「ブラッドリー効果」と「逆ブラッドリー効果」 ― 2008/10/19 10:51
10月15日、オバマ(民主党)、マケイン(共和党)両候補による最後の討論会が終了。
金融危機もオバマにとって追い風に。
この結果、オバマが一段と優勢になったと日本でも報じられています。
しかも米紙ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、シカゴ・トリビューンなどが、
相次いでオバマ支持を表明。
各紙は揃ってペイリンの副大統領候補として資質に問題ありと見ているようです。
米大統領選の投票日は11月4日、もう20日を切っている。
「オバマ圧勝」の予測も出る中、果たしてマケイン逆転はあるのか。
このブログでは「マケイン逆転の可能性は0ではない」としておきます。
理由は人種という問題があるからです。
今回の大統領選を左右するのは、
人種(オバマ)、年齢(マケイン)、それに男女の性差(ペイリン)。
とりわけ人種が極めて重要な要素になる。
投票日までポッカリ「間」が空いている。
この「間」が魔物。
この「間」が白人の心を揺さぶる。
彼らは自問を繰り返すでしょう。
「我々は史上初の黒人大統領としてオバマを受け入れる準備ができているのか?」
今やむき出しで表現されることはなくなりましたが、黒人への偏見はいまだにある。
これが行動となって表れるのは投票日当日。
それまでオバマに投票しようと思っていた人も、
当日になってマケインに票を投じる。
中にはもやもやして投票所に行くことができず、
家にこもってしまう人もいるでしょう。
誰もが人種偏見の持ち主と思われたくない。
そのために口では黒人候補OKと言う。
世論調査でもオバマ支持と答える人もいる
しかし、当日になってこっそり内緒でマケインに票を投じてしまう。
米国の人種問題の根はまだ深い。
黒人への偏見は白人の内部に潜んでいる。
(黄色人種への偏見だってまだあるんでねーか?)
これを「ブラッドリー効果(ブラッドレー効果、Bradley effect)」と呼びます。
1982年のカリフォルニア州知事選で黒人候補トム・ブラッドリー(Tom Bradley)が、
事前の世論調査で白人候補を大きく引き離していた。
投票日の出口調査でもリードしていたのに敗れてしまったことに由来します。
一方で「ブラッドリー効果」がより複雑になってきたという分析もあります。
最近明らかになったのが、「逆ブラッドリー効果(reverse Bradley Effect)」の存在。
今年の予備選ではサウスカロライナ、アラバマ、ジョージアなど黒人が多い州では、
事前の世論調査より、実際のオバマの得票の方が高くなるという逆転現象が生じています。
これが「逆ブラッドリー効果」。
いずれにせよ人種問題が大きく左右するということ。
しかも、依然として「逆」よりも「ブラッドリー効果」の方が影響大だと思われます。
オバマがこれを克服するには、世論調査で最低5%、安全圏として10%のリードを奪う必要がある。
さて、最近の世論調査を見てみましょう(画像参照)。
日本では米紙ニューヨーク・タイムズとCBSテレビの合同世論調査で、
オバマの支持率が14ポイント上回ったことが大きく伝えられましたが、
この世論調査方法に不明な点が多い。
世論調査方法にまでざっと踏み込んだ結果、信頼できそうなものは次の二つ。
Gallup (Traditional)* 10/15 - 10/17 Obama +2
USA Today/Gallup (Traditional)* 10/10 - 10/12 Obama +4
世論調査の精度が高くなるほど、オバマのリードは僅差になる。
その差はわずか2~4ポイント。
それでもまだ最大5ポイントレベルの誤差があるはず。
米国内でテロでも起きれば、すぐにひっくり返る。
ふたを開けてみると、マケイン勝利だって有り得る。
よって、「マケイン逆転の可能性は0ではない」との見方になりました。
むしろ、投票率、宗教票パワーも加味すれば、
現時点ですでにマケイン有利かもしれない(ボソボソ)
<関連記事>
致命的なペイリンのパスポート問題
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2008/09/07/3749177
追い込まれるサラ・ペイリン
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2008/09/13/3761448
Tracking the Race Factor
http://pewresearch.org/pubs/755/tracking-the-race-factor
Study: Obama Could Benefit From 'Reverse Bradley Effect'
http://elections.foxnews.com/2008/10/17/obama-benefit-reverse-bradley-effect-study-finds/
In poll position
http://www.economist.com/world/unitedstates/PrinterFriendly.cfm?story_id=12448053
※人種面でも特にこの人の動きが鍵を握る可能性あり。
とはいえ、パウエルがオバマ支持を表明したとしても、
プラスに出るかマイナスに出るかはわかりません。
Powell poised to cast his vote on rivals
http://www.ft.com/cms/s/0/c350e28a-9cad-11dd-a42e-000077b07658.html
Speculation was swirling yesterday that Barack Obama could be about to win the coveted endorsement of Colin Powell, the former US secretary of state, in the latest sign of fracturing Republican unity ahead of next month's election.
Mr Powell was scheduled to appear tomorrow on NBC's Meet the Press, an influential US Sunday morning talk show, raising hope among Democrats that he would break his silence on the election and back their candidate to become America's first black president.
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