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オバマが描く新世界秩序2008/10/30 11:12

駆け込み寺(IMF)の実績表

いよいよ11月4日の米大統領選投開票まで残り1週間を切りました。

これまで何度も紹介してきたリアル・クリア・ポリティクスの最新予測によれば、
オバマは538人の選挙人中、過半数を大きく上回る311人を獲得する公算。

10月25日付米ニューヨーク・タイムズ紙などによると、
オバマ陣営は新政権樹立の準備を進めているとのこと。
一方苦戦が続くマケイン陣営は内紛状態に突入し、
サラ・ペイリンを敗戦の「戦犯」に仕立てようとする動きも出ているとのこと。

最新の世論調査では、わずかではあるものの差が縮まっているものも出てきました。

米国の世論調査が携帯電話を積極的に活用している点が気になるところ。
このため高齢者の動向が世論調査に反映されていないと指摘する声もあがっている。

これにブラッドリー効果と逆ブラッドリー効果がどう影響してくるのか。

勝ってもも負けても、それは「オバマ効果(Obama Effect)」と呼ばれることになるでしょう。

前著『最新アメリカの政治地図』でも取り上げましたが、
アーサー・M・シュレシンジャーは『アメリカ史のサイクル』の中で、
特に宗教面から米国を実験国家と位置付けた。

今回の大統領選は人種面での新たな実験と見ることもできる。
この実験の成否を握るのは、何といっても経済問題。
オバマが米国経済を立て直すことができれば実験成功。
しかし、オバマは中間選挙までの2年で結果を示さなければならない。
どう見ても前途多難。

ここで注目すべきは11月14-15日。
ワシントンで主要8カ国に新興市場国を加えたG20緊急首脳会議が開催されます。

G20は、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、韓国、トルコ、イギリス、米国の19か国と欧州連合(EU)代表。

おそらく先日行われたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議同様、
国際金融危機に対する協調・協力体制の強化が示されると思いますが、
具体性に乏しいものになるような予感がします。

国際通貨基金(IMF)の役割をめぐって意見が割れる可能性があるからです。

現在駆け込み寺化しているIMF。
西側先進国はデフォルト寸前の新興・中小国を駆け込み寺に押し込もうと必死。

そして今、「IMFの資金増強が必要だ!」と叫んでいる。
同時に大量の外貨準備を抱える中国や湾岸諸国に「金を出せ」と迫っています。
新興国を取り込んでブレトン・ウッズ体制をパワーアップしようとしているわけですね。

現在、「新ブレトン・ウッズ体制」が話題になっていますが、
主導権をめぐる英米と仏独の駆け引きはあるもののも「新」と呼べるものではない。

とはいえ、これまでの米英主導のブレトン・ウッズ体制への不満が多いのも事実。
ロシア、中国、ブラジル、インドはIMFに代わる新たな国際機関設立に向けて動き出した。
しかし、いずれの国もまだまだ力不足。米国に歯向かうことなどできない。

それでも駆け込み寺行きが決まったパキスタンとウクライナは地政学的に極めて重要。
ロシア、中国、インドは裏でコソコソ動いています。
G20緊急首脳会議はコソコソ組が愚痴って混乱。
任期切れ間近のブッシュ政権に協力するはずがない。

ここでオバマが登場。

オバマはアフガニスタンの隣国パキスタンの混乱を利用します。
「テロとの戦争」をパワーアップすることで中国、インドを揺さぶりつつ接近。
同時にイラク駐留米軍撤退を条件に湾岸諸国との関係改善に乗り出す。

オバマが導く新世界秩序。
それでもうまくいかない。

クリントン時代のITに匹敵する新たな産業分野の育成創出が求められる。
再びアル・ゴアを引っ張り込んで環境分野に活路を見出そうとしても、
失敗に終わりそうな気がします。