オバマのノーベル平和賞授与は「早すぎる花道」か? ― 2009/10/11 00:57
10月10日の毎日新聞朝刊(画像引用)。
「被爆者の願い通じた」の大見出しを掲げてオバマのノーベル平和賞授与を祝福。
今やオバマは日本の反核・平和団体の教祖様。
しかし、米国内では保守派を中心に批判続出。
保守派論客といえば、本ブログですでにお馴染みのグレン・ベックとラッシュ・リンボー。
この二人が読売記事に揃って登場という珍現象まで。
ノーベル平和賞が米国の亀裂を深めるようだとジョークにもならない。
このあたりにノーベル賞委員会の隠された狙いもあるのか。
「一つのアメリカ」を目指すなら、ここは受賞辞退を真剣に検討した方がよい。
まだ何も結果を出していないのだから時期尚早。
こうした助言が側近から出てこないことにオバマ政権の弱点がある。
ブルームバーグは「早まった聖人化」と書いている。
このニュースを知った時、私は直感的にこれは「早すぎる花道」ではないかと思った。
不吉なことが起こらなければいいのだが・・・。
<関連記事引用>
オバマ政権の負担に?…平和賞で広がる戸惑い
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20091010-OYT1T00900.htm
【ワシントン=黒瀬悦成】オバマ米大統領へのノーベル平和賞の授与が決まった9日、米国では「オバマ政権は全世界の人々の希望を体現している」(カーター元大統領)などと歓迎の声が上がる一方、保守勢力を中心に「何も実績がなく、受賞は不適当だ」と厳しい批判も広がっている。
ホワイトハウスでは同日、ギブス大統領報道官に記者団が「冷戦終結に道を開いたレーガン大統領は受賞していない」「ウィルソン大統領以降の受賞者はカーター元大統領、ゴア元副大統領と民主党員ばかりだ」と選考に関する質問を次々に浴びせ、報道官は「私はノーベル賞委員会の一員ではない」と懸命にかわした。
一方、保守派の論客からは「大統領は受賞を辞退しろ」(グレン・ベック氏)、「ノーベル賞委員会は自らの権威を失墜させた」(ラッシュ・リンボー氏)と強硬な批判が相次いだ。平和賞の受賞に保守勢力が一斉に反発を始めたことで、医療保険制度改革などの内政面で目立っていた民主・共和党間の亀裂が、外交分野でも一層鮮明になるのは確実と見られる。
オバマ政権にとって、アフガニスタンへの米軍増派の是非など、安全保障の根幹にかかわる懸案では、国論を分断させないためにも共和党を含む超党派の合意が欠かせない。今後、核不拡散などで実績を上げられなければ、世論の失望感が一気に高まることも予想され、大統領は受賞がかえって負担となり、苦しい立場に追い込まれかねない恐れがある。
ノーベル賞:オバマ米大統領平和賞 冷ややか米国世論
http://mainichi.jp/select/world/news/20091010dde001040030000c.html
◇「平和」への実績これから アフガン増派と矛盾も
【ワシントン草野和彦、小松健一】オバマ米大統領の09年ノーベル平和賞受賞が決まった9日、米国内の雰囲気は祝賀ムードにほど遠く、驚きと戸惑い、さらには批判の声さえも聞かれた。最大の理由は、米国民が喜びを共有できる「実績」が大統領にないためだ。「戦時大統領」への「平和賞」というイメージのギャップも大きく、支持層のリベラル派までが祝福を控えた。
大統領の受賞声明を受けて始まったホワイトハウスの定例記者会見。「おめでとう」の言葉もなく始まった質疑応答では、容赦のない質問が相次いだ。
「期待ばかりで、何も結果がないという認識を助長しないか」「冷戦終結に導いたレーガン(元大統領)は受賞しなかったが」。ギブス大統領報道官は困った様子で、「私はノーベル賞委員会のメンバーではない」と答えるしかなかった。
折しも政権内では、アフガニスタンへの米軍増派を巡る議論が進行中。「大統領は受賞の辞退を考えたか」との質問も出て、報道官は「私が知る限りでは、ない」と突っぱねた。
ホワイトハウス前はいつも通り、観光客でにぎわった。「オバマ・サポーター」の白人男性ローゼルさんは、「正直に言うと、『なぜ?』だね」。白人女性シェレンさんは、訪米中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世のセミナーに参加した帰りで「ダライ・ラマは真の平和活動家。オバマが自分の発言を実行するよう期待しているわ」と淡々と話した。
ノーベル賞委員会は大統領の「核兵器のない世界」へ向けた理想と行動を重視した。
だが、反戦・核軍縮の米最大規模の団体「ピース・アクション」の声明は、アフガン増派を検討するさなかの受賞を「皮肉なことだ」と指摘。「核兵器のない世界」についても、「平和賞に値する業績がない」とし、「平和を推進する力」を示すように求めた。
共和党や保守層はより辛らつだ。黒人で共和党全国委員会のスティール委員長は声明を発表。「確かなことは、大統領は雇用創出、財政責任などで、米国民からいかなる賞も得られないことだ」と皮肉った。保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」はニュースメールで、「ノーベル賞は、米国の内政に横やりを入れ、政治論争の種をまいている」として、ノーベル賞委員会に批判の矛先を向けた。
こうした中、援護者は過去の同賞受賞者ら。カーター元大統領(02年受賞)は「大統領のビジョンと決意を世界が支持するとの力強い意思表示だ」と評価。ゴア元副大統領(07年受賞)も「大統領が既に成し遂げたことが、歴史的観点から高く評価された」と絶賛した。また大統領の核戦略に影響を与えた一人、ナン元上院軍事委員長は「(核軍縮・不拡散への)地球規模の焦点と議論を再形成した」と喜んだ。共和党のマケイン上院議員は、CNNテレビで「大統領が誉れ高い賞を得たことを誇りに思う」と祝した。
オバマ大統領へのノーベル平和賞授与に批判-「早まった聖人化」
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=a1Yq5eJ2DR7U
10月9日(ブルームバーグ):ノルウェーのノーベル賞委員会が核軍縮や中東和平などの公約の実現前にオバマ米大統領にノーベル平和賞を授与すると9日発表したことについて、批判を集めている。
ノーベル賞委員会は過去にも受賞者選定に政治的意向を反映させたとして非難されたことはあるが、実際の成果ではなくビジョンの提示を理由に国家元首への授与を決めたのは今回のオバマ大統領が初めて。
プリンストン大学のフレッド・グリーンスタイン教授(歴史学)は今回の授賞について「早まった聖人化」だと述べ、「ノーベル賞選考プロセスにとって不名誉なことだと思う」と語った。
ノーベル平和賞候補者リストの締め切りは2月1日だった。これはオバマ大統領の就任から2週間足らずの時期で、核不拡散や米国とイスラム諸国との関係再構築に向けたイニシアチブを打ち出す前だった。
ノーベル賞委員会は授賞理由として、オバマ大統領による国際的な外交と協調を強化する並外れた努力を挙げるとともに、世界政治に「新たな環境」を創出し、ブッシュ前大統領が無視したとされる「多国間外交」の復興を目指した点も評価した。
<参考世論調査>
Poll: Obama wins Nobel Peace Prize. Should he have?
http://totalbuzz.freedomblogging.com/2009/10/09/poll-obama-wins-nobel-peace-prize-should-he-have/23251/
Should Obama have gotten Nobel Peace Prize?
Yes. He's transforming U.S. foreign policy to a global one. 131 22% of all votes No: He hasn't done anything signficant to promote peace. 371 63% of all votes Not sure: It's a little early to judge him on the world stage. 84 14% of all votes
Total Votes: 586
Started: October 9, 2009
英保守党のインナー・サークル Meet the new Tory establishment ― 2009/10/11 01:06
<画像引用>
Meet the new Tory establishment
By Jean Eaglesham; Illustrations by Miles Donovan
http://www.ft.com/cms/s/2/ac5f0298-af38-11de-ba1c-00144feabdc0.html
http://www.ft.com/cms/s/2/ac5f0298-af38-11de-ba1c-00144feabdc0,dwp_uuid=14c54e92-b4ca-11dd-b780-0000779fd18c,print=yes.html
「米国排除」に5紙が一斉警告、東アジア共同体社説読み比べ ― 2009/10/11 10:09
<東アジア共同体社説引用>
<産経>【主張】日中韓首脳会議 米国抜きの共同体は危険
2009.10.11 03:04
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091011/plc0910110305002-n1.htm
鳩山由紀夫首相と温家宝中国首相、李明博韓国大統領の日中韓首脳会議が北京で開かれ、北朝鮮の6カ国協議早期復帰と再開へ向けた協力で一致し、東アジア共同体構想の検討などを盛り込んだ共同声明を発表した。
鳩山首相は2日間に日韓、日中首脳会談もこなし、就任後初のアジア訪問外交を締めくくった。
北朝鮮の核・ミサイル廃棄や拉致問題の解決を促す日中韓の協力体制強化は当然であり、歓迎できる。だが、首相の東アジア共同体構想には米国や中国の位置づけなど懸念される点が多い。日米同盟関係を危険にさらさないように、首相は明確で首尾一貫した説明を果たす責務がある。
北朝鮮問題では温首相が先の訪朝結果を報告した。これを受けて米国が検討中の米朝協議や日朝、南北の2国間協議再開の展望も踏まえて、日中韓の連携を深めることを確認した。
ただ、北に軟化の兆しが見えるにせよ、協議復帰に条件を付ける可能性もある。6カ国協議再開の道は平坦(へいたん)ではない。各国は「無条件復帰するまで国連制裁を着実に進める」という方針を今後も堅持すべきであり、3首脳がこの点を強調しなかったのは残念だ。
さらに心配なのは東アジア共同体構想だ。首相は先月、ニューヨークでの日中首脳会談や国連総会演説で構想をぶち上げたが、この間に行われたオバマ米大統領との会談では構想の説明を避けた。このため米側では「日本がアジア諸国と協力を深めるのは賛成だが、米国を排除するような地域枠組みは有益といえない」(米高官)との苦言や警戒の声が出ている。
首相は「米国を除外するつもりはない」(首相就任会見)というが、岡田克也外相は「日中韓、東南アジア諸国連合、インド、豪、ニュージーランドで考えたい」と「米国抜き」を明言し、両者の説明はちぐはぐだ。日中韓首脳会議後の会見で、首相が「今まで米国に依存しすぎていた」と語ったことにも大きな違和感を受ける。
首相は欧州連合(EU)型の共同体を描いているとの見方もあるが、その場合には政治・社会体制も異なる中国をどう位置づけるかの説明をすべきだろう。
アジア外交で日本が指導力を発揮する前提となるのは同盟を通じた日米の連携と協力があってこそである。首相と外相はこのことを肝に銘じてもらいたい。
<読売>日中韓首脳会談 アジア重視の前提は日米同盟(10月11日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20091010-OYT1T01084.htm
鳩山外交の本質はやはり「脱米入亜」だと受け取られないか。
北京で行われた日中韓首脳会談で、鳩山首相は「今までややもすると米国に依存し過ぎていた」と述べた上で、「日米同盟は重要だと考えながら、アジアをもっと重視する政策を作り上げたい」と表明した。
首相の意図は、自民党政権下の外交を「米国依存」と印象づけ、政権交代による外交姿勢の変化をアピールしよう、ということなのだろう。
首相は、先の訪米の際は日米同盟が基軸だと強調していた。
だが、北京での発言は「日米同盟は重要だと考えながら」と前提をつけてはいても、首相の目指す「東アジア共同体」構想は、外交の重心を米国からアジアに移すもの、と解釈されかねない。
日本外交の基本はあくまでも日米同盟基軸である。誤解を招かないよう、首相には繰り返し強調してもらいたい。
東アジア共同体構想について、首相は首脳会談で、日中韓3国が核となって推進することを呼びかけた。具体的には経済連携の強化や青少年交流、大学間交流の促進を提案した。
しかし、経済連携ひとつ取ってみても、日本の経済連携協定(EPA)交渉は停滞気味だ。
特に韓国とは交渉が中断してから5年近くが経過している。農産物自由化への日本の消極姿勢が一因と言われている。
対韓EPA交渉は、東アジアとの経済連携を進めるうえでの試金石である。首相は、交渉再開に向けた環境整備を外務、農水両省などに急がせるべきだ。
北朝鮮の核問題は、6か国協議の早期再開に向けて関係国で共同して取り組むことを確認した。
国連安全保障理事会の制裁決議による「圧力」を維持しながら、6か国協議による「対話」を通じて、北朝鮮を核放棄のプロセスに引き込むことが大切だ。
日本は、制裁決議の実効性を保つため、北朝鮮貨物検査法案を早期に成立させる必要がある。だが、政府内では、臨時国会に提出する法案を絞り込むため、貨物検査法案の提出を来年の通常国会に先送りする声が強まっている。
制裁決議の提案国である日本がそんな優柔不断な態度では、中国や韓国に対して、厳格な決議の履行を迫れるはずはなかろう。
首相は、貨物検査法案を臨時国会で成立させるよう、指導力を発揮すべきである。
<日経>社説1 日中韓は東アジア共同体を語ったが(10/11)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20091010AS1K1000310102009.html
北京で開いた日中韓首脳会談は、鳩山由紀夫首相が唱える東アジア共同体構想を「長期的な目標」とすることで合意した。経済、安全保障、環境、エネルギー、文化などで幅広く協力する共同声明も発表した。
格調の高い言葉が並ぶ割に、中身の乏しさは否めない。世界金融危機のさなかの昨年12月の会談では、外貨資金繰りに困った韓国を助けることで日中が合意した。今回はいかにも抽象的な合意にとどまった。
例えば、人民元について何を話したのか。このところ経常収支など対外不均衡の是正に焦点が当たるなか、ドルは下落基調にある。一方、中国は国内の輸出企業に配慮して昨年夏以降、人民元を事実上のドル連動に戻した。ドルと共に人民元の相場が下がる結果、中国以外のアジア諸国の輸出競争力は低下している。
競争力低下で貿易収支が悪化した韓国は、巨額のドル買い介入を余儀なくされている。今回の会談は通貨問題を素通りした。日韓が中国を生産拠点にしているという事情はあろうが、基本的な経済問題に関して腹を割って話し合えないようでは、まだ本物の友好関係とは言えまい。日中韓の名目国内総生産は合計で世界の2割弱。世界経済が直面する課題への取り組みは不十分だ。
焦点となったのは北朝鮮の核問題だ。直前に訪朝した中国の温家宝首相は、金正日総書記が「日韓と関係を改善したいと述べた」と明らかにし、6カ国協議の再開機運を盛り上げた。北の核放棄では前進はみられない。中国のエネルギー支援が北の独裁体制を支えている。中国は本気なら一層の努力をすべきだ。
12月にコペンハーゲンで開く気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に関しては「成功へ緊密に協力する」と打ち出した。中国はいまや世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国。責任は重大だ。日韓は中国への技術支援をテコに、対応強化を求めるべきだろう。
「今まで、ややもすると米国に依存し過ぎていた」。鳩山首相は会談の冒頭でこう述べ、アジア重視の考えを示した。日中韓が「東アジア共同体構想の核」と言明した。
日本が中韓と手を携えて地域共同体を目指す意味は大きいが、米国をどう位置づけるかの難問が残る。日韓、日中の間には未解決の領土問題がある。特に中国は海軍力を軸に軍備を急ピッチで増強している。
日本の安全保障には米国との同盟が決定的に重要だ。対米関係を一段と強固にする姿勢がなければ、対アジア自主外交もおぼつかない。
<朝日>日中韓―「共同体」の模索が始まる
http://www.asahi.com/paper/editorial20091011.html#Edit1
日中韓3国の首脳会議が北京できのう開かれ、「歴史を直視し、未来に向かう」と誓い合った。始まって10年になるこの会議は、日本の政権交代を受けて、相互信頼と対話の新たな段階に入ったと言えるのではないか。
鳩山由紀夫首相が掲げている「東アジア共同体」は、共通の長期的な目標として共有することになった。
鳩山政権のアジア外交は、歴史問題を抱えてまだぎこちない3国関係のベクトルを、共同体に象徴される未来の方へ向けることから取りかかろうとしている。
オバマ米大統領が唱えるような、多国間協調を大切にする世界の外交の流れにも沿ったものだと考えたい。
この勢いを今月下旬にタイで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議、来月のシンガポールでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議へとつなぐべきだ。
東アジア共同体構想の萌芽(ほうが)は、マレーシアのマハティール元首相が唱えた東アジアの経済統合にあった。以来20年近く、多様な構想が政府や民間で浮かんできたが、まだまだ同床異夢の段階を超えてはいない。
その間に、中国の台頭に伴って、経済的な相互依存が進んできた。様々な地域協力も動き出している。だが、体制の違いのほか、資源や領土問題などの課題も抱え、単純に欧州統合と並べてみることはできない。
何より大きな問題は、米国の存在をどう考えるかだ。鳩山政権内ですら、首相が「除外するつもりではない」と言えば、岡田克也外相は「米国まで含めることになっていない」と語るなど、いろいろな見解がある。
いずれにしても、米国と対立するような共同体はありえない。今度の首脳会議で鳩山首相は「日本は米国に依存しすぎていた」と述べた。自民党政権との違いを印象づけたいという狙いだろうが、ならばなおさら、その真意を内外に十分説明する必要があろう。
自民党政権も、将来的な東アジアの姿に向け、経済や防災、犯罪防止などの分野で地域協力を進めてきた。これからもそうした協力の網を重層的に、厚く築いていかねばならない。
とはいえ、目の前に北朝鮮の核という問題が立ちはだかっている。
金正日総書記と会談したばかりの温家宝中国首相からは、北朝鮮が日韓との関係改善を望んでいるようだという説明があった。だが、6者協議再開への道筋が見えたわけではない。
日中韓の首脳が未来のアジアの姿を念頭に置きつつ、地域の平和と安定に向けて率直に話し合えたのはいい。大切なのは、現実の難しさを乗り越える確かな方向性を共有することだ。時間はかかろうが、これが鳩山首相の言う「共同体」の原点ではないか。
<毎日>社説:日中韓首脳会談 「共同体」の全体像示せ
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20091011k0000m070092000c.html
日中韓首脳会談が中国・北京で開かれた。席上、鳩山由紀夫首相が持論の「東アジア共同体」構想を提起し、中国の温家宝首相、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領から好意的な反応を得たという。日本のアジア外交がやっと動き出した。
この数年間、自民党政権下で日本のアジア外交は影が薄かった。驚異的な経済成長によって大国の地位を確立した中国と、その中国に急接近する米国という二つの風圧にあおられて金縛り状態になっていた。袋小路から抜け出せたのは、政権交代の効果だろう。
しかし「東アジア共同体」は、鳩山首相の独創ではない。日中韓首脳会談という枠組み自体が、「東アジア共同体」構想の一部として生まれたのである。日中韓首脳会談の前身は、1997年にクアラルンプールで開かれた3カ国首脳非公式会合だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)が非公式首脳会議を開いた時に、その場を借りて行ったので貸座敷外交と呼んだ。提唱者は当時の橋本龍太郎首相だった。まだ中国の影響力はそれほど大きくなく、吹き荒れるアジア通貨危機の対応で日本が指導力を発揮した。
ASEAN首脳と日中韓3首脳を合わせた枠組みは、10年前のマニラでのASEANプラス3首脳会議で「東アジア協力共同声明」につながった。そこから「東アジア共同体(EAC)」の論議が生まれ、豪州、ニュージーランド、インドを加えた現在の東アジアサミット(EAS)に発展した。その中で、昨年からASEANから独立して日中韓の3カ国首脳会談が動き出した。
「東アジア共同体」構想はすでに存在している。鳩山首相は、これまで小泉純一郎氏など歴代の首相が語ってきた「東アジア共同体」とどこが違うのか、その点をまだよく説明していない。
米国は東アジア共同体の論議に以前から入っていない。だが、米国がアジア市場から締め出されると警戒していることは間違いない。
首相は会談で「ややもすると米国に依存しすぎていた」と語ったという。わかりやすいが、日本が反米になったのではないかと神経をとがらせている米国のことも忘れてはならない。思わぬ反発を受けないよう、鳩山流共同体論の全体像を具体的に提示すべきだ。
中国からは北朝鮮が日朝協議の再開を望んでいるという情報が伝えられた。停滞していた日朝関係が動き出しそうだ。それを前に、日中韓の首脳が連携を示したことは、北朝鮮へのメッセージになった。鳩山首相は、軍事力より外交力がまさることを今後の実績で示してもらいたい。
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