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カザフスタンのウランとグリーンな核ゲーム2009/04/11 09:35

カザフスタンのウラン権益


4月5日にオバマ大統領がプラハで行った演説。
この中のイランに関する部分を振り返っておきましょう。


「イランはまだ核兵器を完成させていない。私の政権は相互利益と相互尊重に基づく関与を追求するだろう。我々は対話を信じる。しかし、その対話では明快な選択を示すつもりだ。我々はイランが政治的、経済的に正当な地位を占めることを望む。我々はイランが厳格な査察を条件に原子力エネルギーの平和的利用の権利を認めるつもりだ。あるいは一層の孤立や国際的な圧力、潜在的核軍備競争を選ぶこともできる。」

「はっきりさせよう。イランの核や弾道ミサイルをめぐる活動は、米国だけでなく、イランの近隣諸国や我々の同盟国の現実の脅威を引き起こしている。チェコとポーランドは、勇敢にもこれらのミサイルに対する防衛施設を自国に置くことに同意した。イランの脅威が続く限り、ミサイル防衛(MD)システム配備を進める。脅威が排除されるならば、ヨーロッパにおけるミサイル防衛(MD)構築の推進力も取り除かれるだろう。」


日本ではオバマのプラハ演説が核廃絶宣言であるかのように報じられていましたが、
内容を詳しく見ると、極めて重要な発言をしていたことがわかります。

オバマはイランが核兵器と弾道ミサイルの開発を凍結すれば、
ヨーロッパにミサイル防衛(MD)システムを配備することを見直すと言った。

おそらくMD配備を警戒するロシアを意識したもの。

さらに、原子力エネルギーの平和的利用の権利にまで言及。
そのために演説の中で国際的な「核燃料バンク」の活用を提案しています。
新たな枠組みとして、核燃料バンク(nuclear fuel bank)が再浮上。

この提案は事前にイランに通達されていた模様。
そして、成否の鍵を握る存在に浮上してきたのはカザフスタン。

オバマ演説の翌日(4月6日)には、
イランのアフマディネジャド大統領がカザフスタンのナザルバエフ大統領と会談。

ナザルバエフはカザフ国内で核燃料バンクを創設することを提案しつつ、
イランの原子力平和利用の権利を承認すると語っています。

旧ソ連のカザフスタンのウラン埋蔵量は世界第2位。
石油も天然ガスもレアメタルも豊富。

カザフはロシアと良好な関係を維持しつつ、
日本、中国、フランスと積極的な原子力外交を繰り広げています。

中でも突出しているのが日本。
日本はこの10年でカザフからのウラン調達比率を現在の1%から30~40%と拡大したい意向。
日本企業も続々進出中(画像参照)。

オバマのイランへの提案も日本の働きかけが大いに影響していたようです。

こうした動きが気になって仕方がないのは原子力大国のおフランス。
フランス通信社(AFP)は、外務省のベテラン3人がオバマ演説直前に訪米していたことをスクープ。

外務省の鈴木敏郎・中東アフリカ局長と城田安紀夫・イラン大使はワシントンで会談。
4月2日には国家安全保障会議(NSC)の政策立案者にも会っていたとか。

また、外務省で北米局長、そして中東和平担当特使などを歴任した有馬龍夫が、
4月4日から4日間の日程で訪米。
ジョージ・ミッチェル元上院議員(民主党)との会談も含まれていると報じています。

有馬龍夫は現在三菱商事取締役。
三菱商事顧問の高島正之は日本カザフスタン経済委員会会長。

ジョージ・ミッチェルは04年から07年までウォルト・ディズニー・カンパニーの取締役会会長。
そして、現在はオバマ政権の中東特使。

カザフには核燃料バンクと並んでディズニーランドも配置されるのでしょうか(笑)

日米両国は核燃料バンクの枠組みにイランを取り込むことで核兵器の脅威を封印。
これにはロシアの協力も不可欠とみて、MD配備中止の餌を投げ込む。

日本としては米国を核燃料バンクの推進役に担ぎ上げて、
あわよくばオバマ政権下でのグリーンな原発ブームを目論んでいるのでしょう。

イランの弾道ミサイルの脅威も封印すべく、
日本はイランに対して北朝鮮とのミサイル技術協力凍結を迫るべき。
あわせて中国にカザフのウランをちらつかせて、北への援助見直しを約束させる。

これで北朝鮮経済は完全孤立。金正日体制崩壊は時間の問題へ。

このシナリオをぶち壊す可能性があるのはイスラエル。
イスラエルがイランの原子力エネルギーの権利を認めるとは思えない。
当然、核燃料バンクに対してそっぽを向く可能性大。

日米はイスラエルをうまく手懐けることができるのでしょうか。
早くも騒ぎ始めた親イスラエルのネオコンの動きも気になるところ。

カザフスタンのウランをめぐる核ゲームに注目を!


<関連記事>

REMARKS BY PRESIDENT BARACK OBAMA
Hradcany Square
Prague, Czech Republic
http://www.whitehouse.gov/the_press_office/Remarks-By-President-Barack-Obama-In-Prague-As-Delivered/

Uranium and Nuclear Power in Kazakhstan(画像引用)
http://www.world-nuclear.org/info/inf89.html

Japan, US talk on new opening with Iran
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5i-NJAAjNh55WEjfH65_b6g9_nLBw

Obama may cede Iran's nuclear rights (重要度★★★)
By M K Bhadrakumar
http://www.atimes.com/atimes/Middle_East/KD10Ak03.html

How the corporate media alienate Iran: Prof. Mojtahedzadeh(重要度★★★)
by Kourosh Ziabari
http://foreignpolicyjournal.com/2009/04/07/how-the-corporate-media-alienate-iran-prof-mojtahedzadeh/

コメント

_ ゴンベイ ― 2009/04/11 22:46

タイミングを合わせたかのようにこんな報道も。

時事ドットコム:日ロ原子力協定、原案固まる=交渉は最終段階
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2009041000730

_ K ― 2009/04/12 00:18

こんなのもありますね。

アメリカはイランにどう対応するのか
http://www.tkfd.or.jp/blog/sasaki/2009/04/no_561.html

_ Y-SONODA ― 2009/04/12 01:04

★ゴンベイさんへ

日ロ原子力協定と並んで日カザフスタン原子力協定も締結に向けて動いていますよ。
おそらくロシア・カザフ間で情報交換も行われているのでしょう。
ここまでくるとおフランスの動きも気になるところ。
日仏原子力協定の再改正も必要になってくるかもね。

★Kさんへ

イランに対して麻薬の流出防止でも動いているわけですね。
麻薬といえばアフガニスタン。
この記事は極めて重要な意味があると思いますよ。

アフガン支援、イランと合同で麻薬撲滅や職業訓練へ…政府
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090410-OYT1T00004.htm

_ ゴンベイ ― 2009/04/15 23:12

イラン、核開発で大きな進展 核燃料製造施設オープン
http://www.afpbb.com/article/politics/2591544/4019083

したばかりですが、

イラン大統領、核問題の解決に新提案
http://www.afpbb.com/article/politics/2592755/4032993

で、カザフでの核燃料バンク構想に対する回答を示すことになるんでしょうね。

_ ゴンベイ ― 2009/04/16 00:40

Kさん紹介の東京財団佐々木良昭主任研究員の「中東TODAY」、中東での報道を日々一早く解説付きで伝えるそれ自体の価値は大きいと思います。しかし、極論すればテレビワイドショーの夕刊記事早読みのようで、解説内容は「中東の未来を予測します」とは大上段に過ぎる触れ込みとも思います。
【NO・1253イスラエル労働党の連立内閣参加の意味】では、労同党左派の動向にも触れていますが、私はイスラエル連立政権のいくつもの崩壊で引き金となったシャスに注目していて、氏のコラムではシャスについて触れたものがなく、深読みとしては物足りなく感じます。

ところで、意外な拾い物と思ったのは、【NO・1238トルコ・リラでイラン・ロシア貿易スタートへ】。
カール・マルクスのテーゼ「上部構造は下部構造に規定される」を信奉する立場から見て、経済関係の結びつき強化は政治動向と不可分で、トルコが中東のバランサーとして積極的な役割を担おうという意思が読み取れます。また、米ドルやユーロを経由したクロスレートでは変動が激しいので、変化率の低いIMFのSDRを経由したクロスレートの採用や、ひいては基準通貨としてSDR(固定レート)への支持への動きにもつながる萌芽になるのではとも思います。

_ Y-SONODA ― 2009/04/16 08:03

ゴンベイさんへ

イランで原子力分野での進展があるとメディアも核兵器につながるような報道。
これってどうなんでしょう。イランが怒りたくなる気持ちもわかるような。
イランの新提案はやはり核燃料バンク構想になるのではないかと。
イランがここで積極姿勢を見せたところで米国は本気で動くかどうか。
このあたりが注目ですね。

佐々木の方のよしあきさんの「中東TODAY」。
これはすごいんじゃないでしょうか。
蓄積がないとほぼ毎日は書けないと思いますよ。
結構深夜の投稿もあるようですが、これって残業扱いなのかなぁ。
このあたりが気になったりしてw

中東のバランサーとしてのトルコ。
これがIMFのSDRを経由したクロスレートの動きに発展するとなると、
中国などとの連携ありということでしょうか。
確かにブラジルやインドの最近の動きを見ても、
IMF自体を乗っ取ろうとしているのかもしれませんね。

こっちの動きも目が離せません。

_ おなか一杯 ― 2009/09/09 16:54

『北朝鮮と台湾の関係』 核廃棄物

核開発などで何かと話題に上る北朝鮮と台湾の以外な関係をまとめてみましたので
ご参考まで。

 http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2004/00241/contents/500.htm

 http://72.14.203.104/search?q=cache:Dgo-61n9W8sJ:nippon.zaidan.info/seikabutsu/2004/00241/contents/500.htm+%E6%A0%B8%E5%BB%83%E6%A3%84%E7%89%A9%E3%80%80%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E3%80%80%E6%9D%8E%E7%99%BB%E8%BC%9D&hl=ja&gl=jp&ct=clnk&cd=2
 
  日本財団 図書館
  1997/06/10 世界週報

  必ずしも足並みがそろわぬ米側の対応

  加えて、四月一二日、李登輝総統は、イギリスの賓客との会見の中で、
  北朝鮮問題とそれに関する台湾の対応策に言及したといわれる。
  だが、かねてから話題となっていた台湾の核廃棄物を北朝鮮で処理する問題については、
  既述のギングリッチ米下院議長ですら李登輝総統との会見で抑制を促したもようである。

 http://ritouki-aichi.sblo.jp/article/31540733.html?reload=2009-08-27T15:15:16
  愛知李登輝友の会ブログ
   2009年08月23日
    のコメント欄をご覧ください

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_ 米流時評 - 2009/04/11 21:32


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 ビッグ3生き残りを賭けた会社再生案、ゾンビ部門とサバイバル部門の切り離し

前号からの続き:.....しかしデトロイトの自動車業界は、お通夜を前にした喪主のような沈痛な雰囲気から抜けられない様子.....先々週ホワイトハウスで開かれた協議会では再建案のプレゼンが通らなかったようで、GMの代表取締役は退陣を余儀なくされた。つまり、クビ。ただし24億円のお手盛り退職金付きだが.....

政府からの財政支援を受けるためのこの措置が、論争の的...