についても交渉の中でしっかり守っていく決意です。

 交渉力を駆使し、我が国として守るべきものは守り、攻めるものは攻めていきます。国益にかなう最善の道を追求してまいります。

 最も大切な国益とは何か。日本には世界に誇るべき国柄があります。息を飲むほど美しい田園風景。日本には、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら五穀豊穣を祈る伝統があります。自助自立を基本としながら、不幸にして誰かが病に倒れれば村の人たちがみんなで助け合う農村文化。その中から生まれた世界に誇る国民皆保険制度を基礎とした社会保障制度。これらの国柄を私は断固として守ります。

 基幹的農業従事者の平均年齢は現在66歳です。20年間で10歳ほど上がりました。今の農業の姿は若い人たちの心を残念ながら惹き付けているとは言えません。耕作放棄地はこの20年間で約2倍に増えました。今や埼玉県全体とほぼ同じ規模です。このまま放置すれば、農村を守り、美しいふるさとを守ることはできません。これらはTPPに参加していない今でも既に目の前で起きている現実です。若者たちが将来に夢を持てるような強くて豊かな農業、農村を取り戻さなければなりません。

 日本には四季の移ろいの中できめ細やかに育てられた農産物があります。豊かになりつつある世界において、おいしくて安全な日本の農産物の人気が高まることは間違いありません。

 大分県特産の甘い日田梨は、台湾に向けて現地産の5倍という高い値段にもかかわらず、輸出されています。北海道では雪国の特徴を活かしたお米で、輸出を5年間で8倍に増やした例もあります。攻めの農業政策により農林水産業の競争力を高め、輸出拡大を進めることで成長産業にしてまいります。そのためにもTPPはピンチではなく、むしろ大きなチャンスであります。

 その一方で、中山間地などの条件不利地域に対する施策を、更に充実させることも当然のことです。東日本大震災からの復興への配慮も欠かせません。

 農家の皆さん、TPPに参加すると日本の農業は崩壊してしまうのではないか、そういう切実な不安の声を、これまで数多く伺ってきました。私は、皆さんの不安や懸念をしっかり心に刻んで交渉に臨んでまいります。あらゆる努力によって、日本の「農」を守り、「食」を守ることをここにお約束をします。

 関税自主権を失ってしまうのではないかという指摘もあります。しかし、TPPは全ての参加国が交渉結果に基づいて関税を削減するものであって、日本だけが一方的に関税を削減するものではありません。そのほかにも様々な懸念の声を耳にします。交渉を通じ、こうした御意見にもしっかり対応していきます。そのことを御理解いただくためにも、国民の皆様には、今後状況の進展に応じて、丁寧に情報提供していくことをお約束させていただきます。

 その上で、私たちが本当に恐れるべきは、過度の恐れをもって何もしないことではないでしょうか。前進することをためらう気持ち、それ自身です。私たちの次の世代、そのまた次の世代に、将来に希望を持てる「強い日本」を残していくために、共に前に進もうではありませんか。

 本日、私が決断したのは交渉への参加に過ぎません。まさに入口に立ったに過ぎないのであります。国益をかけた交渉はこれからです。私はお約束をします。日本の主権は断固として守り、交渉を通じて国益を踏まえて、最善の道を実現します。

 私からは、以上であります。



2013年2月27日(水)
きょうのプラス
国内問題に追われるアメリカ 日本にも影響が
http://www.nhk.or.jp/bizplus/history/2013/02/detail20130227.html

リスク分析専門家 イアン・ブレマー氏「中国の脅威がなければ日本はTPPの交渉参加に向けて、ここまで素早く動かなかっただろう。中国の安全保障上の脅威を踏まえれば、アメリカが主導するTPP交渉への参加こそが日本にとってリスクヘッジになるはずだ。一定の産業が打撃を受けるという意味で経済の観点からは難しい面もあるだろうが、日本が日米同盟を重視してTPP交渉への参加を決めれば、それは安全保障の観点からは理にかなっている。」 
 

金言:中国あってのTPP=西川恵
毎日新聞 2013年03月01日 東京朝刊
http://mainichi.jp/opinion/news/20130301ddm003070185000c.html
 
<kin−gon>
 
 安倍政権が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加に事実上こぎつけた。これについて「『Gゼロ』後の世界」(日本経済新聞出版社)の著者で米国の戦略研究家イアン・ブレマー氏が「中国がいたからこそ日本はTPPに参加できた」と先日、NHKテレビのインタビューで語っていた。私もそう思う。
 
 TPPが純粋に経済問題や国内問題としてしか認識されていなかったら交渉参加はもっと難しかっただろう。TPPは力の威圧を隠さなくなった中国に対するけん制とともに、アジアだけでなく太平洋地域にも日本の選択肢を広げておくという戦略的な安全保障の観点で認識されていたからこそ、事前の世論調査でも加盟賛成が反対を大きく上回っていたのではないか。この点で中国は交渉参加を後押しした陰の立役者である。
 
 いま日本人の安全保障観は急速に変わりつつある。もう少し正確に言うと皮膚感覚で安全保障とは何かを学びつつある。その教材となっているのが尖閣諸島だ。
 
 これまで日本人の多くは(私もその一人だが)、国土というものは「ここは日本の領土だ」と言っておれば保全されると考えていた。日本国憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」との文言に通じるこの理想主義的な考え方は、戦後長らく日本人の対外観を支配してきた。
 
 しかし近年の尖閣諸島をめぐる中国との確執は、一片の宣言で領土が保全されるほど甘くはないことを見せつけた。海上保安庁の巡視船は緊張のない平和時においてもローテーションを組んで離島海域を巡視し、不審船や異常をチェックしてきた。尖閣諸島問題で中国の漁業監視船の領海侵犯が常態化すれば、島への上陸や実効占拠を防ぐため、時に身をていした監視活動で領土を守っている。
 
 戦争の惨禍を経験した反動として日本社会は平和主義への志向が強いが、物理的な力を行使して領土を守ってきた現実が厳然としてある。平和時の巡視船の活動はニュースにもならなかったが、尖閣諸島問題は領土を守ることがどういうことかを具体的に世論に知らしめた。
 
 戦略的な安全保障観に立った考え方に少なからず日本人はアレルギーがあった。冷徹な現実政治(リアルポリティーク)を想起させるからだろうが、日本をとり巻く環境の変化はよりシビアな視点で地域や世界を見つめ直す必要性を我々に迫っている。この点においてTPP交渉参加は大きな流れに沿った選択だと私は思う。(専門編集委員)