ダンカイ星人主役の2012年問題と2015年問題、公的年金にもジワリと影響が ― 2010/07/13 08:38
いささか前のめりの感は否めないが、それでも孤軍奮闘の日本経済新聞。
今朝の朝刊は一面トップで公的年金問題。
とりわけ年金問題で鍵を握るのは昭和22~24年生まれダンカイ星人。
重要なキーワードは2012年問題と2015年問題。
2012年から65歳を迎え始め、2015年までにすべて65歳。
2012年から団塊世代の大量退職と年金生活が同時スタート。
そして2015年には日本人の4人に1人が65歳以上の超高齢社会へ。
その時貯蓄はどうなるのか。
団塊世代の貯蓄取り崩しのスピードが大いに気になるところ。
日本にとって深刻なことはなにか。
それは減りゆく国内貯蓄で膨らむ長期債務をまかなえなくなる日がいずれ来ること。
国債買い余力が低下し、国内で消化できなくなる日がいずれ来ること。
いつまでもあると思うな金融資産。
そして、ついに日経は国債暴落に言及。しかもそれはなんと社説。
「日本を危機から救うために残された時間は多くない。その事実を与野党の政治家はわきまえて行動してほしい。」と結んでいる。
この声は鳩山由紀夫を引き継いだ菅直人率いる第二次ダンカイ政権に届くのだろうか。
本ブログが提案した年金支給年齢見直し論は当然のことながらダンカイ政権には届いていない。
<関連記事引用>
年金積立金、減少進む、昨年度、国債9年ぶり売り越し―給付増え取り崩し。
2010/07/13 日本経済新聞 朝刊
公的年金の国債売買が2009年度に9年ぶりの売り越しに転じた。年金給付の増加や年金運用環境の悪化を受けて、積立金を取り崩したためだ。厚生労働省は少なくとも13年度まで積立金の減少傾向が続くとみており、国債発行残高(国庫短期証券を除く)の1割以上を保有する公的年金の買い余力が低下する可能性がある。財政再建を求める市場の圧力が強まるとの見方も出ている。(公的年金の積立金は3面「きょうのことば」参照)
公的年金には厚生年金や国民年金、共済年金などが含まれる。日銀がまとめた資金循環統計によると、09年度の国債の売越額(売却額から購入額を差し引いた値)は4432億円となった。10年度の売却予定額は明らかにしていないが、「前年度より売越額が膨らむ可能性がある」(国内証券)との声も出ている。
背景にあるのは積立金の取り崩しだ。積立金は06年度末から減少局面に入った。08年度末には124兆円弱となり、ピーク時の150兆円を大幅に下回っている。
旧大蔵省(現財務省)の資金運用部に預けてきた年金資金の返還は01~08年度で終わった。年金給付の増加や年金運用の低迷も加わって、積立金の取り崩しが進む。
10年度の積立金も数兆円規模で減少する可能性がある。厚労省の計画では、現在実施している保険料の段階的引き上げの効果が出てくるため、14年度末から増加に転じる見込みだ。この計画は04年からの年金制度改革を前提としており、実現するかどうかは予断を許さない。
日本証券業協会によると、5月の国債の店頭売買は300兆円規模。公的年金が年間で数兆円単位の売却に転じたとしても、長期金利の急上昇は避けられるとの指摘が多い。
ただ09年度末の公的年金の国債保有残高は79兆5000億円で、総発行残高の11・6%を占める。「公的年金は様々な年限の国債を保有している。売却した場合の金利上昇圧力も幅広く及ぶ」(日興コーディアル証券の末沢豪謙チーフストラテジスト)との見方も浮上している。
日本の財政は急速に悪化しており、国と地方の長期債務残高は09年度末に合計825兆円に達したもようだ。一方、家計の金融資産は1450兆円にのぼり、国債の9割以上を国内で消化している。
少子高齢化に伴って家計の貯蓄率が将来マイナスに転じれば、銀行などの国債買い余力も低下する恐れがある。
公的年金の積立金(きょうのことば)
2010/07/13 日本経済新聞 朝刊
▽…現役世代が支払った年金保険料から、高齢者への年金給付を差し引いた残額。一部を年金の特別会計に残し、大半を国内外の株式や債券で運用している。2005年度末には残高が150兆円に膨らんだが、08年度末は124兆円弱に縮小した。
▽…積立金を管理・運用するのは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)。資産の構成割合を示す基本ポートフォリオを定め、資金を配分している。現行では国内債券67%、国内株式11%、外国債券8%、外国株式9%、短期資産5%となっている。巨額の資金を運用するため、GPIFの投資行動が市場で注目を集めることが多い。
日経社説:危機回避へひるまず経済・税財政改革を
2010/7/13付
http://goo.gl/Ez9m
参院選での民主党敗北によって、消費税の増税を含む税財政改革や成長促進策が停滞すると懸念されている。低い経済成長が続く一方、政府の債務は積み上がるばかりで、日本の経済・財政には危機が迫る。実際に改革が滞るようならば極めて憂うべき事態である。
民主党は選挙結果にひるまず、改革を進めてほしい。消費税率の10%への引き上げを掲げた自民党も国民のため、党派の違いを乗り越え協力して改革を推し進め、経済危機の回避に努めてもらいたい。
増税が敗因とは限らぬ
民主党の敗因について菅直人首相は消費税率の引き上げが「唐突と受け取られた」と自己分析した。10%への引き上げの根拠がはっきりしなかったほか、低所得者への負担軽減策では発言がぶれるなど、国民への示し方が乱暴だったのは事実であり、反省を求めたい。
だが、有権者は消費増税に単純な「ノー」を突きつけたのだろうか。改選第1党となった自民党は公約に、社会保障に充てるため税率を10%に引き上げると明記している。大多数の有権者はこのままでは財政も経済も持続可能ではないと心配している。そうみるべきではないか。
地方の1人区で民主党が負け越した主な原因も、必ずしも消費税増税とはいえないだろう。疲弊する地方経済に対して民主党政権が打った手は、子ども手当支給や郵便局を過疎地にも残すための郵政改革法案提出(ただし未成立)などだった。
これらは都会との格差縮小には役だっても、公共事業の減少で所得が細る地域住民に、それに代わる生活の糧を与えるものではない。住民の願いを読み違えたのである。
日本銀行によれば、景気は各地で持ち直しつつある。しかしそれは「嵐の前の静けさ」にすぎない。向こう1~2年間を展望すれば、欧州と米国の金融・財政問題がさらに悪化し、その余波を日本がかぶる恐れがある。現に欧州の金融危機は日本の株価を大きく押し下げた。
中長期でみれば、政府債務の膨張が限界にきて国債が暴落(長期金利は上昇)し、経済と金融を大混乱に陥れる可能性がある。
それを避けるために政府は6月、2020年度までに政府債務の国内総生産(GDP)比の上昇を止めるという財政運営戦略を決めた。1%台の名目成長率を前提とした「慎重シナリオ」でも、20年度までに14兆円弱の収支改善が必要で、歳出削減に加え増税は避けられない。
しかも1%台の成長率は過去10年平均のマイナス0.48%に比べ著しく高く、達成は容易でない。
経済の破綻を防ぎ国民生活を安定させるには、名目成長率を高めることと、不要不急な歳出の削減、社会保障改革とそれに関連した消費税などの増税が欠かせない。
この3つとも大事だが、選挙の結果から、現実問題として消費税増税は実施時期が遅くなる可能性が出てきた。まず歳出削減、公務員改革をと主張する、みんなの党が10議席も得た事実を考えても、歳出改革や成長促進策を優先することが重要になる。高所得者にも給付する子ども手当や、高速道路の無料化方針などカネのかかるバラマキ的な政策を民主党は見直す必要がある。
同党が始めた事業仕分けは画期的だが、歳出削減に効果をあげるにはもっと幅広い分野を対象にして、一段と厳しく切り込むべきだ。
成長策と歳出減全力で
さらに、成長促進へ思い切った手を打つべき時だ。医療、保育、農業、住宅・ビル建設などの分野での規制の緩和は設備投資や建設など内需を盛り上げ、雇用を増やす。また農産物市場の開放を何とか可能にし、成長著しいアジア諸国などとの通商自由化を急ぎたい。
消費税を上げる一方で法人税を下げるのは政治的に容易でないのは分かるが、国内での投資を促し、外国資本をも呼び込むためには法人税減税を避けて通れない。ドイツや英国は消費増税と法人減税をすでに実施ないし決定済みだ。
民主党敗北で改革への勢いが弱まるとみる向きからは今後、日銀の金融緩和策への期待が高まるとみられる。金融緩和の手立てはまだあると考えられるものの、政府の成長促進策や財政赤字削減策が伴わなければ、成長にも、債券市場の安定にもその効果は限られよう。
民主党は参院で多数を確保するため、野党との連携を探るとみられる。単なる数合わせではなく、経済と税財政の改革を進めるのを最優先に進めるべきである。
国債の金利安定は南欧の金融・財政混乱で日本国債が相対的に安全と見られているからだ。裏を返せば、極めて心細い均衡状態にある。日本を危機から救うために残された時間は多くない。その事実を与野党の政治家はわきまえて行動してほしい。
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