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チャイメリカから米中対立論へ、ニーアル・ファーガソンを読む2009/10/05 09:25

チャイメリカから米中対立論へ、ニーアル・ファーガソンを読む


「近い将来、米中が衝突する可能性は排除できない」

これは私が何度も繰り返してきたこと。
米中衝突の可能性を無視した政治家や学者は相手にしない方がよいと断言。

最も慎重に対処しなければならないはずの日本。
その日本でこの重要な視点が今なお置き去りにされたまま。

「万が一米中が衝突した時、日本はどちら側につくのか」

その答えは明明白白。
今度また米国を敵に回せば、3発目4発目の核兵器を覚悟しなければならない。

こんなことをまったく想定していなかったような人が今や首相。
米中に友愛が通じるとでも思っているのか。

今や海外では超人気者となっているニーアル・ファーガソン。
ファーガソンは米中相互依存関係を意味するチャイメリカ(Chimerica)を提唱。
この時点で、私はファーガソンの甘さが出たと評価。

しかし、すぐさまファーガソンは米中対立論に修正。このあたりはさすが。
今年のビルダーバーグ会議に始めて出席したことも微妙に影響しているのか。

このファーガソンがようやく日経紙面に登場。
私がこっそり楽しんでいたクルーグマン=ファーガソン論争にも言及。
この論争では両者がトリックスターのように皮肉たっぷりに応酬している点に注目を。

まだ少し甘さが気になりますが、それでも一読の価値あり。


<関連記事引用>

特集――歴史から読み解く現在、ハーバード大教授ファーガソン氏(世界を語る)
2009/10/03日本経済新聞朝刊

 過去を探る学問と思われがちな歴史学。ところが米ハーバード大で経済・金融史を教えるニーアル・ファーガソン教授は、秩序安定の観点からブッシュ政権のイラク戦争開戦を支持。金融危機が起きると米政府の大規模な財政出動と大量の国債発行を批判するなど、現在と寄り添う姿勢を崩さない。英紙フィナンシャル・タイムズなどにコラムを執筆し、ときに欧米の論壇をにぎわす同教授は、大国が衰えていく21世紀の世界は「危機に直面している」と説く。

 ――歴史学者でありながらどうして現在や未来を論じるのですか。

 「未来のことはフューチャーズと複数形で話すことにしている。未来は1つではない。多くの未来からどれが起きるかは誰にも分からない。ただ歴史的な思考をすれば将来像は見えやすくなる。米国と中国は同盟関係になるかもしれないし、別れてしまうかもしれない。それぞれ過去の英米関係や英独関係になぞらえれば想像しやすくなる」

 ――中国の今後をどう予想しますか。

 「中国は現在の成長が続けば10年以内に米国に匹敵する経済大国になる。世界経済のカギを米中が握る。それがチャイメリカだ」

 ――米中が一緒に世界規模の課題に取り組む「G2」論を唱える人も増えています。

 「両国が補完関係にあるという意味では(G2と)同じだが、チャイメリカは中国の貯蓄と米国の消費が結びつくという経済の概念だ。米中双方とも相互協力を説く人が多いが、明らかに利害対立がある。10年、20年の単位で考えると、食い違いの方向に向かうだろう。その結果は米欧関係や日米関係にも影響するし、インドのような同盟国でなかった国との関係も重大な意味を持つようになる」

 ――米中対立が世界の軸になると?

 「19、20世紀と中国は暗黒の時代だった。中国は現在、『払い戻し』を求めている。上の世代は争いを望んでいないが、若い世代は自信を持ち始めている。今後の中国は独断に走るようになる」

 「中国にとって重要な教訓が日本だ。100年少し前の日本はアジアの新興国で、列強の仲間入りを目指していた。周囲との摩擦の連続で、まずロシア、次いで欧米と戦った。だが、戦争から得るものはほとんどない。特に中国の膨大な人口を考えれば、だ」

 ――欧州連合(EU)も1つの極になりますか。

 「もう少し強くなってほしいが、機能的には弱体なので、肩を並べていけるとは思わない。(大統領制導入で)単独の代表ができるのは外交面ではプラスだ。だが、何か改革しようとするたびにどこかの国の国民投票でノーとなる。強い連邦国家になることはない。それが分かっているからロシアのプーチン首相は力こぶを見せびらかすのだ」

 ――代表作「憎悪の世紀」では20世紀を「最悪の世紀」と呼んでいます。

 「20世紀は殺人兵器の効率化が最も進んだ時代だ。ただ、核兵器が登場し、20世紀の後半は大国が力を直接行使することは少なくなった。ベトナム、アンゴラなどで多くの人々が亡くなったが、米ソの直接衝突はなかった」

 ――冷戦終結で「世界はひとつになれる」と思った人もいました。

 「冷戦は終わったが戦争はなくならなかった。紛争を引き起こす3条件は変わらず存在しているからだ。1つは不安定な経済。これは以前よりも不安定さを増している。2つ目は民族対立。世界の一部、特にイスラム世界で多く見られる。3番目は(覇権国家である)帝国の衰退だ。米国ですらついに帝国としての力の限界に達した。挑もうとする勢力が増えてくる。我々は危機に直面している」

 ――20世紀が繰り返されるのですか。

 「地政学的要因は変化した。当時は中・東欧、満州(中国東北部)、韓国が主戦場だったが、現在では中近東だ。米軍がイラクからの撤収を終え、次いでアフガニスタンから引き揚げれば、紛争が起きる可能性は巨大になる。発火点になり得るのはパキスタン、イスラエルとパレスチナ、イランだ。特にイランは核武装に近づこうとしている」

 ――民族対立は永久になくならないのでは?

 「民族対立は常にあるわけではない。スコットランド人の私と日本人のあなたはDNAも異なるし、文化も異なる。しかし互いに憎しみを感じることはない」

 「100年前の中欧、例えばウィーンは多民族都市だったが、ほとんど対立はなかった。民族対立はどうして起きるのか。共存社会を壊そうとする圧力が外部からかかったときだ」

 ――金融危機は民族対立を増幅させると思いますか。

 「間違いなくそうだ。金融史を研究して分かるのは、大きな金融危機が起きると社会や政治も不安定さを増し、大きな衝撃を生み出すということだ」

 「最近、日本で政権交代があったが、国によっては平和的な政権交代ではなく、暴力の増大につながる。多民族国家ではすでに緊張が高まっている。政治対立が二極化していない国では犯罪の増加のような形で表れる」

 ――金融危機では米財政の拡大を批判しました。

 「1970年代後半から米国などでは国内総生産(GDP)に対する公的・民間セクターの債務残高比率が大幅に上昇した。今回の金融危機により自己資本をはるかに上回る投資を行うレバレッジの時代は終わった。財政赤字の拡大という従来型の短期的な手法で乗り切ろうとしても歴史の流れには逆らえない。クルーグマン=ファーガソン論争では、米財政がたどっている道筋が持続可能ではないことはクルーグマン氏も認めている」

 「金融政策としての量的緩和は有効だが、米連邦準備理事会(FRB)による米国債の大量購入は長期金利の上昇を招きかねない。住宅ローン金利も上がり、FRBの意図とは反対の影響が出る。ドルは準備通貨としての価値を失うのではないか」

 ――わざと論争して楽しんでいるようにも見えます。

 「論争の信者だ。同意よりも言い争いから真実は得られることが多い」

 ――次の研究課題は。

 「ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官の伝記を書いている。経済危機と地政学的危機の時代である1970年代に興味があるからだ。70年代は米中関係が始まったときでもある」

 どうしたら金融危機を克服できるのか。昨年秋以降、欧米では多くの学者が論陣を張った。なかでも騒ぎを巻き起こしたのがファーガソン氏とプリンストン大のポール・クルーグマン教授の論争だ。

 日本人がノーベル経済学賞に抱く大物イメージと程遠い、クルーグマン氏の悪態をつくような語り口は欧米メディアには格好のネタ。米紙ニューヨーク・タイムズなどで頻繁に取り上げられた。相手方はどう思っているのか。それが知りたくてハーバード大に足を運んだ。

 にこやかだが、こちらもなかなか辛口だ。英国人らしい皮肉交じりの物言いで「米帝国の終末」を予言し、米国人の神経を故意に逆なでする。

 歴史的事実と異なる前提を提示し、「もし××だったらどうなっていたか」と問う手法には賛否両論がある。同僚教授に感想を聞くと「話は面白いが、必ずしも正しくはない」と顔をしかめた。

 論壇のエースか、目立ちたがり屋か。いずれにせよ、欧米歴史学界の目下の旗手であることは間違いない。日本で翻訳が1冊しか出ていないのは著書がどれも長すぎるせいか。

(ワシントン支局長大石格)

 1964年英グラスゴー生まれ。オックスフォード大を卒業後、ケンブリッジ大講師やニューヨーク大教授などを経て2004年から現職。専門は経済・金融史で、「帝国」研究で知られる。歴史資料を再構成して通説と異なる史観を示す歴史修正主義者の代表格。メディア登場に積極的で、04年には米誌タイムで「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。英ヘッジファンドのコンサルタントを務めたこともある。


<関連サイト>

Niall Ferguson - Home(画像引用)
http://www.niallferguson.com/site/FERG/Templates/Home.aspx?pageid=1

‘Chimerica’ is Headed for Divorce
http://www.niallferguson.com/site/FERG/Templates/ArticleItem.aspx?pageid=210

米国債めぐるエコノミストの激突
ポール・クルーグマン vs. ニーアル・ファーガソン
http://newsweekjapan.jp/stories/business/2009/06/post-200.php

The Bond War
Why Paul Krugman and Niall Ferguson are hammering each other about T-Bill interest rates.
http://www.slate.com/id/2219769/

Professor Paul Krugman at war with Niall Ferguson over inflation
http://business.timesonline.co.uk/tol/business/economics/article6806419.ece

東アジア共同体という危険な誘惑
http://www.yorozubp.com/0412/041215.htm

ライジング・チャイナをめぐる議論
http://www.yorozubp.com/0501/050114.htm

コメント

_ Blondy ― 2009/10/05 20:03


ファーガソンの研究業績と著作および今後の予定を見るとほんとに筋がよいな~の一言。
アングロアメリカン・エスタブリッシュメント御用達のド本流ですねw
http://drfd.hbs.edu/fit/public/facultyInfo.do?facInfo=bio&facEmId=nferguson%40hbs.edu

まともに受けるとファーガソンに甘さの印象が残るのはたしかなんですが、本当は歴史学徒として五手先まで選択枝が読めているのに、御用達のお役目上、せいぜい一、二手先までの話しかしないようにしているからじゃないかな~。
 
クルーグマンとの論争だって、金利上昇に警鐘をならしているけど、ファーガソンはワイマール時代のインフレを深く研究しているのだから、ほんとはワイマール時代には金利はインフレがいくら亢進しても一定以上には上がらなかったことを良く知っているはずで、これもわざと一、二手先までの話しかしていないように見えちゃうw

勿論、米中衝突の話も、そのとき中国が統一を保っているか、すでに分裂しているかどちらの可能性が高いか、米中衝突の可能性に対して英米はどういう手を打つのかという肝心の点をわざとぼかしてアドバルーンだけ上げているような気がしないでもないなァw

P.S.若手のパラグ・カンナをファーガソンに鍛えさせたら一騎当千に育つでしょうね。

_ Y-SONODA ― 2009/10/06 01:02

Blondyさんへ

なるほど、五手先ファーガソンの甘さは周囲への配慮に過ぎないとの見方ですね。
私なんかはミアシャイマーあたりに会わせると最強タッグになるような気がしますがw
パラグ・カンナもいいですが、ファーガソンに再教育をお願いしたい人が日本にはゴロゴロ。
誠に失礼かと思いますが、中西輝政さんとか浜矩子さんとか・・・。
中西氏の多極化論はおもしろいですよ。
多極化を決定的として「日本よ、一極として立て」などと本気で叫んでおられます。

_ YS ― 2009/10/07 00:17

There's no such thing as too big to fail in a free market

The collapse of a financial institution is not necessarily a disaster. If free markets are to thrive, we must not allow giant, state-supported banks to believe that they are indestructible, Niall Ferguson warns

By Niall Ferguson
Published: 8:23PM BST 05 Oct 2009
http://www.telegraph.co.uk/finance/financetopics/financialcrisis/6263315/Theres-no-such-thing-as-too-big-to-fail-in-a-free-market.html#

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_ 金貸しは、国家を相手に金を貸す - 2009/10/06 16:17

ドル安が続いている。ドルは、今年3月以降、主要7通貨に対して14%下落し、対円では80円台に入った。もはや、ブレトンウッズ以来のドル基軸通貨体制の終焉は誰の目にも明らかである。各国の国家要人や国際機関、研究者から、ドルに代わる国際決済通貨の必要性が表明されるようになった。しかし、基軸通貨の地位がポンドからドルに移った100年前のように、今ドルに代替する力を持つ通貨があるかというと、まだ無い。そのため、次なる国際通貨システムの青写真は描く人によって様々、まさに百家争鳴の様相を呈し始めている。 そこで、本ブログでは、『ドルに代わる通貨システムは?』シリーズと題して、これから週1回、8~9回程度のエントリーの中で、新しい国際通貨・地域通貨創設を巡る現在の状況を押さえ、その行方を考えていきたい。 いつも応援ありがとうございます。 ...