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オバマ主導「麻薬との戦い」の核心を探る2009/04/26 01:18

ハワラ・システム


海外メディアではすでに“the war on drugs”が頻繁に使われています。

私が注目しているのはオバマ政権が「麻薬との戦い」においてハワラにどこまで踏み込むかという点。
おそらくハワラが対麻薬戦争の核心になるはず。

まずは基礎知識としてハワラ(Hawala)に関する日本語記事を紹介しておきます。

すでに興味深い情報が集まってきました。
今後の本ブログの記事&コメントに注目下さい。


<「ザ・ファクタ」記事引用>

ヘッジファンドの裏に「ハワラ」網
世界株安に乗じて荒稼ぎか。MI6の追跡で、「テロマネー」のルートが浮かぶ。
2008年12月号
by ゴードン・トーマス
http://facta.co.jp/article/200812030.html

英国の対外諜報機関MI6(正式名はSIS)には、市場に目を凝らす金融アナリストがいる。このほどMI6がトップクラスのアナリストを採用して、ヘッジファンドの捜査に乗り出した。ほかでもない、9月の米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻を機に、保険最大手のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)など経営難に追い込まれる金融機関が相次ぎ、米国にとどまらず、日本を含めアジアや欧州など世界各国の株式市場が暴落の「TSUNAMI」(津波)に襲われたからだ。この危機に乗じて国際テロ組織アル・カイダがひと稼ぎした可能性があると見ているのだ。

アル・カイダが株式取引で資金運用していることが判明したのに加え、金融界の“賭博師”であるヘッジファンドは資金の出所チェックが甘く、アル・カイダが麻薬取引などで得た資金で株式市場に投入するのに、うってつけの窓口になっているとみたのだ。捜査には数百人が動員され、資金ルートとともにアル・カイダがどのようにしてウォール街やロンドンの金融街シティーに足場を固めることができたのかを突き止めようとしている。

金融専門家を抱えて“運用”

MI6の専門家によれば、資金はまずマルタ島、ワルシャワ、シンガポール、サウジアラビアなどにある銀行に開いた「代理人口座」に送られ、次いで株式を運用するヘッジファンドに預託されるという。このプロセスを経ることで資金の「CLEANSKIN(浄化)」(CIAの隠語)が行なわれる。

07年1年間でヘッジファンドが運営したとされる資金は推定3兆ポンド(約450兆円)に上る。英シティー政策問題研究所のフェロー、チャーリー・エルフィック氏は「ヘッジファンドは買い入れた株式を少しずつ売りさばき、まるでほかの投資家も“売り”にまわっているようにみせかけることがある。そうしているうちに当該企業の株価は信頼性が損なわれ、あっという間に急落する」とヘッジファンドの運用方法の問題点を指摘する。

米国土安全保障省がホワイトハウスに提出した報告書によると、9・11テロ事件以降、アル・カイダは3千社以上の米国企業に資金を投じていたという。「主な標的は、最新技術を持つ企業や国防メーカー、そしてマイクロソフトやシーメンスのような大企業」(同報告書)という。

アル・カイダは手に入れた株式を転売することでさらなる利益を得る。投資される企業もそのカネがどこからきたのかわからない「きわめて巧妙なマネーロンダリング(資金洗浄)のシステムが構築されている」とテロリストの資金調達に詳しいブライアン・マッカダム氏は見る。

金融アナリストたちから「アル・カイダが独自の金融専門家を抱えていることはほぼ間違いない」との見解が英諜報機関に寄せられていることも見逃せない事実である。そうした“不良行員”は「賄賂で手なずけられたり、脅迫されて、巨額の資金を不正運用したり、形跡が残らないように細工した署名で電子送金する」(マッカダム氏)という。

米財務省の諜報員によれば、数十から下手をすると1千にも上る種類の名義と送金コードを使い分け、さまざまなルートで送金するケースもあるという。

例えば、ある資金ルートは、特定の銀行の一支店の営業時間だけ有効なコード番号を使うかもしれないし、別のルートには、ある国の銀行支店の営業時間終了間際の数分間にこれから朝を迎える別の国の名目会社に送金を認証する送金コードを使用する、といった具合だ。

電子送金は国際金融取引に伴う資金決済システム「CHIPS」で追跡ができることになっているが、加盟行のない旧ソ連圏やサウジアラビアを経由させれば、足跡を消すことは可能だ。

しかし、こうした資金はどこからくるのか――。アル・カイダは、アフガニスタンの麻薬取引で得た巨万の富から数十億ドルに上る資金を英米の大手金融機関にまわしていると、米財務省がみているほか、イスラム社会独特の「ハワラ」と呼ばれる送金システムからの資金調達能力にも注目している。

「ハワラ」は、中東やアジア、アフリカのイスラム社会で中世から広く利用されている独特の送金システムのことで、世界中から資金調達することができる。もともとアラブの絹商人が使っていた制度で、「ハワラダ」と呼ばれる仲介業者にカネを預け、海外などで別の業者から受け取る仕組みである。手数料は銀行よりも安く、出稼ぎ労働者が郷里への送金などに利用している。最大の特徴は互いの信用を最優先し、約束文書や記録が残らないことである。

ビン・ラーディンの心臓部

極めて閉鎖性の高いシステムであるため、ハワラダを証人に立てない限り、中に入ることはできない。しかし、ロンドンを最近訪問したロバート・ミュラーFBI長官が「イスラム教徒が住んでいる場所なら、どこにでもいる」と語ったように、ハワラダは「世界で少なくとも1万人は存在し、1日に合計数十億ドルの資金を動かしている」(MI5)と推測される。

国家安全保障会議(NSC)のメンバーを務め、ブッシュ政権でテロ対策を担当していたリチャード・クラーク氏は、このハワラこそ「ビン・ラーディンの活動の心臓部だ」と指摘する。クラーク氏自身、9・11テロ事件以降、数十億ドルもの資金を押収してきたが、「スイス銀行並みの緘口令を敷いているため、ハワラのスケールの大きさを認識したのはつい最近のことだ」と舌を巻く。

英国であれば、ハワラダは雑貨店主であったり、タクシーの運転手、葬儀屋、なかにはモスクの集団礼拝を指導するイマームであったりする。こうした仲介業者の誰もが、アル・カイダの資金調達係から直にアプローチを受けたり、電話やFAXでコンタクトを受ける対象になり得るのだ。

ミュラーFBI長官が、英諜報機関関係者に明らかにしたところによれば、ハワラの資金はカイロ、ダマスカス、パリ、マドリード、フランクフルト、ヨハネスブルク、香港、台北、ヤンゴン、東京、ミンスク、サンクトペテルブルク、ブカレストなど世界各地の金融機関を経由して株式市場に流れ込んでいたという。

世界銀行やイングランド銀行、米連邦準備理事会(FRB)で読まれている英金融専門誌「International Currency Review」が2年前に警告したように、「代理人口座を使った巧妙な手口の送金方法で、アル・カイダの資金ルートの洗い出しには途方もない作業を必要とする」状況なのだ。

そのうえ、パキスタンやインドネシア、フィリピン、中国北部地方、南米などのイスラム社会で捜査を続けたMI6諜報員によって、ハワラが合法的な組織だけではなく、人身売買や麻薬取引の世界で利用されることがあることも判明した。そうした組織のなかには「慈善団体や非政府系機関などによって運営されているケースもある」(クラーク氏)という。

米財務省の諜報員は「ロシア人マフィアやコロンビアの麻薬カルテル、中国の秘密結社、日本のヤクザと取引して、名目企業に資金を迂回させている」可能性も指摘している。そうすることで、資金の出所に関する情報は闇から闇へと葬り去られていくのだ。



<画像引用>

Finance & Development, December 2002 - Hawala
http://www.imf.org/external/pubs/ft/fandd/2002/12/elqorchi.htm