「エンデの遺言」と「イスラーム金融」と大川周明 ― 2008/10/27 09:40
もうすぐ個性的な先生と久しぶりの飲み会。
この先生は日本における地域通貨研究の第一人者と呼ばれています。
NHKで放送された「エンデの遺言」の製作に関わった人といえば、
誰だかわかる人もいるかもしれませんね。
経済アナリストとしても活躍している方なので
今回の金融危機のことも聞いてくる予定。
それに「あの人」のことも。
またまたベロンベロンに酔っ払って、
それどころではなくなるかもしれませんが・・・
私の方は地域通貨の影響から関心はイスラーム金融へと向けられ、
関連書を買い漁る毎日が続いています。
しかし、表面をなぞったものが多くてなかなか満足できるものがない。
そうした中でようやく手応えのある本が発刊されました。
それは、櫻井秀子さんの「イスラーム金融」(新評論)。
本来ならイスラーム金融そのものを紹介すべきなのですが、
かなり気になる箇所があったので、
最終章にあたる「日本的経営の再考ーイスラーム的経営に照らして」を取り上げます。
櫻井さんはここでこんなことを書いています。
日本は「他のアジア諸国と同様に、ヨーロッパのオリエンタリズムの対象」であったはず。
ところが、「ヨーロッパの近代的社会と科学を追及するあまり、社会科学や生活様式の西欧化を通じてヨーロッパ伝来のオリエンタリズムをそのまま踏襲している」と。
そして、「ヨーロッパからする『アジア』という他社像を構成する視覚に己の視覚を同一化させることが、日本では近代化認識の基礎」にしちゃった。
つまり、日本は「西欧的近代化に忠実」だったので、「オリエンタリズムが導いた劣位の日本と自己とを同一化させ、そこからの脱却を目的とすることに無意識に慣らされている」と。
日本の平成不況時に欧米報道で用いられた「失われた十年」や「停滞」という表現。
J・アベグレンが、この表現には日本経済に対する無知や偏見、それに異教徒は遅れているとする傲慢さがあったと批判したことを取り上げています。
そして、日本人にも厳しい言葉が向けられる。
「欧米の提示する日本像をそのまま受け入れて、自己認識のよりどころとして一喜一憂する日本人自身にも、大いに問題があるといわざるをえない」と。
続けて、「日本がつねに意識しているのは欧米の日本像」であって、それに比較すると他の文化圏に対して、「あまりにも無頓着で、傲慢に無視している」ように見える。
結局、アジアの時代と呼ばれる中、日本はその潮流に乗り遅れたまま。他方、欧米的な合理性にもなじむことができずにいる。
これからの日本社会が<脱オリエンタリズム>をめざすためには、「欧米文化の鏡ばかりでなく、他の異文化の鏡に自文化の社会を照らすことは欠かせない」と書いています。
そして、「文明の歴史と地理の観点からみても、イスラーム圏がヨーロッパと東アジアの間に広く横たわってきた事実をふまえて、日本があらためてイスラーム圏を視野に入れることは、欧米文化を相対化し、行き過ぎた近代化を調整し、バランスの取れた中道の経営をめざす上で大いに参考となるであろう」と結んでいます。
エドワード・サイードのオリエンタリズムを用いながら、
日本の問題点をうまく突いていますね。
白からすれば黄色にしか見えないのに、
欧米に追いつけ追い越せと頑張ってきた結果、
今や、完全な白、もしくは、限りなく白に近い黄色だと思い込んでいる日本人も少なくないのかも。
そうなるとこの先日本でも黄色同士のブラッドリー効果のような現象だって有り得るってこと。
(あなたの中にも、悪魔くん、いませんか?)
またこの思い込みがアジアにおける優越感につながっているとの見方もできます。
この優越感が邪魔をして、アジアの中でも浮いちゃった。
この優越感を支えているのは経済大国としての自負でしょう。
だからこそ大国化する中国の存在が気になって仕方がない。
その一方、追いつけ追い越せの対象であったはずの欧米の存在感が失せてきた。
めざすものがなくなったことが、日本人の喪失感につながる。
それにしても櫻井さんの指摘にはある種の余裕も感じられます。
皮肉にもこの余裕は「西欧的近代化に忠実」だったことによる恩恵かもしれない。
もし「あの人」が生きていたら、今の日本をどう見るか?
「あの人」とは日本で初めて「コーラン」を全訳した大川周明のこと。
意外にもミヒャエル・エンデと大川は、
ルドルフ・シュタイナーを通じてつながっていたりするところがおもしろいのです。
<関連書籍>
エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%87%E3%81%AE%E9%81%BA%E8%A8%80%E2%80%95%E3%80%8C%E6%A0%B9%E6%BA%90%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%8A%E9%87%91%E3%82%92%E5%95%8F%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%8D-%E6%B2%B3%E9%82%91-%E5%8E%9A%E5%BE%B3/dp/4140804963/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1225062034&sr=8-1
イスラーム金融―贈与と交換、その共存のシステムを解く
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E9%87%91%E8%9E%8D%E2%80%95%E8%B4%88%E4%B8%8E%E3%81%A8%E4%BA%A4%E6%8F%9B%E3%80%81%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%85%B1%E5%AD%98%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E3%82%92%E8%A7%A3%E3%81%8F-%E6%AB%BB%E4%BA%95-%E7%A7%80%E5%AD%90/dp/4794807805/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1225062079&sr=8-1
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