「どうやって食べていこう」 浜岡の現実、その先にある日本の現実 ― 2011/05/25 07:23

手のひら返しの人気取りで太陽光などと熱く語る人よりも、
こんな時でもぶれない葛西敬之氏のような人の方が信頼できるかも。
それにしても今の政治家は随分と小さくなったものだ。
<関連記事引用>
地元潤す得意客、どこへ
2011年05月15日
http://mytown.asahi.com/shizuoka/news.php?k_id=23000001105150002
「どうやって食べていこう」
浜岡原子力発電所(御前崎市佐倉)から5キロと離れていない料理屋の経営者は不安を漏らした。和風の店内には、40人の宴会向けの座敷もあり、浜岡原発の従業員らが一番のお得意様だ。仕事帰りや新入社員歓迎会、打ち上げなどに利用されていた。
だが3月11日の東日本大震災で利用は半減。「全炉停止」で追い打ちがかかった。客が勤める中部電力の下請け会社も現地事務所を閉じるという。パート従業員を休ませ、営業時間を短くしてしのいでいるが、回復の兆しは見えない。
中電によると、浜岡原発では4月1日現在、原発と事務所で中電社員805人、協力会社の従業員2076人の計2881人が働く。県内在住者は8割超の2461人で、その半分を御前崎市民が占める。
加えて、13カ月以内の運転期間ごとに義務付けられている定期点検の時期には、協力会社の従業員数は原発1基につき千人程度増える。その取引先を含めると関係者は大きく膨らむ。御前崎市(人口約3万5千人)や隣接3市(同21万3千人)の雇用や、「衣食住」の消費に直結する。
「万が一、定期点検がなくなれば、店を閉めるしかない」。同原発近くの民宿の経営者(67)は、定期点検のために数カ月間滞在する原発関係者が頼りだ。
津波対策の防波壁の完成は2~3年後。運転停止中にも定期点検をするかどうかは不明だ。「一日も早く原発を再稼働させてほしい」
原発周辺には、原発関係者を見込んだ民宿やビジネスホテルも集まる。
原発に関わる会社が取引先というリサイクル会社の社長(48)は、取引が落ち込んでいると言う。「原発の仕事には下請け、孫請けの下に3次、4次、5次請けもぶら下がっている。2年も止めるなんて、国は地元を潰す気か。この街は原発なしでは生きていけない」と憤る。
一方、原発に出入りする車によく給油するというガソリンスタンド店長(51)は「原発が止まって安心。依存しなくてもなんとかやっていけるはず」と話す。
電力不足も不安材料だ。御前崎市の一部を管轄に含む「JA遠州夢咲」の幹部は、「特産のお茶の工場や、野菜や果物の予冷庫が安定的に稼働しないと品質が下がる」と心配する。
中電によると、浜岡原発が全炉停止すれば夏の電力供給力は、管内の最大需要量を下回る。同社は「火力発電所を稼働するなどの対策で補える」としながら、節電を呼び掛ける。
「地元の経済や雇用が大きく落ち込まないよう配慮して欲しい」。御前崎市商工会の阿形好(たか)男会長は、中電の取締役でもある水谷良亮・浜岡原子力総合事務所長に申し入れた。
その水谷所長は13日、地元4市でつくる「浜岡原発安全等対策協議会」に出席。会議後、水谷所長は「職種は変わるかもしれないが、地元2800人の雇用は減らさない」と言った。
下請け、孫請けまでの雇用が守られるのかは、分からない。(上沢博之)
浜岡原発従業員から悲痛なため息 下請けにしわ寄せ、急な対応に疑問視
2011年5月10日
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20110510/CK2011051002000127.html?ref=rank
「ついに来たか」「雇用はどうなるか」-。浜岡原発の全面停止が決まった9日、仕事を終えた浜岡原発の従業員の重い口からは、悲痛なため息が漏れた。
「だめだめ。日本の原子力発電はもう終わりだ。もう定年近いし、早期退職しかない」。子会社の男性(56)は吐き捨てるように言い、車のアクセルをふかした。
中部電力によると、今年4月1日現在、同原発に関わる中電や地元関連会社の従業員は計2881人に上る。このうち御前崎市民は1232人で43%を占める。
「うちは孫会社の中でも特に会社の規模が小さい」と語る地元関連会社の男性(51)は「全面停止で雇用にしわ寄せされるのは、下請けである地元企業」と説明。「20年近く浜岡に勤め、原子力で家族を食べさせてきた。年齢的に、もう再就職は考えられない」と肩を落とした。別の男性(53)は「今日の休憩時間は全面停止の話題で持ちきり。皆、雇用を不安に思うのは一緒」と振り返った。
地元市との積み重ねの歴史があるだけに、政府と中電の急な対応を疑問視する声も上がった。浜岡1号機の建設時から30年以上にわたり、原発維持管理に携わる地元企業の男性(62)は「東海地震対策はこれまでもしてきた。全員、まじめに仕事をしてきたのに、ここに来ての全面停止は悔しい」。子会社の別の男性(61)は「失業者が出れば、地元の関連企業との今までの関係が台無しになる。中電の説明責任が問われる」と語った。
政府が示す「危険」や「安全対策」の判断に疑問を呈す従業員も。関連会社の男性(39)は「危険といって運転を全面停止しても、核燃料は原発内に残る。これをまず撤去せねば危険性はぬぐえないのでは」と指摘。「御前崎市はこの原発でもっている街。中電は防波壁などは1日も早く建設して、運転を再開してほしい」と付け加えた。 (静岡総局・美細津仁志)
JR東海会長・葛西敬之 原発継続しか活路はない
2011.5.24 03:53
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110524/plc11052403530006-n1.htm
津波による福島第1原発の被災により日本のエネルギー政策は最後通告を突きつけられた形だ。
一方では、現場の映像や風説に恐慌を来した人々が原発反対を唱え、定期点検を終了した原子炉の運転が再開できない状況である。全国54基の原発プラントはこれまで総発電量の約30%を発電してきたが、既に7基がこのような形で運転停止となり、このままでは1年余りのうちにすべて停止してしまうだろう。
もう一方には地震・津波・原発事故で損害を受けた人々を支援し、被災地域を復興するという大事業があるが、そのためには日本経済が力強く活力に満ちていなければならない。経済の血液循環とも言うべき電力の安定供給を瞬時も途切れさせてはならない。
相剋(そうこく)する2つの現実のはざまで日本はまさに進退窮まってみえる。
原発停止を求める人々は火力発電や再生可能エネルギーの活用に活路を求めよと主張する。しかし質・量・コストいずれの点から見ても一部補完以上の期待はできない。
今日の原発は50年に亘(わた)る関係者の営々たる努力と数十兆円に上る設備投資の結晶であり、それを簡単に代替できる筈(はず)がない。原発を止めれば電力供給の不安定化と電力単価の高騰を招き、それに続く企業の業績悪化、設備投資・雇用の縮小、経済の停滞・空洞化、税収の減少、財政の悪化、国債の信用崩壊などの連鎖は日本経済の致命傷となりかねない。
これまで原子力発電はクリーンで低コストの自前電力を確保する国策の切り札として推進されてきた。原子力を利用する以上、リスクを承知のうえで、それを克服・制御する国民的な覚悟が必要である。国はそれを正面から問うべきだった。しかしながら見たくない現実には目をつむり、考えたくない困難には心を閉ざす敗戦後の日本の弊風(へいふう)の中でリスクはできるだけ当事者の腹中に収め、必要性と利用価値のみをアピールする形でしか進め得なかった。今回の災害がもたらした原発危機の淵源(えんげん)はここに発する。
しかしすぐにでも現場の安全対策に生かせる貴重な教訓も得られた。それは初動における迅速な決断と果断な処置が被害を最小限に食い止める鍵を握るということだ。緊急時の責任体制と対処方法を明確に定め必要な資機材を適切に配置し、迅速な動員体制を整え、日常の訓練により十分に習熟しておけば同じ災害に直面しても今回の事態は避けられる。
日本は今、原子力利用の前提として固めておくべきだった覚悟を逃げようのない形で問い直されているのだが、冷静に現実を見れば結論は自明である。今回得られた教訓を生かして即応体制を強化しつつ、腹を据えてこれまで通り原子力を利用し続ける以外に日本の活路はない。
政府は稼働できる原発をすべて稼働させて電力の安定供給を堅持する方針を宣言し、政府の責任で速やかに稼働させるべきだ。今やこの一点に国の存亡がかかっていると言っても過言ではない。本件については与党も野党もない。日本の政治家として、声を一つにして国民に語りかけ、日本経済の血液循環である電力の安定供給を守り抜いてほしい。この一案件だけに限った挙国一致内閣があっても良いのではないかと思う。(かさい よしゆき)
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