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韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件社説集2010/05/21 08:29



<韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件社説集>

▼【主張】哨戒艦沈没報告 北に断固たる制裁とれ 日米同盟強め韓国と連携を(産経)
2010.5.21 03:35
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100521/kor1005210336001-n1.htm

 韓国海軍の哨戒艦「天安」沈没事件の原因について、韓国軍と民間専門家による国際合同調査団が「北朝鮮の小型潜水艦から発射された大型魚雷によるもの」と断定する調査報告を発表した。北朝鮮は関与を否定しているが、報告は具体的事実を網羅し、信頼に足る内容である。

 事件は46人の犠牲者を出し、韓国に対する戦争行為に等しい軍事的暴挙といわざるを得ない。昨年春の弾道ミサイル発射と核実験の強行に続き、北東アジアの脅威を高め、世界の平和と安全に対する許し難い挑戦である。日本は米韓との連携を強化するとともに、国連安全保障理事会などを通じて協力し、国際社会の総意として断固たる制裁を発動すべきである。

 ◆直視すべき危険な現実

 事件は日本の防衛と安全保障にも重大な問題を突きつけた。何よりも朝鮮戦争勃発(ぼっぱつ)60年の節目に起きた事件が象徴するのは、日本の安全に直結する北東アジアで、戦争再発につながる危機と緊張が半世紀以上を経て今なお続いているという現実だ。

 にもかかわらず、鳩山由紀夫政権下で米軍普天間飛行場移設問題も解決できず、日米同盟は深刻な空洞化の危機に瀕(ひん)している。ミサイルと核の脅威に加え、北のさらなる挑発や朝鮮半島有事の備えも含めて、政府は国の総力を挙げて防衛態勢を再構築すべきだ。

 事件が起きた北方限界線(NLL)海域は朝鮮戦争休戦協定直後の1953年夏に設定され、南北の武力衝突が繰り返されてきた。今回の事件も、昨年11月に起きた大青海戦で韓国側が北朝鮮艦艇に甚大な被害を与えた事件に対する周到な「報復」とみられる。

 北朝鮮は合同調査団報告を「でっち上げ」とし、韓国側の報復や制裁に対して「全面戦争を含む強硬措置で応える」と警告した。一片の反省もなく、米国や李明博・韓国政権への対決姿勢を鮮明にしたことは、今後も同様な攻撃や挑発があり得るとの前提で対応しなければならない。

 とりわけ韓国は、11月に主要20カ国・地域(G20)金融サミット開催を予定している。北の攻撃はこれを威嚇・妨害する効果を狙っているとも考えられる。

 報告を受けて、李大統領は週明けにも韓国政府の対処方針を公表するが、少なくとも新たな対北制裁の追加に向けて国連安保理に問題を提起する可能性が高い。米国内では、過去に北朝鮮が起こしたラングーン事件(83年)や大韓航空機爆破テロ(87年)を想起し、ブッシュ前政権時代に解除された「テロ支援国家」に北を再指定すべきだとの意見もある。

 米政府は「休戦協定違反」と厳しく非難した。今後は、クリントン国務長官が21日に来日して岡田克也外相らと協議し、訪中や米韓協議を経て具体的な対応を詰めていく見通しだ。

 その場合、日本政府は核、ミサイル、拉致問題を一括解決するとの既定方針を貫くためにも、テロ支援国家再指定をオバマ政権に強く求めるべきである。また安保理制裁を履行する上で懸案となっていた北の船舶に対する貨物検査法案が20日、衆院を通過したのを踏まえて、制裁の実効性をさらに高めるために早急に成立させる必要があることもいうまでもない。

 ◆中国の責任は大きい

 北の暴挙をやめさせる上で、とりわけ中国の責任は大きい。中国政府は今月初め、沈没事件に対する北の関与説が強まっていたにもかかわらず、金正日・北朝鮮総書記の訪中を受け入れ、6カ国協議の早期再開へ向けた経済支援について話し合った。

 大規模経済支援では合意に至らなかったとの観測もあるにせよ、今回の事件で中国政府が消極的対応を示しているのは理解できない。現在は6カ国協議の再開よりも事件への対応を優先する必要がある。北が協議に無条件復帰しないかぎり、北に見返りを与える形で復帰を促すべきではない。

 鳩山首相は20日、関係閣僚会議を開き、「米韓を含む関係各国と緊密に連携・協力していく」との談話を発表した。基本方針として当然だが、テロ支援国家再指定問題も含めて、米韓の態度表明を待つ姿勢では主体性に欠けるといわざるを得ない。

 今回の国際調査も、日本の直近で起きた事件である以上、何らかの形で貢献することもできたはずだ。人ごとではない。日本の安全を自ら守る毅然(きぜん)たる姿勢と日米同盟を強化する指導力を発揮しなければ国の安寧は保てない。


▼日米韓で哨戒艦沈没の責任を北に迫れ(日経)
2010/5/21付
http://goo.gl/g1Tx

 韓国海軍の哨戒艦「天安」が3月末、朝鮮半島の西側の黄海上で沈没した事件について、韓国軍と民間専門家による合同調査団は「北朝鮮製の魚雷による爆発」が原因との報告書を発表した。北朝鮮の犯行と断定した内容だ。ゆゆしき事態である。

 日本政府は調査結果を深刻に受け止め、米韓両国と連携し、北朝鮮に厳しい対応措置を取るべきだ。

 南北の境界付近で起きた哨戒艦沈没事件では、乗組員46人が犠牲になった。報告書は、沈没現場海域で回収した魚雷の部品が北朝鮮製と一致し、北朝鮮独自のハングル表記も確認したと指摘。北朝鮮が魚雷攻撃したとの結論を出した。

 調査団には、米英やオーストラリアなどの専門家も含まれている。中国が特に求めていた「科学的で客観的な調査」といえる。信頼に値する報告書とみるべきだろう。

 北朝鮮は関与を否定し、調査報告書も「ねつ造劇」と反発している。だが、過去の国際テロ事件で、北朝鮮が関与を否定した経緯も忘れてはなるまい。韓国の閣僚が犠牲になった1983年のラングーン(現ヤンゴン)での爆弾テロ事件、100人以上が犠牲になった87年の大韓航空機爆破事件などだ。日本人拉致事件も長らく犯行を認めなかった。

 韓国政府は調査報告を受け、国連安全保障理事会への上程や独自の制裁強化を進めるという。

 日米は韓国と緊密に連携し、国連安保理を通じた追加制裁を含め、北朝鮮に対する国際包囲網を一段と強める必要がある。日本は北朝鮮に出入りする船舶への貨物検査を実施する特別措置法の成立も急ぐべきだ。米政府は、北朝鮮をテロ支援国家に再指定することを真剣に検討すべきではないか。

 冷静な対応を求めている中国を説得するのも、日米韓の重要な役割である。核問題解決を急ぐためにも、北朝鮮を過剰に刺激すべきではないというのが中国の立場だが、哨戒艦沈没の責任をあいまいにしたまま、何事もなかったように6カ国協議の再開努力を続けるのは無理がある。

 そもそも、国際社会の警告を無視し、核実験や弾道ミサイル発射といった挑発行為を繰り返してきた北朝鮮の暴走が問題なのである。ここは厳しく、北朝鮮に責任を取るよう迫るのが筋だろう。

 朝鮮半島の有事に備えた対応も欠かせない。北朝鮮は潜水艦部隊を日本海にも配置しているという。日本政府は今回の哨戒艦沈没事件をひとごとととらえず、日本の安全保障上の脅威と受け止める必要がある。


▼韓国哨戒艦沈没 やはり「北」の魚雷攻撃だった(5月21日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100521-OYT1T00093.htm

 朝鮮半島の西側の黄海で、3月26日に起きた韓国海軍哨戒艦「天安」の沈没事件について、韓国の軍・民間合同調査団は「北朝鮮の魚雷攻撃」によるものだった、と結論づける調査報告を発表した。

 名指しされた北朝鮮は、ただちに「捏造(ねつぞう)だ」と反発し、制裁に対しては「全面戦争を含む各種の強硬措置で応える」と恫喝(どうかつ)した。

 今後の展開次第で、北朝鮮が危険な挑発行為に出る恐れもある。日米韓の3か国は連携を強め、これを断固阻止する決意で臨まなければならない。中露両国も、これに呼応すべきだ。

 調査団には、米、英、豪、スウェーデンの専門家も加わった。

 「北朝鮮の犯行」を裏付ける決め手となったのは、沈没現場の海域で回収したスクリューを含む魚雷用の推進動力部品だった。北朝鮮の輸出兵器カタログに載った魚雷の設計図に示された部品と大きさや形状が合致していた。

 そうした物的証拠も公開しての発表は客観的で説得力がある。

 当の北朝鮮は、事件との関与を否定している。だが、日本人拉致や、韓国の4閣僚らを爆死させた27年前の爆破テロなどで、ウソを重ねた北朝鮮のことだ。額面通りには受け取れない。

 事件現場は、韓国と北朝鮮の艦艇が衝突を繰り返してきた一触即発の海域だ。昨年11月にも、機関砲を撃ち合い、北朝鮮側に損害が出た。魚雷攻撃はその報復だとする見解が韓国内にはある。

 韓国は今回の事件を機に、防衛政策の抜本的見直しに入った。米韓同盟の一層の強化を打ち出す見通しだ。左派政権の対「北」融和政策の結果、北朝鮮への警戒が薄れていたことへの反省がある。

 韓国政府は、国連安全保障理事会に提訴する方針だ。

 鳩山首相とオバマ米大統領は、李明博大統領との個別の電話会談で韓国への支援を約束した。安保理では、北朝鮮の責任を厳しく問う文書の採択に尽力すべきだ。

 中国が、調査結果発表を受けて北朝鮮非難の姿勢を見せるかが、注目される。この際、中国には毅然(きぜん)と対処してもらいたい。

 北朝鮮の核廃棄を目指す6か国協議の再開は、今回の事件の影響で、当面ずれ込むと見られる。だが、それは協議復帰を渋る北朝鮮にとって、核兵器開発の時間を稼ぐことにつながる。

 日本の安全を直接脅かす北朝鮮の核開発を野放しにはできない。日本としては、6か国協議の早期再開の道を探る必要がある。


▼社説:北朝鮮魚雷 共同対応で制裁措置を(毎日)
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100521k0000m070108000c.html

 まがまがしい物証が白日の下にさらされた。韓国海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」の沈没事件につき、軍と民間の多国籍合同調査団は「北朝鮮製魚雷による水中爆発」が原因と断定し、魚雷のスクリューなど残骸(ざんがい)を公表した。爆発時に発生する物質がこの残骸と天安の両方に付着していた事実なども確認し、信頼度を高めた。

 また、「魚雷が北朝鮮の小型潜水艦艇から発射されたという以外の説明はできない」という判断も、潜水艦部隊の動向など状況証拠にも依拠しているものの十分な説得力があり、妥当と言えよう。

 鳩山由紀夫首相は「韓国を強く支持する。北朝鮮の行動は許し難い」とコメントした。一方、北朝鮮の国防委員会は声明で、調査結果を「捏造(ねつぞう)」と決めつけ、制裁などに対しては「全面戦争を含む強硬措置」で応えると宣言した。金正日(キム・ジョンイル)総書記を委員長とする事実上の最高機関による異例の直接反応である。

 きょう訪日するクリントン米国務長官は、中国、韓国と続く3カ国歴訪中、「天安」沈没問題も重要議題とする。この歴訪の事前説明でキャンベル国務次官補は、北朝鮮をめぐって「近日中に非常に深刻な状況に直面する」と述べた。危機局面に入ったと言わざるを得ない。日米韓は細心の注意を払い、緊密に協力する必要がある。

 韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は既に「断固たる対応」を宣言している。しかし武力報復の選択肢はない。事態がより深刻化する危険や経済への悪影響を考慮してのことだ。既存の南北協力事業のうち、北朝鮮側地域に韓国企業を誘致している開城工業団地は運営を維持するという。厳しい対立と冷ややかな協力が共存する南北関係ならではの緊張状態が続くことになる。これはやむを得まい。

 韓国政府は問題を国連安全保障理事会に持ち込み、対北朝鮮制裁に結び付けたい意向だ。しかし北朝鮮の後ろ盾になっている中国は一貫して慎重姿勢をとってきた。現状のままでは制裁決議どころか議長声明での非難も難しいだろう。

 だが安保理以外にも制裁的措置をとる方法はある。以前に効果が証明された米国の金融制裁強化や「テロ支援国家指定」の復活、米韓合同軍事演習によるけん制などだ。

 46人もの犠牲を出した事件は到底容認できるものではない。核問題を扱う6カ国協議の進展が一時困難になろうとも、まず確固たる共同対処で北朝鮮の行動を変えさせる必要がある。それが核問題の解決にもつながるという展開が望ましい。

 そのためには結局、中国の協力が不可欠だ。選択肢の少ない日本も、こうした点で知恵を出したい。


▼韓国艦撃沈―北朝鮮に断固たる外交を(朝日)
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

46人もの兵士が犠牲になった韓国軍の哨戒艦の沈没は、北朝鮮製の魚雷によるものだった。そして、それは「北朝鮮の小型潜水艦艇からの発射以外に説明がつかない」。5カ国からなる合同調査団がきのう、そう発表した。

 戦争の引き金になりかねない撃沈だったということだ。日本を含む東アジア全体の安全をも大きく揺るがす許しがたい暴挙である。

 動機は不明だ。金正日総書記への忠誠心競争が暴走した結果なのか。軍の威信を高め、後継体制づくりに利用しようとしたのか。昨秋、北朝鮮艦艇が海上の事実上の境界を南に下って韓国軍に撃退されたが、その報復との見方もある。いずれにしても異様な国家の異様な行動である。

 北朝鮮は報告書を「でっち上げだ」としている。だが、1968年には韓国大統領府への襲撃を図った。83年にビルマ(現ミャンマー)訪問の大統領一行を狙ったラングーン爆弾テロ、87年の大韓航空機爆破と、韓国に対してテロを繰り返してきたが、北朝鮮は関与を認めていない。

 冒険主義に走ることをいとわない危うい体制であることが改めて如実に示された。

 しかし、この攻撃は北朝鮮自身にとっても無謀の度が過ぎたのではないか。経済の窮状は深刻化し、金総書記は健康不安を抱えている。国の先行きはますます不透明になっている。

 また、決定的とも言える証拠が出たことで、これまでそれぞれの思惑から事態を大きく動かすことに慎重だった周辺国も態度を変える可能性がある。

 韓国の国民の憤りは激しい。李明博大統領は「断固たる対応措置をとる」と語った。国連安全保障理事会での制裁を呼びかける方針だという。

 北朝鮮にこれ以上の暴挙を重ねさせてはならない。同時に朝鮮半島の緊張をいたずらに高めない。これは日本を含め地域全体で取り組むべき課題だ。

 まず、米中の役割が大きい。ことに中国が重要な役割を担わねばならない。さきの金総書記の訪中では、経済支援などで中朝間に溝があったともいう。北朝鮮の言動を中国が不快に思っているからでもあろう。中国には、経済面での強い影響力を生かし、北朝鮮の挑発的な行動を抑え、外交の場に引き出す努力を続けてもらいたい。

 鳩山由紀夫首相は「韓国、米国をはじめ関係各国と緊密に連携・協力していく」と述べた。きょうクリントン米国務長官が来日して鳩山首相らと会談する。長官は中韓も歴訪する。月末には日中韓の首脳会議も開かれる。

 北朝鮮は東アジアで最大の不安定要因であり、この事件はすぐれて日本の問題でもある。米国、韓国との深い関係を生かし、中国に働きかけを強める。外交努力が待ったなしだ。


<関連比較社説>

▼アジア協力の礎は日米同盟(日経)
2010/5/21付
http://goo.gl/RHLb

 宗教や文化が異なる国々が集まるアジアでも、いつか、欧州のような共同体をつくれるはずだ。鳩山由紀夫首相は20日の演説で、こんな発想に立って、東アジア共同体の創設を改めて呼びかけた。

 首相は就任時から東アジア共同体構想を唱えてきたが、その具体像はなおはっきりしない。今回の演説はそうした指摘も踏まえ、実現に向けたイメージを示そうとしたものだ。

 演説から浮かび上がるのは次のような道筋だ。各国との経済連携協定(EPA)を推進するとともに、国境を越えた脅威である大災害や疫病、環境問題に共同で対処する。

 その一方で、芸術や文化の交流も広げていく。首相は各国が毎年、持ち回りで「芸術都市」を指定し、アーティストらの交流を進めるアイデアも示した。

 アジアの活力を日本に取り込むためにも、アジア各国との連携を強めることは重要だ。鳩山政権はそうした路線をかかげる以上、停滞している日韓の自由貿易協定(FTA)の交渉を加速するなど、もっと日本を開放する努力を払ってほしい。

 より肝心なのは、アジアの企業や人びとが安心して交流を進められる環境を整えるため、日本がどのような責任を果たすかという視点だ。

 経済や文化、芸術の交流の大前提になるのが、政治や社会の安定だ。ところが、アジアには平和を脅かしかねない火種がくすぶっている。

 哨戒艦の沈没事件で揺れる朝鮮半島に限らない。タイでも混乱が続いているほか、ミャンマー情勢も不安定だ。近年の中国海軍による遠洋への進出をめぐっても、アジア各国の懸念が深まっている。

 こうした安全保障上の不安が高まれば、東アジア共同体の実現はおろか、経済協力や文化、芸術の交流も根付きづらいだろう。

 アジアの安定を保障するうえで、米軍の存在は極めて重要である。特に日米同盟はその支柱といえるが、米軍普天間基地の移設問題で日米関係の亀裂が深まっている。

 首相はまず、普天間問題の混乱を早期に収拾し、同盟を立て直すべきだ。それなくして東アジア共同体を説いても、アジア各国は真剣には受け止めないだろう。


▼普天間共同声明―米国優先は禍根を残す(朝日) 
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

覆水、盆に返らず。今更、日米合意の現行案に限りなく近い形に戻すといっても、解決にたどりつけるとは思えない。負担を引き受ける沖縄の理解を後回しにするやり方が通るだろうか。

 米海兵隊普天間飛行場の移設問題で、日米両政府が今月末、外務・防衛担当閣僚名で共同声明を発表する方向で最終調整に入った。

 移設先は名護市辺野古周辺と明記されそうだ。具体的な工法には触れないが、鳩山政権が提案した桟橋方式に米国側が難色を示していることから、最終的には埋め立てが採用されるとの見方が強まっている。

 鳩山由紀夫首相としては、共同声明という体裁を整え、「5月末決着」を果たしたと言いたいのだろう。

 しかし、この進め方は今後に大きな禍根を残す。

 首相はこれまで、沖縄と米国双方の理解を得て案をまとめると繰り返してきた。沖縄が反対する県内移設を米国と合意して政府方針とするなら、鳩山政権が結局は沖縄よりも米国との関係を優先したということになる。

 首相が現行案の見直しに挑戦したのは、在日米軍基地の75%が集中する沖縄の負担を軽減し、国外・県外移設を求める県民の願いに何とか応えたいという思いからではなかったのか。

 それが、本気で「県外」への糸口を探ることもないまま公約をほごにし、沖縄の頭越しに米国と手を握るというのでは、県民の目には二重の裏切りと映るに違いない。

 北朝鮮の魚雷による韓国哨戒艦沈没やイランの核開発問題など、日米関係をいつまでもきしませたままにできない事情はある。同盟関係維持の大切さは言うまでもない。

 しかし、基地問題を解決するには、沖縄との信頼関係が決定的に重要だ。

 沖縄の政治状況はこの間、様変わりした。国外・県外移設を求める世論はかつてない高まりをみせ、名護市では初めて移設反対派の市長が誕生した。

 辺野古移設を条件つきで容認していた仲井真弘多知事といえども、簡単に同意できる立場ではない。新たな日米合意を盾に辺野古移設を強行すれば、大きな混乱は避けられまい。

 2014年までの移設完了という現行案の日程が実現できなくなることも大いにありうる。そんな展開は米国にとっても望ましくないだろう。

 鳩山政権のこれまでの迷走は見るに堪えないが、安保の負担を沖縄に押しつけてきた差別的構造を見つめ直し、国民全体で安保を考えようという機運も一部には出始めている。世論の前向きな変化の腰を折ることになるなら、首相の罪は重大である。

 態勢を立て直し、安保とその負担のあり方を米国と、沖縄と、そして国会で議論し直すことを改めて求める。


<関連記事引用>

日本、迫られる危機対応 哨戒鑑沈没
2010/5/20 21:24
http://goo.gl/QFNJ

 韓国哨戒艦の沈没を巡る朝鮮半島情勢の緊迫は日本の安全保障にも深刻な影響を与える。北朝鮮が韓国の調査結果を支持する日本の近海に弾道ミサイルを発射する可能性も排除できない。政府は既に朝鮮半島有事も想定した対処を内々に検討しているが、米軍頼みの状況は変わらない。その主力を担う沖縄の米軍普天間基地の移設を巡っては日米の溝が深く、信頼関係には不安も残る。

 岡田克也外相は21日、急きょ来日するクリントン米国務長官と都内で会談し、朝鮮半島有事も視野に日米間の緊密な連携を確認する。

 新たな日米防衛協力のための指針(ガイドライン)や周辺事態法、有事法制、ミサイル防衛――。冷戦が終結した1990年代から、政府が有事への対応を進めた背景には93年のノドン発射に始まる北朝鮮の脅威があった。

 だが、3月末の韓国哨戒艦の沈没以降、韓国の動きを予測して鳩山由紀夫首相が関係閣僚に具体的な指示をした形跡はない。普天間移設問題の対応を誤り、多くの労力を割かざるをえなかった影響も大きい。昨年の北朝鮮の核実験をきっかけにした北朝鮮に出入りする船舶の検査をしやすくする特別措置法案が、20日の衆院本会議でようやく通過したのも、鳩山政権の無関心を象徴している。

 朝鮮半島の緊張が高まった場合、周辺事態法に基づく自衛隊による米軍の後方支援活動や、在外邦人保護が課題として浮上する。自衛隊による邦人保護は輸送の安全確保が前提。結局、米軍に依頼するしかなくなるケースもあり得る。

 「自衛隊の警戒レベルを引き上げなくていいのか」。20日の衆院本会議場で、中井洽国家公安委員長は首相にささやいた。首相は「平野博文官房長官がいいと言ってるから大丈夫だ」と答えるだけだった。

次なる鳩山仰天発言は「北朝鮮が抑止力の大切さをより一層分からせてくれた」になるの?2010/05/21 10:10



先の沖縄訪問で「学べば学ぶほど海兵隊の抑止力の大切さが分かった」と語った鳩山首相。

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を巡って、28日にも発表される予定の日米共同声明を前に「今回の韓国海軍哨戒艦沈没事件で皆さんも抑止力の大切さがわかったことでしょう」などと言い出すかもしれない。

今なお「抑止力」を疑問視する声が民主党左派や社民党に残る中、「北朝鮮が抑止力の大切さをより一層分からせてくれた」とまで言って退ければ感動もの。

迷走の果ての現行案回帰を正当化するために利用される韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件。そして北朝鮮の脅威。そのためいささか煽り気味。韓国が国連安全保障理事会に決議を求めるということであれば「先頭を切って走るべきだ」と述べるほど。

確かに韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件で朝鮮半島の緊張がより一層高まったことは事実。しかし、この事件が起きたのは3月26日。しかも事件発生直後から北朝鮮の犯行を疑う声が高まっていた。

事件発生からの2ヶ月間、鳩山政権は何をしていたのか。北朝鮮に注視することなく普天間移設問題に明け暮れ、迷走していただけではないのか。

北朝鮮の脅威は今に始まったことではない。こう問われた時、鳩山首相がどう応えるのか。今度もまた「私は愚かな総理かもしれません」で逃げ切れるとでも思っているのだろうか。


<関連記事引用>

クローズアップ2010:韓国艦沈没 北朝鮮、周到準備か
http://mainichi.jp/select/world/news/20100521ddm003030067000c.html

日本、具体策なく米韓連携へ

 日本政府は哨戒艦沈没が北朝鮮の攻撃と断定されたのを受け、直ちに「韓国を強く支持する」とする鳩山由紀夫首相のコメントを発表した。ただ、具体的な措置には言及しておらず、当面は米韓両国との連携や中国への働きかけを強調する程度にとどまりそうだ。

 岡田克也外相は20日、調査結果について「客観的であり、信頼できると考える」と評価し「北朝鮮に対して国際社会とともに強く批判する」と語った。

 それでも、日本が北朝鮮に対して行使できる影響力は限定的なのが実情だ。06年のミサイル発射や核実験を受け、すべての北朝鮮籍船舶の入港禁止や北朝鮮からの輸入禁止に踏み切ったものの、北朝鮮は既にその打撃を中国などとの関係強化によって補っている。

 公式な北朝鮮との政府間対話は、拉致問題の再調査で合意した08年8月の協議以来途絶え、民主党政権下では一度も開かれていない。このため、日本は今月末の日中韓首脳会談や日中首脳会談で中国に対し、北朝鮮への影響力を発揮するよう要請するとみられる。だが、北朝鮮が関与を否定する中、中国が同調する可能性は低い。

 一方、北朝鮮の攻撃と結論づけられたことで、米軍普天間飛行場の移設問題で迷走する鳩山政権内に「抑止力論議に追い風だ」(党中堅)との見方が出始めた。普天間問題を契機に「抑止力」を疑問視する声が沖縄や社民党内で強まっており、政府は対応に苦慮している。28日にも発表する対処方針でも「抑止力の説明ぶりが焦点になっている」と政府関係者は明かす。