モルガン株価急落に揺れる三菱UFJ ― 2008/10/12 09:33

今日は10月12日。
三菱UFJフィナンシャル・グループがモルガン・スタンレーへの払い込みを予定しているのは10月14日。
その額はお約束通りの90億ドル(9000億円)。
名門モルガンの命運を握ってしまったために、
この二日間の三菱UFJの動きに世界が注目。
振り返れば、三菱UFJのモルガンへの出資発表は9月22日。
しかし、世界的な信用不安が高まる中、
モルガンの資金繰り懸念により株価急落。
そして、10月10日の終値はなんと9.68ドル。
ついに10ドルの節目を割り込んでしまった。
現在のモルガンの時価総額は約100億ドルになっちゃったわけ。
10日は一時7ドルを切っていましたから、
これだと時価総額は約80億ドル。
三菱UFJの出資予定額以下にまで落ち込んだことになります。
今だと丸ごと買えたかもしれない。
三菱UFJとモルガンの最終合意が決まったのは9月29日。
取得総額を出資比率の21%にあたる90億ドルとし、
約30億ドル分の普通株と約60億ドル分の優先株を取得するというもの。
問題なのはその取得額。
三菱UFJはモルガンの普通株を一株当たり25.25ドルで約1億1千万株取得。
さらに議決権のない「転換権付き永久優先株」を一株当たり31.25ドルで約1億9千万株分取得することに合意しています。
当初、三菱UFJはすべて普通株で取得することで合意していたのですが、
モルガンの株価下落に備えて優先株の取得を主張。
出資額の3分の2を優先株とすることで双方が折り合ったのです。
それでも、三菱UFJが合意した普通株取得価格は一株当たり25.25ドル。
10月10日の終値は9.68ドル。
この差はどうする。
どうするんだ。三菱UFJ。
三菱UFJは、「出資が実現すれば株価も急回復だ!」と期待しているようですが、
戻りが鈍いといきなり巨額の含み損を抱えることになります。
しかも、公的資金注入の具体策も浮上し、これがどう影響するかもわからない。
結果として「高値づかみ」となった場合、三菱UFJのメンツ丸つぶれ。
株主から批判が高まることは必至。
日経によれば、この案件は即断即決を迫られたため、わずか三日で決断したとのこと。
調査分析する時間などなかったはず。
モルガンが儲けてくれれば、三菱UFJは持分法適用会社として利益を吸い上げることができる。
これはおいしいと思ったのでしょう。
しかし、「出資ありき」で話が進んだことに対して、
グループ内にも不安を漏らす声が出ている。
こうした不安を打ち消すために、三菱UFJ証券とモルガンの日本法人の統合による相乗効果もアピールします。
三菱UFJグループにとって証券業務のてこ入れは長年の課題。
「統合すればM&A(合併・買収)分野で業界トップに浮上できる。
最大手の野村ホールディングスを急追するのだ!」とアピールしたのです。
しかし、この統合とて文化の違いが大きな障害になるはず。
特に報酬格差が内部を分裂させる要因になるかも。
三菱UFJはモルガンへの出資だけではなく、米ユニオンバンカル・コーポレーションの完全子会社化やアコムの連結子会社化などで短期間に1兆数千億円の投資を行おうとしています。
この時期の自己資本比率の悪化は、三菱UFJ自体の信用力を損ないかねない。
すでに一部の格付け会社が格下げの方向で見直しを始めています。
現在、今回の大型出資を主導した三菱UFJの畔柳信雄社長、永易克典三菱東京UFJ銀行頭取の両トップがワシントン入りして、ぎりぎりの判断をしているそうです。
「もうちょっとまけてよ」とは言えても、
今さらドタキャンなんてできるわけがない。
そんなことをしたら、日米関係レベルにまで発展する可能性もあります。
こうなったら、運を天に任せるしかないよね。
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