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元日社説読み比べ:朝日&日経社説が「2012年問題=団塊時限爆弾問題」に言及2011/01/01 09:44

元日社説読み比べ:朝日&日経が「2012年問題=団塊時限爆弾問題」に言及


東京新聞社説にはなんと朝河貫一が登場。
期待して読み進めるも途中から見事脱線したため、最下位という結果になりました。

<元日社説引用>

今年こそ改革を―与野党の妥協しかない なんとも気の重い年明けである。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 民主党が歴史的な政権交代を成し遂げてから、わずか1年4カ月。政治がこんな混迷に陥るとは、いったいだれが想像しただろうか。

 長い経済不振のなかで、少子高齢化と財政危機が進む。先進国の苦境を尻目に新興国は成長軌道へ戻り、日本周辺の安全保障環境が変化しだした。政治はこれらの難問に真剣に取り組むどころか、党利党略に堕している。そんなやりきれなさが社会を覆っている。

■人類史で初の体験

 危機から脱出するにはどうするか。迷走する政治に、あれもこれもは望めまい。税制と社会保障の一体改革、それに自由貿易を進める環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加。この二つを進められるかどうか。日本の命運はその点にかかっている。

 危機の現状を見てみよう。

 日本の人口は2005年から減少傾向に転じた。現役世代に限ると、減少はすでに1990年代の半ばから始まっていた。この働き消費し納税する現役世代が減り始めたことが、日本経済の長期低迷の根底にある。

 代わって急増するのが引退世代。現在は現役3人弱で引退世代1人を支えているが、20年後には2人弱で1人を支える。そのとき、現役世代は1400万人以上も減っている――。

 人類の歴史で初めて体験する厳しい事態といっていい。

 現在の年金も健康保険も、制度の基本は高度成長の時代につくられた。団塊を先頭とする戦後世代が続々と働き手になる時代だった。それが、いまや低成長に変わって現役世代が減少し、その負担がどんどん増す。来年からは団塊が引退世代へ入り始める。

 正反対への変化を見つめれば、社会保障の仕組みを根本から立て直さないと維持できないことは明らかだ。

■もう財政がもたない

 そこに、先進国で最悪の財政赤字が立ちはだかる。社会保障や公共事業を数十年間も国債に頼ってきた結果である。財政は崖っぷちに立っている。

 赤字を食い止めながら、社会保障の財源をつくり、制度を組み替える。つらい話ではあるが、早く取りかかるほど改革の痛みは少なくてすむ。

 一方の自由貿易の強化は、貿易立国で生きる日本にとって要である。

 中国をはじめ、アジアの国々が豊かさへ向け突き進んでいる。近くにお得意さんが急増するのだからチャンスではないか。貿易の壁を取り払い、アジアの活力を吸収しない手はない。それが若者に活躍の場も提供する。

 TPPへの参加検討を菅直人首相は打ち出したが、「農業をつぶす」と反対されフラついている。だが手厚い保護のもと農業は衰退した。守るだけでは守れない。農政を転換し、輸出もできる強い農業をめざすべきだ。

 日本だけ悩んでいるわけではない。成熟社会で社会保障と成長をいかに保つか。先進国に共通の課題だ。これまで欧州各国は試行錯誤を重ねつつ、高福祉・高負担の社会を築いてきた。いまも財政危機のなかで、福祉の水準を切り下げるべきか揺れている。

 だが実際のところ、論争が派手に見える割には、現実にとり得る選択肢の幅は広くない。あっと驚くような妙案など、どこにもないのだ。

 それなのに、選挙になると各政党は違いを誇張し演出したがる。違いを訴えないと選挙戦にならないからだが、それが人々に期待を抱かせ、次に失望を与える。そんな病弊も、先進国に共通して生じている。

 日本もそうだったのだろう。

 ムダ退治と予算の組み替えで、財源はいくらでも出てくる。そう言ってあれもこれもの公約を掲げ、民主党は政権交代を実現したが、財源が空手形だったことは隠しようもない。甘い公約は疑い、苦い現実を直視することが大切であることを、国民も学んだ。

■民主は公約を白紙に

 思えば一体改革も自由貿易も、もとは自民党政権が試みてきた政策だ。選挙で負けるのが怖くて、ずるずる先送りしてきたにすぎない。民主党政権がいま検討している内容も、前政権とさして変わらない。どちらも10年がかりで進めるべき息の長い改革だ。

 だとすれば、政権交代の可能性のある両党が協調する以外には、とるべき道がないではないか。

 自民党は早期解散へ追い込むという。だが、自民党への支持はさっぱり戻っていない。このまま総選挙になれば、投票先を失った選挙難民が路頭に迷うであろう。それを恐れる。

 たとえ政権を奪還したところで、野党の協力を得られなければ、やはり息の長い改革は実行していけない。

 菅首相は野党との協議を求めるならば、たとえば公約を白紙に戻し、予算案も大幅に組み替える。そうした大胆な妥協へ踏み出すことが、与野党ともに必要だ。覚悟が問われる。

 日本の輸出力はまだまだ強い。技術もブランド力も評価が高い。経済が停滞していても社会は安定を保ち、豊かな自然に恵まれている。政治が課題の解決へ動き出せば、前途に立ちふさがる霧も晴れてくるにちがいない。

 お正月。離れて暮らす家族や親類が集まることも多いだろう。どうしたら孫や子にこれ以上ツケを回さず、豊かな日本を残せるか。そんな将来へ思いをめぐらす機会にもしたいものだ。


世界でもまれて競争力磨く志を再び
2011/1/1付
http://s.nikkei.com/fTIA2N

 めでたいとは言い難い年明けだ。

 日本経済はリーマン・ショックを何とか克服したものの、本格的な回復への手掛かりをつかめないままに年を越した。この20年の名目経済成長率は年平均でわずか約0.5%。公的な借金残高は3.3倍に増え、先進国で最悪だ。経済の地位低下が安全保障も脅かす悪夢を、日本人は尖閣諸島問題などでみた。

 この停滞は放っておいて自然に解消するものではない。

過信もあきらめも捨て

 来年は「団塊の世代」の一番上が65歳を迎え、社会保障支出が急増し始める。働く人が年に0.7%程度減り、経済成長を抑える。経済が拡大せずに公的債務が膨らめば、遠からず国は破綻の危機を迎える。

 それを避けるには経済と財政、社会保障の改革を急ぐしかない。本格的な高齢化を2~3年後に控えて、これから1~2年は日本再生への最後の機会となるだろう。経済の長期停滞の原因を、ひとつひとつ解きほぐしていかなければならない。

 大きいのは指導層の意識の問題だ。1990年代前半から、冷戦の終結や新興国の台頭で「世界大競争」が始まった。韓国が日本をしのぐ性能の電機・エレクトロニクス製品をつくるようになり、中国は低コストの工業品を量産し始めた。

 ところが政治家や経営者の間では「日本は大国で簡単には負けない。改革、改革と叫ぶのは大げさ」という向きが多い。時代錯誤である。

 国内総生産(GDP)で中国に並ばれ、日本はアジアでも経済超大国ではない。しかも近未来の経済の姿を示す指標で日本は劣る。

 経営開発国際研究所(IMD)によれば、国・地域の競争力は世界1位がシンガポール、2位が香港。日本は台湾(8位)や中国(18位)、韓国(23位)にも及ばず27位だ。

 経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査では15歳の読解力で日本は8位と、上海(1位)、韓国(2位)、香港(4位)などの下。また、物理と化学の専門論文の発表数で日本は中国を下回っている。

 一方で、長期停滞のなかで育った若い世代には「努力しても、そんなに豊かにはなれない」というあきらめもあるようだ。そこそこの生活ができれば、あくせく競うのは避けたいという気持ちもあるのだろう。

 アジア諸国に追われてはいるが、日本は技術に強い工業国。各国と競いながら腕を磨けば成長の余地はある。それを怠れば国の財政破綻などを通じ今の豊かさはやがて消える。過信もあきらめも捨てて、自らを鍛える志こそが大事ではないか。

 そう考えれば、なすべきことが見える。外国に学ぶ。貿易自由化で外の成長力を取り込む。伸びない産業よりも成長産業を後押しする。世界で通用する人材を育む……。総じていえば、経済開国と国内の改革。それはまさに明治期の人が挑み、なし遂げたものだ。国を開き道を拓(ひら)いた明治人の気概に学びたい。

 とりわけ急がれるのは、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を中心とする貿易の自由化である。

 日本は貿易立国のはずだが、GDPに占める輸出の割合は10%台と、30%台のドイツ、40%台の韓国に比べ今やかなり低い。

 貿易の自由化を遅らせれば、韓国勢などに押されるだけでなく、日本企業は生産拠点を貿易自由化の進んだ国へさらに移すだろう。

八方美人の政治は有害

 TPP参加のためにも農業の改革が欠かせない。生産効率を高め競争力を強める方向で、農政は大きくかじを切らなければならない。

 グローバルに活躍できる人材を育てるには、公教育や職業訓練制度の抜本改革も避けられない。

 シンガポールのように外国の有為な人材を好条件で招くことも、大競争の時代には重要になる。

 経済再生への機会をいかせるかどうかは多分に政治家しだいだ。

 外科手術が必要なのに、痛み止めを与える。そんな政策を民主党政権は自民党政権と同様、続けている。八方美人の政策は有害でしかない。嫌われても嫌われても、必要な政策を断行するキャメロン英首相(44)の勇気に倣うべきだ。

 日本再生のもう一方の主役は企業経営者。技術力はあるのに、アップル、グーグルなど米企業に新製品や新サービスで先を越されている。また、何社もがひしめき、大型の研究開発や投資で外国勢に後れを取る業界も多い。保守的な経営が働き手の潜在力を殺してはいないか。

 政治家と経営者は、日本経済のこの大転換期に極めて重大な責任を負っていることを自覚してほしい。


世界の荒波にひるまぬニッポンを 大胆な開国で農業改革を急ごう(1月1日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20101231-OYT1T00503.htm

 四海の波は高く、今にも嵐が襲来する恐れがあるというのに、ニッポン丸の舵(かじ)取りは甚だ心もとない。このままでは漂流どころか、沈没の危険すらある。いったい、我々はどこへ行くのか。

 菅首相率いる民主党主導の日本の政治には、こんな不安がつきまとう。

 新しい年に希望をふくらませ、日本人であることに自信と誇りを持てるニッポンをどう築くのか。この問いに答える、強靱(きょうじん)な政治指導力が求められている。

 ◆日米同盟の強化が必須◆

 一昨年9月の歴史的な政権交代から1年3か月余り。その間、3党連立政権の崩壊から鳩山前首相退陣、菅後継内閣へと、民主党政権の表紙は替わったものの、政治の機能不全が続いている。

 懸念すべき政治現象の一つが、日本の存立にかかわる外交力の劣化と安全保障の弱体化である。

 それを如実に示したのが、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件と、メドベージェフ露大統領の北方領土視察だ。

 日米同盟の亀裂を見透かした中露両国の露骨な揺さぶりに、「主権」をないがしろにされた菅政権は、非をただすどころか、ただ波風を立てることを恐れ、軟弱な対応に終始した。

 「戦略的互恵」「善隣友好」という表層的な外交標語に隠れて、一時を糊塗(こと)したに過ぎない。

 それもこれも外交・安全保障の基軸である、日米同盟をおろそかにしたからである。

 日本を抜きつつある経済力を背景に、軍事力を増強する「膨張中国」。海洋資源・権益と海上交通路の確保を目指し、外洋への海軍展開を進めている。

 国内のナショナリズム台頭をにらんで、不法に占拠した北方4島の領有を誇示するロシア。

 「強盛大国」を掲げ、権力継承の不安定な過渡期に、危険な挑発を繰り返す北朝鮮。

 人権尊重、法の支配、民主主義という国際的な規範を無視し、あるいは軽視する、これらの「異質」な周辺国からの圧力や脅威に対抗するには、強固な日米同盟が不可欠だ。

 自国の安全は自らが守る決意と、それを裏付ける防衛力の整備という自助努力の上で、日米同盟関係を堅持し、強固にする。菅首相はこの基本をきちんと認識しなければならない。

 同盟強化のためには、沖縄県にある米軍普天間飛行場の移設問題を、できるだけ早く解決しなければなるまい。

 再選された仲井真弘多(なかいまひろかず)知事の理解と協力を得るには、米軍施設の跡地利用、地域振興の具体策とともに、沖縄の過重な基地負担を軽減する方策を示す必要がある。菅首相自ら先頭に立って知事と県民を説得しなければならない。

 日米関係と同様、日本の浮沈を左右するのが、米国やオーストラリア、シンガポールなどアジア・太平洋の9か国が年内合意を目指して交渉中の環太平洋経済連携協定(TPP)の取り扱いだ。

 ◆経済連携参加を急げ◆

 TPPの狙いは、参加国の間で原則として関税を撤廃し、貿易や投資の自由化を進め、互いに経済的利益を享受することにある。

 日本が交渉に乗り遅れれば、自由貿易市場の枠組みから締め出されてしまう。

 後追いでは、先行諸国に比べ不利な条件をのまざるを得なくなる。だからこそ早期の交渉参加が必要なのだ。

 菅首相は、いったんは交渉参加の意向を明らかにしたが、民主党内の反対論に押されて腰が引けてしまった。

 関税が撤廃されると海外の安い農産品が流入し、日本の農業が壊滅するという農水省や農業団体、農業関係議員らの圧力からだ。

 これでは困る。

 自由化反対派の象徴的農産物がコメである。

 コメは778%の高関税、減反政策などの手厚い保護政策で守られてきた。しかし、コメの国内需要は減り続けている。

 一方で稲作農家の高齢化、先細りは進み、国際競争力をつけるための大規模化は遅れている。

 高い関税と補助金に依存してきた日本の農業が、その足腰を鍛えるには、思い切った開国と改革が欠かせない。

 日本の農業総産出額は8兆円余り。その中でもコメは1・8兆円で、国内総生産(GDP)の0・4%に過ぎない。

 食糧安全保障の観点から、主要農産物の自給を確保することは重要だが、農業が開国を妨げ、日本経済の足を引っ張るようでは本末転倒になる。

 ◆消費税率上げは不可避◆

 自民党が提示した「消費税率10%」に飛びついた揚げ句、昨年7月の参院選で大敗した菅首相。その後、消費税論議には口をつぐんだままだ。無責任のそしりを免れない。

 年金・医療・介護といった国民生活の安心に直結する社会保障を充実させるには、安定した財源の確保が大きな問題だ。

 巨額の国債を発行し、借金の繰り返しでまかない続ければ、早晩、日本の財政は破綻してしまう。

 消費税率を引き上げる以外に、もはや財源確保の道がないことは誰の目にも明らかだ。

 だからこそ、痛みを伴うはずの消費税率引き上げに賛成する国民が、各種世論調査でも多数派を占めているのではないか。

 もちろん、徹底的な行政の無駄減らしも避けて通れない。とは言っても、民主党政権が鳴り物入りで実施した事業仕分けで捻出できたカネは微々たるものだ。

 しかも、そのカネは借金の返済ではなく、子ども手当や高速道路の一部無料化、農家の戸別所得補償など、結果的にバラマキ政策の費用の一部に充てられた。

 国民の多くが、社会保障充実のための増税もやむなし、と腹をくくっているときに、大衆迎合的な人気取り政策に固執するのは、愚の骨頂である。

 菅首相は、政権公約(マニフェスト)を撤回し、バラマキ政策の見直しを約束した上で、消費税率の引き上げを野党側に提示し、速やかな合意を得るよう汗をかかなければならない。

 これまで指摘してきた重要案件を処理するためには、政局の安定が必須である。ところが菅首相の政権基盤はきわめて脆弱(ぜいじゃく)だ。

 ◆懸案解決へ政界再編を◆

 政権の地盤沈下に拍車をかけるのが、小沢元代表を支持する勢力との党内抗争だ。小沢氏の国会招致問題は峠を越したかに見えたがなお尾を引いている。TPP問題などの火種も依然として残る。

 党内抗争の内憂に加えて、外患になっているのが社民党との提携である。

 2011年度予算関連法案や重要法案を再議決により成立させるには、衆院で3分の2以上の議席を要する。そのために、連立を組む国民新党に加え、社民党を与党陣営に引き込まざるを得ない。

 こうした近視眼的な打算から菅首相は社民党にひざまずいた。

 武器輸出3原則見直しの先送りに見られるように、小党が重要政策の生殺与奪の決定権を握る、危険なキャスチングボート政治の再現である。これでは日本の政治が一段と混迷を深めてしまう。

 結局のところ、普天間移設、TPP、消費税率引き上げといった緊急かつ重要な課題を解決するには、安定した強力な政権を誕生させるしか道はあるまい。

 本来なら、衆院解散・総選挙を断行した上で、単独にせよ連立にせよ、衆参ねじれ現象の政治的矛盾を解く新政権をつくるのが筋だろう。

 しかし現状では、支持率低下により次期総選挙敗北必至と見られる菅首相が、衆院解散に打って出る可能性はきわめて小さい。

 だとすれば、次善の策として、懸案処理のための政治休戦と、暫定的な連立政権の構築を模索すべきではないか。

 昨年末に浮上した、たちあがれ日本との連立構想は頓挫したが、従来の枠組みを超えた良識ある勢力結集の試みなら歓迎できる。

 連立は理念・政策優先で、しかも「衆参ねじれ現象」を解消できる規模が望ましい。1年、ないしは2年の期限を切った、非常時の「救国連立政権」とし、懸案処理後に、衆院解散・総選挙で国民の審判を問えばいいのだ。

 国のあり方を大きく変える、いわば「平成の改新」を実現するための、党派性を超えた構想力と大胆な行動力が、今の政治に求められている。


社説:2011 扉を開こう 底力に自信持ち挑戦を
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110101k0000m070070000c.html

 写楽や歌麿なかりせば、浮世絵は世界的な広がりをもつ強力な日本ブランドになっていただろうか。

 2011年、卯(う)年の新年である。元気をなくしているといわれる日本の底力について考えてみよう。

 謎の絵師といわれる東洲斎写楽が鮮烈なデビューを果たしたのは1794(寛政6)年だった。歌舞伎の夏興行に合わせ役者絵28枚が一挙発売されるという破格の扱い。役者の表情を強烈に描いた「大首絵(おおくびえ)」に江戸っ子は仰天したらしい。大首絵は2年前から喜多川歌麿が美人画で採用し大人気を博していたものだ。

 ◇写楽、歌麿で再起の勝負

 その2人の絵師の登場を仕掛けたのが蔦屋(つたや)重三郎(じゅうざぶろう)(1750~1797)、蔦重(つたじゅう)と呼ばれた版元だった。江戸の遊郭・吉原の貸本屋から身を起こし24歳で書店を構える。33歳で出版業の中心、日本橋に出店。大田南畝(なんぽ)、山東京伝(さんとうきょうでん)、曲亭馬琴、葛飾北斎ら名だたる狂歌師、戯作者(げさくしゃ)、絵師を起用して大当たりする。今でいうポップ(大衆)カルチャー、クール(かっこいい)ジャパンの元祖である。研究者は蔦重を名プロデューサー、伯楽というだけでなく希代の商売人、起業家とみる。

 だが、寛政の改革下の出版統制でとがめを受け、財産の半分を没収されてしまう。蔦重の面白いのはその翌年に歌麿の美人画で再起の勝負をかけたことだ。それが大成功したことが写楽の登場につながる。

 蔦重の不屈の起業家精神がなかったら、日本の浮世絵は随分寂しいものになっていただろう。ゴッホはじめ印象派の画家たちがあれほど影響を受けたかどうかも分からない。

 昨年、東京・六本木のサントリー美術館で「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」と題した展覧会が開かれた。裏方のはずの版元を主人公にした展覧会は前代未聞といえる(この紹介も同展図録、鈴木俊幸氏の解説などによる)。

 日本が元気をなくしている。日本人が内向きになっているといわれる。若者が留学や海外勤務を避けたがるという話もよく聞く。日本の人々が縮こまってしまい、本来の力を発揮できていないようだ。

 だが、あきらめるのは早い。プロ野球、日本ハムファイターズに入団した斎藤佑樹投手の言にならえば、私たちは何かを持っている。それは長い時間をかけて蓄積された潜在的な力といっていい。明治の急速な近代化も、戦後の奇跡的な復興も、広く世界に目を向けて底力を発揮したことによる。私たちはもっと自信を持っていい。先に紹介した蔦重の挑戦も江戸の人々の教養の高さや社会の成熟があってこそできたものだ。

 日本を元気にするために、次の課題について一刻も早く道筋をつける必要がある。

 (1)経済の再生と地方の活性化。日本の創造性と魅力(ソフトパワー)を鍛えること。

 (2)安全保障と通商の基盤の確立。日米同盟を揺るぎなくする一方で日中関係を改善すること。

 (3)少子高齢化による人口減の打撃を最小限化する対策。子育てにも若者にも最大限の支援をすること。

 (4)消費税増税を含めた財政再建、社会保障、高齢者介護の立て直し。

 (5)人材育成と教育の再建。創造的で人間的な力のある若者を育て科学技術や文化の振興をはかること。

 ◇元気を引き出す仕掛け

 本シリーズの次回以降で詳述するが、ほとんどが自民党主体の政権時代から早急な解決が求められていた課題である。消費税や財政再建など選挙での敗北を恐れて封印し続けてきた問題も多い。菅政権はこれらの難題の扉を開けて本気で取り組む必要がある。できないのであれば違う政権に期待するしかない。

 もちろん、私たち国民自身が問題をきちんと理解して立ち向かうことが必要である。できるかどうかはまさに日本の人々の底力にかかる。

 昨年秋、羽田空港の国際定期便が復活した。その効果もあり日本を訪れる外国人が増えているという。

 新国際線ターミナルで人気を呼んでいるのは江戸の町並みに似せたショッピングモール「江戸小路」だ。歌舞伎小屋「中村座」の建物で日本土産の風呂敷や手ぬぐいを売っている。江戸を見せる小テーマパークになっているのだ。1階上にはハローキティやスタジオジブリのキャラクター雑貨など「かわいい」ものをそろえた「東京ポップタウン」がある。世界に通じる日本の魅力としてこれらが選ばれたのだろう。

 軍事力や経済力のハードパワーに対してソフトパワーの基本は人々を魅了するところにある。文化や価値観、社会のあり方などの魅力により観光や留学、就業などの形で外国人を引き寄せる。それが外交や安全保障、経済再生にもつながる。

 ポップカルチャーを中心とした日本ブランドの文化が注目されて久しい。昨年7月にフランスのパリ郊外で開かれた「ジャパン・エキスポ」は4日間で17万人が来場する大盛況だった。政府も「クールジャパン」支援策を練りはじめている。

 だがソフトパワーの領域に限らない。重要なのは蔦重のように人々の元気と底力を引き出す仕掛け人を生み育てていくことだ。


年のはじめに考える 歴史の知恵 平和の糧に
2011年1月1日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011010102000044.html

 新しい年を迎えました。希望や期待に胸躍るより、先行きへの不透明感や不安が込み上げてくるのは、日本を取り巻く内外環境が厳しいからでしょうか。

 北朝鮮が韓国を砲撃した朝鮮半島の緊張は解けません。日本を抜き世界二位の経済大国となった中国は海洋進出を強めています。

 政権交代で誕生した民主党の鳩山政権は、経済の国境がなくなるグローバリゼーションの果てに「東アジア共同体」を創成する夢を語りました。しかし、成長する中国やインドなど新興国は軍拡を進めナショナリズムが高まり、主権や領土の主張を強めています。

◆主権と領土の覇権競う

 菅政権が昨年末、発表した今後十年の防衛力整備の方向を決める新防衛大綱は中国の動きを「懸念材料」と名指ししました。世論調査でも中国に親しみを感じる人は史上最低を記録、隣国にとげとげしい視線が向けられています。

 アジアの状況は既成の大国や新興国が、主権と領土をめぐり覇を競った二十世紀初頭にも似てきたように見えます。ただし、当時、勢力図を塗り替える台風の目だったのは日本にほかなりません。

 明治維新を成し遂げ富国強兵に励んだ日本はアジアで、いち早く近代化に成功しました。朝鮮半島の覇を争った日清戦争、南下するロシアと対決した日露戦争に勝った日本は「坂の上の雲」(司馬遼太郎氏)を目指す新興国でした。

 当時、米国で学んでいた若い歴史学者の朝河貫一(一八七三~一九四八)は、日露戦争を韓国、満州を支配し外国を締め出そうとするロシアと、領土を保全し市場開放を目指す日本の戦いと描き、日本に対する支持を訴えました。

 米国は表向き中立を守りましたが、同じ新興国としてセオドア・ルーズベルト大統領をはじめ日本に支援を惜しみませんでした。

◆対外進出を促した怒り

 中国の「門戸開放」が、列強の中国分割に立ち遅れた米国の利益であるとともに、米外交の理想にもかなっていたからです。米国で日本に支持を訴えた朝河にとって、日露戦争の目的は領土や賠償であってはなりませんでした。

 しかし、対ロ講和のポーツマス条約で賠償はなく、得られた領土は樺太南半分にとどまったことに国民は日比谷焼き打ち事件(一九〇五年)を起こし不満を爆発させました。日本はこの怒りに突き動かされるように、韓国併合や対華二十一カ条要求など強引な対外進出に突き進んでいきます。

 祖国の危険な兆候を見た朝河は日露終戦から四年後に「日本の禍機(かき)」(講談社学術文庫所収)を著し、東洋の平和と進歩を目指した日本が、それをかき乱し世界の憎悪を浴びる危険を訴えました。

 そして「日本もし不幸にして清国と戦い」「米国と争うならば」「文明の敵として戦う」ことになると警告しました。このとき、朝河は既に日本の三十二年後の運命を見通していたようです。朝河は日本人として初めて米国で社会科学の大学教授になりましたが、帰国せず米国で客死しました。

 二十一世紀のアジアで経済発展が軍備拡大とナショナリズムの台頭を招き、米欧や周辺国と摩擦を強めているのは中国です。

 中国が世界が共有する人権や自由などの価値を受け入れず、自らも、その被害者だった力による外交を強めるなら、世界の反発を招くことになりかねません。

 旧ソ連に対し北海道へ自衛力を集め戦車を並べた時代と違い中国の海洋進出が強まる今、重点を南西に移し潜水艦部隊などを充実させるのは当然です。

 しかし、中国に懸念を表すだけで対話や協力を求めるのを怠れば、中国は軍拡で対抗するでしょう。ましてや、中国に対するナショナリズムをあおるなど感情的な対応は百害あって一利なしです。

 むしろ、世界の潮流に背き国の破滅を招いた痛苦な体験を持つ「先輩」の日本が中国に助言できることは少なくないはずです。

 日本は第二次世界大戦の惨禍から学んだ人類の知恵ともいえる「戦争放棄」を盛り込んだ憲法九条を擁し「核なき世界」を先取りする「非核三原則」、紛争国に武器を輸出しないと宣言した「武器輸出三原則」を掲げてきました。

◆貴重な外交資産生かせ

 これらは今後、国際社会に日本が貢献する際の足かせではなく、平和を目指す外交の貴重な資産です。紛争国に武器を与えない日本だからこそ自衛隊の国連平和維持活動参加が歓迎されるのです。

 脅威や懸念には米国など同盟国、周辺国と連携し現実的に対応しながらも、平和国家の理想を高く掲げ決しておろそかにしない。

 そうした国の在り方こそ、世界第二位の経済大国の座を中国に譲っても、日本が世界から尊重され続ける道ではないでしょうか。


<画像引用>

「うさぎだるま」で飛躍の年に 川崎大師近くのだるま販売店
http://sankei.jp.msn.com/photos/region/kanto/kanagawa/101226/kng1012262114006-p1.htm

2011年の政局を読み解く2011/01/01 10:38



今年前半の政局を読み解く上で重要な記事。
それは産経に掲載された高橋昌之氏の「菅首相退陣のカウントダウンが始まる」。

この記事に書かれている情報は私が入手している情報とほぼ一致。
「次は前原」との声などは菅内閣発足直後から民主党筋で飛び交っていた。
そして、前原内閣誕生を米国も相当サポートしているとの情報も。

しかし、自民党には「衆院解散・総選挙に追い込め」との強気な声多数。
気持ちはわかるが、現実を直視することも大事。衆院解散・総選挙などありえない。

高橋氏も指摘しているように、総選挙を行えば民主党大敗は目に見えている。
大敗を知りながら「伝家の宝刀」である衆院解散・総選挙に打って出るバカはいない。

民主党議員も衆院解散・総選挙なら大連立の方がまだいいと考えているはず。
「この寒風の中、路頭に迷いたくない」が彼らの本音。

鳩山はもう消えた。仙石も小沢もまもなく消える。続いて菅も消えるだろう。
厄介な連中が揃って消えた後に自民党の出番が回ってくる。

前原であれ岡田であれ、新内閣誕生後に大連立を仕掛ければいい。
民主党を乗っ取るつもりで「平成の保守合同」を仕掛ければいい。
そして、厄介な連中をバッサリ切る。その受け皿は社民党に任せよう。

時には寝技も必要。
衆院解散・総選挙に拘れば、絶好のチャンスを見逃すことになるだろう。


<関連記事引用>

【高橋昌之のとっておき】菅首相退陣のカウントダウンが始まる
2010.12.31 12:00
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101231/plc1012311201005-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101231/plc1012311201005-c.htm

 民主党政権が迷走に迷走を続けた1年も今日、大みそかを迎えました。今年最後のコラムでは、ぜひとも希望にあふれた内容を書きたいところなのですが、そうもいかない政治情勢です。今晩は日本の至るところでカウントダウンが行われることでしょうが、政治でも年が明けると、菅直人首相退陣のカウントダウンが始まります。というのも、私は「菅首相は来年4月までには退陣せざるをえなくなる」とみているからです。

 その根拠は、来年は4月に統一地方選が行われることになっており、参院で多数を占める野党が、その前の最も効果的なタイミングで、菅首相の問責決議案を可決してくるのは必至だからです。もし、私が野党の幹部なら、統一地方選で勝つために、間違いなくそうするでしょう。

 問責決議に法的拘束力はありませんが、政治的には菅首相が退陣しない限り、参院での審議は一切、行われないことになりますから、退陣するかどうかの決断を迫られることになります。

 退陣を迫られたら、菅首相としては「伝家の宝刀」である衆院解散・総選挙に打って出るという手もあります。しかし、内閣支持率、民主党支持率ともに下落している中で、総選挙を行えば民主党が大敗するのは目に見えており、民主党内が了承するはずはありませんから、退陣せざるをえないでしょう。

 民主党の議員の中にも、このことに気づいている人はいます。追い込まれて野党の都合のいい時期に首相の問責決議案を可決されるよりは、「その前に先手を打って菅首相を退陣させ、新しい体制で統一地方選に臨む」というシナリオが、すでに民主党内で動き始めているのです。

 そうでなくとも、民主党の地方の現場では、統一地方選に出馬を予定している地方議員や立候補予定者が、民主党の公認を辞退するという動きも出ています。これを受けて、同党の国会議員の間でも「統一地方選は菅首相では戦えない」との声が大半になっています。それは菅首相に批判的な民主党の小沢一郎元代表を支持する議員らにとどまらず、菅首相を支えている反小沢グループの中でも強まっています。

 私が最近、得た情報によると、反小沢グループ内では早くも菅首相退陣を前提に、その後の民主党代表選に前原誠司外相を擁立する動きが出始めたそうです。それでなくても難局に直面している菅首相が、自らを支える反小沢グループから見切られたら、退陣せざるをえなくなるでしょう。

 それでは、民主党内で「菅おろし」が行われるとすれば、どのタイミングになるでしょうか。有力なのは、来年の通常国会における平成23年度予算案が衆院で採決されるとみられる2月末の時点です。菅首相退陣と引き換えに予算案の衆院通過をはかるというわけです。

 現在の菅首相の支持率は20%前半で、今後さらに低下することも予想されますが、首相が交代すれば、自民党政権時代も含めてこれまでの例を考えると、新内閣の支持率は恐らく50%以上に回復するでしょう。その高い支持率を背景に、23年度予算案と関連法案を3月末までに成立させれば、何とか民主党も4月の統一地方選を戦える態勢が整います。

 どのような形で「菅おろし」が行われるは、いくつかのケースが想定されます。ひとつは民主党の菅首相に批判的な議員が「菅首相が退陣しなければ予算案に賛成できない」と言い出すケースです。衆院の民主党・無所属クラブの議席は307ですが、68人以上がそれを言い出せば過半数を割ってしまうため、菅首相が退陣しない限り、衆院を通過させることはできなくなります。

 それを受けて、菅首相を支えている民主党の反小沢グループが「もはや菅政権はもたない」として、菅首相に退陣を促すことも考えられます。そうしなくても、菅首相に批判的な勢力が必要な数の署名を集めて両院議員総会を開催し、過半数の議決によって菅代表の解任を決定するというケースも考えられます。

 こう考えてくると、いずれにしても、菅首相は遅くとも4月の統一地方選までに、早ければ2月の23年度予算案の衆院通過のタイミングで、退陣を余儀なくされる可能性は非常に高いといえます。

 それでは菅首相が退陣したら、次の首相はだれになるのでしょうか。残念ながら、それは私もまだ見当はつきません。民主党代表選が行われることになりますから、その勝者が次の首相になる可能性が高いのはいうまでもありません。ただ、現在の民主党と国民新党の連立では、参院で過半数割れしているうえ、衆院での法案再議決に必要な3分の2の議席にも足りないのが現状ですから、首相交代を機に新たな連立の枠組みが構築されて、他党から次の首相を擁立する可能性もないとはいえません。

 しかし、私はだれが次の首相になるかという属人的な問題は、二の次だと思っています。現在の菅政権のように民主党が、国家、国民のための政治よりも、親小沢か、反小沢かという属人的な権力闘争をしている現状が変わらなければ、同じことの繰り返しになるでしょう。

 民主党の国会議員は、そのことに早く気づくべきです。経済をはじめとする国民生活も、国際社会における外交を考えても、日本は今、戦後最大の国家的危機を迎えていると、私は思います。だからこそ、国民は昨年8月に政権交代という道を選択して、民主党に新しい政治を託したのでしょう。

 しかし、今の民主党はその期待を見事に裏切っています。いくら菅首相を代えても、このまま民主党が党内抗争に明け暮れて、本来のあるべき政治を行わなければ、いずれは来る次期衆院解散・総選挙で、政権は自民党に復帰すると思います。

 もしそうなったら、民主党政権時代は戦後最大の「失われた時代」として、歴史に刻まれることになるでしょう。民主党は野党に戻るだけの話ですから、それで構いませんが、その「失われた時代」の被害を最も受けるのは国民です。それでいいのかどうか、明日の元日、民主党議員は政権獲得からこれまでの自らの行動をしっかり反省してもらいたいと思います。

 来年こそは、与党だけでなく野党も含めて、国民の期待に応える政治が行われるよう、わずかな期待を込めて、今年のコラムを締めくくりたいと思います。2週間に1度のペースでこのコラムを書き続けてきましたが、毎回、私の予想を上回るアクセスをいただき、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。


仙谷長官の交代で調整、菅首相
2010.12.31 22:49
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101231/plc1012312250007-n1.htm

 菅直人首相は31日、参院で問責決議を受け、野党が辞任を求めている仙谷由人官房長官を1月に予定している内閣改造で交代させる方向で調整に入った。同日夜、都内で仙谷氏らと会談し、こうした意向を伝えたものとみられる。1月下旬召集の通常国会に向け、小沢一郎元代表の国会招致問題に打開の見通しがないため、野党側が審議入りの条件としている仙谷氏の交代が必要と判断した。

 党内からは小沢グループを中心に「国会審議を円滑に進めるためには小沢氏の政倫審出席より仙谷氏の更迭が先だ」(中堅)との声が強まっている。菅グループからも仙谷氏の更迭を求める声が出始めた。野党が過半数を占める参院の西岡武夫議長も12月28日に岡田克也幹事長と会談した際、仙谷氏の交代を求めた。

 首相は当初、小沢氏の国会招致を実現することで、「通常国会の障害」(岡田幹事長)を取り除き、平成23年度予算案の早期成立を図る構えだった。小沢氏は、衆院政治倫理審査会(政倫審)について、通常国会前でも出席する意向を示しているが、野党側が証人喚問を求めるなど対立は続いており、首相側も、仙谷氏の更迭が避けられなくなった形だ。


内閣改造、1月中旬にも…仙谷長官の交代視野
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101231-OYT1T00676.htm

 菅首相(民主党代表)は31日、1月13日の民主党大会後をめどに、内閣改造と党役員人事を行う意向を固めた。

 参院で問責決議を受けた仙谷官房長官や馬淵国土交通相らの交代も念頭に、政府・民主党の体制を強化し、通常国会での2011年度予算案などの審議に臨む方針だ。

 複数の民主党幹部が明らかにした。

 首相が党大会後の人事を検討しているのは、自民党や公明党など野党が、問責を受けた仙谷、馬淵両氏が出席する国会審議には応じない姿勢を示しているためだ。首相は1月下旬召集予定の通常国会前に、まず「政治とカネ」の問題を抱える小沢一郎元代表の国会招致を実現して、一定のけじめをつけた上で、新たな内閣と党の陣を敷くことで、野党が国会審議に応じる環境を整えたい考えだ。

 民主党役員人事では、ねじれ国会に対応するため、国会対策委員会の体制強化が検討されている。首相は、小沢氏が強制起訴された場合、離党勧告などの処分に踏み切ることも考えており、党所属国会議員の処分を決める常任幹事会メンバーの交代も想定している。

 政権の要である仙谷氏の処遇を巡っては、野党が閣僚辞任を要求していることに加え、小沢氏が自らの衆院政治倫理審査会への出席に絡み、「問責決議の方が、国会などで予算案などの審議を進めるには大きな問題だ」と述べ、仙谷氏らの交代を執行部に迫っている。

 首相に近い民主党幹部からも「仙谷氏の交代はやむを得ない」との声が出ており、首相が交代に踏み切れば事実上の更迭となる。

 一方、首相は仙谷氏の手腕を高く評価しており、仙谷氏を交代させる場合は、党の要職に起用し、現在は空席となっている代表代行や、常任幹事会議長などで処遇する案が浮上している。