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ネット選挙の宴と奇縁 - 三木谷浩史、鈴木寛、藤田晋2013/07/30 08:26



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ネット選挙宴の後(2)三木谷新経連、届かず(迫真)
2013/07/30 日本経済新聞 朝刊

 折からのゲリラ豪雨でビニール傘が用をなさない。選挙カーの上の3人はずぶぬれだった。

 「党派を超えて、日本のことを考えて、鈴木さんが必要なんです」。7日の夕刻、東京・渋谷のスクランブル交差点で、紺色のポロシャツを着た楽天社長の三木谷浩史(48)は、家路につく足を止めた有権者に向かって声を振り絞った。隣には民主党の参院選候補、鈴木寛(49)。その隣にはサイバーエージェント社長の藤田晋(40)がいた。

 4日の公示日、三木谷が代表理事を務める新経済連盟(新経連)は推薦する候補者のリストを発表した。イノベーション、グローバル化、アントレプレナーシップ(起業家精神)の推進という新経連の政策に合致した8人だ。内訳は自民党5人、民主党、みんなの党、無所属が各1人だった。

 当選が危ぶまれたのは鈴木と、5月に民主党を離党し、無所属で出馬した元衆院議員の高井崇志(43)。「民主党色」が大きなハンディになっていた。三木谷は鈴木を重点的に応援した。

 鈴木はネット選挙実現の功労者である。慶応大環境情報学部で教べんを執った経験もある鈴木はIT(情報技術)に理解が深い。2004年、楽天がプロ野球に参入するとき参院議員として応援してくれたのも鈴木だった。何よりネット選挙の効果で若い有権者が投票所に足を運び、敗色濃厚な鈴木が勝てば「日本の政治が変わる」(三木谷)。

 だが有権者は三木谷のプログラム通りには動かなかった。24日未明、サンフランシスコのホテルにいた三木谷の携帯電話が鳴った。鈴木からだった。

 「応援してもらったのに申し訳ない」「こちらこそ力不足でした」。短いやり取りだった。

 鈴木は、「脱原発」を掲げたタレントの山本太郎(無所属)に競り負けた。組織の後ろ盾がない山本もネットを駆使した。「向こうの方がメッセージが分かりやすかった。それにしても民主党への逆風がきつかった」(三木谷)。民主党色が抜けきらない高井も落選した。新経連はネットで劣勢を跳ね返す策を練ったが「準備時間が足りなかった」(同)。

 選挙中、鈴木はネット選挙の意義を熱く語っていた。「あらゆる世代がネットを通じて豊富な判断材料を持つ。知名度や組織力だけで戦ってきたこれまでとは全く違う選挙になる」。だが鈴木は負けた。(敬称略)