Google
WWW を検索 「園田義明めも。」を検索

武藤敏郎:復興資金の調達は財政状況を悪化させないことが基本 膨大な民の金融資産活用も図るべし2011/05/20 08:02

武藤敏郎:復興資金の調達は財政状況を悪化させないことが基本 膨大な民の金融資産活用も図るべし


<関連記事引用>

復興資金の調達は
財政状況を悪化させないことが基本
膨大な民の金融資産活用も図るべし
――大和総研 武藤敏郎理事長に聞く (画像引用)
http://diamond.jp/articles/-/12326

むとう としろう/1943年生まれ、66年東京大法学部卒、大蔵省入省、90年大臣官房秘書課長、99年主計局長、2000年大蔵事務次官、01年財務事務次官、03年財務省辞職。03年3月日本銀行副総裁、08年3月退任、同年7月から現職

5月初めには、東日本大震災からの復旧を内容とする第1次補正予算が成立した。予算規模は4兆円で、既存の組み替えで財源を確保。ただ、これから本格的復興へ向かうに際して、必要な資金量はさらに大きくなることは必至で、復興構想会議は増税を求める姿勢を強めているといわれる。復興にはどれほどの資金が必要なのか、また、その資金はどのような原則で調達されるべきなのか。大和総研の武藤敏郎理事長に聞いた。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)

復興のための所要資金は
原発の行方次第では30兆円越えも

――復興財源を考えるにあたっては、それと表裏の関係にある復興事業の内容と、必要な資金の規模が重要です。現時点では、復興に必要な資金の規模はどのくらいになると推測していますか。


 復興の内容と復興資金の量は関係があるといえますが、まず金額ありきの議論をするのは、適当でないというのが前提です。

 復興に当たっては、第1段階として当面の復旧事業があり、第2段階として、しっかりした国家観を基に中長期の視点に立った復興があると考えています。第1段階では、がれきの処理、仮設住宅の建設など被災者の救済に直接関連するものに加え、水道、電気、ガスなどのライフライン、道路、橋、港湾など社会インフラを元に復さないといけない。

 第2段階になると、単に元の姿に戻すのではなく、東北地方の新たな発展の核になる事業をいかに組み込んでいくかが重要になります。その場合は、地域住民主体による復興というのが基本になります。

 国としては将来の災害対策をにらんだ復興とする、また雇用を確保するために、民間の経済活動を復活させる必要があり、どちらかというと零細だった東北地方の農水産業を、これを機会に競争力のある第1次産業に再構築していく。こうしたことが基本原則になると思います。

 このような基本原則に関しては、ほとんど異論は出ないと思いますが、それが具体的にはどうなのかが最大のポイントです。というのは、今回の震災の特徴は、大きな被害が3県にまたがり、しかもその内容に違いがあるからです。

 福島県は原発事故という特殊な事情を抱え、その終息もみえないことによる復興の困難さに直面している。宮城県は海岸地帯に中核機能があり、これが津波によって非常に大きな被害を受けている。岩手県も海岸地域は大きなダメージを受けたものの、中核機能は内陸部にあったために大きな被害からは免れた。

 このように被害の性格も三者三様の側面があるので、再建のあり方も違ってくる。実際、知事さんたちの発言もかなり違っている。これからこうした地域ごとに異なる実情が、問題になってくるでしょう。したがって、東京で理想論ばかり言っていても、現場は全く違うということにならないように、留意する必要があります。

 例えば、福島の原発周辺の地域で、もし立ち入り禁止期間が長期化すれば、土地の価値はほとんどなくなるので、国が買い上げないし借り上げて、その地域にメガソーラー発電所や風力発電所をつくって活用するというようなことも考えられます。

 このように原発事故の帰趨がはっきりしない段階で、復興の所要資金を推定するのは難しいですが、大雑把に言って30兆円くらいではないかとみています。政府は被害額が16~25兆円と言っているが、原発事故の状況によっては30兆円を超える可能性もあるのではないでしょうか。

 この膨大な資金を、これから国、地方自治体、民間でどう分担していくかが、復興財源を考える際の大きな課題だと思います。

財政赤字が拡大していく形の調達は
市場の信認を失う恐れがある

――それでは、どのような原則で、国、地方、民間は負担を分担したらいいのでしょうか。

 現時点で言えることは、国の負担が増えざるを得ないだろうということです。阪神淡路大震災の時の所要資金は約8兆円でした。国、地方、民間でどう分担したかは、必ずしも明確ではありませんが、いろいろな分析があって、国が4割強、地方と民間で3割弱の財源負担になっています。

 当時の兵庫県は、日本の中では財政力の比較的高い県だったので、これだけの負担が可能でしたが、今回の3県は財政力が余り強くないので、阪神淡路のように、県が負担するのは難しいと思います。民がどの程度負担するかは悩ましいところですが、私たちは民の資金を大事にすべきだと思っています。

 経済活動は民が主体であって、民の原則としては、事業を興す場合はおカネを借りて、事業収益の中からおカネを返済する。政府からの補助金がないと成り立たないような事業は、恐らく将来性はない。したがって、民の原理をどう活用していくかが大事な視点で、何でもかんでも国が全面的に面倒をみるんだという議論は、長い目で見ると経済の復興にはプラスにはならないと思います。

――復興には非常に大きな資金が必要になるわけですが、例えば阪神淡路大震災のころと比べても、財政状況は大変厳しくなっています。そうした中で、復興資金の調達に当たっては、どのような基本原則を持っておくべきでしょうか。 

 財政状況を比べると、国の財政のプライマリー・バランス(基礎的財政収支=収入のうち国債発行によるものを除いたものと、支出から国債の償還・利払いを除いたものの収支)は、阪神淡路のときでGDP比マイナス3.2%、これが今回はマイナス6.5%、長期債務残高は同じくGDP比で75%だったものが、180%にまで増えています。

 国債の格付けは、阪神淡路のときには最上級のトリプルAでしたが、いまはダブルAマイナスです。スペインとイタリアの中間で、中国と同じ評価になっています。このようにどの指標を見ても財政事情は大きく悪化している。加えて地方自治体の財政力も脆弱になっています。

 そうした状況下にあって、財政赤字が拡大していく形で復興資金を調達していくと、市場の信認を失いかねない。万が一にも格付けがさらに引き下げられると、資金調達が困難になるので、復興のための資金すら調達できなくなる可能性さえ出てきます。

――そうすると復興の財源としては、どのような優先順位で考えたらよいのでしょうか。

 第1は、既存の予算の削減と組み変えによって対応する。第2に、それで足りない部分については、国民に負担を求める。第3に場合によっては、国債を発行し財政赤字を拡大することも、考えないといけないかもしれませんが、これはあくまでやむを得ない措置です。

 国債を発行する場合は、日本銀行による直接引き受けは禁じ手の一つです。なぜなら、国債発行が困難な状況かどうかというと、いまの日本は資金余剰で投資不足の状態にあるので、国債を発行して資金を調達することができる。もし、そうでないのであれば、日銀も国債の消化に協力すべきだと、私は思っていますが、いまはそういう状況でない。

 そんな時に、もし日銀が国債を引き受ければ、「日本の国債市場は、そんなに行き詰まっているのか」と受け止めるのが市場で、外国人が日本から資金を引き揚げていくことにもなりかねません。さらに、そのようなことをやれば、その後インフレを招いたというのが、歴史の教えるところです。

特別会計の「埋蔵金」は
債務の削減に使うべき

――復興資金は国債発行で賄っても、復興需要が出てきて成長率が高まり、その結果、自然増収で復興財源が賄えるので、増税などの国民負担は必要ないという意見もあります。

 いまの財政赤字の原因は二つあることを、理解しておかなくてはいけません。一つは景気が悪くなって税収が減り赤字が大きくなったという点です。この場合は財政が出動して公共事業などをやって景気が回復すれば、理屈のうえでは赤字が小さくなる可能性がある。

 もう一つは、過去30年間で進んできた高齢化、少子化による構造的な赤字です。高齢化によって、年金や医療といった社会保障サービスの給付が拡大してきたので、本来なら政治が決断して増税によって対応すべきだったのに、借金を増やすことで対応してきた。

 サービス水準は高まってきたのに、国民負担は低いままだったために赤字が拡大してきた。この部分の赤字は景気が回復しても埋まらない。なぜなら原因が違うからです。赤字の原因には、この二つがあることをしっかり認識しておかなくてはなりません。

 また、景気循環によって生じた赤字は、景気がよくなって税収が増えたときには、歳出を削減して黒字を出し、それで過去の赤字を縮小しなくてはなりませんが、景気がよくなるとなかなか歳出はカットできず、むしろ増やしてしまうというのが、少なくとも過去の歴史でした。

――財源としては一般会計だけでなく、特別会計の積立金や剰余金などの「埋蔵金」を使うべきだという議論があります。例えば、国債整理基金では毎年10兆円の剰余金として翌年に繰り入れている。過去にやったように、この繰り入れを停止すれば、10兆円が捻出できます。

 国の予算にも、将来の支払いやリスクに備えて、準備金や積立金を積んでおくという仕組みがあります。例えば、公的年金の積立金は将来の年金の支払いに、国債整理基金は将来の償還に備えたものです。こうしたおカネを緊急避難的に使うのは、財政の仕組みとしては考え得る。つまり、いま不足している分を補う資金繰りとしてのみ使うのであれば、そういうやり方もあり得る。

 ただし、積立金を使ったら、後でそれを穴埋めしないと、それは単なる問題の先送りでしかない。そうしないと将来の支払いに不足が生じることになる。だから、財政の責任者としては、これを安易に行うべきではない。

 特別会計の埋蔵金を使うのは、老舗の中小企業が経営が苦しくなったときに、ご先祖たちが集めた蔵にある書画骨董を売り払って、いまの従業員の給料を支払っているようなものです。今年はどうにかなっても、翌年にはどうしようもなくなる。埋蔵金を使うのであれば、膨大な借金の返済に充てるのならよいが、日常の経費に使っては、将来、取り返しのつかないことになってしまいます。

復興基金を創設し
透明性と時限性を明確に打ち出す

――大和総研では復興財源として、「復興基金」と「復興連帯税」を提言していますね。その骨子、狙いは何ですか。

 われわれは震災から1週間後に、この提言を公表しました。仕組みは「復興基金」を設けて、復興基金債を発行して資金を調達する。基金債には政府保証を付けるというものです。基金の対象は民間事業が基本で、その事業への投融資に充てる。公益事業でも、上下水道などこれからリターンが見込めるものは対象とする。

 ただし、復興事業なので金利もかなり低めに設定しなければならないだろうし、期間も長期にわたるリスキーな資金になる。損失が発生する可能性も高いので、そこは政府保証を付け、損失が生じたら税金で穴埋めせざるを得ない。しかし、復興資金をまるまる税金で賄うとなると、大変な金額になる。そこで、政府が一部関与することで、大きな民間資金を活用しようということに狙いがあります。

 なぜ基金にするかというと、透明性を高めるためと臨時の措置だということを明確にするためです。基金として別会計にすれば、この部分が国民負担だということが明らかになるし、そのことによって国民が連帯して負担している意識になるのではないでしょうか。

 基金債の償還財源としては、事業から生み出されるキャッシュフローに加えて、復興連帯税を提案しています。ただ、すぐに増税するというのではない。基金債も3年間は利払いを据え置いて、4年目から金利を支払うことを考えているので、増税も3年間で実現すればよい。

 どのような税項目について増税するかについては、消費税にこだわっているわけではありません。所得税や酒税、たばこ税、あるいは電気料金にかけてもよい。どの税項目にするかより、復興の所要資金を、国民みんなで負担しようという思想が大事です。

 オーストラリアでは昨年大洪水が起こったが、復興資金をねん出するために増税しました。復興資金は約4000億円で、そのうち半分強は歳出削減で行い、所得税の増税で1500億円をねん出した。これが財政規律に対する国際的な感覚といっていいでしょう。

――復興財源の議論と並行して、震災前から議論されていた社会保障・税の一体改革についても、政府は6月中に提言をまとめるといっています。この両者の関係は、どうあるべきだとお考えですか。

 復興財源の議論と社会保障・税の一体改革の議論が、混同されるような事態は避けなくてはならない。

 復興事業については、これによって財政状態が改善されることはあり得ないので、いかに財政の悪化をもたらさないかということが、基本的な課題になります。一方、社会保障と税の一体改革は、20年、30年あるいは50年と極めて長期的な視点に立って、財政状態を改善し、その持続可能性を確保することが課題です。したがって、この二つは明確に分けて議論すべきです。

 震災を機会に復興財源確保のために消費税を上げ、復興のメドがついたら、そのまま社会保障のために移行したらどうかという意見もありますが、それをやると「なんだ、復興は増税のための方便か」ということになるので、社会保障は社会保障として、しっかり議論すべきです。


インタビュー:復興財源は国債と償還目的増税セットで=大和総研理事長
2011年 05月 16日 15:59 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-21121620110516?sp=true

[東京 16日 ロイター] 武藤敏郎・大和総研理事長(前日銀副総裁)はロイターのインタビューに応じ、東日本大震災の復興に伴う国の財政負担は「10兆円をかなり超える」と予想、財源として復興国債の発行と一定期間後の国債償還のための増税をセットで考えるべきとの見解を示した。

 赤字国債の発行で対応した場合、日本の財政規律への懸念から資金調達が困難になって復興支援そのものに支障をきたす可能性があると懸念。与野党の一部から出ている復興国債の日銀による直接引き受けは、国債消化に問題がない現状で実施すれば、市場にかえって悪影響を与えると語った。インタビューは13日に実施した。

 復興国債の償還に充てる増税の税目については、電力供給不足に対応するため、需要抑制の観点からガソリンや電力への付加税が1つの選択肢と提言。所得税増税も「十分あり得る」と語った。消費税は、社会保障と税の一体改革の議論と混同されてしまう可能性があるため、「今の段階でこだわる必要はない」と指摘。震災対応の増税は、さらなる財政の悪化を回避することが目的となる一方、社会保障制度改革のための増税は「財政の将来の持続可能性を確立するもの」とし、明確に区別して議論すべきと主張した。社会保障制度改革に伴って消費税率は最終的に15─20%に引き上げる必要があると語った。

 また、震災によって2011年度の日本経済の成長率は前年比ゼロ%付近まで落ち込むとの見通しを示したが、2012、13年度には同プラス3%程度の成長まで回復すると予想。日本経済の下支えに向けた日銀の金融政策運営については「超緩和政策からの脱却は、だいぶ先に延びていく可能性が高い」と指摘。国債やリスク性資産を市場から買い取る日銀の資産買入基金の増額には「社債市場や国債市場などの状況を見ながら、ファインチューニングとしてはあり得る」としたが、景気対策として実施する必要性は乏しいとの見解を示した。

 インタビューの詳細は以下のとおり。

 ──震災復興のあり方は。

 「大切なことは、原則として地域主体の復興が行われることだ。一方、将来の国家像を視野に入れたビジョンを作ることも大事であり、これらは必ずしも両立することではない。双方を見据えて取捨選択が政治主導で行われるべきだ。復興に際しては、1)被災地域の人々のスキルを生かした競争力の高い第一次産業の再建、2)原発事故の影響で福島県の一部で農業などができなくなった場合、当該地域でのグリーンエネルギー生産基地の建設、3)過疎地域における高齢化社会のモデル・研究地域の位置づけ──など、制約を乗り越えてそれ自体をプラスに変えていくことが重要だ」

 ──復興に向けてどの程度の資金が必要とみているか。

 「想定被害額は原発の影響を含めて30兆円超に達する可能性がある。このうち、原発の被害は5─10兆円をみている。復興資金を国・地方・民間でどのように分担するかだが、阪神・淡路大震災の場合、国4、地方3、民間3の割合と言われている。今回の震災の場合は、地方財政が兵庫県に比べてぜい弱という面はあるが、当てはめて考えると国の負担は10兆円をかなり超える額になるイメージだ」

 ──国の負担について、財源をどのように確保すべきか。

 「原則として、歳出削減、国民負担、赤字国債の順番で考えるべきで、赤字国債の発行は最悪の選択だ。阪神・淡路大震災当時と比べてプライマリーバランス、政府の長期債務残高、国債格付けのどれを見ても悪化している。財政赤字の拡大で対処すれば、市場の信認を失って国債価格が下落し、金利が上昇するリスクがある。万一そうなれば、資金調達難で復興支援そのものに支障をきたす」

 「このため、増税で対応することになるが、今の段階で消費税にこだわる必要はない。消費税の議論は、社会保障と税の一体改革との関係で混乱する可能性がある。電力不足を考えた場合、需要抑制策の1つとしてガソリンや電力量に税金をかけるのも1つの考え方。また、所得税増税は十分にあり得る。タバコや酒などへの課税も一案だ。もっとも、すぐに増税するのは無理。増税環境が整うのは2─3年後とみている。このため、3年間は元利償還を据え置く復興国債を発行して、その間の資金調達を行い、その後の増税によって償還に充てる」

 ──財政問題では社会保障と税の一体改革も急がれる。

 「これは震災の有無にかかわらず、絶対に必要だ。震災に対応するための増税は財政赤字のさらなる悪化を食い止めることでしかないが、社会保障と税の一体改革は財政の将来の持続可能性を確立するもの。意味合いがまったく違う。(一体改革で)消費税は最終的には15─20%にしないとつじつまが合わないだろう。課題は、どのような経路で、いつまでに実現するかだ。時間が先に延びると財政赤字の対GDP(国内総生産)比は拡大していく。これは10─20年の長期計画になる」

 ──震災を受けた国内景気の先行きをどのようにみているか。

 「生産設備のき損、電力不足、風評被害を含めた原発事故、サプライチェーンの寸断などで生産活動が落ちており、少なくとも今年の7─9月期まで景気は下降局面になると思うが、10─12月期に前期比でプラスに転じていく可能性が高いとみている。ただ、そのためには、1)復興計画の予算化が順調に進む、2)サプライチェーンが9、10月には平常に戻る、2)原子力災害がこれ以上に悪化しない──ことが条件。こうした経路を前提とすると、2011年度の成長はゼロ%近辺にならざるを得ない。しかし、12年度は上昇局面に入り、13年度も含めて前年比3%程度の成長を見込んでいる」

 ──日銀の役割は。

 「復興国債の日銀引き受けは、絶対にやるべきでない。国債の市場での消化が困難になれば引き受けもやむを得ないが、今はそうした状況にはない。こうした中で、日銀が国債を引き受ければ、世界から日本の市場に異常が起きているとみられ、マーケットに悪影響を与える。市中消化された復興国債は日銀の買い入れオペの対象になると考えている」

 「超緩和政策からの脱却は、だいぶ先に延びていく可能性が高い。さらなる緩和というより、金融政策の転換点が先に延びるイメージだ。資産買入基金の増額は、社債や国債市場などの状況を見ながら、ファインチューニングとしてはあり得るが、景気対策で新たなことをやらなければならない状況にはない」

 ──原発事故の賠償スキームに関し、金融機関の東京電力向け融資について債権放棄の議論が出ている。

 「議論としては出てくると思うが、その時には株主の責任、政府の責任をどう考えるか、ということも当然、議論になる。もう少し、金融システム全体を考えなければいけない。恣意的なことをやれば、今後、金融機関行動に相当バイアスがかかり、融資に消極的になる可能性もある。ただ、金融機関が何らかの協力を求められることは、十分考えられるだろう」

(ロイターニュース 伊藤純夫)

中韓主導で日本企業誘致合戦、迫り来る「産業空洞化」の大津波2011/05/20 23:41

中韓主導で日本企業誘致合戦、迫り来る「産業空洞化」の大津波


<関連記事引用>

▼中国の動き=×

中国に中小集め、自動車部品団地 10月に完成、400社進出目指す
2011.5.20 05:00
http://www.sankeibiz.jp/business/news/110520/bsa1105200727004-n1.htm

 日本の中小自動車部品メーカーが集団で中国江蘇省に進出し、共同資材調達や市場開拓に挑戦するユニークな工業団地が年内にも稼働する見通しとなった。中小部品メーカーの進出が進めば、輸入コストの削減で日本の完成車メーカーの競争力強化につながる。東日本大震災で部品供給のサプライチェーン(供給網)が寸断されたことを受け、今後、海外進出意欲が高まるとみられる中小メーカーの受け皿となりそうだ。

 日系自動車部品団地は、江蘇省丹陽市が設立した日本自動車部品団地(JAPIC)などが運営し、中国自動車工業協会、日本貿易振興機構(ジェトロ)が支援する。丹陽市にこのほど着工し、今年10月に竣工(しゅんこう)する予定で、年内に進出企業が工場を稼働できる体制を整える。6月末に第1期の募集を締め切るが、東日本大震災の影響で現時点の応募企業は当初予定よりも5社程度少ない約20社。5年以内にこれを400社に拡大する計画だ。

 工業団地入居企業で組織する共同組合が、JAPICのサポートを受けて部材の共同購入や物流の共通化、工員の採用など間接部門を一元管理することでコスト削減につなげる。2014年までの3年間は工場の賃料も無料。法務や通関、採用や労務管理といった経営課題から解放され、生産や開発に専念できるメリットがある。日本の自動車部品ブランドを構築し、日本メーカー以外の欧米自動車メーカーにも売り込む狙いだ。

 中国市場で自動車部品の10%程度を供給する丹陽市としては、日系団地の建設により世界的な自動車部品基地としてのブランド確立を目指す。

 09年に米国を抜き、世界最大の自動車市場に浮上した中国の10年の生産台数は前年比32.4%増の1826万4700台で、当面は2桁成長が続く見通し。一方で日本国内市場は縮小が避けられず、約5000社を超える国内の自動車部品の下請け中小企業は、成長市場の中国開拓なくして生き残りを図るのが厳しい。

 欧米メーカーに比べて中国での販売台数が伸び悩む日本の完成車メーカーにとって、部品コスト削減は喫緊の課題でもある。また、震災を機に「企業の供給体制のリスク分散の意識が高まり、進出ニーズは増える」(ジェトロ上海センターの草場歩氏)見通しだ。日本の空洞化や技術流出の懸念はあるが、震災の混乱が落ち着いた段階で進出企業の増加が予想される。


▼韓国の動き=○

日本企業誘致活動を強化=大震災で韓国自治体
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011051800444

 【ソウル時事】東日本大震災を受け、海外への工場移転などを検討している日本企業を誘致しようと、韓国の自治体が取り組みを強めている。地震がほとんどない安全性を売り物に積極的にアプローチする構えだ。

 大邱市は4月に自動車部品、機械、金属などの企業関係者らを集め、対策会議を開催。来週、経済通商局長らが日本を訪問し、部品・素材関係の企業などに誘致を直接呼び掛ける。

 人口約250万人の大邱市には工業団地が多く、「国家科学産業団地」の造成も進んでいる。同団地の工場用地の価格は相場の半額程度で、最近、日本のコンサルタント会社が視察に訪れた。市では、日本企業への法人税や所得税の一定期間の免除も検討している。(2011/05/18-14:25)


日本企業を引き込め!:地方自治体、誘致戦を展開 (画像引用)
2011年5月18日(水曜日)
http://news.nna.jp/free/news/20110518krw002A.html

韓国各地の地方自治体が、日本企業誘致に向け積極的に動いているもようだ。東日本大震災をきっかけに、日本国内にあった生産設備を韓国に移そうとする企業が増加しているという。各自治体ではこれをチャンスととらえ、誘致団を派遣するなど活発な広報活動を展開するほか、税制や産業団地入居の優待条件についても検討しているという。これを機に、今後、日本企業の韓国進出は増えるのか。

■誘致団派遣が活発化

ソウル経済新聞などによると、大邱市は今月、経済通商局長を団長とする日本企業投資誘致団を東京に派遣する予定だ。

このため同市は先月、対策会議を主催し、大邱商工会議所をはじめとする主力産業分野の協会関係者らと話し合いの場を設けたという。参加企業は、自動車部品、眼鏡、ソフトウエア(SW)開発、機械金属、繊維、金型工業など多岐にわたる。会議では、日本の産業別現況と各企業の動向を把握したほか、各協会独自が持つ日本の各関連団体とのネットワークや企業同士の交流を最大限活用し、投資誘致を推進する方針を決めたという。また、同市には大邱テクノポリス、城西先端産業団地、国家科学産業団地など産業用地が多く、日本企業誘致に有利だと判断した。

NNAの取材に対し、同市の投資誘致団関係者は「これまでも投資誘致は進めていたが、今回の東日本大震災で日本の産業状況がやや不安定になったことで、こうした誘致活動が各地表面化したようだ」と説明。「すぐに投資に結びつけるのは難しいかもしれないが、時間をかけて大邱の投資環境の良さをアピールしていく計画」と話した。

また同市関係者は、「地震以降、日本では精密素材の生産拠点の一部を韓国などに移転しようとする動きがある。大邱では今年、法人税3年、所得税7年の免除などを検討している」と明かした。

蔚山市でも来月、東京へ投資誘致団を派遣する。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)を仲介役として、蔚山投資に関心を持つ企業に対し、1対1で相談に応じるという。すでに蔚山に投資をしている日本企業も多く、今後は自由貿易地域と新産業団地への投資を期待する。投資誘致課は「地震の前後で目立った変化はないが、合弁や合作企業の設立も含め、引き続き誘致を推進していきたい」と話した。

■日本からも視察に

慶尚北道の浦項市にある迎日湾港の産業団地には、先ごろ、日本の電子部品メーカーなどが見学に訪れ、港湾や投資用地などを見て投資環境を確認したという。しかしいまだ投資決定には至っておらず、具体的な話ができる段階ではないとしながらも、同市の投資誘致課は「税や家賃が減免、または100%免除されるなど、インセンティブが多い。今月末にも約20社からなる視察団が日本から来る予定だ」と積極的な展開にあることを示した。浦項以外にも日本企業を誘致するため、同道では亀尾などにもインフラの拡充と税制インセンティブを与えることを検討中だ。

全羅北道は先月、ロボット部品・半導体装備関連企業の関係者を招き投資説明会を開催。同道は、セマングム地区や、外国人投資地域に指定されている益山の部品・素材専用工業団地、金堤自由貿易地域などへの投資に対する支援を明らかにした。特に、各種災害が少ない同道の特長を生かし、精密機器や金属・半導体装備の製造など先端技術関連産業にアピールしているという。

また、釜山経済自由区域には、来月入居を控えた日本自動車部品企業が工場を建設している。この企業が生産する部品は、トヨタと現代自動車に納品される。

このほか、仁川市や昌原市(慶尚南道)などでも、地域経済の活性化を狙い積極的な誘致計画を推進しているという。

今後、地震による変化は現れるのか。どちらにしても、今を好機とらえた自治体の誘致合戦はしばらく続きそうだ。


▼インドの動き=○

再送:パナソニック、インドに初の研究開発拠点を設立
2011年 05月 18日 19:22 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK059823020110518

 [東京 18日 ロイター] パナソニック(6752.T: 株価, ニュース, レポート)は18日、インドに初の研究開発拠点を設立したと発表した。インド市場に特化した家電製品や環境エネルギー製品を開発する。

 同日付で、インド・ハリアナ州のグルガオンに「パナソニックR&Dセンターインド」を設立。人員は5人。本社の研究開発部門から2人、AV機器部門から1人、パナソニック電工から2人を派遣し、インド市場に適したAV機器や白物家電、環境エネルギー商品を開発する。

 2012年4月には、同じハリアナ州でグルガオンから約45キロメートル離れたジャジャールに工場団地「パナソニックテクノパーク」を建設する。エアコン工場(投資額50億円強・生産能力は年100万台)、洗濯機工場(投資額25億円・年40万台)、溶接機工場(投資額14億円・年2.5万台)が入り、それぞれ同年8月から稼働する予定。

 パナソニックは、新興国戦略の重点地域として、インド市場で2011年度に1000億円、2012年度に2000億円の売上高を計画している。


▼日本の動き


日本再生の戦略、年末に具体像 新成長戦略実現会議が再開
2011/5/19 19:58
http://s.nikkei.com/j2TfZi

 政府は19日夕、東日本大震災の発生を受け中断していた新成長戦略実現会議を再開した。東日本大震災や福島第1原子力発電所事故を踏まえた「政策推進指針」に沿って、従来の新成長戦略の再設計や強化について検討した。

 新たな政策課題として(1)革新的エネルギーと環境戦略(2)日本ブランドへの信頼を回復し、産業の空洞化防止と海外市場開拓戦略(3)国と国の絆の強化に向けた戦略(4)農林漁業再生戦略(5)成長型長寿社会・地域再生戦略――の5本の柱を掲げる。

 今後、エネルギー・環境戦略やマクロ経済運営などについて議論し、新成長戦略の目標や工程を検証する。9月頃をめどに中間的整理をまとめ、年末には日本再生のための戦略としての具体像を提示するとしている。

 内閣府の平野達男副大臣は終了後の記者会見で、エネルギー戦略の見直しと経済産業省の『エネルギー基本計画』との住み分けについて「現時点で整理ができているわけではない。中間的整理でまとめる結果は十分反映させられるべき内容になる」との認識を示した。〔日経QUICKニュース〕


「11年度はマイナス成長に」 武藤・大和総研理事長が講演
2011.5.20 05:00
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110520/mca1105200502001-n1.htm

 元財務事務次官の武藤敏郎大和総研理事長が19日、今後の日本経済をテーマに都内で講演し、同日発表の1~3月期の国内総生産(GDP)速報値が実質3.7%減(年率)だったことを踏まえ、2011年度はマイナス成長になるとの見通しを示した。

 武藤氏は1~3月期のGDPについて、「非常にショッキングなものになった。市場コンセンサスより相当悪かった」とし、11年度は「マイナス0.4、0.5%とか、そのくらいになるだろう」と述べた。四半期ベースでは、7~9月期には震災による景気悪化が底を打ち、「10~12月期はプラスになっていく」と見込んだが、復興需要が出てくることが前提だ。

 また、1995年の阪神大震災の経験から、「地震直後の倒産は金融支援によってそんなに増えないが、翌年くらいから増えた」と指摘し、雇用問題への波及を懸念。地域金融機関に対しては、住宅損壊などの資産劣化で借り手側の資金繰りも苦しくなることから、「不良債権は急増していくだろう」と述べた。

 産業への影響では、電力供給不足と部品の調達難が海外移転を促す可能性を指摘。「震災前から海外移転問題はあったが、アジアと日本は成長率格差があり、自然の流れだ。震災が背中を押したというのは事実だろう」と述べ、産業の空洞化につながることに警戒感を示した。


自動車成長戦略で初会合 部品調達や国内生産空洞化など協議
2011.5.20 05:00
http://www.sankeibiz.jp/business/news/110520/bsa1105200504003-n1.htm

 トヨタ自動車の豊田章男社長、ホンダの伊東孝紳社長ら、国内自動車各社のトップらが参加し、自動車業界の成長戦略を協議する研究会の初会合が19日、都内のホテルで開催された。東日本大震災による部品サプライチェーン(調達・供給網)問題や、国内生産の空洞化にどう対処するかなども、課題として協議し、6月をめどに中間とりまとめを出す。

 研究会は経済産業省が主催。海江田万里経産相は会合の中で、「震災で足下は厳しいが、各社の努力によって日本経済のなかで果たす役割を十分発揮してもらいたい」と、語った。

 自動車各社側からは「円高、自動車関連税、貿易自由協定問題、労務関連規制、環境対応といった五重苦があるといっていたが、原子力発電所停止による夏の電力不足問題が加わり、六重苦に見舞われている。海外勢と同じ土俵で戦えるように、早急に制度を整備してもらいたい」(志賀俊之・日本自動車工業会会長)といった政府側への注文が相次いだ。


電気自動車の蓄電池、電力不足解消に活用 官民で検討
2011年5月19日18時29分
http://www.asahi.com/eco/TKY201105190388.html

 経済産業省と自動車業界は19日、電気自動車(EV)に搭載された蓄電池を活用して、夏のピーク時の電気使用を抑える検討を始めた。東京電力管内を中心に電力の需給はここ数年、ひっぱくした状況が続くとみられ、普及が進むEVの蓄電池を、将来的に電力不足の解消にいかす考えだ。

 経産省の「自動車戦略研究会」が同日、初会合を開き、トヨタ自動車の豊田章男社長やスズキの鈴木修社長兼会長ら自動車大手首脳が出席し検討が決まった。

 検討する仕組みは、電気をあまり使わない夜間に家庭のコンセントを通じてEVの蓄電池を充電。電気が足りなくなる暑い日の昼間は、逆に車の蓄電池にたまった電気を家に流して、電力会社の供給量を抑える。

 背景には、東日本大震災の被災地でEVが活躍したことがある。震災発生当初はガソリンが不足したが、コンセントから充電すれば動くEVは走行できた。

 研究会は、自動車などからの電気供給量を把握し、その分だけ電力会社からの供給量を抑える「スマートメーター」の導入や、車から家に電気を送る技術的課題を協議していく方針だ。

 このほか自動車部品の共通化で生産コストを下げ、国内生産の競争力を高める空洞化対策も検討。6月をめどに議論をまとめ、政府の新成長戦略実現会議の議論に反映させたい考えだ。


ロイター企業調査:供給能力の完全復元が40%超に上昇
2011年 05月 18日 15:06 JST
http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPJAPAN-21167620110518

[東京 18日 ロイター] ロイターが東日本大震災後2カ月経過をめどに企業400社を対象に実施した調査によると、震災によって生産設備やサービス体制に打撃を受けた企業のうち、40%超の供給能力が震災前の水準に戻ったことが明らかになった。
 震災後1カ月をめどに行った4月調査では26%となっており、企業の復旧に向けた取り組みによって着実に供給能力が回復している。一方、受注量・販売額は、回復基調にあるものの、震災前の水準に戻ったと回答した企業は15%にとどまっており、相対的に需要の戻りは鈍い。

 企業活動の障害要因では、電力供給懸念がやや和らぐ一方、燃料や資材、部品の調達難が高止まりし、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原子力発電所事故による風評被害を警戒する企業が増えている。震災に伴って営業拠点の移転や取引先の変更を実施または検討している企業は、4月調査から微増の23%。移転・取引変更先について、製造業の50%が海外を含めて実施または検討していることが分かった。

 調査はロイター短観と同時に同じ対象企業に実施、調査期間は4月22日から5月13日まで。

 調査対象は400社、回答社数は210社程度。

 <企業の供給能力は着実に回復>

 震災で生産設備やサービス体制に打撃を受けたと回答した企業は全体の半数を超える53%。影響を受けた企業に対し、これまでにどの程度供給能力が回復したかを聞いたところ、震災前の水準に戻ったと回答した企業は41%となった。前回4月調査の26%から15ポイント上昇した。80%以上の水準に回復した企業と合わせると全体の87%を占め、企業努力によって供給能力が着実に回復していることをうかがわせる。非製造業では80%以上の回復と回答した企業が90%を超えた。一方、80%未満や50%未満の回復とした企業は減少傾向にあるものの、依然として全体の10%超を占めており、供給能力の正常化には相応の時間がかかりそうだ。

 <受注・販売も回復基調、戻りは鈍い>

 一方、需要も回復傾向にあるものの、供給体制の復元に向けた動きに比べて戻りは鈍い。震災による受注量や販売額への影響を聞いたところ、63%の企業が「落ち込んだ」と回答。4月調査の59%から上昇しており、「主要ユーザーである自動車メーカーの生産が停滞、売り上げが減少傾向にある」(鉄鋼)など、先行きは依然として不透明感が強い。震災前との比較では、受注量・販売額が「震災前の水準に戻った」と回答した企業の割合が4月調査の2%から大きく上昇したものの、水準は15%にとどまった。製造業では90%未満との回答が半数超を占めており、業種別にみると、金属・機械や輸送用機器などの戻りの鈍さが目立つ。非製造業を含めて企業からは「自動車や半導体の操業が停止しており、大幅な売り上げ減となっている」(その他製造)と、サプライチェーン(供給制約)寸断の影響のほか、「消費意欲が冷え込んでいる」(小売)などと消費者マインド
の悪化を懸念する声が聞かれた。

 <電力供給懸念が低下、部材調達難・原発風評被害が障害>

 企業活動再開の障害要因としては、4月調査の段階で64%の企業が回答していた「電力供給」が58%に低下。計画停電の終了や、今夏の電力需給が当初見通しから次第に緩和されつつあることなどが背景とみられる。一方、69%と4月調査に続いて最も多くの企業が懸念材料に挙げたのが燃料・資材・部品の調達。特に製造業は77%と高く、企業からは「原材料供給が不安定で、生産が十分に確保できない」(化学)、「震災後の最悪期は脱したが、原材料の入荷に不安がある」(電機)などといった懸念が数多く聞かれた。また、原発事故による風評被害も20%となり、4月調査から小幅上昇。卸・小売業で指摘する企業が多く、「震災・原発事故の影響から、消費者の外食離れが進んでいる」(卸売)との指摘もあった。

  <拠点移転や取引先変更、製造業は50%が海外含め検討>

 震災をきっかけに工場や営業拠点の移転や、取引先の変更を実施または検討している企業は23%となり、4月調査の21%から微増。内訳は製造業26%、非製造業21%で、それぞれ小幅上昇している。拠点移転・取引先変更の期間を聞いたところ、被災地域が復興するまでの「一時的な措置」との回答が37%だったのに対し、「恒久的な措置」と回答した企業は63%となった。製造業では、恒久的な対応として実施または検討している企業が71%に達し、特に金属・機械、電機は100%、化学製品は80%が恒久対応としている。また、移転・変更先では製造業の50%が「海外も含めて実施・検討」と回答。日本の空洞化進行を懸念させる結果となった。(ロイターニュース 伊藤純夫 編集 山川薫)


「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920018&sid=adLjpUHwz8us

  展望リポートの大きな特徴は①冒頭で震災の影響を説明したこと、②経済のリスク要因で企業や家計の中長期的な成長期待が2番目に挙げられたこと(前回10月時には4番目)、③先行きの国際商品市況を緩やかに上昇と想定したこと-である。①については政策委員の成長率予想の変化、リスクバランスチャートの高さが前回より低くなり、裾野が広がったことからも、不確実性の大きさが読み取れる。

  供給面のショックは金融政策では解決することはできない。マインドの悪化を通じた需要面の弱さ(負の循環:生産減少→所得減少→支出減少→生産減少)が生じる可能性が高まらないかどうかを丹念に点検していくことになろう。そのような状況下、4月の景気ウオッチャー調査では、家計マインドの下げ止まりをとりあえず確認できた。

  またトヨタ自動車が生産正常化の時期をわずか2週間で、2、3カ月前倒し(4月22日時点では11、12月)を目指すとしたことは心強い。このニュースは秋口以降の生産持ち直しシナリオの蓋然(がいぜん)性を高めるものと言える。また、各企業による夏場の電力不足への具体的な対応も発表され始めており、準備が着実に進んでいる点も評価できるだろう。

  しかしその一方で、原発問題への不安は依然としてくすぶり続けている。復興に向けて今年度の第1次補正予算は5月2日に成立したが、第2次補正予算の規模およびタイミング(16日に菅首相は8月以降と発言)は不透明なままであり、下振れリスクが払拭(ふっしょく)できる状況にはまだない。

  ②については、リスク要因の2番目となり、中長期的な期待成長率の下振れを強く懸念していることがうかがえる。具体的には、電力不足と原発問題を背景に日本の製造業の海外現地生産比率の上昇が加速し、それに伴う国内設備投資および雇用の縮小=国内産業の空洞化リスクと言えるだろう。この議論は昨夏の円高進行時にも活発にされたが、今回の供給面のショックは大きな波となる可能性を秘めている。


最適化に向け、調達・ロジ本部機能をアジア移転-パナソニック
2011年5月17日 13:20
http://www.insightnow.jp/article/6550

震災対応のみならず、コスト削減、海外市場開拓の必要から、調達-製造-在庫-配送のグローバル化が今後不可避となってくる。つまりサプライチェーンがグローバルに規模を拡大しながら、より複雑になっていく。この拡大・複雑化するサプライチェーンをどのようにマネジメントしていけば良いのだろう。パナソニックの取り組みからそのヒントを探る。

パナソニックの大坪文雄社長がグループ社員に向けに行った2011年度事業方針で、調達・ロジスティクスと生産革新の一部の本部機能をアジアに移転すると共にその他の職能でもアジアのサテライト拠点を大幅に強化すると発表した。これらの職能を「グローバルマニュファクチャリング部門」と位置づけ、強い生産拠点づくり・現地調達の強化・戦略的な外部活用など、グローバルモノづくりのレベルアップを加速するという。環境・技術品質、R&Dの本部機能は日本に残す。

パナソニックの2010年3月末時点での地域別販売比率は日本54%、アジア・中国23%、米州12%、欧州11%。日本メーカは日本での生産比率が高いこと、ならびに製造はより消費地に近い所で行うのが効率的なため、正確な数字は取れなかったが、パナソニックの国内生産比率はまだ高いと思われる。

海外生産比率はまだ高くないが、一方で、パナソニックの海外調達は進んでいる。2010年にパナソニックは海外拠点で調達する比率を2012年度に60%に高める計画を発表している。加えて、東日本大震災の影響もあり、震災にも負けないようなものを作るべくサプライチェーンを見直す動きが始まりつつある。パナソニックの今回の発表は、こうした動きを受けてのものだろう。

調達・購買の現場といえば、仕様が決まる要求元、製品に組み込まれる製造ラインや調達品が使われる所、そして、調達・購買品を作っているサプライヤの工場だ。

経営、オペレーションの金言に「三現主義」というものがある。経営、オペレーション上の意思決定や問題解決をする際には、実際に「現場」で「現物」を確認し「現実」を認識した上で行わないと誤った判断を招くことを伝えるものだ。

そういった観点から、サプライヤの工場が多い所に調達本部の機能を移すのは自然の流れと言える。それは、単に現地の人件費が安いということではなく、サプライヤの集積地に居た方が、他にどんなサプライヤ候補がいるのか、それらの生産現場、品質管理がどうなっているのかといった調達に必要な現実(情報)を、現場で現物を確認しながら容易に行うことができるからだ。

企業が成長していくには、新しい顧客を開拓するか、イノベーションにより新しい価値を提案するかの二つしかない。イノベーションによる価値提案はリスクが伴い、かつパナソニックのような大企業が期待される成長率を維持していくにはニッチ市場では不十分でマス市場を探し当てる必要がある。そうなると、日本市場が飽和どころか人口減による縮小が予想される現在、海外市場の売り上げを伸ばしていくことがますます重要になり、現地市場向けの海外生産というのが今後は増えていくものと考えられる。これは、コスト削減のための製造の海外移転ではなく、攻めのための製造の海外移転であり、日本でのモノづくりを守るというマインドを持った経営者でも比較的抵抗なく進められる話であり、今後の日本の製造の海外への移転はこの文脈だけでも増加すると思われる。