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トシ・ヨシハラのタンポポ・USA:中印衝突に備え、米軍も分散・拡散・再配置?2011/07/22 08:03

トシ・ヨシハラのタンポポ・USA:中印衝突に備え、米軍も分散・拡散・再配置?


<関連記事引用>

危ない横須賀を去って豪州へ行くべし?
Yokosuka: no longer a safe harbour?
2011.07.21(Thu)  
谷口 智彦
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/15603

米国海軍大学(US Naval War College)でアジア太平洋科を率いる日系研究者トシ・ヨシハラが、豪州を代表するシンクタンクから注目、というより、いささか瞠目すべき論文を発表した。

日本から豪州へ基地を移管せよ

 横須賀、佐世保、嘉手納を、今後重要となる戦域から遠過ぎるうえ中国ミサイルの射程内にありはなはだ危険だと断じ、米海軍力の少なくとも一部を豪州に移管する必要を強く説いている。

 論争的なのは恐らくヨシハラ自身承知のことで、「非現実的である」「米国は弱いという対外イメージをかえって与えてしまう」などとする反論が既に現れた。

 それでも、日米同盟それ自体が、第1に地理的有用性を減らし、第2に戦略的耐久性を減じつつあるのだとする主張として読み替えることができ、それもペンタゴンに近い専門家の言だけに、この先あり得べき変化に関して一定程度予言的だ。

 米豪間にはいま、日米間で言う「2プラス2」の仕組みがある。2010年11月8日メルボルンで会した両国外務・国務・国防大臣長官協議は、今後米軍が豪州にプレゼンスを増していく路線を承認した。基地・施設の利用など具体策を検討する作業部会が発足し、議論を続けているという。

 これをとらえて、このところ豪州を代表する外交・安保のシンクタンクとなったロウウイ研究所(Lowy Institute)から短いペーパーとして出たのが今回取り上げようとする論文である。

米軍の世界配置を再検討中

 ヨシハラは先に Red Star over the Pacific: China's Rise and the Challenge to U.S. Maritime Strategy を著し(共著者として)、中国海軍力の増強によって米海軍の優位が挑戦にさらされつつある様を危機意識をもって描いた。執筆量は旺盛で、目下米海軍大学では目立つ論客の1人である。

 現在米政府は、米軍世界配置再検討作業(global posture review)を改めて続けている。そこでは米軍がアジアに前方展開勢力を維持する際、次の3つに適うかどうか吟味することになっているのだそうだ。ヨシハラによれば3つの検討項目とは、

(1)当該地域全体を通じてより均等な配置になっているかどうか(2)攻撃に対する耐久力、残存能力がともにあり、攻撃を受けても多様な作戦遂行能力を維持できるか(3)基地所在国政府ならびに国民にとって、当該基地の存在が政治的に受け入れられているか

 だという。ここからして既に明らかなように、三沢から嘉手納まで、在日米軍基地はどの項目にも十全には適合しない。

 ヨシハラ自身の言葉に従えば、第1に日本は東ないし北にあり過ぎる。ソ連との対抗を主眼とした冷戦下の態勢であって、南シナ海からインド洋方面へ押し出すには遠過ぎる。かつ途中にいくつもチョークポイント(通行を妨げる制扼点)があって、果たして目標戦域に到達できるかさえ覚束ない。

中国の短距離ミサイル射程内にある在日米軍基地

 とすると、ここからは忖度して言うのだが、日本に軍事力を集中させる態勢はいかにも「不均等な配置」であるから、分散すべしということになる。

 第2に、再びヨシハラに言わせると、在日基地はすべて中国短中距離ミサイルの射程内に入り、嘉手納など「数時間で無力化されかねない」。

 すなわち耐久力も残存能力も十分にはないわけで、第3の基準、政治的に受け入れられるかどうかに至っては、ヨシハラは明言していないが、鳩山由紀夫・菅直人政権下の混乱を思えば答えは言わずもがなであろう。

 翻って豪州は、ヨシハラの言うのに「第1、第2の基準をやすやすとクリア」し、第3の基準も、ロウウイ研究所のアンケート調査によると「豪州に米軍が来ることを支持する者は55%、うち20%が強固に支持」する現状に照らし、合適であるという。

 すなわち横須賀、佐世保は冷戦の遺物。この先重要なのは豪州に持つ米海軍基地だと示唆した格好だ。パース沖合ガーデン島に豪州海軍が有する最大基地「HMAS Stirling」の名を挙げ、米海軍が同基地内にプレゼンスを持つ重要さをしきりに説いている。

インド・太平洋海軍となる米海軍

 少し前提的な記述も紹介しておかなくてはならない。

 ヨシハラによれば、米海軍はこの先実質上「インド・太平洋海軍」となる。冷戦が終わって大西洋の比重が激減し、代わってインド、中国両国が海軍大国として台頭しつつあるのに合わせた変化である。ここを抄訳しておくと、

 「大国間の相克と覇権への挑戦が新たに生じるのは、いずれもユーラシア大陸の東、南の周縁部と見込まれる。この両方が、新たなセンター・オブ・グラビティとなる。ゆえに米国海軍力は、その主要勢力を東アジア、南アジアの双方において行使しなくてはならない。艦船行動をこの先スエズ以東に集中するということは、米海軍が実質上、インド・太平洋海軍となることを意味する。それに適合する基地の配置がなければならないゆえんだ」

 続けてこうも言う。

 「(インド、中国という)2強国の海軍力が交わり、ことによるとぶつかるとすると、それはインド洋、太平洋の交錯する点、典型的にはマラッカ海峡となる。海軍力の角逐は、もはや米海軍が年来圧倒してきた北東アジアに限られてなどいない。大国間の相克が南へ、豪州へと遷移するいま、米海軍艦船をどこに置くかは喫緊の検討課題となった」

 要するに、日本、韓国、さらにはグアムも、大国海軍が出会う地点から東にあり過ぎ、北にあり過ぎるのである。

米軍思いのシンガポールは中国に近すぎる

 シンガポールは地理的に好ましく、同国は特に米空母専用のバースまでこしらえ便宜を図ってきたが、ヨシハラに言わせると中国をおもんぱかるところが強く米海軍を恒常的にホストすることができない。

 そこで、太平洋・インド洋の双方に近く、かつチョークポイントを経ずにこの両洋に船を出せる豪州が、地理的・政治的に最も望ましいとされる。

 またグアムまで中国がミサイルの射程を延ばしつつあるいま、ひとり豪州のみは、いまだに大陸間弾道弾を用いなければ中国からの攻撃ができない。ミサイルの圏外にあるという意味でも、豪州は向こう何年もの間「サンクチュアリー」であり続け、安全だろうという。

 ペーパーは結論部分に至り、豪州に横須賀、佐世保並みの大規模基地を拵えるのは恐らく行きすぎで、戦略的にもさほど意味を持たないという。シンガポール的な、その気になればいつでも使える施設を配し、普段は原潜の基地として用いる線が、ヨシハラの言う豪州基地の使い方である。

 現状認識の深刻さ、地政学的把握の遠大さに比べ、足元で実施可能な具体策となるといきなり小ぶりとなる印象は確かにあるが、上のように言うヨシハラは、横須賀、佐世保がいまのまま続いていくことを当然視はしていないだろう。

在日米軍の規模拡大は考慮の外

 少なくとも在日米軍基地がこの先いま以上の規模拡大、能力拡充に向かう可能性は、ほとんど考慮の外に置かれているとみてよさそうだ。

 中国が備えたミサイル戦力は、それほどまでに在日米軍基地の価値に関して再考を強いつつある。米軍がいまの規模でいつまでも居続けてくれることを無前提に信じ、これに反対してみたり、騒音発生源扱いしてみたりしてきた日本の「甘えの構造」は、いきなり冷水を浴びせられることになりはしないか。

 そんなことをつくづく考えさせてくれる論文である。日米共同ミサイル防衛の拡充、日本政府による集団的自衛権の即時是認、日豪、日印関係を事実上の同盟に格上げするなどいまとれる策はたくさんある。ないのは日本政治の意思それ自体だ。


<関連サイト>

Resident power: the case for an enhanced US military presence in Australia
Dr Toshi Yoshihara
http://www.lowyinstitute.org/Publication.asp?pid=1630

Red Star over the Pacific: China's Rise and the Challenge to U.S. Maritime Strategy
Toshi Yoshihara (著), James R. Holmes (著) (画像引用)
http://t.co/UPfYBqE

中国の新型ミサイル「東風21D」は米空母を殺すゲーム・チェンジャー
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2010/08/09/5274841

本ブログは一足お先にトシ・ヨシハラ=Toshi Yoshiharaに注目
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2010/09/20/5358403