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昭和天皇、聖談拝聴録原稿(木下のメモ)③「結論」2008/07/31 08:17

木下道雄『側近日誌』(文藝春秋)
木下道雄『側近日誌』(文藝春秋)、P214~215

聖談拝聴録原稿(木下のメモ)③「結論」

 結論
 以上緒論及び本文に於て戦争の原因とその防止の不可能なりし所以を縷々述べて来たが、結論として概括的に私の感想を話そう。
 先ず我が国の国民性に付いて思うことは付和雷同性が多いことで、これは大いに改善の要があると考える。近頃のストライキの話を聞いてもそうであるが、共産党の者が、その反対者を目して反動主義者とか非民主主義者とか叫ぶと、すぐこれに付和雷同する。戦前及び戦時中のことを回顧して見ても、今の首相の吉田などのように自分の主張を固守した人もいるが、多くは平和論及至親英米論を肝に持っておっても、これを口にすると軍部から不忠呼ばわりされたり非愛国者の扱いをされるものだから、沈黙を守るか又は自分の主義を捨てて軍部の主戦論に付和雷同して戦争論をふり廻す。
 かように国民性に落ち着きのないことが、戦争防止の困難であった一つの原因であった。将来この欠点を矯正するには、どうしても国民の教養を高め、又宗教心を培って確固不動の信念を養う必要があると思う。又このことが日本民族の向上ともなり、世界に向かって人種平等を要求する大きな力ともなることと思う。
 次に軍備のことであるが、抑々軍備は平和確保の為の一手段である。しかるに従来の有様を見ると、平和の為に軍備をするといいながら、軍備が充実すると、その軍備の力を使用したがる癖がとかく軍人の中にあった。
 このことは後編に譲ることにする。
 最後に為政者に付ての感想であるが、以上述べたような国民と軍人とを指導すべき人物として、この困難に当った近衛、東條、鈴木、米内に付て一言すると、近衛は思想は平和的で、ひたすらそれに向かって邁進せんとしたことは事実だが、彼は自分に対する世間の人気ということを余りに考え過ぎた為、事に当って断行の勇気を欠いたことは、遂に国家を戦争という暗礁に乗り上げさして終い、次に立った東條の最後の努力をもってしてもこれを離礁せしめることが出来なかった。
 これに引きかえ鈴木首相と米内海相とは、政治的技術に於ては近衛に及ばなかったけれども、大勇があったのでよく終戦の大事を為し遂げたのである。
 以上は他人に関する感想であるが、私自身としては、不可抗力とはいいながらこの戦争によって世界人類の幸福を害い、又我が国民に物心両方面に多大な損失を与えて国の発展を阻止し、又、股肱と頼んだ多くの忠勇なる軍人を戦場に失い、かつ多年教育整備した軍を武装解除に至らしめたのみならず、国家の為粉骨努力した多くの忠誠の人々を戦争犯罪人たらしめたことに付ては、我が祖先に対して誠に申し訳なく、衷心陳謝するところである。
 しかし負け惜しみと思うかも知れぬが、敗戦の結果とはいえ我が憲法の改正も出来た今日に於て考えて見れば、我が国民にとっては勝利の結果極端なる軍国主義となるよりも却って幸福ではないだろうか。
 歴史は繰り返すということもあるから、以上事共を述べておく次第で、これが新日本建設の一里塚とならば幸いである。

▲引用終了


 この聖断拝聴録原稿こそが昭和天皇の公式回想録であったと思われます。これらを元にして昭和天皇独白録が作成されます。

 『隠された皇室人脈』でも取り上げたように、これを書き留めた木下道雄は後に敬虔なカトリック信徒となります。このことから「宗教心」とは広い意味での宗教をさしていたと考えるべきでしょう。
 
 教養を高め、宗教心を培って確固不動の信念を養う努力を怠り、落ち着きなく付和雷同するような人ばかりの世の中になれば、歴史はまた繰り返す。

「最悪のシナリオ」にはならないと信じたいのですが、近い将来、米欧によって日中間の衝突が煽られることは間違いない。そんな時にこの聖断拝聴録原稿が蘇るようにセットしておきますね。

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