日経「地図で読む地政学」 - 米大物軍略家アンドリュー・マーシャルの視線は中印に ― 2010/10/21 16:55
本ブログで指摘してきたことがそのまま記事になっています。
<関連記事引用>
中国、外洋への出口探る 地図で読む地政学
2010/10/21 12:01
http://s.nikkei.com/a6RUUm
地図は地理関係を表すだけでなく、国家戦略を導く道標でもある。各国にある様々な「世界地図」は自国が中心で、それぞれ戦略立案の起点になっている。視点を変えた地図を見ると、各国を取り巻く国際環境が浮かび上がる。地図から透ける「地政学」を研究する。
今月14日、中国山東省煙台。中国農業省の漁業監視船「漁政118」がいかりを上げ、ゆっくりと出港した。向かった先は尖閣諸島近海。9月中旬から10月6日まで別の監視船が巡視しており、尖閣沖で監視を常態化する方針を裏付ける。
資源確保にらむ
中国政府の監視船による尖閣沖の監視強化は、9月の中国漁船衝突事件を契機としたものだが、単なる偶発的な事件への対応ではなく、資源確保をにらんだ海洋戦略の一環でもある。
中国の大陸内部から日本を見渡した視点の地図を見てみよう。中国にとって日本列島は中国の海洋進出を妨げる「不沈空母」に映る。米国と軍事関係を持つ日本や台湾、フィリピンが「中国包囲網」を形作っている。
中国は日本列島から沖縄、台湾、フィリピンをつなぐ防衛ラインを「第1列島線」と呼ぶが、これは米軍の勢力圏をつなぐ線でもある。中国海軍は第1列島線での影響力確保にメドを付け、太平洋側に活動範囲を広げつつある。さらに影響力の浸透を狙う小笠原諸島からサイパン、グアムをつなぐ「第2列島線」にも米軍基地が置かれる。
太平洋進出に的
太平洋への出口を狙う中国の本格的な戦術は1990年代にさかのぼる。海洋調査船が沖縄本島と宮古島の間を含めた海域の調査を実施したのは96年春。99年からは東シナ海の日本近海で中国海軍の艦艇の航行が相次いで確認された。2008年11月には駆逐艦など4隻が沖縄本島と宮古島の間を抜けて太平洋側に進出。南シナ海で実践したように「漁船→調査船→軍艦」の順で既成事実を積み重ねつつある。
08年10月、駆逐艦など4隻が中国の戦闘艦として初めて津軽海峡を通過、太平洋側に抜けた。中国にとって海軍が太平洋側に回れる軍事的な効果は大きい。台湾独立阻止を想定した場合、太平洋側の米軍の空母などへの攻撃がやりやすくなる。中国海軍は「沿岸・近海防衛海軍」から「外洋海軍」に脱皮しつつある。
米軍も対応を強化する。米国防総省は2月発表の「4年ごとの国防戦略見直し(QDR)」で海空戦力の一体運用に重点を置く「統合エアシーバトル構想」を提唱。70年代にさかのぼるエアランドバトル構想の後継戦術で、7月の米韓合同軍事演習で実践した。
南シナ海に視点を移すと、90年代前半にフィリピンのクラーク空軍基地とスービック海軍基地から米軍が撤退。「力の空白」が生じたことで、中国は南沙(英語名・スプラトリー)諸島などに調査船や海軍艦艇を派遣、実効支配へ布石を打った。中国は今春から台湾やチベット問題に使う「核心的利益」という表現を南シナ海にも使い始め、7月には過去最高の難度の実弾演習を実施、米海軍の監視をけん制する。
中国の国家海洋局が掲げる「中レベルの海洋強国入り」の目標は2020年。周辺国との摩擦は一段と広がる可能性が高い。
(北京=佐藤賢)
米大物軍略家、視線は中印に 地図で読む地政学
2010/10/21 12:01
http://s.nikkei.com/bH6sZt
中央にどっかりと中国とインドが鎮座している。その周りを取り囲むようにユーラシア大陸や朝鮮半島、日本など他のアジア諸国が並ぶ。
2006年春に米国防総省の「奥の院」を訪れたとき、こんな風変わりな地図が飾られているのを見た。
その部屋の主はアンドリュー・マーシャル相対評価局長。当時、84歳だったので、今や90歳近い。なお現役ばりばりの伝説的な軍略家である。
マーシャル氏の任務は米国の国益にかかわる世界の動きを分析し、超長期の安全保障戦略を練ることだ。ほとんどメディアに登場せず、その活動は機密のベールに包まれている。
それでも、中国とインドを中心に描いたこの部屋の特殊地図をながめると、マーシャル氏の思考が見えてくる。つまり、米国の長期戦略を左右する大きな要因は欧州でも中東でもなく、中印の行方にあるというわけだ。
当時、国際情勢の展望をマーシャル氏にたずねると、中国をめぐる「不確実性」が最大の変数のひとつになると指摘した。必ずしも中国の軍事増強だけを指しているわけではない。
「中国は一人っ子政策で高齢化が急速に進み、男女の人口比率もかなり不均衡だ。水資源の問題も抱えている」。マーシャル氏はこう語ると、「中国内がどうなるか判然としないのだ」とつぶやいたまま、押し黙ってしまった。
中国内部の安定が揺らげば、対外政策も強硬に傾きかねない。米国はそう懸念しているようにも思える。
その一方で、インドへの警戒感は薄く、むしろ戦略的な協力相手になると期待しているふうもある。「インドは我々と多くの価値観を共有しているからね」。マーシャル氏のこの一言からその理由が読み取れる。(編集委員 秋田浩之)
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