日経:燃料電池車が変える(下)エネルギー自給に一歩 燃料電池車が成長戦略の真ん中へ ― 2013/03/21 07:26
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燃料電池車が変える(下)エネルギー自給に一歩。 (画像引用)
2013/03/21 日本経済新聞 朝刊 1ページ
ガソリンスタンドのように見えて油の臭いがしない水素ステーション。燃料電池車に水素を補給する実証施設が今春、新たに3カ所できる。
10兆円の可能性
名古屋市などに2カ所開設するのがJX日鉱日石エネルギー。全国約3万7千カ所のガソリンスタンドで4割のシェアを握る同社の杉森務取締役は「車の燃料が少しでも水素に移行するなら放っておけない」と話す。
これでJXが担う実証試験は国内19カ所中5カ所。石油会社などが業界横断で打ち出した「2015年に全国100カ所」の目標が実現した時点でガソリンスタンドと同じシェア4割を狙う。
石油会社などには電気自動車より燃料電池車の方が稼ぎやすいとの期待がある。電気自動車は充電に約30分、1回の収入は数百円程度が一般的。だが燃料電池車なら3分で水素を高圧で充填し、1回でガソリン並みの数千円の収入が入る。
水素ステーションの建設を計画する東京ガスの倉橋浩造・水素ビジネスプロジェクトグループマネージャーは「1カ所に2千台分の利用者がいれば採算が合う」と話す。従来のガソリンスタンドと同水準の利用者数だ。
15年に燃料電池車が発売されれば、水素を供給するインフラ関連市場も膨らむ。日本エネルギー経済研究所の平井晴己研究主幹は「製造設備や1万カ所のステーション整備で10兆円以上に達する可能性がある」とみる。
水素は液化天然ガス(LNG)などを改質して作るほか石油精製や製鉄の過程でも取り出せる。製油所ではガソリンなどを精製する際、硫黄分を取り除くために大量の水素を製造するが、今後は製油所の縮小が続き、余剰な水素は増える。石油会社やガソリンスタンドにとっては燃料が水素にシフトする流れに乗れば商機になる。
燃料電池車はガソリン車よりエネルギー効率が高く、日本の消費エネルギーの削減につながる。トヨタ自動車の試算では燃料電池車の総合的なエネルギー効率はガソリン車の約2倍という。
将来は「エネルギー自給国」も夢ではない。
水素が雇用創出
東日本大震災の傷痕が残る岩手県宮古市。昨年11月、トヨタなど官民で水素タウンの建設計画が動き始めた。地元の木材をチップ化してできたガスから水素を作り、それを燃料電池車の動力源にする。原発や石油に頼らない地産地消のエネルギープロジェクトだ。
セダンタイプの燃料電池車なら一般家庭の場合1週間以上給電でき、電気自動車をしのぐ。政府も100カ所に水素ステーションをつくる民間の取り組みを後押しするため、補助金を交付する。
水素の製造コストはまだ高い。だが化石燃料は必ず枯渇し、燃料電池車は将来のエネルギー危機を乗り切る切り札になる。持たざる国の日本はエネルギー自給の点からも普及が急務だ。
40年前の1973年度の原油輸入量は2・9億キロリットル。金額は86億7000万ドルだった。2010年度は輸入量が2・2億キロリットルに減る一方で輸入額は13倍にもなっている。
水素の自給率が高まれば原油購入資金の国外流出を減らせる。それをインフラ整備などに充てれば関連産業の育成や雇用創出にも効果はある。
水素インフラに使う鋼材、フル充填する際の圧力。規制の見直しは避けて通れない。環境や産業創出、貿易収支への影響を考えれば燃料電池車が成長戦略の真ん中に座る日も遠くなさそうだ。
藤本秀文、銀木晃、小川計介、加藤貴行、川上穣、松井基一が担当しました。
鎮守の森と水素タウン - トヨタ燃料電池車が拓く復興
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2012/12/05/6652049
森が生み出す水素タウン(2):宮古市BLUE CHALLENGE PROJECT
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2012/12/07/6653757
宮古市BLUE CHALLENGE PROJECT - 宮古市ブルーチャレンジプロジェクト協議会
http://bluechallenge.jp/project.html
(株)ジャパンブルーエナジー -JBEC-
http://www.jpo-net.co.jp/
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