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サル学から見た人類の戦争の起源2009/08/14 00:11

2009/08/13日本経済新聞夕刊:人類の戦争の起源、山極寿一さんに聞く


夏休みということもあって誰も読んでいないと思うのですが、今週の日経新聞夕刊は読みどころ満載。

本ブログ「サル学から見たクジラ・イルカ問題」(8月12日付)で取り上げた山極寿一氏も登場。
その記事を引用させていただきます。

インターネットにおける匿名性が孕む危険性も認識しておく必要がある。
また、常に「棲み分け」を考えておけば、戦争は防げるというのが私の考えです。
社会ダーウィニズムに致命的な欠陥があります。


<日経記事引用>

人類の戦争の起源、山極寿一さんに聞く、為政者が操る集団意識、他者への許容が大切。
2009/08/13日本経済新聞夕刊

 チンパンジーの群れの衝突と人類の戦争は、根本的に違う

 今年も2日後に太平洋戦争の終戦記念日を迎える。わが国は64年間、平和の道を歩んできた。地球上では、民族や宗教の対立に起因した紛争が絶えない。長年、ゴリラなど大型類人猿の研究を重ねてきた京都大学教授の山極寿一さん(57)は京都市北白川追分町の人類進化論研究室で、チンパンジーの群れの戦いと、人類の戦争の違いについて、まず話し始めた。

 「チンパンジーの群れと群れとの衝突が、これまでに目撃されている。この衝突が、人類の戦争と根本的に異なるのは、個々のチンパンジーは自己の利益のために戦っていること。これに対し人類の場合は、自分たちで作り出したユニークな社会性を背景にして、共同体の利益のために戦争をするのです」

 動機はあくまで共同体の内部にあり、人間の社会性を為政者がうまく操り、国家や民族集団のために奉仕するよう仕向けるから、戦争が誕生する、というのだ。

 では、人類の社会性とは何なのか。

 「我々の祖先が進化の系統樹で、チンパンジーから枝分かれして草原で暮らすようになる。食料を確保するために、小集団で狩猟採集をする。その一方で、夜間、寝ているときに襲ってくる捕食者から身を守ったり、共同で育児をしたりするために、大きな集団を作る」

 「そうなると個々のメンバーは分担して集団に奉仕する必要が出てきます。様々な集団への帰属意識、それに集団への奉仕や共感といったものが社会性を作り出すのです」

 大量殺戮(さつりく)の原因は「言語の出現」「土地の所有」「死者の利用」の三つ

 「戦争が大量の人間の命を奪うようになった原因の第一は言語だと思います。音楽には、その場で体験を共有して一体感を作り出す機能があります。それが言語になると、そこには実在しない出来事や空想上の話も伝えることができる。だから言葉の出現によってバーチャルな共同体、つまり国家や民族といった目には見えにくいものをも人々の心に植え付けられるようになります」

 第二が土地所有。

 「人類の歴史の99%は狩猟採集の時代。その時代には、広い地域を複数の集団が共有して、狩りをしたり、木の実の採集をしたりしていたので、土地の境界はさほど重要ではなかった。1万年ほど前、農耕の時代が始まると、土地の利用法が劇的に変わる。定住し、土地を耕し、種をまき、肥料をやり、作物を実らせる。土地の所有権が発生し、境界が出現します」

 個人や集団は土地に帰属するようになる。

 「土地を管理する者が大きな権限を持ち、さらにそれを統括する者が支配者になる。それにより、土地や境界をめぐる争いが引き起こされ、集団間の戦争に発展する素地が作られたのです」

 死者の利用が第三の原因だ。

 「人類は、すでにこの世から去った死者の利用も考えつく。人の一生は短い。生涯にわたって権利を主張できる土地の広さは知れたもの。先祖代々の土地であることを宣言することによって、広い土地の所有権を子孫に継承していく。その象徴として墓を建て、先祖を崇拝するのです」

 同じ祖先を持つ親族の規模は拡大する。

 「親族が膨張した結果できあがる究極の形が民族です。民族には始祖神話があり、語り継がれる。そういったものが核となり、民族の理念が確立され、敵対する民族が出現すれば、多くのメンバーが戦いにかり出されるのです」

 攻撃本能起源説は戦勝国を擁護するもので、誤り

 戦争の起源については、過去にも多くの学者が論じてきた。精神医学者のフロイトは1932年、科学者のアインシュタインとの往復書簡で「人間の心には破壊し殺害しようとする攻撃的本能が潜む」と述べた。動物行動学者のローレンツは63年「攻撃――悪の自然誌」に「人間は武器を発達させたために、攻撃行動の抑止機構を進化させないまま戦いを拡大してしまった」とつづった。

 「フロイトの説も、ローレンツの説も誤りです。ある意味で、戦勝国を擁護する学説です。戦争の原因は、人間の攻撃本能にあるのではなく、先に述べたように共同体の中で作り上げてきた人間固有の社会性に潜んでいるのです」

 戦争を防ぐにはどうすればいいのだろうか。

 「国と国、民族と民族、集団と集団の利害対立が生まれたとき、国や民族、集団への帰属意識や奉仕、共感といったものが戦争を引き起こす。そのことを、多くの人が冷静に自覚することが大切だと思います。だから紛争が生まれたら、双方の面目を保つ道を根気よく探り出すことも欠かせません」

 集団間の境界を超えた帰属意識を、多くの人が持つことも重要になる。

 「例えば、89年に起きたベルリンの壁の崩壊は、境界を超えた市民意識がもたらしたもので、東西の冷戦を終結させた。スポーツの世界や非政府組織(NGO)活動の現場レベルでも国境を超えた人と人との交流として活発に展開しています。人間が日常的に、国や民族のボーダーを超えて出入りしていれば、外国や他民族の他者への許容性は自然に高められるはずです」

 太平洋戦争のときのように、気がついたら国全体が戦争への坂道を転がり落ちていたというような事態は避けたい。山極さんの話から、われわれ市民が学ぶべきは、まず愛国心や民族愛を巧みに操って戦争へと導こうとする為政者に目を光らせ、選挙などで早めに彼らの芽を摘むことであろうか。

(特別編集委員 足立則夫)

 やまぎわ・じゅいち 京都大学大学院理学研究科教授。1952年東京都生まれ。野生の霊長類の行動を追跡。特にゴリラの研究や保護活動の評価は高く、2008年から国際霊長類学会会長。国際ゴリラ年の今年は、内外でゴリラ保護の緊急性を説く。著書に「ゴリラとヒトの間」「暴力はどこからきたか」など。

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中学の時、最初に買ったのがレスポール(グレコ製w)
高校に入ってからはヤマハのSGを使っていました。