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<社説集>理想と現実の狭間で悩み始めた8月6日、読売&日経&朝日&毎日が揃って「核の傘」に言及2010/08/06 07:38



<社説引用>

▼読売:原爆忌 核軍縮の潮流を確かなものに(8月6日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100805-OYT1T01121.htm

 広島はきょう6日、長崎は9日に65回目の原爆忌を迎える。被爆の惨禍が二度と繰り返されぬよう、平和への誓いを新たにする日だ。

 広島の平和記念式典には、ルース駐日米大使が、米国代表として初めて参列する。米国と同じく欠席を続けてきた英仏も、今年初めて出席する。

 国連事務総長の参列も今回が初めてとなる。潘基文事務総長が式典であいさつに立ち、核兵器なき世界の実現を訴える。

 被爆地から世界に向けた力強いメッセージとなることだろう。

 オバマ米大統領は昨年4月のプラハ演説で「米国は核兵器を使用した唯一の核保有国として、核兵器のない世界に向けて行動する道義的責任がある」と明言した。

 ルース大使の式典参加は、オバマ政権の核軍縮に向けた強い意思表示と見ることも出来る。

 日米両国は同盟の絆(きずな)で結ばれているが、広島、長崎への原爆投下をめぐる両国の認識には依然として隔たりがある。

 原爆使用により本土上陸作戦が回避され、数多くの米将兵の生命が救われたとする見方が米国では依然根強い。

 ルース大使が参列する理由について、「第2次大戦のすべての犠牲者に敬意を示すため」と米政府は説明している。原爆投下への謝罪が表明されるわけではない。

 しかし、大使の参列は、原爆投下をめぐる日米の溝を埋めていく上で意義深い一歩と言える。

 将来、オバマ大統領自身の被爆地訪問も期待されよう。

 今年4月には米露両国が新戦略兵器削減条約(新START)に署名するなど、核軍縮への潮流は確かなものとなりつつある。

 しかし、一方で北朝鮮は核開発を続けている。北朝鮮の核の脅威や中国の軍事大国化という現実を見れば、日本にとって米国の「核の傘」は不可欠だ。

 広島市の秋葉忠利市長が式典で行う平和宣言は、「核の傘」からの離脱や非核三原則の法制化を日本政府に求めるという。現実を踏まえた議論とは到底言い難い。

 米国の核抑止力を機能させるためには、非核三原則の「持ち込ませず」についても、核搭載艦船の寄港・通過などは認めることを検討すべきだろう。

 広島、長崎に原爆を投下されても、「核の傘」に頼らざるを得ない――。そうした深いジレンマの下で、核軍縮、核不拡散をどう世界に訴えていくか。日本に課せられた大きな課題である。


▼日経:広島・長崎の発信力生かし核軍縮加速を
2010/8/6付
http://p.tl/QKBF

 広島、長崎への原爆投下から65年の夏を迎えた。世界では今、核軍縮への機運が高まっている。唯一の被爆国である日本はこの流れを加速すべく、核兵器廃絶への誓いを新たにする日である。

 今年の広島の平和記念式典には、原爆を投下した核大国の米国、核兵器保有国の英国、フランスの代表が初めて参加する。米国の代表はルース駐日大使だ。長崎をまず訪問した国連の潘基文事務総長も、事務総長として初めて式典に参列する。

 米政府は駐日大使の参加を「第2次世界大戦のすべての犠牲者に敬意を表する」ためと説明する。被爆者への謝罪を期待する地元との認識のずれは大きいが、米国内ではなお、原爆投下が日本の降伏を促したとする意見も根強い。核廃絶に熱意を傾ける米オバマ政権が代表の出席を決断した意義は認めるべきだろう。

 オバマ大統領は昨年、「核兵器のない世界」の実現を唱え、ノーベル平和賞を受賞した。核軍縮への世界的な関心を盛り上げたことが、英仏の代表や国連事務総長らの式典参加を促したともいえる。

 潘事務総長も「核廃絶実現の必要性が差し迫っている。世界の関心を集めたい」と語る。広島や長崎の発信力を生かす好機である。オバマ大統領には、任期中の被爆地訪問をぜひ、実現してもらいたい。

 核軍縮をいかに主導していくか。日本の役割も問われる。

 核大国の米ロは4月、戦略核兵器を大幅に削減する新核軍縮条約を締結した。5月に開いた核拡散防止条約(NPT)の再検討会議では、核軍縮の推進などを盛り込んだ最終文書を10年ぶりに採択した。

 国際社会が結束し、核軍縮に取り組んでいこうという環境は整いつつある。大切なのは、具体的な成果を一つずつ重ねていくことだ。

 世界にはなお、2万個を超える核弾頭が存在する。米ロだけでなく、中国を含めた核保有国の核軍縮が欠かせない。米中が批准していない包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効も促すべきである。

 核拡散を食い止めるため、NPT体制の強化も課題となる。インドやパキスタンなど事実上の核保有国にNPT加盟を粘り強く説得していく外交努力も必要だ。北朝鮮やイランの核開発の阻止は論をまたない。

 日本が米国の「核の傘」に守られている現実からみても、核の抑止力を直ちに排するのは難しい。核廃絶の希求と重い現実。核軍縮を促し、この溝を一歩ずつ埋めていくことこそ、日本に課せられた義務である。


▼朝日:原爆投下65年―連帯し核廃絶のゴールへ 
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 新しい風が吹いてきた。

 今日、広島市である平和記念式にルース駐日米大使が出席する。

 原子爆弾を投下した当事国の大使の出席は初めてだ。核保有国の英、仏臨時代理大使も初めて顔をそろえる。

 来日中の国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長も、昨日長崎を訪れた後、広島の式典に歴代事務総長として初めて出席する。

 広島市は12年前から核保有国に式典への招待状を送りつづけてきた。やっと小さな実を結んだ。

■オバマ氏の広島訪問を

 昨年4月、オバマ米大統領がプラハで「核兵器のない世界」に向けて行動すると表明した。核軍縮・核不拡散の機運はこれまでになく高まっている。

 これを核兵器廃絶の動きへと結びつけなければならない。

 広島にはオバマ大統領に手紙を送りつづけている被爆者がいる。

 元広島平和記念資料館長の高橋昭博さんは昨年1月、就任まもない大統領への手紙につづった。「ぜひ広島にお越しください。新たな時代の始まりとなります」。ブッシュ前政権では核軍縮の歩みが途絶えた。その方針転換を期待してのことだった。

 プラハ演説のあと、オバマ氏は主要国首脳会議(G8)の核声明、米核戦略の見直し、米ロ核軍縮条約の署名、初の核保安サミットの開催と、次々に手を打った。動きを知るたびに高橋さんは手紙を書いた。すでに計4通。

 「被爆者が願っているのは核軍縮ではありません。核兵器絶対否定であり、核兵器廃絶です」

 65年前のこの日、旧制中学の2年だった高橋さんは爆心地から1.4キロの校庭で被爆した。後頭部や背中、両手、両足など全身の3分の1以上に大やけどを負った。ガラス片が指先に突き刺さり、変形して生えつづけた「黒いつめ」は資料館に展示されている。

 オバマ氏の広島訪問を望むのは、「核兵器を使用したあとに何が起きたのか。自分の目で見てほしい。そうすれば、核廃絶に向けてさらに一歩進む」と信じるからだ。

 平均年齢76歳、全国に約22万人いる被爆者に共通した思いだろう。

 多くの命が一瞬に消えた地にオバマ氏が立てば、「核なき世界」に向けてこの上なく強いメッセージとなる。

■理想と現実の接点

 もっとも、オバマ氏が核兵器のない世界を唱えるのは被爆者と同じ動機からではないだろう。

 9・11同時テロのあと、核テロへの恐れが高まった。テロリストに核が渡る危険性が、安全保障上の大きな課題となってきた。「核がテロリストに渡れば核抑止論が働かない。核を廃絶した方が安全だ」というわけだ。「核兵器は絶対悪」という被爆者の人道上からの叫びとは、大きく隔たっている。

 「それでもゴールが同じなら連帯していい」。被爆者で元長崎大学長の土山秀夫さんは、そう断言する。

 そのために「感性と論理の訴えが必要だ」と説く。被爆者の証言は核廃絶の必要性を人々の感性に呼び覚ます。それだけでは十分でない。冷厳な国際政治の場で核廃絶の必要性を論理的に説得できなければならない。

 核廃絶という被爆国の理想論と、核抑止という保有国の現実論が交わることはこれまでなかった。日本が米国の「核の傘」の下にある現実もある。核戦略という極めて政治的な問題に、被爆者をはじめとした市民社会の意思が反映されることはなかった。限りない平行線とも見えた理想論と現実論に小さいながらも接点が生まれつつある。

 ルース大使の式典出席はそれを象徴する。ただ、米国務省は「第2次大戦のすべての犠牲者への敬意を表明するため」と説明する。いまも原爆投下を正当化する考えが根強い米国の世論に配慮せざるをえないのだ。

■核兵器禁止条約の準備

 これをひと夏の交錯で終わらせてはならない。

 そのためには核兵器廃絶のプロセスを練り上げ、現実の政策へとつなぐ。そして、ねばり強い外交交渉で核保有国への包囲網をつくっていくことだ。

 たとえば、5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書は「核兵器禁止条約」構想に初めて言及した。化学兵器と生物兵器には禁止条約があり、廃絶に向けて進んでいる。核兵器でも、というアイデアだ。

 カナダの元軍縮大使で、国際NGO「中堅国家構想」名誉議長のダグラス・ロウチさんはこの言及を「国際的な議論の俎上(そじょう)に上がった」と評価し、「国際交渉の準備を」と呼びかける。

 モデルとなる条約案は1997年、核戦争防止国際医師会議などのNGOが発表している。米など核保有国は消極的な態度をとってきた。ところが、核をめぐる状況が劇的に変わったいま、核廃絶の実現に欠かせないこの条約への関心が高まっている。交渉の準備に必要な条件を整えていきたい。

 対人地雷やクラスター爆弾の禁止条約が成立したのは、いくつかの国の国会議員がNGOと連帯して政府に働きかけたことが大きかった。核兵器でもこの経験を生かしたい。

 核被害の実態を原点に、政府だけでなく専門家や自治体、NGO、さらには市民によるネットワークを築く。同じ志を持つ国と連帯する。

 唯一の被爆国である日本は、その先頭に立たなければならない。


▼毎日:社説:被爆65年 核廃絶の道筋描こう
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100806k0000m070118000c.html

 広島はきょう6日、長崎は9日に「原爆の日」を迎える。原爆投下から65年がたつ。広島の平和記念式典に、核保有国である米英仏の代表や潘基文(バンキムン)国連事務総長が初めて出席する。国際社会はようやく核廃絶を現実の課題として見据え始めた。原爆犠牲者を追悼し平和を誓うのはもとより、「核なき世界」の実現を決意する場としたい。

 世界では第二次大戦後も地域紛争や大国による軍拡競争が続き、人類を何回も滅ぼせるほどの核兵器が蓄積された。しかし、オバマ米大統領が昨年4月のプラハ演説で、核兵器を使用した唯一の国として「行動する道義的責任がある」と明言し、核のない世界を目指すと宣言したのを機に潮流が変わった。

 今年4月には、米露が新たな核軍縮条約に調印した。広島、長崎両市が核廃絶を目指して呼びかけた平和市長会議には、144の国・地域にある4000を超える自治体が加盟している。

 一方で今年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議では核保有国の利害が対立し、核兵器廃絶の期限など具体的な道筋は描けなかった。アジアでは北朝鮮が核開発を続け、中国も急速な勢いで軍拡を続けるなど、核をめぐる情勢は不透明さを増している。国際社会で高まりつつある核軍縮の動きに北朝鮮や中国などを巻き込み、大きな流れにしていかなければならない。

 そのために、日本は何をなすべきなのか。

 今年の広島の平和宣言は政府に対し、非核三原則の法制化や「核の傘」からの離脱を訴える。長崎の平和宣言も政府に核兵器廃絶へのリーダーシップを求める。

 安全保障の現実を見据えつつ、核の問題について議論を深めていきたい。「核兵器廃絶の先頭に立つ」と公約する民主党は、国際社会へのアピールを強めていくべきだ。

 日豪両政府がイニシアチブをとって設立した核不拡散・核軍縮に関する国際委員会は「世界核不拡散・核軍縮センター」の新設を提唱している。被爆体験を持つ日本こそが、その拠点を誘致し、核兵器の非人道性を世界に訴えるなど、核軍縮を積極的に後押ししてもらいたい。

 秋にはオバマ大統領が来日する。広島、長崎への訪問が実現するよう、政府は強く働きかけてほしい。

 被爆者の平均年齢は、76歳を超えた。「核なき世界」に向け、着実な歩みを進める上で被爆体験の継承は不可欠だ。若い世代に語り、伝えていく教育にも力を入れよう。

 核軍縮の機運が高まる今こそ、唯一の被爆国である日本は核廃絶への道を主導したい。