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<尖閣諸島沖衝突事件> 「そもそも放水で対抗すべきだった」 生かされなかった米海軍音響測定艦「インペッカブル」の教訓2010/09/26 01:37

<尖閣諸島沖衝突事件> 「そもそも放水で対抗すべきだった」 生かされなかった米海軍音響測定艦「インペッカブル」の教訓


9月25日、自民党の谷垣禎一総裁は京都市内の講演で尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で中国人船長が釈放されたことに関して次のように話したとか。

「騒いで得をするのは中国で、問題を深刻化させないことが一番大事だ。直ちに国外退去させた方が良かった。最初の選択が間違っていた」

「最初の選択」と言われると大いに気になることがあるので指摘しておきたい。

はたして海上保安庁は昨年3月の米海軍音響測定艦「インペッカブル」の教訓を生かすことができたのかどうなのか。同じく昨年3月に米国防総省が議会に提出した報告書「中国の軍事力-2009年」を読んでいたのだろうか。

海上保安庁が衝突時の一部始終を撮影したとされるビデオが公開されていないため、事件発生時の詳しい状況が今ひとつわからない。確かにインペッカブルが置かれた状況とは異なるかもしれない。

しかし、それでもインペッカブルの教訓を生かすならば、漁船が接近した時にまずは放水で対抗すべきではなかったのか。

放水で追い払うことに失敗し、接触を許したとしても、海上民兵が乗り込む海の便衣隊の可能性がある漁船を拿捕する必要があったのかどうか。さらに中国人船長を逮捕してもよかったのか。思い切って「わざと逃がす」という選択肢もあったはず。

どうやら二重三重の判断ミスを繰り返していたように見える。誰がどう指示を出していたのかも気になる。

結果として中国側の「無実の漁船を拿捕し、船長を逮捕した」との汚い宣伝に使われ、最後は見事な腰砕け。

インペッカブルの教訓がまったく生かされていなかったと指摘されても仕方がない。


<関連記事引用>

中国の船舶5隻、米調査船を妨害。
2009/03/10 日本経済新聞 朝刊

 【ワシントン=弟子丸幸子】米国防総省当局者は九日、南シナ海の公海上で八日、中国の船舶五隻が米海軍の非武装の海洋調査船「インペッカブル」に異常接近し、航行を妨害する事件があったと明らかにした。米政府は「連携した嫌がらせ行為」だったとして、中国政府に抗議する方針だ。

 国防総省当局者によると、異常接近の事件が起きたのは、中国の海南島から南約百二十キロメートルの地点。五隻のうち二隻はインペッカブルから、およそ十五メートルまで接近。中国の国旗を振りながらインペッカブルを取り囲み、同海域から立ち去るように主張した。インペッカブルは消火用ホースで放水して対抗した。

 インペッカブルは南シナ海で調査活動中だったという。国防総省資料によると、インペッカブルは「海中の脅威」を探査する船で、低周波ソナーを搭載。中国の潜水艦の実態を調査するのが目的だったとみられる。

 国防総省によると、アジア周辺では最近、中国船による「攻撃的な行為」が頻発していた。

 インペッカブルに対しては五日にも中国の小型船が約百メートルの地点まで接近した。


中国が米海軍観測船を妨害、狙いは何か(上) ※抜粋
2009/03/11 朝鮮日報 892文字

◆米「国際法違反」と主張

 米国防総省は9日、南シナ海の海南島から120キロ離れた海域で、中国船5隻が非武装船舶である米海洋観測船「インペッカブル」に8メートル前後まで接近し、海域を去るよう要求してきたほか、同号の進路に木材を落とすなどしたことを明らかにした。

 米ニューヨーク・タイムズによると、米調査船が中国船に向かってホースで放水を行い、離れるよう求めると、中国側船員は下着姿でからかうような姿も見せたという。米国防総省は「中国船舶の行動は、公海の合法的な使用者に対する安全と権利を尊重するよう定めた国際法に違反したものだ」とし、挑発行為を自制するよう中国側に求めた。

 しかし、中国外務省の馬朝旭報道局長は10日の定例会見で、「米国船が中国政府の許可も受けずに、中国の経済水域で活動したことは国際法と中国の法律に違反している。米海洋調査船を脅すような行動を取ったというのは事実と全く異なる」と否定した。


【湯浅博の世界読解】「中国の海」で米中熾烈
2009/03/18 産経新聞 東京朝刊

 中国海軍はこのところ、南シナ海を「中国の海」にすべく米海軍に真っ向から挑戦している。とりわけ、その重要な拠点となる海南島の周辺で警戒が厳しい。島に地下要塞(ようさい)をつくって原子力潜水艦を配備し、海中から出入りさせる。

 軍事専門家は今回の南シナ海を舞台にした米中小競り合いで、中国艦船の統合運用ぶりに注目している。

 米音響測定船インペッカブルが海南島の南120キロの公海上で、中国海軍の情報船を含む5隻に「危険な操船行為を伴う妨害」(米国防総省)を受けた。

 興味深いのは中国艦の巧みな連携で、最初に海軍のフリゲート艦と航空機Y-12が出てきた。次いで国家海洋局の情報収集船、海洋漁業局のパトロール船、それに海上民兵のものと思われるトロール船2隻が加わる。

 これまでバラバラだった各機関がピタリと呼吸を合わせてきた。

 中国艦は危険な距離を超えて8メートルまで接近し、木片をインペッカブルの進行方向にばらまいて妨害したという。調査船に木片を見舞うとは、いかにも海上民兵らしいやり方である。

 この「海上民兵」というのがクセ者で、外見は漁船だから最初は識別が難しい。隠した魚雷を発射してくることもあるし、いつの間にか漁船団となって敵を囲んでしまうこともある。

 これを攻撃すれば「敵は無実の漁船を攻撃した」との宣伝に使われる。いわば海の便衣隊である。南京事件のさい、軍服を脱ぎ捨て後方撹乱(かくらん)した便衣兵と同じ発想だ。調査船は機銃すら持たないが、放水で対抗したのは妥当だった。

 防衛大学校の太田文雄教授によると、海上民兵は地方ごとに漁民で構成され、海軍が実施する演習にも定期的に参加して海上作戦で一定の役割を担う。

 中国はこの手で、ベトナムが領有していた西沙諸島の一部を1974年に海上民兵に占領させ、フィリピンでも90年代にミスチーフ環礁を奪わせた。しかも、今回は軍、海洋局、漁業局などの統合がとれていた。

 もちろん米国は中国に抗議するとともに、インペッカブルを護衛するためにイージス型駆逐艦を現場海域に派遣した。

 中国はこれを嘲笑(ちょうしょう)するように、海外向けの中央テレビが漁業監視船「漁政311」を南シナ海のパラセル(西沙)諸島に派遣したと報じた。漁政は軍艦を改造した中国最大の監視船だ。

 これまでも中国は、海洋に「力の空白」が生じると、これに乗じて軍を送り込んできた。まず92年の領海法で「中国の海」であるとの意思を示し、第2段階では海洋調査船の派遣を開始する。第3段階で海軍艦艇や航空機を派遣して力で領有権を明示する。その先兵が海上民兵だ。

 太田教授は、すでに第3段階に入っていると『インテリジェンスと国際情勢分析』で述べている。

 今回の米音響測定船に対する中国艦の異常接近事件も、表向きオバマ米政権との米中協調が叫ばれようと、海面下では熾烈(しれつ)な戦いが露骨に進んでいることを物語る。インペッカブルは、海南島に配備された中国原潜の音紋採取や潜水艦を探すための海底地形の調査である。台湾海峡で風雲急を告げたさいに、米空母機動部隊の脅威となる中国潜水艦を警戒するためでもある。

 南シナ海は日本にとってこそ中東原油を輸送する生命線である。ソマリア沖に護衛艦2隻を派遣するだけでも大騒ぎをしているようでは国益の確保はおぼつかない。やがては中国の空母が台頭してくるはずだ。


【野口裕之の安全保障読本】中国の“トロール漁船”警戒を
2009/11/04 産経新聞 東京朝刊

 日米の民主党がいかに中国に媚(こ)びようが、「国軍」には粛々と安全保障の重責を果たしてもらいたい。国軍は政権党ではなく国家に仕える組織であるからだ。日本には憲法理論上「国軍」はないことになってはいるが、自衛隊は国際的に事実上「国軍」と認められており、国家の安全には万全を期さねばならない。実際、オバマ政権が中国の少数民族弾圧に目をつぶっても、米海軍はやるべき任務を果たしている。

 例えば3月、南シナ海・海南島南方120キロで、米海軍の音響測定艦インペッカブルが5隻の“中国トロール漁船”に取り囲まれた事件は、米海軍の「果たすべき任務」を示唆している。中国船のうち2隻は15メートルまで接近し、中国国旗を振り、海域を離れるよう求めた。インペッカブルが中国船に放水すると、内1隻の“船員”たちは下着姿になり7メートルまで近付いた。

 インペッカブルは無線を通じ、中国船に海域を離れるので、航路を開けるよう求めた。ところが、2隻により前方をふさがれたことから衝突防止のため、緊急停止を迫られた。中国船は航行妨害に向け、木材を海中に投げ込んでもいる。中国船は事件前から、強力な照明を当てるなど、嫌がらせを継続していた。

 ■不気味な「海上民兵」

 トロール漁船と船員を括弧でくくったのは、民間人に偽装した軍事組織・海上民兵の調査艇で、操船・妨害は海上民兵が行っていたからである。

 海上民兵なる聞き慣れぬ軍事用語は、米国防総省が3月に議会提出した報告書「中国の軍事力-2009年」でも初めて登場した。

 《2008年5月、中国海軍・民兵沿岸支援部隊は商業用漁船を活用し、鎮江沖合で活動中の同海軍艦艇2隻に燃料・弾薬・その他の物品を供給した。民兵沿岸支援部隊が遠方の海軍艦艇に、どの程度の兵站(へいたん)・継戦支援を提供できるのかは明らかではない》

 報告書は「予備軍と中国民兵」という囲み記事まで設け分析を載せている。

 《18~35歳までの軍に在籍していない男子は、すべて理論上は民兵組織に所属していることになっている。中国・国防白書によれば、その数は1千万人(2000年版)から2010年には800万人に減じられる(2008年版)。戦時には、居住地域で戦争支援に向け動員される。任務・組織性は一定ではなく、コンピューター・ネットワークの作戦・運用にかかわる場合もある》

 なぜ、この海域に海上民兵が任務に就いていたか、そして、インペッカブルの任務も今もってナゾだ。事件17日後に出された報告書にも、その答えを見いだせないが、メディア報道の紹介を装いながら「海南島における新たな海軍基地」について言及している点は興味深い。

 《弾道ミサイル搭載・攻撃型潜水艦や最新鋭水上艦を数隻ずつ収容するに十分な規模。海底施設を包含する港湾は、海軍が死活的に重要な国際シーレーンに直接、出撃することを可能にする。潜水艦は南シナ海に、探知されること無しに移動できる》 

 ■「海中」の攻防

 ところで、音響測定艦は冷戦時、ソ連原子力潜水艦の監視・追跡用に建造された。つまりインペッカブルは、海南島に出入港する特定・不特定潜水艦のデータを収集していた可能性がある。あるいは、潜水艦のエンジン・原子炉・スクリュー音測定のため、事前に海中・海底のデータを広く収集していた可能性もある。

 海中での音波は海水の温度や塩分濃度が変わるところで反射・屈折する。水深や海流の方向・速度でも音波の伝わり方は違う。特に、海流は季節ごとに違う流れを見せる。さらに、海底地形や岩や砂・泥の種類によっても、音波は異なった屈折をする。こうしたデータがなければ、潜水艦の動きや型式=任務・戦闘力は解明できない。インペッカブルが曳航(えいこう)するパッシブ・ソナー(水中聴音機)を、海上民兵が長尺のフックで引っかける瞬間を米海軍は撮影しているが、この種のデータ収集の重要性を逆に裏付ける一枚だ。

 中国当局は、米海軍の行動に関し「自国管轄海域」であると主張して、妨害活動を正当化している。だが、領海問題で係争中の周辺諸国は、当該海域を「中国管轄海域」だとは認めていない。そもそも、中国は日本の「管轄海域」にも海洋観測艦を頻繁に展開させ、同様の調査を行っている。その鉄面皮には毎度、感心させられるが、感心している場合ではない。

 海上自衛隊の音響測定艦「ひびき」「はりま」は当然、日本領・南西諸島近くの排他的経済水域でも調査活動を実施しているが“トロール漁船”に妨害される日が遠からず来るかもしれない。中国にとって、必要な海はすべて「管轄海域」なのである。


<関連サイト>

ANNUAL REPORT TO CONGRESS
Military Power of the People’s Republic of China 2009
http://www.defense.gov/pubs/pdfs/China_Military_Power_Report_2009.pdf


<画像引用>

米海軍の音響測定艦「インペッカブル」
http://www.jiji.com/jc/p_archives?rel=j7&id=20090310105228-7807414

コメント

_ とおる ― 2010/09/26 09:51

放水の他に、米軍やイスラエル軍だったと思いますが、一般群集に対する「音響(?)装置」なんていうのもありましたね。

_ とら猫イーチ ― 2010/09/26 10:48

 尖閣諸島沖では、これまでも中国だけでは無くて、台湾・香港の船が領海侵犯をしたことがあり、海保は、領海外に退去させて来ました。 また、放水や巡視船の体当たりで、相手船の針路を強制的に変更させる方法で対応して来ました。 今回のように船を確保し、乗組員を逮捕するに当たっては、当該の巡視船の判断だけでは不可能で、海上保安庁の首脳と政府の指示によるものであるのは明らかです。
 ところが、情勢が変化し中国が強硬と観るや、臆病者は、卑怯にも、法を執行するにすぎない海保や、検事に、外交・政治の判断(の責任)を押し付けて、自らはその責を逃れようとする。 国賊に匹敵する民主党政権は、唾棄すべき存在であり、菅総理以下の内閣は、全員辞表を出すべきです。

_ Y-SONODA ― 2010/09/26 11:23

★とおるさんへ

>一般群集に対する「音響(?)装置」

これからいろんな中国漁船対処法が出てくるかもしれませんね。
放水に音響、悪臭スカンク作戦やら人口雷発生装置やらいろいろ。
番犬ならぬ番鮫もいいかも。いざとなったら巨大鮫を解き放つ(笑)

★とら猫イーチさんへ

>今回のように船を確保し、乗組員を逮捕するに当たっては、当該の巡視船の判断だけでは不可能で、海上保安庁の首脳と政府の指示によるものであるのは明らかです

不思議なことにこのあたりがまったくわからないんですよね。
前原がどこまで具体的に関与していたのか。タイムリーに指示を出したのか。
実際には海上保安庁に「まずは放水」というマニュアルがあったのではないかと。
誰かがそれを無視した可能性だってある。
かなりの数のパンダ・チルドレンが随所に送り込まれているようですよ。

>菅総理以下の内閣は、全員辞表を出すべき

おそらくその結果小沢首相誕生。中国の思惑通りになっちゃいますよ。
自民しっかりしろよと言いたくなりますよね。

_ 誰かさん ― 2010/09/26 16:56

今回 拿捕時のビデオが公開されていないので推測ですが、複数の船舶に衝突していることを考えれば、1艘の漁船を複数の船舶で取り囲むようにして拿捕したのではないでしょうか。確かに最後に衝突してきたのは漁船かもしれませんが、取り囲まれ拿捕されるすれば、逃げようとする際に衝突するのは無理からぬことかも知れません。この推測が正しければ、はじめから拿捕することが目的だったのではないでしょうか。

_ Y-SONODA ― 2010/09/27 07:54

誰かさんさんへ

むしろ漁船の方が二度にわたって追い回し、強引に衝突したとの見方も浮上してきましたよね。
何が何やらわからない。ビデオを早く公開してほしいですね。

_ ロッキーホラーショー ― 2010/09/27 10:10

>はじめから拿捕することが目的だったのではないでしょうか。
中国が送り込んできた海上民兵の強引な振る舞いが端緒だったのはそのとおりでしょうが、逮捕までされると計算してたのだろうか。谷垣さんの発言ではないが、自民党時代の政府間の暗黙の合意が政権交代の際に引き継がれなかったりして。逮捕権の行使により尖閣諸島実効支配の実績を残した日本に対し、中国には直接手出しはできなかったという歴史だけが残りました。紛争の存在を明らかにした点で中国の勝ちという人もいますが、そんなのとっくに周知の事実です。
今回の顛末、日本国内ではいたって評判悪いですが、こういう時こそ「海保も政府もよくやった」と与野党もマスコミも声を揃えてくれないと。こういうのは、言ったもの勝ちでして、近隣諸国に「あぁ、今回は日本の勝ちか、頼りになるな」と思わせるぐらいでないと。
アメリカ政府は、公式には中立的な見解しか出していないではないかという声もあるようですが、台湾の世論が反米・中台統一に傾くリスクを考えると、クリントン・バイデン・ゲーツの対応だけで十分。
ただ、逮捕の意思決定が、政府のどのレイヤーでのことだったのか気になります。密輸船撃沈の後にお聞きした管区本部長での講演やら雑談の際に受けた印象の記憶からすると、海保の連中って、侍揃いといいますか、けっこう現場の判断で動いてしまう人たちだったような。奥の院が引いたグランドデザインではなく、集合知で動いていくのが八百万の神の国ということなのかも。

_ Y-SONODA ― 2010/09/28 09:13

ロッキーホラーショーさんへ

>谷垣さんの発言ではないが、自民党時代の政府間の暗黙の合意が政権交代の際に引き継がれなかったりして。

>海保の連中って、侍揃いといいますか、けっこう現場の判断で動いてしまう人たちだったような

す、鋭い。ココですよ。まさにココ。私が最も注目しているところ。
やはり中国漁船対処マニュアルはあったはずなんですよね。
それを誰かが無視しちゃった。現場の判断との可能性は確かに高いと思う。
しかし、自民との違いを見せつけるために民主の誰かが強硬路線を支持した可能性もありますね。

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