毎日:北極海航路をにらんでロシアと中国のつばぜり合い、注目の羅津港に影落とす張徳江の高速鉄道事故責任問題 ― 2011/09/27 07:40
<関連記事引用>
チャイナ・ウオッチ 欧州で土地買収計画 観光か北極海航路狙いか
http://mainichi.jp/life/money/kabu/eco/worldwatch/news/20110922org00m020030000c.html
◇金子秀敏(かねこ・ひでとし=毎日新聞専門編集委員)
新たな中国脅威論が欧州で出てきた。中国は欧州にとってやはり遠い国。これまで中国の脅威と言えば、洪水のように流れ込む中国製商品の姿をとっていた。それがもっと具体的な姿に変わってきた。
きっかけは、中国人富豪によるアイスランドの土地買収事件である。中坤集団という不動産開発企業を経営する黄怒波氏が、アイスランド北部に1億ドル(約76億5000万円)を投じてゴルフ場、エコツアー拠点などを建設し、国土の0.3%に相当する300平方キロメートルもの土地を取得するという計画が表面化した。
北極圏に近い氷河観光の国でゴルフ場を建設するために、それほど広い土地が必要なのか。中国の本当の目的は北極圏に拠点を作るためではないのか。アイスランドの隣国の英国で中国脅威論が高まった。
背景は、北極海を通る北回り航路の開通である。2015年というめどが見えてきた。これまで中国製品を積んだ貨物船は南のマラッカ海峡を通り、インド洋を横断し、スエズ運河を通って地中海に入ってきた。南回り航路である。
もし北回りの北極海航路の運用が始まれば、中国船はベーリング海峡からカナダ、あるいはロシアの沿岸伝いにアイスランド沖を通過して欧州の港に荷を降ろすだろう。南回りに比べて距離は約3分の1短縮でき、マラッカ海峡やソマリア沖の海賊というリスクからも解放される。実際に温暖化で北極海が通航できるようになれば、アイスランドの地政学上の位置は一躍、重要になってくる。中国海軍はそれを織り込んで遠洋進出の準備を着々と整えているのではないか。
確かに中坤集団の会長、黄氏は変わった人物である。チョモランマに登頂した登山家、詩や小説を発表する作家で「自分は二流芸術家、三流企業家」と自称している。文化大革命(1966~76年)中に少年時代を送り、父親が反革命分子と批判され自殺するなど辛酸をなめた。
文革後、学生募集を再開した北京大学の第1期生となり、卒業後は中国共産党・中央宣伝部の官僚として全国市長会の機関誌を編集していたが、テーマパークなど大型不動産開発に転進し富豪となった。
現在、中国人の長者番付で161位。純資産は、8億9000万ドル(約681億円)といわれる。本当に民間人なのか、民間企業はうわべで党や軍の外郭企業なのか。アイスランド政府のなかでも脅威論と反脅威論が対立している。
◇ロシアとつばぜり合い
実は北極海航路が動き出すと、中国は大きな壁に直面する。日本海に一番近い東北部の吉林省が北朝鮮とロシアの領土に阻まれて、直接海にアクセスできない。吉林省から日本海へ出るには、同省延辺朝鮮族自治州・図們市から高速道路で北朝鮮の羅津港に出るルートがある。これをにらみ、金日成総合大学に留学した張徳江・工業担当副首相が中心になって、中国は北朝鮮との経済協力を進めてきた。しかし、張副首相には7月に浙江省温州市で起きた高速鉄道事故の責任問題が出てきた。
ロシアはすでに羅津港の権益を確保しているが、さらに一歩を進めた。メドベージェフ大統領が訪露した金正日総書記と会談し、シベリアから天然ガスのパイプラインを韓国まで敷設する提案をした。中国を牽制しようという意図が見える。
最近、ロシア海軍の軍艦が多数、北海道・宗谷海峡を通過した。最新鋭の原子力空母を極東に配置することも決めたという。北回り航路をにらんでロシアと中国のつばぜり合いが始まった。ひとり日本だけが流れの外にある。
2011年9月26日
<画像引用>
金正日、外交席上で眼鏡を外す…5月の訪中時は着用
http://japan.dailynk.com/japanese/read.php?cataId=nk00100&num=13859
画像説明=金正日(右側)が12日、中朝友好条約締結50周年をむかえて北朝鮮を訪問した中国の張徳江・副総理と眼鏡をかけずに握手を交わす。/連合
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