Google
WWW を検索 「園田義明めも。」を検索

金融危機下の米中通貨攻防戦2009/01/26 00:26

米中関係資料20080126


表向きはにっこりと握手しながら、懐にはナイフを隠し持ち、裏で脅しあっている。

国際政治とはこんなもの。
相手が手強いほど燃え上がる。
米国と中国はナイフどころかいずれ核兵器まで持ち出すかも。

米議会予算局(CBO)は2009年会計年度(08年10月-09年9月)の財政赤字が、
過去最大の1兆1860億ドルに膨らむとの甘~い見通しを発表。

オバマの方は24日のラジオとインターネットを通じた国民向けの演説で、
「米経済は供給力と比べ1兆ドルの不足に陥る可能性がある」と語ります。
なにやらこれも意味深。

それでは、「米国の借金はだれが肩代わりするの?」と考えれば、
当然米国債保有高の上位国に押し付けられるに決まってますがな。

現在1位は中国、2位は日本、3位は英国。

画像を見てもわかるように、
2位の日本はすでに買い増しを控えています。
それでもオバマ政権は無茶な要求を突きつけてくるのでしょう。

なぜなら3位の英国はかなり頑張ってきたのですが、今や自国が青息吐息。
真っ先に米国債を売り始める可能性もあったりして。

やはり頼りになるのは米国債最大保有国の中国。
しかも、中国は昨年も積極的に買い増ししていました。

「中国はん、たのんまっせー!」となるはずが・・・。

オバマ政権発足を前に中国は買い増すどころか、
「米国債を売ろうかなぁ」と言い出す始末。

それでは米中の舌戦模様を振り返りましょう。

昨年12月26日のニューヨーク・タイムズ紙。
FRBのバーナンキ議長は早くから「米国バブルは外国人の貯蓄過剰のため。その代表格は中国人だ」と指摘していたことを取り上げます。

追い討ちをかけたのが退任間際のポールソン財務長官。
今年1月2日の英フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、
「中国や産油国の過剰な貯蓄が金利低下をもたらし、リスクを世界中に広げた」と指摘。

「金融危機の責任の一端は中国にある」とも受け取れる内容を米金融政策責任者が繰り返したわけです。

この直後の1月5日付の中国紙、中国証券報。
中国社会科学院世界経済政治研究所の余永定所長は、
「米国債をある程度売って、ユーロや円の資産を増やすべきだ」と語ります。

さらに「米国の財政赤字は2009年に国内総生産(GDP)比で10%に達する可能性があり、米国債の供給は需要を大きく上回る。そうなってから中国が米国債を売れば両国の利益衝突は深刻になる」と指摘。

「俺たちに責任押し付けたらあかんで。なんやったら、米国債売ったろかぁ~」の始まり。

中国メディアも黙っちゃいない。
中国責任論に反論する記事をこぞって掲載。

1月8日付人民網日本語版は、
『「金融危機の原因は中国の高貯蓄率」は責任逃れ』との見出しを掲げて、
「このようなロジックは全くのでたらめ」としながら、
「借りたお金で派手に消費していた人が破産した途端に初めから貯蓄しなければよかったのにと他人を責める。このようなロジックはいかなる国の道徳ではかっても荒唐無稽」だと。

そして、「この危機に最も責任があるのは米国であり、最も反省しなければならないのも米国だ。米国人は無制約な消費という夢から覚め、前借りに頼るような生活方式を改めなければならない」とチクリ。

締め括りはやはり財政赤字。

「米国はカギとなるこの時期、他国の貯蓄率の高さを非難するようなことをやめ、勇気を出して自らを検討し、持続不可能な経済モデルに適切な調整を加え、財政赤字を抑え、貯蓄率を高めなければならない。さもなければ、米国自身の利益を損なうばかりでなく、国際社会の共同利益も損なってしまうことになる。」と。

米国も負けてはいません。
オバマ政権も発足早々に牽制球を投じます。

1月22日朝、ガイトナー財務長官が「オバマ大統領は中国が自国通貨を操作していると信じている」と発言。
(一方でガイトナーは「強いドルは米国の利益」との嘘八百も。オバマ政権の特徴は二枚舌?)

このガイトナー発言に対して、真っ先に反応したのが同日午後のニューヨーク債券市場。
中国が米国債売却に踏み切るとの懸念が浮上。
債券を売る動きが強まり、10年債と30年債が最も大きな下げ圧力を受けることに。

中国人民銀行(中央銀行)の蘇寧副総裁は、
「こうした発言は事実に合わないだけでなく、金融危機の原因の分析を誤った方向に導く」と述べ、
ガイトナーを厳しく批判。

ここで気になることが。
中国商務省の広報担当官が、「中国は今後も通貨の安定を図り、輸出を支援するための“通貨切り下げ”は実施しない」と述べたこと。

どうやら中国はガイトナー発言の意図がはっきりと認識しているようです。

米国が最も恐れているのは、「人民元の切り下げ」だということ。
おそらくロシア中央銀行が通貨ルーブルの切り下げを加速させていることも背景にあるかと。

ガイトナー発言は、「人民元の切り上げが必要」という要求などではなく、
ストレスたまりまくりの中国に対して、
「“人民元の切り下げ”だけはするな」との警告だったようです。

そんなことをしたら、国際的な大惨事(an international catastrophe)になると
ケネス・ロゴフがフィナンシャル・タイムズ紙で申しております。

さすがロゴフ。目の付け所が鋭い。

そういえば、日本経済新聞も社説でこの問題を取り上げ、「為替政策も気掛かりだ。08年12月の人民元の実効為替レートは6カ月ぶりに下落に転じた。1兆9500億ドルと世界最大の外貨準備を擁する国の通貨が大きく下落するようでは、世界の為替相場や貿易に深刻な悪影響を与えかねない。」と書いています。

今や中国は米国債売却と人民元切り下げで米国、そして世界を揺さぶることができる立場へと浮上。
米国は輸入関税引き上げなどの制裁措置をちらつかせて応戦する場面もあるかも。

オバマ政権下の米中関係は超波乱含みの展開になりそうです。


<関連記事>
Chinese Savings Helped Inflate American Bubble
http://www.nytimes.com/2008/12/26/world/asia/26addiction.html?_r=1
Paulson says crisis sown by imbalance
http://www.ft.com/cms/s/0/18992610-d86f-11dd-bcc0-000077b07658.html
「金融危機の原因は中国の高貯蓄率」は責任逃れ
http://www.pekinshuho.com/zxnew/txt/2009-01/09/content_173981.htm
ガイトナー発言に反発 「中国が通貨操作」、米国債売却論に拍車
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090124AT2M2401P24012009.html
中国商務省:為替操作ない、米の誤った非難は自らの「保護主義増長」
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003011&sid=adOfIRFt.ywM&refer=jp_asia
米国債(23日):下落、30年債は週間で26年ぶり大幅安-供給増懸念(2)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003009&refer=jp_home&sid=agEPAdU1nwUs
社説 世界経済安定で中国に期待される役割(1/25)
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20090124AS1K2300824012009.html

Remarks by Geithner ‘will anger China’
http://www.ft.com/cms/s/0/b19b6900-e8c2-11dd-a4d0-0000779fd2ac.html

“China is under incredible stress,” said Ken Rogoff, a professor at Harvard and former IMF chief economist. “The Obama administration has to be a little bit concerned that it might react by devaluing its currency, which would be an international catastrophe. Geithner’s statement looks like a shot across the bows.”

コメント

_ アルルの男・ヒロシ ― 2009/01/26 13:35

ひゃー、びっくりした。人民日報の主張は、下村治氏の『日本は悪くない 悪いのはアメリカだ』と一緒ですよ。CICの総裁も「人にお金を出してもらうときには頼み方があるだろ」(金を貸してくれる国には礼儀正しくせよ)って言ってますね。さすが儒教の国。アメリカがやっていることは、かかあ伝家の女房か、亭主関白の夫ですな。

“Be Nice to the Countries That Lend You Money”
http://www.theatlantic.com/doc/200812/fallows-chinese-banker

_ ななし ― 2009/01/26 21:39

いや、やくざですw
だけど日本に対しては恫喝が効きますが、中国に対しては効かないようです。

_ Y-SONODA ― 2009/01/27 02:53

★アルルさんへ

高西慶もなかなかいいことゆーとりますな~。

でもね。
ちと私の書き方が中途半端になったのは、危ない空気を感じ取ったから。

中国側がこぞって英文で反論しているのは、日本も見習うべきだと思うのですが、
少し行き過ぎの感がある。やはりKYの感がある。

日本→イラク→中国になるかも。
西洋 vs 東洋にまで発展するかも。

日本は巻き込まれたらあかんよね。

★ななしさんへ

いぁー、これね。中国側にも確かに問題あるのです。
国が介入し過ぎ。
これから大問題に発展するかもしれませんよ。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「カ○スの勝手でしょ」にようこそ♪ 質問:○に入るカタカナ一文字は?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2009/01/26/4080982/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。

_ 米流時評 - 2009/01/26 10:30


   ||| オバマの仕事始め・外交の大転換 |||
ブッシュ体制からの脱却転換、就任2日で重要懸案を矢継ぎ早に片付けた新大統領
米国外交も180度転換:ミッチェルを中東特使、ホルブルックをア・パ特使に任命

米国では従来、大統領就任式の日 Inauguration Day 以降、去り行く大統領は通常そそくさと新聞記事の一番下に収まるように退却するのが通例である。ところが、われわれが今目の当たりにしているブッシュの終幕は、そうした退却よりもはるかに劇的な、いわば転落である。それはむしろ、抹殺とか、焼却に近い様相を呈している。ジョージ・W・ブッシュは、ほとんど非人間的な存在に成...