「やくしま森祭り」があるならば・・・ ― 2012/11/01 06:24
縄文・弥生混血説を裏付け、斎藤成也教授「ベルツの説が101年後に最終的に証明された」 ― 2012/11/01 06:50
<関連記事>
縄文・弥生混血説を裏付け 日本人の遺伝子解析 (画像引用)
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201211010088.html
日本列島の先住民である縄文人と、朝鮮半島から渡ってきた弥生人とが混血を繰り返して現在の日本人になったとする「混血説」を裏付ける遺伝子解析の結果を、総合研究大学院大(神奈川県)などのチームがまとめ、日本人類遺伝学会が編集する1日付の国際専門誌電子版に発表した。
これまでも同様の研究結果はあったが、今回は1人当たり最大約90万カ所のDNA変異を解析し、結果の信頼性は非常に高いとしている。
チームはこれまで公開されている本土出身者(主に関東居住者)、中国人、欧米人など約460人分のDNAデータに、アイヌ民族と沖縄出身者の計71人分を新たに加えて解析した。その結果、アイヌ民族と遺伝的に最も近いのは沖縄出身者で、次が本土出身者と判明した。本土出身者は韓国人とも近かった。
この結果は、日本人全般が縄文人の遺伝子を受け継いでいる一方、本土出身者は弥生人との混血の度合いが大きく、混血しながら北海道や沖縄方面に広がっていったと解釈できるという。
日本人の起源は縄文人がそのまま各地の環境に適応した「変形説」、縄文人を弥生人が追い出して定着した「人種置換説」も知られているが、総研大の斎藤成也さいとう・なるや教授(遺伝学)は「研究結果は混血説のシナリオに一致した」と説明している。
チームは今後、縄文遺跡で見つかる人骨のDNAを分析するなどし、日本人のルーツの解明を進める。
アイヌ民族と沖縄の人、遺伝的な特徴に共通点 (画像引用)
縄文系と弥生系のDNAの分布
http://www.asahi.com/culture/update/1101/TKY201210310836.html
【波多野陽】北海道のアイヌ民族と沖縄の人たちは、遺伝的な特徴が似ていることが、国立遺伝学研究所などの解析でわかった。本州、九州などでは、縄文人と大陸から来た弥生人との混血がより進んだが、南北に離れた地域では縄文系の遺伝的特徴が多く残ったようだ。縄文人と弥生人の混血が日本人の起源とする説を、遺伝子レベルで裏付ける成果という。
遺伝研と東京大などは、DNAの中の1カ所の塩基だけが変異したSNP(スニップ)の特徴が、民族や地域などで違うことに着目。日本の本州などの人243人、アイヌ民族36人、沖縄の人35人と、中国人(北京の漢民族)などとSNP約90万カ所を比較した。アイヌ民族のDNAは約30年前に保存されていたものを分析した。
日本人:アイヌは琉球人と近縁 DNA配列の解析で判明
毎日新聞 2012年10月31日 21時46分(最終更新 10月31日 22時10分)
http://mainichi.jp/select/news/20121101k0000m040086000c.html
日本列島に住むヒトの集団の中では、北海道のアイヌは本土日本人よりも沖縄(琉球)人と近縁性が高いことを、総合研究大学院大学の斎藤成也教授らのチームがDNA配列の個人差を大規模解析して突き止めたと発表した。チームは最初に日本列島に移住していた縄文人と弥生時代に来た渡来人が混血を繰り返して現在の本土日本人が生まれ、北海道と沖縄の集団は渡来人の影響をほとんど受けなかったとする学説を裏付ける成果と主張。1日付の日本人類遺伝学会の英文誌電子版に掲載される。
日本に招かれたドイツの病理学者ベルツが1911年、アイヌと琉球人には身体的な共通点があることを指摘し、現在も議論が続いている。
チームは東京大学のグループが80年代に北海道平取町のアイヌから提供を受けた血液36人分や、沖縄で採取された琉球人の血液35人分に含まれるDNAを分析。すでに公開されている本土日本人243人のDNAのデータと合わせ、配列の個人差を1人あたり60万カ所程度比較した。その結果、アイヌと遺伝的に最も近いのは琉球人で、本土日本人はアイヌより琉球人や韓国人と近いことが分かったという。【斎藤広子】
アイヌ、琉球は縄文系=本土は弥生人との混血-日本人のDNA解析・総研大など
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012110100041
日本人を北海道のアイヌ、本土人、沖縄の琉球人の3集団に分けた場合、縄文人に起源があるアイヌと琉球人が近く、本土人は中国大陸から朝鮮半島経由で渡来した弥生人と縄文人との混血が進んだことが確認された。総合研究大学院大や国立遺伝学研究所(遺伝研)、東京大などの研究チームが、過去最大規模の細胞核DNA解析を行い、1日付の日本人類遺伝学会の英文誌電子版に発表した。
アイヌと琉球人が同系との説は、東大医学部の教官を務めたドイツ人ベルツが1911年に初めて論文発表した。頭骨の分析では、狩猟採集生活の縄文人は小さい丸顔で彫りが深く、約3000年前に渡来し稲作をもたらした弥生人は北方寒冷地に適応していたため、顔が平たく長い傾向がある。
総研大と遺伝研の斎藤成也教授は「ベルツの説が101年後に最終的に証明された。本土人は大ざっぱに言えば、縄文人2~3割と弥生人7~8割の混血ではないか。今後は縄文人のDNA解析で起源を探るほか、弥生時代に農耕が広がり人口が急増した時期を推定したい」と話している。(2012/11/01-02:19)
縄文・弥生のハイブリッドシステムを忘れるな
http://www.yorozubp.com/0506/050619.htm
日本列島の3人類集団(アイヌ人、本土人、琉球人)間およびそれらと他の人類集団との遺伝的近縁性を確定 ― 2012/11/03 07:43
<関連論文情報>
「日本列島3人類集団の遺伝的近縁性」
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20121101.pdf
1.発表者:
斎藤 成也(総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻 教授 兼任/
国立遺伝学研究所 集団遺伝研究部門 教授)
徳永 勝士(東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学専攻分野 教授)
尾本 惠市(東京大学大学院理学系研究科・理学部 名誉教授)
Timothy Jinam(国立遺伝学研究所人類遺伝学研究部門 博士研究員/
総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻 2011年9月 博士課程修了)
2.発表のポイント
◆成 果:日本列島の3人類集団(アイヌ人、本土人、琉球人)間およびそれらと他の人類集団との遺伝的近縁性を確定した。
◆新規性:101年前に提唱されたアイヌ・琉球同系説を最終的に証明し、またアイヌ集団が本土人および北方集団と遺伝子交流をしてきたことがはっきりした。
◆社会的意義/将来の展望:
日本列島における人類集団の遺伝的多様性を明確にすることは、人類学的観点のみならず、ゲノム医学にとっても大きな意義がある。将来は、これら集団間の表現型の違いとゲノムの違いを結びつけることが期待される。
3.発表概要:
国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門(総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻教授兼任)の斎藤成也教授、東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学専攻分野の徳永勝士教授、東京大学大学院理学系研究科・理学部の尾本惠市名誉教授を中心とする研究グループは、日本列島人(アイヌ人、琉球人、本土人)のゲノム解析により、現代日本列島人は、縄文人の系統と、弥生系渡来人の系統の混血であることを支持する結果を得た。
これまでの遺伝学的研究では、アイヌ人と沖縄人の近縁性を支持する結果はいくつか得られていたが、決定的なものではなかった。今回、研究グループは、ヒトゲノム中のSNP(単一塩基多型)(注1)を示す100万塩基サイトを一挙に調べることができるシステムを用いて、アイヌ人36個体分、琉球人35個体分を含む日本列島人のDNA分析を行った。
その結果、アイヌ人と琉球人が遺伝的にもっとも近縁であり、両者の中間に位置する本土人は、琉球人に次いでアイヌ人に近いことが示された。一方、本土人は集団としては韓国人と同じクラスター(注2)に属することも分かった。さらに、他の30人類集団のデータとの比較より日本列島人の特異性が示された。このことは、現代日本列島には旧石器時代から日本列島に住む縄文人の系統と弥生系渡来人の系統が共存するという、二重構造説を強く支持する。また、アイヌ人はさらに別の第三の系統(ニブヒなどのオホーツク沿岸居住民)との遺伝子交流があり、本土人との混血と第三の系統との混血が共存するために個体間の多様性がきわめて大きいこともわかった。
日本列島における人類集団の遺伝的多様性を明確にすることは、人類学的観点のみならず、ゲノム医学にとっても大きな意義がある。将来は、これら集団間の表現型の違いとゲノムの違いを結びつけることが期待される。
4.発表内容:
日本列島は南北4000km以上にわたっており、3万年以上前から人間が居住してきた考古学的・人類学的証拠がある。現在は北から順にアイヌ人、本土人、琉球人という3人類集団が分布している。これらの人々の起源と成立については、以前からいろいろな説があったが、ベルツ(注3)のアイヌ・沖縄同系説に端を発し、鳥居龍蔵や金関丈夫らが提唱した混血説の流れをくむ二重構造モデルが現在の定説である。これによれば、日本列島に最初に移住し縄文人を形成したのは、東南アジアに住んでいた古いタイプのアジア人集団の子孫である。その後、縄文時代から弥生時代に変遷するころに,北東アジアに居住していた人々の一派が日本列島に渡来してきた。彼らは極端な寒冷地に住んでいたために、寒冷適応を経て、顔などの形態が縄文人とは異なっている。この新しいタイプの人々(弥生時代以降の渡来人)は、北部九州に始まって、本州の日本海沿岸、近畿地方に移住を重ね、先住民である縄文人の子孫と混血をくりかえした。ところが、北海道にいた縄文人の子孫集団は、この渡来人との混血をほとんど経ず、やがてアイヌ人集団につながっていった。沖縄を中心とする南西諸島の集団も、本土から多くの移住があったために、北海道ほど明瞭ではないが、それでも日本列島本土に比べると縄文人の特徴をより強く残した。
これまでの遺伝学的研究では、アイヌ人と沖縄人の近縁性を支持する結果はいくつか得られていたが、決定的なものではなかった。そこで今回、徳永研究室で使用している、ヒトゲノム中のSNP(単一塩基多型)を示す100万塩基サイトを一挙に調べることができるシステムを用いて、アイヌ人と琉球人のDNAをあらたに調べることにした。北海道日高地方の平取町に居住していたアイヌ系の人々から尾本らが1980年代に提供を受けた血液から抽出したDNAサンプルについて、これまでミトコンドリアDNA、Y染色体、HLAの研究が行なわれてきたが、それらのうち、36個体分を用いた。サンプル収集時期が30年近く前なので、今年に入って平取町を3回訪問し、町役場のアイヌ施策推進課の協力を得て、アイヌ協会平取支部の方々にお会いし、これまでの研究成果と今回の成果について説明した。琉球人のDNAについては、琉球大学医学部の要らが数年前に提供を受けた35個体分を用いた。
今回の研究では、個人を単位にした解析と集団を単位にした解析を行なった。前者については、多変量解析の標準的な手法である主成分分析、祖先集団を仮定してそれらの遺伝子交流を個人ごとに推定する方法のふたつを用いて解析した結果、アイヌ人からみると、彼らから地理的に大きく離れている琉球人が遺伝的にもっとも近縁であり、両者の中間に位置する本土人は、琉球人に次いでアイヌ人に近いことが示された。また、アイヌ集団が本土人およびおそらく北海道よりももっと北方の人類集団と遺伝子交流をしてきたことにより、個体間の多様性がきわめて大きいことがわかった。他の30人類集団のデータとあわせて比較しても、日本列島人(アイヌ人、琉球人、本土人)の特異性が示された。これは、現在の東アジア大陸部の主要な集団とは異なる遺伝的構成、おそらく縄文人の系統を日本列島人が濃淡はあるものの受け継いできたことを示している。集団を単位とした解析では、アイヌ人と琉球人が統計的にきわめて高い精度でクラスターを形成し、それと本土人、韓国人がそれぞれつながってゆくパターンが同様の高い精度で支持されている。以上から、現代日本列島人は、旧石器時代から縄文時代を通じて居住してきた縄文人の系統と、弥生時代以降を中心に日本列島に渡来してきた弥生系渡来人の系統の混血であることがはっきりした。また、アイヌ人はこれらとはさらに別の第三の系統(ニブヒなどのオホーツク沿岸居住民)との遺伝子交流があったことがわかった。
今回決定した100万SNP座位のデータは、さらに詳細な研究を進める上での基盤情報として貴重なものであり、今後は日本列島に渡来してきた祖先集団の出自の問題の探求や、表現型の違いとゲノムの違いを結びつける研究にも貢献することが期待される。
5.発表雑誌:
雑誌名:Journal of Human Genetics(2012 年11月1日オンライン版)
論文タイトル:The history of human populations in the Japanese Archipelago inferred from genome-wide SNP data with a special reference to the Ainu and the Ryukyuan populations
著者:Japanese Archipelago Human Population Genetics Consortium {コンソーシアムメンバー:Timothy Jinam,西田奈央,平井百樹,河村正二,太田博樹,梅津和夫,木村亮介,大橋順,田嶋敦,山本敏充,田辺秀之,間野修平,数藤由美子,要匡,成富研二,柳久美子,新川詔夫,尾本惠市,徳永勝士,斎藤成也}
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7.用語解説:
(注1)SNP(Single Nucleotide Polymorphism):
一塩基多型。ゲノム全域に存在する遺伝的多型のひとつ。DNAには4種類の塩基(A,C,G,T)があるが、塩基が置換するタイプの突然変異率はきわめて低いので、大多数のSNPではこれらのうちの2塩基が集団中に共存するタイプである。
(注2)クラスター(cluster):
遺伝子や集団の系統樹で、複数の系統がひとつにまとまっている状態。
(注3)ベルツ(Erwin von Baelz):
1849.1913。ドイツ人。1876年から1905年まで日本に滞在し、東京帝国大学医学部の教官などをつとめる。日本人と結婚。1911年にアイヌ沖縄同系論をドイツの雑誌に発表。
プレスリリース概要
『日本列島3人類集団の遺伝的近縁性』 (画像引用)
http://www.soken.ac.jp/news_all/2719.html
○記者会見出席者:
斎藤成也(さいとう・なるや)
(総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻 教授 兼任/
国立遺伝学研究所 集団遺伝研究部門 教授)
Timothy Jinam(ティモシー・ジナム)
(国立遺伝学研究所 人類遺伝研究部門 博士研究員/
総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻 2011年9月博士課程修了)
徳永 勝士(東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学専攻分野 教授)
尾本 惠市(東京大学大学院理学系研究科・理学部 名誉教授)
【研究概要】
国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門(総合研究大学院大学生命科学研究科遺伝学専攻教授兼任 )の斎藤成也教授、東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学専攻分野の徳永勝士教授、東京大学大学院理学系研究科・理学部の尾本惠市名誉教授を中心とする研究グループは、日本列島人(アイヌ人、琉球人、本土人)のゲノム解析により、現代日本列島人は、縄文人の系統と、弥生系渡来人の系統の混血であることを支持する結果を得た。
これまでの遺伝学的研究では、アイヌ人と沖縄人の近縁性を支持する結果はいくつか得られていたが、決定的なものではなかった。今回、研究グループは、ヒトゲノム中のSNP(単一塩基多型)(注1)を示す100万塩基サイトを一挙に調べることができるシステムを用いて、アイヌ人36個体分、琉球人35個体分を含む日本列島人のDNA分析を行った。
その結果、アイヌ人からみると琉球人が遺伝的にもっとも近縁であり、両者の中間に位置する本土人は、琉球人に次いでアイヌ人に近いことが示された。一方、本土人は集団としては韓国人と同じクラスター(注2)に属することも分かった。さらに、他の30人類集団のデータとの比較より日本列島人の特異性が示された。このことは、現代日本列島には旧石器時代から日本列島に住む縄文人の系統と弥生系渡来人の系統が共存するという、二重構造説を強く支持する。また、アイヌ人はさらに別の第三の系統(ニブヒなどのオホーツク沿岸居住民)との遺伝子交流があり、本土人との混血と第三の系統との混血が共存するために個体間の多様性がきわめて大きいこともわかった。
日本列島における人類集団の遺伝的多様性を明確にすることは、人類学的観点のみならず、ゲノム医学にとっても大きな意義がある。将来は、これら集団間の表現型の違いとゲノムの違いを結びつけることが期待される。
【詳細研究内容】
日本列島は南北4000km以上にわたっており、3万年以上前から人間が居住してきた考古学的・人類学的証拠がある。現在は北から順にアイヌ人、本土人、琉球人という3人類集団が分布している。これらの人々の起源と成立については、以前からいろいろな説があったが、ベルツ(注3)のアイヌ・沖縄同系説に端を発し、鳥居龍蔵や金関丈夫らが提唱した混血説の流れをくむ二重構造モデルが現在の定説である。これによれば、日本列島に最初に移住し縄文人を形成したのは,東南アジアに住んでいた古いタイプのアジア人集団の子孫である。その後,縄文時代から弥生時代に変遷するころに,北東アジアに居住していた人々の一派が日本列島に渡来してきた。彼らは極端な寒冷地に住んでいたために,寒冷適応を経て,顔などの形態が縄文人とは異なっている。この新しいタイプの人々(弥生時代以降の渡来人)は,北部九州に始まって,本州の日本海沿岸,近畿地方に移住を重ね,先住民である縄文人の子孫と混血をくりかえした。ところが,北海道にいた縄文人の子孫集団は,この渡来人との混血をほとんど経ず,やがてアイヌ人集団につながっていった。沖縄を中心とする南西諸島の集団も,本土から多くの移住があったために,北海道ほど明瞭ではないが,それでも日本列島本土に比べると縄文人の特徴をより強く残した。
これまでの遺伝学的研究では、アイヌ人と沖縄人の近縁性を支持する結果はいくつか得られていたが、決定的なものではなかった。そこで今回、徳永研究室で使用している、ヒトゲノム中のSNP(単一塩基多型)を示す100万塩基サイトを一挙に調べることができるシステムを用いて、アイヌ人と琉球人のDNAをあらたに調べることにした。北海道日高地方の平取町に居住していたアイヌ系の人々から尾本らが1980年代に提供を受けた血液から抽出したDNAサンプルについて、これまでミトコンドリアDNA、Y染色体、HLAの研究が行なわれてきたが、それらのうち、36個体分を用いた。サンプル収集時期が30年近く前なので、今年に入って平取町を3回訪問し、町役場のアイヌ施策推進課の協力を得て、アイヌ協会平取支部の方々にお会いし、これまでの研究成果と今回の成果について説明した。琉球人のDNAについては、琉球大学医学部の要匡准教授らが数年前に提供を受けた35個体分を用いた。
今回の研究では、個人を単位にした解析と集団を単位にした解析を行なった。前者については、多変量解析の標準的な手法である主成分分析、祖先集団を仮定してそれらの遺伝子交流を個人ごとに推定する方法のふたつを用いて解析した結果、アイヌ人からみると、彼らから地理的に大きく離れている琉球人が遺伝的にもっとも近縁であり、両者の中間に位置する本土人は、琉球人に次いでアイヌ人に近いことが示された。また、アイヌ集団が本土人およびおそらく北海道よりももっと北方の人類集団と遺伝子交流をしてきたことにより、個体間の多様性がきわめて大きいことがわかった。他の30人類集団のデータとあわせて比較しても、日本列島人(アイヌ人、琉球人、本土人)の特異性が示された。これは、現在の東アジア大陸部の主要な集団とは異なる遺伝的構成、おそらく縄文人の系統を日本列島人が濃淡はあるものの受け継いできたことを示している。集団を単位とした解析では、アイヌ人と琉球人が統計的にきわめて高い精度でクラスターを形成し、それと本土人、韓国人がそれぞれつながってゆくパターンが同様の高い精度で支持されている。以上から、現代日本列島人は、旧石器時代から縄文時代を通じて居住してきた縄文人の系統と、弥生時代以降を中心に日本列島に渡来してきた弥生系渡来人の系統の混血であることがはっきりした。また、アイヌ人はこれらとはさらに別の第三の系統(ニブヒなどのオホーツク沿岸居住民)との遺伝子交流があったことがわかった。
今回決定した100万SNP座位のデータは、さらに詳細な研究を進める上での基盤情報として貴重なものであり、今後は日本列島に渡来して来た祖先集団の出自の問題の探求や、表現型の違いとゲノムの違いを結びつける研究にも貢献することが期待される。
【論文全著者】
Japanese Archipelago Human Population Genetics Consortium
(日本列島人類集団遺伝学コンソーシアム)
<コンソーシアムメンバー>
Timothy Jinam(ティモシー・ジナム)
(総合研究大学院大学 生命科学研究科 遺伝学専攻 博士課程{2011年9月修了})
(現所属:国立遺伝学研究所人類遺伝研究部門 博士研究員)
Nao Nishida(西田奈央)
(東京大学 大学院医学系研究科 人類遺伝学教室 講師)
Momoki Hirai(平井百樹)
(東京大学 大学院創成科学研究科先端生命科学専攻 名誉教授)
Shoji Kawamura(河村正二)
(東京大学 大学院創成科学研究科先端生命科学専攻 教授)
Hiroki Oota(太田博樹)
(北里大学医学部 准教授)
Kazuo Umetsu(梅津和夫)
(山形大学医学部 准教授)
Ryosuke Kimura(木村亮介)
(琉球大学亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構 准教授)
Jun Ohashi(大橋順)
(筑波大学医学部 准教授)
Atsushi Tajima(田嶋敦)
(徳島大学大学院 准教授)
Toshimichi Yamamoto(山本敏充)
(名古屋大学医学部 准教授)
Hidyuki Tanabe(田辺秀之)
(総合研究大学院大学先導科学研究科 准教授)
Shuhei Mano(間野修平)
(総合研究大学院大学統計数理学専攻 准教授)
Yumiko Suto(数藤由美子)
(放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療研究センター 室長)
Tadashi Kaname(要匡)
(琉球大学医学部 准教授)
Kenji Naritomi(成富研二)
(琉球大学医学部 教授)
Kumiko Yanagi(柳久美子)
(琉球大学医学部 助教)
Norio Niikawa(新川詔夫)
(北海道医療大学 学長)
Keiichi Omoto(尾本惠市)
(東京大学 大学院理学系研究科・理学部 名誉教授)
Katsushi Tokunaga(徳永勝士)
(東京大学大学院医学系研究科 教授)
Naruya Saitou(斎藤成也)
(総合研究大学院大学生命科学研究科 教授;東京大学大学院理学系研究科 教授;国立遺伝学研究所 教授)
【論文原題】The history of human populations in the Japanese Archipelago inferred from genome-wide SNP data with a special reference to the Ainu and the Ryukyuan populations
(ゲノム規模のSNPデータから推論された、アイヌ人と琉球人に特に着目した日本列島人類集団の歴史)
【発表雑誌名】 Journal of Human Genetics、Nature Publishing Group、2012 年11月1日オンライン版
【用語解説】
(注1)SNP(Single Nucleotide Polymorphism):
一塩基多型。ゲノム全域に存在する遺伝的多型のひとつ。DNAには4種類の塩基
(A,C,G,T)があるが、塩基が置換するタイプの突然変異率はきわめて低いので、
大多数のSNPではこれらのうちの2塩基が集団中に共存するタイプである。
(注2)クラスター(cluster):
遺伝子や集団の系統樹で、複数の系統がひとつにまとまっている状態。
(注3)ベルツ(Erwin von Baelz):
1849−1913.ドイツ人.1876年から1905年まで日本に滞在し、東京帝国大学医学部の教官などをつとめる。日本人と結婚。1911年にアイヌ沖縄同系論をドイツの雑誌に発表。
清水建設の「グリーンマウンド」に、みんなでつくる鎮守の森の避難マウンドを追加して欲しい ― 2012/11/06 05:35
<11月某日の電話でのやりとり>
「これって、鎮守の森にもなりますよね」
清水建設広報部:え?
「断面切ると、鎮守の森の形に見えますよ、古墳にも見えるけど・・・」
清水建設広報部:え?
「グリーンマウンドをベースに市民参加型の鎮守の森がつくれますよね」
清水建設広報部:え?
「環境に優しい緑の丘とありますよね」
「明治神宮のような生物多様性に恵まれた鎮守の森ができるじゃないですか」
清水建設広報部:え?
(話が噛み合わずここで終了)
<関連記事>
2012.10.16
清水建設:ローテク・ローコストの都市システムが津波被害を軽減 (画像引用)
~津波に正対しない円錐台「グリーンマウンド」~
http://www.shimz.co.jp/news_release/2012/2012028.html
清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、津波被害の軽減を目的に、ローテク・ローコストの対策で津波エネルギーを吸収し、かつ地域住民の避難場所を確保できる都市システム「グリーンマウンド」を開発、東北はもとより、大地震発生時に津波被害が予想される太平洋側沿岸地域の自治体に対する提案活動を本格化します。
太平洋沿岸地域の自治体は、東日本大震災で甚大な津波被害が発生したことから、津波対策の必要性に迫られているものの、財政難のおりから対策の進捗が遅れています。また、大掛かりな対策工事は施工の難易度が高く、限られた大手建設会社しか対応できないことから、短期間で全国的に展開することは不可能です。そこで当社は、ローテク・ローコストで津波被害を軽減するグリーンマウンドを開発したものです。
グリーンマウンドは、環境に優しい緑の丘を利用した耐津波型の都市システムで、海岸線のグリーンベルト内等にちどりに配置する「消波型マウンド」と津波被害の可能性がある居住域に一定間隔で配置する「避難型マウンド」から構成されます。従来の防波堤が津波の圧倒的なエネルギーに対して“剛”で正対するのに対し、このシステムの特徴は、消波型マウンドが“柔”で津波をいなしてエネルギーを吸収し、避難型マウンドが地域住民の避難場所になることです。
マウンドの形は、平面的にも立体的にも最も津波と正対しない円錐台にします。東日本大震災でも、円錐台形の小さな丘が津波をいなし、避難場所になった事例が報告されています。設置場所や期待する津波エネルギーの吸収効果によりマウンドの規模は異なりますが、ベースとなる規模は小型マウンドで底部と頂部の直径がそれぞれ50mと10m、大規模マウンドがそれぞれ110mと50m、頂部の高さは前者が10m、後者が15mです。法面の傾斜角を杭や擁壁が不要な30度未満に設定することで、中小の建設会社にも施工できるようにします。
マウンドの構成材料については、表層の0.3mを木材チップ、その下層の0.5~1mを津波堆積物や浚渫土、その内側の土台を石やコンクリート塊とします。東北地方に建設する場合、その大部分を震災廃棄物で補うことで、廃棄物の処理・処分に貢献します。また、マウンド表面に植樹や種子吹付を行うことにより、竣工後、数か月もすればまさに“グリーン”マウンドとなります。
消波型マウンドの津波の遡上抑制効果については、数値シミュレーションにより確認しています。例えば、地盤勾配1/100の沿岸部に11mの高さの津波が到来することを想定したケースでは、マウンドが無いと海岸線から1,750mの範囲まで津波が遡上しますが、海岸線に沿って高さ10m、頂部直径10m、低部直径50mのマウンドをちどり状に4列配置することで、津波の遮蔽効果やマウンド表面の植栽の摩擦効果などにより、遡上範囲を1,150mに抑制できました。さらに、マウンドの背後地点での津波到達時間は約3分遅くなり、最大浸水深も8.5mから5mに抑制できました。
グリーンマウンドの工期と建設費は、構成材料を震災廃棄物で補えるか否かによって異なりますが、小型マウンドは6カ月、1億円から、大型マウンドは18カ月、5億円からとなります。
以 上
≪参 考≫
1.グリーンマウンドの概要 (画像)
2.グリーンマウンドの活用方法
消波型、避難型という一般的な活用方法に加え、マウンド内部に備蓄施設を建設する備蓄型、マウンド内部に駐車場やエネルギープラント、集会場等の建築空間を設置する建築空間内蔵型、マウンド頂部にホテルやオフィス、集合住宅棟を建設するタワー建築組み込み型等を想定。
3.海岸線防潮丘の実行プロセスとしてのグリーンマウンドの活用
各自治体がマスタープランで計画している海岸線グリーンベルト内の防潮丘の実現プロセスにおいて、グリーンマウンドの活用が可能。防潮丘は膨大な規模となり、ローコストで短期間には構築できないため、ステップ1としてグリーンベルト内に消波型マウンドを複数列建設し、ステップ2としてマウンドの隙間に盛土しながら防潮丘を整備。ステップ3として、植樹等を行い防潮丘を完成させる。仮に防潮丘が完成に至らない過程で津波に遭遇しても、グリーンマウンドによる減災機能を担保できる。
日経・文化往来
歴史の古い神社ほど東日本大震災の津波被害から免れ、多くが津波浸水の境界に立っていた
鎮守の森や屋敷森なども津波の破壊力を減衰させる効果が見られたという
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2011/12/16/6246632
007 私を愛したスパイ - 殺害された英国人、薄熙来情報をMI6に提供か ― 2012/11/07 06:53
中国相手に仕掛けるならば、まずは英国に聞け。
今なお学ばぬ日本は二度死ぬ。
<関連記事>
情報機関に薄氏情報提供か 中国重慶で殺害の英国人
2012.11.6 23:32
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121106/chn12110623340004-n1.htm
米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は6日、中国重慶市の前トップ、薄煕来氏の妻による英国人ビジネスマン殺害事件に絡み、この英国人が薄氏に関する情報を英秘密情報局(MI6)に提供していたと報じた。英当局者らの話として伝えた。
英国人はニール・ヘイウッド氏。同紙によると、ヘイウッド氏はMI6の職員と定期的に会い、1年以上にわたって薄氏についての個人情報を提供していたという。
MI6側がヘイウッド氏に金銭を払ったり、任務を与えたりしたことはなかったが、接触した職員は同氏を「有益な」情報提供者と評価していたとしている。
同事件では、ヘイウッド氏を毒殺したとして、薄氏の妻が執行猶予2年付きの死刑判決を受けた。薄氏も同事件で職権を乱用したとされ、共産党の党籍剥奪処分となり、司法機関の捜査を受けることが決まっている。(共同)
殺害された英国人、薄氏の情報をMI6に提供か
米紙報道
2012/11/6 19:41
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0605E_W2A101C1FF2000/
【北京=森安健】中国・重慶市の元トップ、薄熙来氏の妻が殺害した英国人ニール・ヘイウッド氏が、死の直前まで1年以上にわたり英情報局秘密情報部(MI6)に情報を提供していた疑いが浮上した。6日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが英当局者らの話として伝えた。ヘイウッド氏はMI6部員と2009年に出会い、MI6と知った上で定期的に中国国内で面会し、薄氏の私生活について情報を提供していたという。
ヘイウッド氏は金銭は受け取っていなかったものの、情報提供には前向きで、薄氏一家に関して精通していたという。中国の指導者の私生活はベールに包まれ、各国大使館は常に情報収集に奔走している。英情報機関の動きを把握できていなかったとすれば、中国公安当局の責任問題に発展する可能性もある。
Briton Killed in China Had Spy Links
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204846304578090740894694144.html
Murdered Briton in China Had Spy Links (画像引用)
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204846304578090740894694144.html#articleTabs%3Dvideo
Neil Heywood: Briton killed in China 'had spy links'
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-china-20216757
Neil Heywood 'was MI6 informant'
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/china/9657815/Neil-Heywood-was-MI6-informant.html
British businessman murdered in China worked for MI6, claims extraordinary new report
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2228643/Murdered-British-businessman-Neil-Heywood-worked-MI6-claims-extraordinary-new-report.html?ito=feeds-newsxml
Was Neil Heywood, murdered by Bo Xilai's family, an MI6 agent?
He drove a Jaguar with 007 licence number and flaunted his connections with the MI6 as well as the cream of Chinese Communist Party.
http://timesofindia.indiatimes.com/world/china/Was-Neil-Heywood-murdered-by-Bo-Xilais-family-an-MI6-agent/articleshow/17121351.cms
重慶スキャンダル:薄煕来のインナー・サークルの英国人が不審死、その背後に潜むはMI6のハクルート・アンド・カンパニーとシェールガス利権 ― 2012/04/02 07:48
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2012/04/02/6397685
日経・秋田浩之:アンドリュー・マーシャルとエドワード・ルトワックの「中国の弱み見つけて墓穴掘り」作戦(風見鶏) ― 2012/11/08 08:17
<関連記事>
老軍略家からの警告(風見鶏)
2012/11/04 日本経済新聞 朝刊
全世界の米軍をあやつる米国防総省。その巨大組織の中枢には、9月初めに91歳になった伝説の名軍略家がいる。アンドリュー・マーシャル氏。なお現役として、超長期の戦略をになう相対評価(ネットアセスメント)局を率いる。
公の場には一切、姿を現さないが、1973年以来、彼はずっといまのポストに君臨してきた。余人をもって代えがたい洞察力があるからだ。
冷戦中にはソ連の弱点をいち早く見抜き、いまは台頭する中国への戦略に知恵を絞る。「90歳を超えても彼の分析力とエネルギーが衰える様子はない」。周辺はこう舌を巻く。
その彼が目下、鋭い視線を注ぐのが、南シナ海や尖閣諸島をめぐる強硬な中国の行動だ。そこから描こうとしているのは今日や明日の対策ではない。もっと、ずっと先を見通した中国への処方せんだ。
「将来、さらに強大になったとき、中国の周辺国への態度は変わるかもしれない。尖閣諸島への中国の対応からその手がかりを得ようとしている」。マーシャル氏を知る米政府筋はこう解説する。
その手がかりとは何か。同氏の有力ブレーンの1人に、著名な米戦略家のエドワード・ルトワック氏(70)がいる。彼の話を聞くと、マーシャル氏の思考の一端が透けてみえる。
「尖閣での強硬な態度は、中国の拡張路線の表れではない。むしろ国内の不安定さに原因がある。北京では指導部の権力の移行も円滑にいっていない。そうした矛盾から目をそらすため、日本に強硬に出ているのだ」
つまり、中国は内部がもろくなると、対外的には強硬に傾いていくというわけだ。そんな観察に基づき、ルトワック氏は日本にこう提言する。
「領土については譲る余地をみせない。同時にこちらからは一切、挑発もしない。日本が中国に対応する際、この2点が肝心だ」
なぜなら、そうすれば墓穴を掘るのは中国だとみているからだ。
中国は将来的にアジア諸国を米国から引きはがし、自分が主導できる「中華圏」を再建したがっている。だが、このまま尖閣や南シナ海での強硬ぶりが際立てば、周辺国は中国になびかず、そうした試みは空振りに終わる――。これがルトワック氏の読みだ。
とはいえ、米中の国力差が縮まっていけば、いやおうなく、アジア諸国は中国の勢力下に組み込まれてしまうかもしれない。
米ソ冷戦で米国に軍配が上がったのはソ連の経済が疲弊し、最後には国内総生産(GDP)が米国の約25%にしぼんだからだ。だが、中国は米国には欠かせない経済の協力相手であり、GDPでも米国に追いつこうとしている。
「中国の軍拡に対し、正面から力で対抗するだけでは足りない。中国の弱みを見つけ、そこを突くことで国力増大の勢いを鈍らせる。そんな手立ても考えなければならない」。複数の関係者によると、マーシャル氏は最近、こう感じ始めているという。
いまでも印象的なのは、2006年春、取材に応じたマーシャル氏が繰り返した警句だ。「まだ、中国について分からないことが多い」。ぼう大な研究を重ねてもなお、結論に飛びつかず、分析を続ける。
いま、日本に必要なのはこうした姿勢だ。嫌中や反中といった感情に流されず、冷徹に中国の出方を読み解き、対策を打つ。太平洋の向こうにいる91歳の軍略家にそれができるなら、中国のとなりにいる日本人にもできるはずだ。(編集委員 秋田浩之)
TPPで自民党との対立軸、なんともガス臭い野田首相の大博打 ― 2012/11/09 08:45
米国から安価な「シェールガス」を輸入したい。
それも狙いとアピールしつつ、TPP交渉参加を表明して年内解散。
TPPで自民党との対立軸を明確に。
ジョセフ・ナイの「米国とカナダから天然ガスの供給を保証してもらえる」発言効果大。
都市ガス業界幹部も「米国から安価な天然ガスを輸入しやすくなる」と言い出す始末。
その背後で蠢くCSISシンポと日米財界人会議。
原発事情の足元見られ、民主割れれば、自民も割れる。
なんともガス臭い野田首相の大博打。
<関連記事>
首相、年内解散を検討…TPP参加表明の直後に
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20121108-OYT1T01763.htm
政局の焦点である衆院解散・総選挙の時期を巡り、野田首相が環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を表明し、その直後に衆院解散に踏み切ることを検討していることが8日、わかった。
複数の首相周辺や民主党幹部が明らかにした。11月下旬から12月中旬に解散し、投開票日は12月中か年明けの1月が有力だ。首相は、TPP参加に慎重な自民党との違いを際立たせ、衆院選の対立軸にできると判断しており、早ければ月内の参加表明を探っている。TPP参加に反対する民主党議員の集団離党につながる可能性があり、政局は一気に緊迫の度合いを増しそうだ。
首相が、解散を判断する環境整備に挙げる赤字国債発行を可能とする特例公債法案は、21日にも参院で可決、成立する見通しとなった。首相は同法案の成立後、TPP交渉参加表明と解散の時期について最終判断するとみられる。
(2012年11月9日03時06分 読売新聞)
TPP、再び民主の火種に 経産相「現政権が早急に決断」
2012/11/9 1:30
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS08037_Y2A101C1PP8000/
オバマ米大統領の再選を受け、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の参加を巡る問題が民主党内で再び火種になり始めた。枝野幸男経済産業相や玄葉光一郎外相らは交渉参加に前向きな姿勢を示すが、国内農業への影響などから党内には交渉参加に慎重な意見がなお多い。慎重派には民主党からの離党を探る議員もおり、首相は難しい判断を迫られる。
経産相は8日の日米財界人会議で挨拶し、TPPの交渉参加で「現政権が大きな決断を早急に行うべきだ」と語った。経産相は政権全体で、早急に交渉への参加表明をすべきだとの認識を示した。「来年はTPP交渉にとってカギになる年だ。日本の参加を実現する上で残された時間は長くない」と語った。
外相も同じ会議で「TPPは日本にとっての大戦略との位置付けで、政府、国会は考えていくべきだ」と語り、積極的に検討すべきだとの意見を表明した。
「必要な情報を開示する前の交渉参加表明は許されない」。民主党の慎重派がつくる「TPPを慎重に考える会」の山田正彦会長は8日、国会内で開いた会合でけん制した。首相は18日から東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に参加する予定。約30人の出席者からは「交渉参加表明は時期尚早だ」との意見が相次いだ。
昨年9月の野田政権発足後、TPPの交渉参加を巡っては党内で意見が割れている。正式な参加表明をせずに米国との事前協議に臨んできたが、大きな進展はなかった。オバマ大統領の再選で交渉参加に向けた議論が進み始めるとの見方が政府、民主党内にはある。
ただ、党内の状況は以前に比べて深刻だ。慎重に考える会の中心議員の1人は「首相が参加表明した時点で離党する」と断言する。与党はあと6人が離党すれば、衆院で過半数割れする状況だ。
首相側には別の思惑もある。首相に近い議員の1人は「近くTPP交渉参加を表明して衆院選での自民党との対立軸を作るべきだ」と強調。首相周辺には改革推進の路線の目玉として活用したい思惑が透ける。
首相周辺にも「党分裂や、農家の多い地方からの反発を考えればむしろ選挙にマイナスだ」との声がある。具体的な日米間の事前協議項目でも自動車の市場開放については「具体的な協議は進んでおらず、今後の見通しもたっていない」(外務省幹部)。首相が交渉入りを表明しても「米側は議会の承認を得るための協議や手続きに入らないのではないか」との懸念もある。
オバマ氏再選:TPPに弾み…日本は足並み乱れも
毎日新聞 2012年11月07日 21時12分(最終更新 11月08日 02時56分)
http://mainichi.jp/select/news/20121108k0000m030103000c.html
オバマ大統領の再選で、TPPの拡大交渉が再び加速しそうだ。野田佳彦首相も交渉参加に意欲を見せるが、慎重論も根強く、国内調整に追われる事態が続きそうだ。
TPPの拡大交渉を巡っては、関税撤廃などの具体論で交渉参加国の利害が対立し、当初目指した年内合意は来年以降に先送りされた。しかし、雇用拡大を目指すオバマ大統領にとって、アジア太平洋地域との関係強化は通商政策の肝。オバマ政権は交渉の加速に全力を挙げる見通しだ。
日本が拡大交渉に加わるには、米国との事前協議で了承を得る必要があるが、日本の参加には米自動車業界などが反対している。選挙前はオバマ政権の産業界への配慮などから日米協議が停滞していた。経済産業省幹部は「再選を決めたことで、日米の事前交渉も進めやすくなるのでは」と期待する。
ただ、国内では農業団体を中心にTPP参加に反対が依然として根強い。首相は10月29日の所信表明演説でTPP推進に意欲を見せたが、郡司彰農相は今月6日の記者会見で「私のところに寄せられる意見は圧倒的に反対か慎重が多い」とけん制し、足並みはそろっていない。
解散・総選挙後に政権復帰するとの見方が出ている自民党も、TPPには慎重だ。政府・民主党内には「交渉参加を表明できれば、自民と差別化できる」との積極論が浮上する一方、「TPP参加を表明すれば、新たな離党者が出かねない」と不安も広がる。
原発停止で発電コストが高止まりする中、米国から安価な「シェールガス」を輸入したいところだが、この議論もTPP交渉と並行して進む可能性がある。野田政権の腰が定まらない中、米政府高官は「日本は参加について決断する時期だ」と促す。日本の交渉参加判断が遅れる一方で、日本以外の拡大交渉が進展すれば、TPPのルール作りに日本が乗り遅れる懸念がある。
日本のTPP参加支持を=「財政の崖」に懸念-産業界
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2012110700919
オバマ米大統領の再選について、産業界からは「速やかに(年明けに歳出削減と減税失効が重なる)『財政の崖』の回避に取り組んでほしい」(岡村正・日本商工会議所会頭)と、米景気を腰折れさせることのないよう求める声が相次いだ。環太平洋連携協定(TPP)をめぐっては、経団連の米倉弘昌会長が「日本の交渉参加への支持を期待する」と表明した。
今年11月に米国進出30周年を迎えた日本の自動車業界。日米貿易摩擦などの曲折を経て現地生産を進め、足元では好調な北米需要を背景に各社とも大幅な販売台数の増加を見込む。それだけに「米景気の停滞がないことを望む」(大手)との声が大勢だ。ある大手メーカーは「オバマ政権下でわれわれの北米事業は拡大している」(幹部)と2期目のかじ取りに期待を寄せた。
オバマ氏が打ち出した高速鉄道網整備の行方に気をもむのは鉄道業界。フロリダ州では知事判断で連邦政府の建設補助金受け入れを拒否した前例もあり、「結局は大統領選よりも各州の知事次第」(大手幹部)と受け止める。
一方、TPP交渉などをめぐる日本の姿勢を念頭に「日本の民主党政権による対米政策に一貫性と妥当性を欠いた部分があった」(長谷川閑史・経済同友会代表幹事)、「日本のTPP参加で、米国から安価な(天然)ガスを輸入しやすくなる」(都市ガス業界幹部)と、日本の政府・与党への注文も相次いだ。(2012/11/07-19:17)
自民幹事長「集団的自衛権、可能に」 対等な日米同盟を
本社・CSISシンポ
2012/10/27 2:03
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2606A_W2A021C1MM8000/?dg=1
日本経済新聞社と米戦略国際問題研究所(CSIS)が26日に共催した第9回シンポジウム「指導者交代と日米中トライアングルの行方」で講演した自民党の石破茂幹事長は「日米同盟の変革を米国と真剣に討議することが必要だ」と述べ、集団的自衛権の行使を可能にするなど、より対等な同盟体制を検討すべきだとの考えを示した。
沖縄県・尖閣諸島を巡る日中対立への当面の対応策として石破氏は「米国のみならず東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携を強め『国際法を守れ』と主張することだ」と言明。(1)日米同盟の維持(2)島しょ防衛の強化のための日本版海兵隊の創設(3)集団的自衛権の行使容認――などを課題として挙げた。
環太平洋経済連携協定(TPP)については、ハーバード大のジョセフ・ナイ教授が「日本が入れば通商面で東南アジア諸国をリードできる。米国とカナダから天然ガスの供給を保証してもらえる」と利点を列挙。「日本には一流の国家から転落してほしくない」とも述べ、早期の交渉参加を促した。
カート・キャンベル国務次官補は「TPPを通じて通商関係は抜本的に変わる」と指摘。地域の安全保障のためにも自由貿易圏の拡大が重要との考えを表明した。
マイケル・グリーンCSIS上級副所長も「米国は軍事力を超え、多角的な外交手法を取っている。TPP交渉はその一環だ」と指摘した。
東北被災地で国交省&都市再生機構の「CM方式」祭り開幕へ ― 2012/11/11 08:06
「被災地が食い物にされかねない」との懸念を和らげるためにも
NPOなどを利用・活用するという柔軟さがあってもいいと思う。
<関連記事>
「CM方式」での復興事業がスタート 制度整備不完全 「ゼネコン丸投げ」懸念も
2012.11.11 01:30
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121111/plc12111101310000-n1.htm
東日本大震災復興の遅延解消に向け、新たな公共事業の発注方式として国は、「コンストラクションマネジメント」(CM)方式の導入を始めた。CM方式は公共事業でのゼネコンの権限を拡大する試みで、国は復興促進の切り札の一つとして定着を図る。ただ、大きな権限が与えられるゼネコンの監視体制が整っておらず、「ゼネコンへの丸投げで被災地が食い物にされかねない」との懸念も出ている。
■民間のノウハウ頼り
従来の公共工事では、自治体が設計業務や工事施工などを分割して発注していたが、CM方式は「マネジャー」と呼ばれるゼネコンに一括発注。マネジャーは自治体に代わり事業のほぼ全てを企業に発注する。
今回、初めてCM方式を採用したのは、宮城県東松島市と女川町での土地区画整理や集団移転促進事業。それぞれ約21億円と約70億円で在京の大手ゼネコンを中心とするJV(共同企業体)が10月、マネジャーとして契約した。
女川町の須田善明町長は「復興はこれまで経験したことのない大事業。町にノウハウはなく、頼れるものは頼りたい」と期待する。
国土交通省建設業課は「今後も見合う事業があれば、CM方式を各自治体に勧めたい」との構えだ。
■丸投げ、負担消えず
だが、懸念もある。CM方式の公共事業に対し、行政の監視がどこまで行き届くかが不明な点だ。
もともとCM方式は国交省が平成12年に研究会を設置し導入を模索。しかし、大型公共事業が減少した背景もあり、そのときは導入には至らなかった。自治体とマネジャーの契約書のひな型となる約款作りは数年前に中断されたままだ。このため、「ゼネコンへの丸投げになりかねない。進捗(しんちょく)状況を絶えず監視しなければならない点で、自治体の負担は軽減されない」(被災地の市議会議員)との疑念が早くも出ている。
■自治体に制度示して
国交省もマネジャーや実施過程の監視体制について、「識者を入れた第三者委員会方式」を念頭にしているが、識者の選定方法や権限といった委員会の枠組みを示してはいない。
東北大学経済学部の増田聡教授(地域計画)は「被災自治体で、復興事業をマネジメントできる職員はほとんどおらず、民間のノウハウを活用する手法は必要」としつつ、「ゼネコン業界の古い体質が残ったままでは、丸投げと批判されても仕方がない。国がきちんとした制度を自治体に示さなければ信用は得られない」と指摘している。
都市機構/CMrに大成建設JV選定/宮城県東松島市で震災復興事業CM第2弾
http://www.decn.co.jp/decn/modules/dailynews/news.php/?storyid=201210240105001
都市再生機構は23日、東日本大震災の復興事業へのコンストラクション・マネジメント(CM)方式活用第2弾となる「東松島市野蒜北部丘陵地区震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務」のコンストラクション・マネジャー(CMr)を大成建設・フジタ・佐藤工業・国際開発コンサルタンツ・エイト日本技術開発JVに決めた。
早期整備エリアでの同業務に関する契約金額は21億6300万円(税込み)。プロポーザルには大成JVを含めて7者が参加。同JVは79・6点(次点は74・4点)と最も高い評価を獲得し、4回にわたる価格交渉の末、契約に至った。
業務では、宮城県東松島市の野蒜地区を早期整備エリアと次期整備エリアに分け、早期整備エリアでは100万立方メートル、次期整備エリアでは160万立方メートルの土木工事を行い、道路や上下水道などのインフラを整備する。アットリスク型のCMで、オープンブック方式を採用。CMrには下請への支払金額などコストに関する情報の開示を義務付ける。CMrには業務原価の10%を目安としたフィーが支払われる。
都市機構は、復興事業へのCM活用の初弾として宮城県女川町の事業のCMrに今月11日、鹿島・オオバJVを選定し、19日に契約を結んだ。第3弾となる岩手県陸前高田市の事業では来月にもCMrが選定される見通しだ。
平成24(2012)年10 月11 日
コンストラクションマネジメント方式を活用した震災復興事業(女川町震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務)の契約相手方決定
http://www.ur-net.go.jp/press/h24/ur2012_press_1011_onagawa.pdf
2012年10月23日
コンストラクションマネジメント方式を活用した震災復興事業(東松島市野蒜北部丘陵地区震災復興事業の工事施工等に関する一体的業務)の契約相手方決定
http://www.ur-net.go.jp/saigai/info_higashimatsushima.html
http://www.ur-net.go.jp/press/h24/ur2012_press_1023_higashimatsushima.pdf
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