新たに刻まれるバブルの歴史、ユーロに続くは中国か ― 2012/06/03 08:22
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大バブル後のユーロ圏、失うのは「10年以上」か (画像引用)
2012/6/3 7:03
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO42148700T00C12A6SHA000/?dg=1
バブル崩壊後、日本は政策対応の失敗の典型例とされてきた。「愚か者の当局」といった批判を、リーマン・ショック直後に元米連邦準備理事会(FRB)理事から聞いたこともある。
自らもバブル後の経済運営の難しさが身に染みたのだろう。上から目線で何かと注文を付けてきたことを「天皇陛下におわびしたい」と、プリンストン大のクルーグマン教授は表現してみせた。
何を今更。経済の実力からかけ離れた金融の膨張や強気心理のまん延をバブルと呼ぶなら、それは市場経済に付き物である。問題はバブルがどんな性格を有するかだ。
話を簡単にするために、大きなバブルと小さなバブルに分類しよう。大きなバブルとは経済の根幹である信用システムを揺さぶるもの、小さなバブルとは個別の市場で発生するものである。
もう一つは、その国の経済規模の大小による分類だ。2つの分類を組み合わせてみよう。
日本の1980年代は大国で生じた大バブルの典型。1920年代の米国にさかのぼる必要があるバブルとその崩壊に、手探りが続いた。不良債権処理が遅れ、円安による外需拡大の道は、日本を経済的なライバルとみた米国などに阻まれた。
90年代初頭には北欧諸国でもバブルが崩壊したが、こちらは小国の大バブル。速やかに問題行を国有化すると同時に、自国通貨安で外需主導の回復を果たした。90年代に通貨危機に見舞われたアジア諸国も小国の大バブルであり、通貨安で経済を急回復させた。
グリーンスパンFRB議長時代の米国は小バブルを巧みに操る大国だった。「バブルかどうかは崩壊するまで分からない。崩壊後に迅速に動けばよい」。好事魔多し。足元で住宅と証券化の大バブルが膨らんでいた。後遺症はいまだ尾を引く。
翻って、ユーロ危機に見舞われている欧州。ギリシャにせよスペインにせよ、ユーロという単一通貨に加わったことで、独仏などからの投資が拡大しバブルが生じた。
本来なら小国として経済を営んできた国々が、ユーロ圏という単位で大国の大バブルに見舞われてしまったのだ。別々の通貨のままでいたなら、大幅な通貨安による外需拡大という逃げ道もあったろう。ギリシャのユーロ離脱を促す市場の圧力の根っこには、こうした経済計算が存在する。
欧州がユーロという仕組みにこだわれば、バブル後の調整には時間がかかる。失われた10年で済めば上出来だ。その間に高齢化などの新たな問題が重なることになろう。
バブル崩壊がもたらす日本の教訓がもう一つある。財政の大幅な悪化だ。民間の企業や家計はバブル期に膨らませた債務を圧縮する。その過程で政府が債務を肩代わりしないと、経済全体が失速してしまうからだ。
欧州の重債務国の財政は国内貯蓄が乏しい分、バブル崩壊後の日本より厳しい。財政に余力のあるドイツが動かないと、ユーロ圏全体が需要不足に陥る。域内の需要が足りなければ、大幅なユーロ安により外需で食いつなぐほかない。そんな話が通用するだろうか。(編集委員 滝田洋一)
高まる“中国クライシス”…ユーロより深刻だ
2012.06.01
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20120601/ecn1206010736004-n1.htm
筆者調べでは、不動産バブルが崩壊し始めた中国のバブル債務規模はギリシャなどユーロ圏の政府不良債務合計をはるかにしのぐ。
中国の地方政府は「リーマン」後、北京の共産党中央の指令を受けて、通常の銀行貸し出し規制が別枠扱いされる投資会社を設立し、国有商業銀行から借り入れては、市民や農民から市街地、耕作地、さらに墓地まで接収し、不動産開発に資金を投入してきた。
地方政府の実権を握る地方の党幹部は公有制の土地を開発しては利権収入を得て私腹を肥やす。全国の地方政府が抱える債務残高は北京の公式発表ベースで2010年末に10・7兆元(約130兆円)。日本の1980年代後半のバブル融資並みの規模で、中国のGDPの4分の1に上り、5割以上が今後3年以内に返済期限が来る。しかも、地方政府は国有企業などと組んで不動産開発をやめず、国有商業銀行も融資を続けている。米欧の専門家によれば、地方債務総額は最終的に15・4兆元(約187兆円)から20・1兆元(約244兆円)に膨れ上がる。中央政府など他の債務を加えると、円換算で300兆円以上に上りそうだ。
他方、筆者が集計したところ、ユーロの問題5カ国(ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガル、アイルランド)の11年末の政府対外債務の合計額は1兆3147億ユーロ(約136兆円)である。
もちろん、債務すべてが不良債務になるとはかぎらないが、日本では80年代の不動産担保融資の130兆円のうち8割以上がそっくり焦げ付いた。中国では返済できない地方政府が続出し、11年の返済必要額の大半は翌年以降に繰り延べられている。
もとより、中国の場合、政府主導による「飛ばし」がバブルの後始末の常套(じょうとう)手段である。債券に置き換えて、返済期限を先延ばしする。融資も投資をやめてしまうと、まるで巨大な二輪車のようにばったりと中国経済全体が倒れてしまう。
90年代初めの日本のバブル崩壊は世界の金融市場を揺さぶることがなかった。不良債権を抱えたのは日本の金融機関であり、海外とはほぼ無縁だったからである。中国の場合もその構図は日本と同様だが、投機マネーの主な出所は香港など海外に拠点を置く党の特権階層の隠し資産である。これらが一斉に逃げ出すと、中国株が暴落、ニューヨーク、東京など世界に波及するだろう。
重慶市共産党書記で共産党中央政治局委員だった薄煕来氏失脚を招いたのが谷開来夫人の殺人容疑で、夫人は80億元(約970億円)を海外に移し、協力者の英国人を殺害したかどで逮捕された。しかし、薄夫人のケースは巨大な不正蓄財と資本逃避のほんの一端にしか過ぎない。
中国バブルの崩壊を見て、米欧では、「ユーロ危機どころではない。チャイナ・クライシスをどうするか」との危機感が高まっている。(産経新聞特別記者・田村秀男)
中国の景気 減速感強まる
6月1日 14時41分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120601/k10015534321000.html
中国では、先月の製造業の景気判断を示す指数が6か月ぶりに前の月を下回り、ヨーロッパの信用不安などの影響で、景気の減速感が強まっています。
中国の国家統計局などは1日、全国の製造業820社を対象にした調査に基づいて「製造業購買担当者景気指数」を公表し、先月は50.4となり、前の月より2.9ポイント低下したと発表しました。この指数は、中国の製造業の生産や受注の増加や減少の傾向を基に景気の現状を示すものとされており、前の月を下回ったのは去年11月以来、6か月ぶりです。
これは、中国にとって最大の貿易相手であるヨーロッパの信用不安の影響で、輸出の低迷が続いていることや、中国の国内経済の先行きにも不透明感が出始めたことで消費など内需が伸び悩み、家電製品や自動車などの生産活動が鈍ったためとみられています。
中国政府は、こうした状況を受けて、先月、省エネ家電製品の購入に補助金を支給するなどの新たな景気刺激策を打ち出し、景気の減速を食い止める姿勢ですが、高成長を維持してきた中国でも景気の減速感が強まったことで、世界経済の先行きへの懸念が広がりそうです。
中国関連株が軒並み下落、中国PMI下振れで成長率鈍化を懸念
2012年 06月 1日 14:44 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE85003D20120601
[東京 1日 ロイター] 東京株式市場でファナック(6954.T: 株価, ニュース, レポート)やコマツ(6301.T: 株価, ニュース, レポート)、日立建機(6305.T: 株価, ニュース, レポート)など中国関連株が軒並み下落している。なかでもコマツは、1月6日につけた年初来安値1804円を更新している。
1日に発表された中国の5月製造業の購買担当者(PMI)指標の下振れを受け、経済の成長ペースが鈍化するとの見方が鮮明になったとして、売られている。
国内投信の運用担当者は、「上海総合株価指数.SSECがしっかりで、一部には中国の政策に期待する声もあるが、欧州の落ち込みは予想以上になりそうだ。ユーロ安も止まらない。どの程度の手を打ってくるのかにもよるが、やはり中国の景気動向には懐疑的にならざるをえない」との見方をしている。
阿比留瑠比が菅直人をメッタ斬り - 危機に最も不適格、悪しき「マイクロマネジメント」の典型 ― 2012/06/03 09:37
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【土・日曜日に書く】
危機に最も不適格な菅前首相(政治部・阿比留瑠比)
2012.6.3 03:18
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120603/plc12060303190006-n1.htm
決められない
国会の東電福島原発事故調査委員会が5月28日に行った菅直人前首相の参考人聴取は、大方の予想通り、菅氏の大弁明演説会となった。菅氏は自身の言動や判断が事故対応の混乱や遅れを招いたことへの自覚も反省も示さず、ひたすら責任転嫁を続けていた。
「よくもまあ、日本国民もこんなばかな首相をいただいたものだ。私の知る限り、歴史上最低の首相じゃないですか」
これは原子炉復水器の専門家として、昨年3月11日の事故発生直後から首相官邸に助言・提案を行っていた上原春男・元佐賀大学長の参考人聴取を見ての感想だ。
古くは福田赳夫氏から最近では安倍晋三氏まで、多くの首相からエネルギー政策全般について意見を求められてきた上原氏だが、菅氏にはあきれ果てたという。
経緯はこうだ。上原氏は事故発生を受けただちに首相官邸側に冷却系の回復を訴え、外部冷却装置設置のための図面も送った。
16日には事故対策統合本部の細野豪志首相補佐官(当時)に呼ばれて上京する。枝野幸男官房長官(同)や海江田万里経済産業相(同)とも会い、いったん事務所のある佐賀市に戻って作業に必要な機械類の手配を進めた。
「ところが、官邸高官らといくら話しても『首相がなかなか判断せず、決めてくれない。首相が最終決定権者だからどうにもならない』というばかり」(上原氏)
当時、政府関係者が「首相には大局観がまるでない。反対に、自分が知っている瑣末(さまつ)なことにこだわり、いつも判断を下すのが2日遅れる」と嘆いたのを思いだす。
理解できない
3月20日には、上原氏の事務所に民主党の原口一博元総務相や大串博志内閣府政務官らが集まり、原発事故対応を協議していた。そこで原口氏が携帯電話で菅氏に連絡し、上原氏に取り次いだところ、こんなやりとりがあった。
菅氏「あなたのリポートには目を通したが、技術的に理解できない。外部冷却装置はどこにつけるのか。私がどこにつけていいのか分からずに決定はできない」
上原氏「そんなことは首相が考えるべきことではないはずだ。技術的に分からずとも、やるやらないの決断はできるでしょう」
すると、菅氏は突然「なにいっ!」と激高して、日本語かどうかも聞き取れない言葉で延々とわめき散らしたという。
「ショックを受け、本当に怖くなった。一国の首相がこんな状態では国は危ないと感じた」
上原氏はこう振り返る。菅氏の意味不明の怒声はその場の議員らにも聞こえ、みんなが身ぶりで電話をやめるよう伝えてきた。
「(民主党は)なんでこんな人を首相にしたのか」
原口氏らをこう叱った上原氏は以後、「菅氏は早く辞めさせなければ」と確信したという。
今回の国会事故調の参考人聴取で菅氏は、政府外部からのセカンドオピニオン活用について「思いつき的な話もあったので、全部が実行されたわけではない」と語った。だが、中には菅氏の知識・能力では理解できないだけで、有効な対策もあったのではないか。
マイクロ管理
「東工大出身の理工系の首相ということで相当前へ出すぎたように見える。気負いはなかったか」
参考人聴取では、科学ジャーナリストの田中三彦委員が菅氏にこう問いかける場面もあった。
菅氏はこれを否定したが、2月に公表された民間事故調調査報告書によると、第1原発の非常用電源であるディーゼル発電機が壊れ、代替バッテリーが必要と判明した際、菅氏は異様な行動をとった。自分の携帯電話で担当者に「大きさは」「縦横何メートル」「重さは」などと直接質問し、熱心にメモをとっていたのだ。
官邸筋によるとこのとき、ふつうの政治家ならばまず「その事態にどう手を打つか」を考えるところを、菅氏は「なぜディーゼル発電機が壊れたか」に異常に関心を示し、議論がなかなか進展しなかったとされる。
菅氏はまた、国会事故調の参考人聴取で、事故翌日の3月12日早朝に第1原発を視察した意義についてこう述べ、失笑を買った。
「現場の考え方や見方を知る上で、顔と名前が一致したことは極めて大きなことだった」
国家の非常時に、現場の責任者の顔まで自分で見て確かめ、名前と一致させなければ納得できないトップとはどういう存在か。部下の業務を過剰に管理・介入したがる悪しき「マイクロマネジメント」の典型がここにある。
己の限界も足らざるところも知らぬ半可通が全て仕切ろうとし、必然的に多くの失策を犯した。それが官邸の事故対応の本質だったのだろう。(あびる るい)
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奥山真司氏の「戦略の階層」で福島原発事故を検証する
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2012/03/18/6379869
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