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マーティン・ウルフの問いかけ、それは日本人にとって他人事なのか?2011/03/03 08:02

マーティン・ウルフの問いかけ、それは日本人にとって他人事なのか? 


日本もまた「石油供給安定の代償としての抑圧」に依存してきたではないか。
偽善者と呼ばれたくないなら、少しは自分たちのことのように考えてみよう。
アラブ世界を見る目も変わってくるはずだ。


<関連記事引用>

[FT]アラブ世界の自由の価値は、石油安定供給よりも低いか
2011/3/3 0:00
(2011年3月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
http://s.nikkei.com/gVi8tn

 アラブの民衆蜂起は、世界にとってどんな意味を持つのだろうか? この問いへの答えを知る人は誰もいない。だが、それは人が様々な不確実性を推測するのを妨げるものではないはずだ。

■アラブ世界が求める自由は欧米と同じ

 筆者はエコノミストとして、一連の出来事の1つの側面について奇妙な励みを覚える。アラブ情勢は政治専門家の予想能力が少なくともエコノミストと同じくらい限られていることを示しているからだ。

 こうした出来事はすべて、本質的に予想不可能だ。それが「未知の未知(unknown unknowns)」だからではない。一連の出来事は、むしろ「既知の未知(known unknowns)」だ。つまり、我々は多くのアラブ諸国がこうした激変に見舞われやすいことを知っているが、いったいいつ起きるのか、あるいは起きるか否かさえ、誰にも分からないのだ。

 我々は、そうした出来事が起きる確率も知らない。ハムレットが言うように「覚悟がすべてだ」ということになる。

 では、政治的な影響については何が言えるだろうか?

 1つの結論は、表現の自由や政治参加の魅力が「アラブには通用しない」という概念がついえた、ということだ。しかし我々は一方で、制度が弱く、抑圧の歴史がある貧しい国では、抑圧から安定した民主主義へ至る道のりが、長く、厳しいものになることも知っている。

■政治的発言権の切望は普遍的な欲求

 チャウシェスク体制崩壊後のルーマニアが、欧州連合(EU)との関係構築にもかかわらず困難に苦しんだことが、この課題の大きさを物語っている。

 次の大きな問題は、アラブ世界の中にとどまらず、その他地域も含めて、政情不安がどこまで広がっていくか、だ。従来は、産油国は国内で富を広める力があるため、政情不安から守られていると想定されてきた。バーレーンの後、ましてやリビアの後では、この仮説はもう説得力を持たない。

 震源地からの地理的、文化的な距離は一定の保護を与えてくれるだろうし、経済の活力と優れた統治もある程度の保護になるだろう。

 だが、一連の出来事は、政治的な発言権への切望がいかに普遍的であるかを示している。アラブは西側の理想とされているものに対して文化的な免疫があるという考えは、信ぴょう性が低くなったように思える。この波は消えていくかもしれないが、新たな波が後に続くだろう。

■不幸を招く原油価格の100%以上の上昇

 次に経済的な影響に目を向けてみよう。産油国が混乱を免れる限り、経済的な影響は短期的には最小限で、長期的にも小さいと見なすことができる。エジプトの経済でさえ、市場為替レートで見てチェコ共和国より規模が小さい。

 だが結局、産油国も混乱と無縁ではいられないようだ。その結果、原油価格は3月1日に1バレル=114ドルを超え、2010年5月の水準より64%高くなっている。過去の石油ショックの記憶がある人にとって、これは憂慮すべき前兆だ。問題は、我々はいったいどれほど心配すべきなのか、ということだ。

 エコノミストのギャビン・デービス氏は先週、FT.comに寄せた寄稿で「世界の経済活動が大幅に落ち込んだ過去5回のケースでは、いずれもその直前に原油価格が大きく急騰している」と指摘した。原油価格の高騰は、1970年代のように供給ショックが引き金となったこともあれば、2008年のように需要急増が引き金となったこともある。

 しかし、結果は常に不幸なものになった。HSBCのスティーブン・キング氏も「原油価格が100%以上、上昇すると時計のように規則正しく国内総生産(GDP)の縮小をもたらす」と述べている。

 石油ショックには、複雑な経済効果がある。石油の消費者から生産者へと所得を移転させる。消費者は通常、生産者が支出を増やす以上に速いペースで支出を減らすため、支出総額を減らす効果もある。

■短期的な世界景気の後退は不可避

 また、石油ショックは支出をシフトさせ、その他のモノやサービスにお金が向かわないようにする。石油の純輸出国を豊かにする一方で、純輸入国を貧しくする。物価水準を押し上げる。実質賃金と、エネルギーを利用する産業の収益性を引き下げる。そして、生産能力が不経済になるため、供給量を減らす効果がある――。

 一部の効果はすぐに表れる。例えば、物価水準への影響がこれに当たる。一方、長期的な効果もあり、これは石油ショックの持続性に左右される。その一例が、生産能力への影響だ。また直接的な効果もあれば、政策対応に左右される効果もある。

 今のような早い段階で、こうした影響について何が言えるだろうか? デービス氏は、今の価格水準では、原油価格が1バレル当たり20ドル上昇すると、石油に対する支出額が世界の支出総額の1%相当ほど増えると指摘している。

 だが、原油価格は過去10カ月間で40ドル上昇している。そうなると、原油高の影響は世界の生産高の2%近くに上る。少なくとも短期的には、顕著な世界的景気減速を引き起こすのに十分な規模である。

 総合して見ると、デービス氏が指摘しているように、先進国よりもエネルギー集約度の高い新興国経済に与える影響の方が大きいだろう。無駄の多いエネルギー政策をとっている米国も、他の先進国よりずっと影響を受けやすい。

■混乱、サウジにどこまで波及するか

 この先の展開は、価格高騰の持続性と政策対応に大きく左右される。最近の価格高騰が短期的なもので済めば、経済効果は反転するだろう。重要な問題の1つは、一連の混乱が他の産油国、特にサウジアラビアにどれほど影響するか、だ。

 今のところ、サウジアラビアは失われたリビアの原油生産を代替できる。リビアの産油量(世界全体の2%前後に相当)はサウジアラビアの余剰生産能力よりも少ないからだ。さらに、直接影響を受けた国々で生産が減少したとしても、生産設備に被害が及ばないとすれば、短期間で終わるはずだ。

 産油国の政府は収入を必要としている。民主的な政府は独裁者以上に収入が必要かもしれない。

 消費者は、石油ショックが短期的なものだと確信すればするほど、貯蓄に手をつける気になる。これまで、エネルギーを輸入する新興国は限られた借入能力、不十分な外貨準備、弱い対外ポジションに苦しめられてきた。新興国が1970年代後半に石油輸入を賄うために借り入れを行った時は、1980年代に巨大な債務危機に見舞われる羽目になった。

 これはもはや真実ではない。今では新興国も支出を続けて短いショックを乗り切れるはずだ。

■抑圧は石油供給安定の代償か

 さらに、インフレ期待が抑制されている限り、各国中央銀行は先手を打って政策引き締めを行う必要はない。この点では、インフレがより大きな危険で、インフレ期待があまり抑えられていない新興国よりも、高所得国の方がかなりいい状態にある。

 結局、我々は振り出しに戻ってくる。高い不確実性が存在する世界である。政変が極めて重要であり、恐らくは歴史的な転換点になる、ということは分かっている。我々はまた、壊滅的なものとはほど遠く、恐らくは短期的なものだろうが、石油ショックがかなり重要かもしれないということも知っている。

 とすると、全体的には、長期の政治的な影響の方が経済的な影響よりもはるかに重要に思えてくる。

 しかし、短期的な経済効果に関するこのような楽観論は、部分的には一層の混乱拡大が食い止められているという前提に依存している。また、昔の悪しき取引の継続に依存する面もある。すなわち、石油供給安定の代償としての抑圧である。

 これは消費者にとっては魅力的な取引だ。だが、それは道義的に望ましいことなのか? そして、長期的に見て政治的に持続可能なのだろうか?

By Martin Wolf


Arab freedom is worth a short shock
By Martin Wolf
Published: March 1 2011 22:06 | Last updated: March 1 2011 22:06
http://www.ft.com/cms/s/0/7b6f9f2c-4441-11e0-931d-00144feab49a.html#axzz1FU7OY8oE

That would also depend on the continuation of the bad old bargain: repression as the price for stability in oil supply. It is an attractive bargain to consumers. But is it morally desirable or even politically sustainable in the long run?

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