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米中戦略対話社説集に見るG2過剰反応2009/07/31 00:26

China and America Europe Should Fear G2 Rather than G20 Financial Times Deutschland


台頭する中国が気になって仕方がない。
米中関係の行方が気になって仕方がない。
そんな日本を象徴するかのように7月30日付新聞社説には米中戦略対話がズラリ。

揃いも揃って「G2」に言及している点に注目。
海外主要紙をざっと見渡してもG2などほとんど見当たらない。

日本独特の過剰反応と言えます。


<米中戦略対話社説集>

米中戦略対話 どう進む新しい時代の「G2」(7月30日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090729-OYT1T01199.htm

 米中の閣僚級による初めての戦略・経済対話がワシントンで開かれ、共同文書が発表された。

 ブッシュ前政権時代に始まった経済対話を、外交・安保なども協議する場に格上げし、定例化する。

 オバマ米大統領が「米中が21世紀を作る」と述べた意味は重い。

 2大主要国「G2」と呼ばれ始めた米中が、世界経済だけでなく、国際社会の平和と安定に重要な役割を果たしていく決意を表明したものだ。

 米国は、経済力をつけた中国を重視し、責任を共有させることを狙っている。中国も、米国債の最大の保有国になったことを背景に、米国への影響力を行使しようというのだろう。

 経済的に相互依存関係を強める米中が協調しなければ、解決できない課題が多いのも事実だ。しかし、外交・軍事面で、両国は依然、緊張の火種を抱えている。協調と対立の中で、今後の米中関係がどう進むのか注目される。

 共同文書はまず、経済分野で、中国に対する米国の赤字が膨らむ貿易不均衡を是正し、着実な成長を図るための協調をうたった。

 米国は過剰消費の見直し、中国が消費拡大による内需拡大策を課題に掲げたのは、両国の抱える問題に照らせば当然のことだ。

 米国の財政赤字削減も盛り込まれた。中国が財政健全化とドルの安定を求めたためだ。米国が財政赤字を削減することは、金融危機克服を目指す日本など世界経済にも寄与する。

 地球温暖化問題では、温室効果ガスの2大排出国である両国が対話の枠組み創設で合意した。両国が真剣に取り組まねば、温室効果ガスの削減は実現できない。

 中断している北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議については、再開の重要性を確認し、非核化に向けた努力の継続で一致した。

 核実験を強行した北朝鮮に対する国連制裁決議については、「履行の有効性」を強調した。米側は改めて中国側に制裁の実行を促したものと見られる。

 反テロへの取り組みや核軍縮に向けた連携強化も協議した。人権問題も取り上げられたが、共同文書はウイグル暴動など少数民族問題に言及せず、「台湾問題」も触れなかった。

 金融危機や地球温暖化、北朝鮮問題などは、日本の国益に直結する重要課題だ。日本は米国と緊密に連携するとともに、中国にも責任ある役割を果たすよう、引き続き求めていく必要がある。


日経社説2 米中は「G2」を演出したが…(7/30)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20090729AS1K2900629072009.html

 米中両国政府が開いた戦略・経済対話は、世界経済の回復に向けた努力の強化や地球温暖化問題での協力、北朝鮮の核問題での協調などを打ち出した。地球規模の問題に米中が連携して取り組む「G2」の枠組みの始動を印象づけたが、具体的な成果を出せるかどうかは未知数だ。

 米中間では従来、経済問題を話し合う戦略経済対話と外交・安保問題に関する対話が別々に進められてきた。これを統合し格上げしたのが戦略・経済対話で、27~28日にワシントンで初会合を開いた。

 米側はクリントン国務長官とガイトナー財務長官、中国側はマクロ経済担当の王岐山副首相と副首相級で外交担当の戴秉国国務委員が共同議長をつとめた。多数の重要閣僚や中央銀行総裁を含め出席者は中国側だけで150人に及び、2国間協議としては異例の規模になった。

 開会式で演説したオバマ大統領は「米中関係が21世紀を形づくる」と語りG2の重要性を強調した。ただ世界に貢献するG2となれるのか、今回の協議では見えてこなかった。

 閉幕後に発表された共同声明によると、世界金融危機からの脱却と両国経済の持続的な成長に向けて米国は経常赤字削減と貯蓄率向上につとめ、中国は内需主導の成長へ消費を振興すると、それぞれ約束した。

 いずれも両国経済の構造的な問題として長らく指摘されてきた課題である。遅きに失した感もあるが、外交文書で明記したのは一歩前進で、実行を見守りたい。

 米国が人民元切り上げを促したのに対し中国は「米ドルの下落こそ心配」とかわした。米国債の最大の保有国となった中国に強気に出られない米国の立場が、改めて浮き彫りになった。とはいえ長い目でみれば中国の内需主導の成長への転換のためにも切り上げは必要なはずで、さらに協議を深めるよう期待したい。

 地球温暖化問題では政府間対話の創設で一致したが、温暖化ガス排出に向けた具体策には踏み込まなかった。米中は温暖化ガスの二大排出国で、12月に期限を迎える温暖化抑制への新たな枠組み(ポスト京都議定書)の成否を左右する。地球環境と人類の未来への強い責任感をもって早急に協議を進めてほしい。


朝日社説 米中戦略対話―歴史の転換に目を凝らす 
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

国交樹立から30年がたち、米国と中国の関係は歴史的な変化を遂げつつある。経済から安全保障まで様々な懸案を閣僚級で話し合った初の米中戦略・経済対話に、そんな思いを強くした人が多いのではないだろうか。

 ニクソン米大統領が72年に訪中して竹のカーテンを開け、米中は79年に国交を結んだ。それ以降の歩みは、超大国の米国が共産党独裁の発展途上国である中国を国際社会に引き込もうとしてきた過程だったといえよう。

 グローバル化の中で驚異的な経済成長を続ける中国は対米輸出などで貿易黒字をため込み、外貨保有も米国債の保有も世界一になった。米国との経済面の相互依存は世界同時不況を機にかつてない深まりを見せている。

 米国が危機対策の財源を確保しつつドルの安定を図るには、中国による米国債購入の継続が欠かせない。貿易不均衡を是正するにも、中国が財政出動をてこに内需主導への転換を進めるよう期待せざるを得ない。

 一方、米国の危機が長期化したり、財政赤字が拡大したりしてドルが下落すれば、中国は保有する米国債の目減りで損をこうむる。

 こうした関係にある両国が対話を本格化させたことは必然的であり、世界の安定にとっても意義深いことだ。

 北朝鮮問題では、国連安全保障理事会による制裁決議履行の重要性を改めて確認しただけでなく、米国が検討中の対北朝鮮包括提案を中国が後押しすることでも合意した。米中の結束は北朝鮮問題解決の鍵だ。

 地球温暖化についての政策対話の枠組みを創設することになったほか、イランや中東問題での高官協議緊密化にも合意した。どれも成果を得るには大きな努力が必要だ。

 米中の凪(なぎ)状態がいつまでも続くという保証はない。とはいえ懸案に外交的に取り組む態勢はできたといえよう。

 それにしても、今回の対話で米国の中国への気遣いは尋常でなかった。オバマ大統領は「米中関係が21世紀を形作る」と2国間関係を持ち上げ、「山中の小道は、使ってこそ道となるが、使わなければ茅(かや)でふさがれてしまう」と孟子の言葉を引用して協力と対話の継続を強調した。人民元切り上げについての注文はしなかったという。

 新疆ウイグル自治区での騒乱についても、突っ込んだ議論はされなかった模様だ。「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席は「米国は冷たく、失望している」と話した。

 「米中G2」時代の始まりという見方もできる。しかし、温暖化問題ひとつをとっても、両国の世界に対する責任は重い。だからこそ日本の役割が重要になる。経済も安全保障も日米中で取り組むべき課題は山ほどある。日本に新たな構想が求められる。


社説:米中戦略対話 平和に役立つ協力を
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20090730k0000m070170000c.html

 変化する力関係を印象づける会合だった。米中政府がワシントンで開いた「戦略・経済対話」は、主に米国が中国に注文を付ける従来の構図から、中国が米経済の運営を問いただし米国が理解を求める関係へと変容したことをうかがわせた。

 変化の背景にあるのは昨年来の経済・金融危機だ。中国の経済成長に伴い、米政府は中国重視の姿勢をすでに強めてはいた。だが、危機後の大規模な景気対策で米政府の債務は急膨張することになり、中国による米国債の買い支えがかつてないほど、米経済とドルの行方を左右する事態になったのである。さらに中国は、米国にとってビジネスの機会満載の巨大市場でもある。オバマ政権の厚遇ぶりは、中国の協力なしに自らの国際影響力を保持できない米国の苦境を露呈したようだった。

 ドルの安定は、中国にとっても死活的な問題だ。ドルが急落すれば、すでに世界最大の米国債保有国である中国の資産は大幅に目減りすることになる。ドルの将来に不安を抱いても、米国債の購入にブレーキをかけた途端、ドルが急落し我が身に跳ね返ってくる。米国債を人質に取られているという意味で米中は運命共同体なのである。

 オバマ政権下で初となった今会合から、経済分野に限らず、気候変動や安全保障など包括的に議論する場となった。名称も、2006年にブッシュ政権下で始まった「米中戦略経済対話」から「米中戦略・経済対話」に変更された。ほとんど同じに見えるが、「経済に関する戦略的課題を話し合う会合」から「地球規模の戦略的課題と経済問題を話し合う会合」に変わった意義は大きい。

 とはいえ、経済以外の対話は始まったばかりだ。新たな「G2体制」と注目されているが、米中の意向だけで世界を動かそうというのではあるまい。また、それが可能な時代でもない。しかも米中間には安全保障などで根強い相互不信がある。だからこその戦略対話なのである。

 米中が戦略的なパートナーとして、重要な国際案件の解決に建設的な役割を果たすよう期待したい。北朝鮮への対応は、その一つの試金石となろう。北の核の脅威を取り除くべく米中はこの対話を活用してほしい。中国は6カ国協議の議長国でもある。米露が中心となる核軍縮でも中国の協調は不可欠だ。

 日本も単なる傍観者にとどまらず、米中の戦略対話が特にアジア・太平洋地域の平和に貢献するものとなるよう、積極的に関与していく必要がある。中国、米国それぞれと信頼関係を一層深め、日米中3カ国による協調体制が築けるよう、外交努力を強めるべきである。


東京新聞社説 米中新時代 発信力が問われる日本
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2009073002000087.html

 米国と中国は初の「戦略・経済対話」で、金融危機や気候変動など地球規模の問題で協力を誓い合った。日本の存在感が薄れると嘆くより、これらの課題に日本が何ができるか発信する方が賢明だ。

 二十七日から二日間、ワシントンで開かれた米中対話は両国が主導する「G2」時代の到来と言いたくなるほど異例ずくめだった。

 中国は二人の副首相級が率いて史上最大規模の百五十人の代表団が米国入りした。米国も外交・経済担当の閣僚が勢ぞろいした。

 開幕時にあいさつしたオバマ大統領やクリントン国務長官、ガイトナー財務長官がそれぞれ中国の名言、成句を引いて両国パートナーシップの大切さを強調した。

 日本の一部マスコミは、オバマ大統領が「米中で二十一世紀を形づくる」「米中関係がもっとも重要」と述べたと報じた。

 実際には大統領は「米中両国の関係が二十一世紀を形づくり、それは世界のいかなる二国間関係に劣らず重要だ」と述べている。

 注意深い言い回しは日本など同盟国に配慮したほか「米中両国があらゆる問題で合意できる幻想は持てない」(大統領)ためだ。

 対話終了後の共同発表文を見ても、金融危機や気候変動、核拡散防止、反テロなど今後、協力を深める課題を並べた感が強い。

 両国とも最大級の表現で対話の意義をうたいあげたが協力進展は、これからということだろう。

 世界の政治、軍事、経済で存在感が大きい両国が対立しては、二十一世紀に希望はない。その意味で対話の開始を歓迎したい。

 ただ、米国が繰り返してきた中国の軍備増強や人権問題への懸念表明を遠慮しているかに見えるのは疑問を抱かざるを得ない。

 米国の批判は中国の軍事大国化をけん制し人権状況の改善を促す「外圧」になってきた。中国の改革派にも、それを期待する声があることに注意を払うべきだ。

 米中関係の進展に日本の存在感が薄れると心配する声もある。しかし、オバマ発言に見られるように米中関係は価値観の違いや不信を前提に共通利益を目指し、日米関係とは質的に異なる。

 むしろ日本が金融危機や気候変動、核拡散防止などの課題に貢献できることを発信し、米中が日本の存在を重視せざるを得ない関係をつくることが重要だろう。

 米中新時代に日本が発揮する役割をめぐる論争も衆院選の重要なテーマにしなければならない。

<数少ないG2海外記事>

Washington risks taking China too seriously
http://www.ft.com/cms/s/0/90d3a752-7c6d-11de-a7bf-00144feabdc0.html

The G2's conundrums
http://www.theglobeandmail.com/news/opinions/editorials/the-g2s-conundrums/article1235804/

The US and China will run the world, whether we like it or not
http://blogs.telegraph.co.uk/news/adrianmichaels/100004769/the-us-and-china-will-run-the-world-whether-we-like-it-or-not/

<画像引用>

China and America: Europe Should Fear G2 Rather than G20
http://worldmeets.us/financialtimesdeutschland000086.shtml