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日経:巨樹の神威仰ぎ撮る―巨樹写真家高橋弘氏2013/06/28 10:05

日経:巨樹の神威仰ぎ撮る―巨樹写真家高橋弘氏


<記事引用>

巨樹の神威仰ぎ撮る―巨樹写真家高橋弘氏(文化)
2013/06/28 日本経済新聞 朝刊

 出合うと、まず手を合わせる。私なりの挨拶(あいさつ)である。そして周囲を何度も回る。1人では抱えきれないほど幹が太くて、てっぺんも容易に見えない巨木は、初対面ではなかなかいいアングルを教えてくれない。納得いく写真は2度、3度と訪れてようやく、撮れる。

 日本の巨樹・巨木を撮り続けている。28歳のころから、25年になる。

 カメラメーカーに勤めていたこともあり写真は昔から趣味で、国内の史跡によく出掛けていた。そんな中、福島県・会津で幹の直径が3メートルに及ぶスギに出合った。その圧倒的な重量感、存在感が忘れられなかった。調べると、日本には7万本近くもの巨樹がある。それを一つ一つ訪ねるところから、撮影は始まった。

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 世界屈指の多種多様さ

 巨樹とは環境省の定義に従えば、高さ1・3メートルのところで幹周りが3メートル以上の樹木を指す。現在7万本弱というのは、確認されたものという意味で、実際にはまだまだあるはずだ。スギ、クスノキ、ケヤキ、イチョウ、カツラ、イチイ、モミ……。日本は巨樹の数と、その多種多様さにおいて、世界で屈指だ。

 これまで3100本ほどを撮影した。延べで1万本になる。現在は東京・奥多摩町の日原森林館で解説員をしながら、各地で撮り歩いている。8年前からは環境省の巨樹のデータベースの管理もしており、新発見の情報も入る。数年前には熊本県で、日本で2番目に大きいイチョウが世に出た。幹の直径は5メートル、幹周りが16メートルもある。

 巨樹は、山奥にあるとは限らない。熊本県のイチョウもそうだが、むしろ人里の方が多い。よく見つかるのは、神社や寺の境内だ。ある地域の「神木」となれば、伐採されることなく大きく育つ。その木を、地元の人は見慣れているがゆえに、巨樹としての価値をなかなか認知しないのだ。

 巨樹のあるところは、人が暮らしやすい場所だともいえる。南からの日差しと水があり、強風があたらない土地。例えば北側に山のある、山と平地のきわのあたりでよく発見される。いわゆる里山と呼ばれる場所は、巨樹の宝庫でもある。巨樹は、日常風景の延長線上に存在するものなのだ。

 山間部まで日本中を徹底的に調査すれば、もっともっと現れるだろう。現在では幹周りが25メートルほどのものが日本最大とされているが、それ以上の木もあるはずだ。

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 失礼を働くとバチが

 数百年から千年以上の樹齢を持つ巨樹はいわば地球で最大・最長寿の生命体である。人間の常識を超越した存在、神が宿るもののように感じられる。出合ってしばらく、放心状態になることも多い。撮影の際は、半日はねばる。晴れの日よりむしろ、曇りや霧雨の日の方がいい写真が撮れる。

 うっかり失礼を働くと、バチが当たると思っている。撮影前に手を合わせるのを忘れたり、直接実や葉を採取しようとしたりするとケガをしたり、体調を崩したりするのだ。こうした巨樹は伝承のあるものも多く、ヤマトタケルや空海、親鸞、平家の落人、八幡太郎(源義家)らの「お手植えの木」だと伝えられるものも少なくない。

 山中を2時間もさまよって、遭難しかかったこともある。ようやく見つかった一本道の先に、日本一のヒノキはあった。東京都の御蔵島は巨樹が多い土地だが、海が荒れて船が接岸できない日が多い。しかし台風の合間に1日だけ上陸でき、念願だったシイの巨木に出合うことができた。

 巨樹には蛇のようにうねった木、あちらこちらに伸びて暴れているような木も多く、私はそうしたアクの強い木が特に好きだ。カメラと共にメジャーや樹高計も25年前から持ち歩き、幹周りや高さを測る。

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 震災、大半が無事

 東日本大震災後は、東北の巨樹も見て回った。大半が無事に残っていた。多くが高台の神社や寺の境内にあったためだろう。石段の最上段まで津波が来た、という話もよく聞いた。境内のすぐ下で水が止まったというのだ。やはり巨樹は、人が安全に暮らせる場所を示しているのだろう。

 国内の巨樹を探しつつ、少しずつ海外でも撮影したい。例えば台湾にあるタイワンヒノキは、幹周りが25メートルを超えるものが数多く存在する。そして世界最大の巨樹、セコイアデンドロン。米国・カリフォルニアに多いが、幹周りは30メートルを超え、日本の巨樹たちの3倍はありそうな印象だ。世界の巨樹も、私にいいカメラアングルを教えてくれるだろうか。(たかはし・ひろし=巨樹写真家)

【図・写真】筆者が撮影した宮崎県・諸和久のカツラ

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