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この人こそ今:フランク・S・ジャヌージ2009/04/16 08:11

フランク・S・ジャヌージ


4月15日の日経新聞(朝刊)の春原さんの記事をめもメモ。
アーミテージから直接聞いた内容がそのまま記事になっているようなのでこれは貴重。

本ブログでは昨年8月に「マケイン政権が誕生した場合、アーミテージが要職に就く可能性が高いですからね。ひょっとしたらオバマ政権誕生でもジョセフ・ナイとの関係からアーミテージの名前が浮上するかもしれません。」と書きました。

私の予測どおり北朝鮮問題担当特使就任要請があったようです。
当方にはマイケル・グリーンにもお話がきていたとの情報も入っていたり。
それにしてもナイの駐日大使任命はどうなったのでしょうか。

春原さんはミサイル発射を断行した北朝鮮の動機が国内事情にあるとする分析を紹介。
忠誠心を問い直すための「舞台装置」などと書いていますが、私からすればこれはどうだか。

北の国内事情とはズバリ「金」でしょう。
2000年頃の要求額は毎年10億ドル。
今回のテポドン効果で毎年15億ドル程度に引き上げるはず。

先日、米ウォールストリート・ジャーナルが北の兵器販売を毎年約15億ドルと指摘しながら、その大口取引先として、シリア、イラン、ミャンマー、 それにヒズボラとタミル・タイガーの名前まであげていると紹介しました。

これが毎年15億ドルの根拠。
そして北はこんなことを言っているのではないでしょうか。

「アメリカさんよ。兵器輸出をやめろというなら、毎年15億ドルくれよ。6カ国協議なんかやめてもう一度直接交渉しようぜ。15億ドルを6で割れば安いもんよ。」

北の狙いを一番熟知しているのはフランク・ジャヌージ上院外交委員会上級スタッフ。
この人は米外交問題評議会(CFR)の日立・インターナショナル・アフェアーズ・フェローでもある。

日本の保守派は北との対話重視派の代表格であるジャヌージが大嫌い。
ジャヌージがミサイル防衛(MD)懐疑派の急先鋒に立っているから嫌いという理由もあったりする(笑)

とはいえ、北朝鮮問題担当のスティーブン・ボスワース特別代表の背後で大忙しのジャヌージを無視していいと考えるのは大間違い。

クリントン政権末期、北が長距離ミサイル開発とその販売計画を終わらせることの見返りとして毎年10億ドルを要求したことを暴露した人物こそがジャヌージです。

今まさにボスワースとジャヌージは計算機片手に一番安上がりな解決方法を探っているかも。
このあたりの情報は日立製作所に頼むとすぐに入手できるのではないでしょうか。

好き嫌いがはっきりしている人はこういう計算がどうも苦手のようです。



<春原さんの記事引用>

米「核なき世界」へ正念場、政策立て直し手探り。
2009/04/15日本経済新聞朝刊

 北朝鮮による弾道ミサイル「テポドン2号」発射を受け、オバマ米政権も対北朝鮮政策の練り直しを迫られる。国連安保理の議長声明に態度を硬化させた北朝鮮は早くも六カ国協議を「人質」に取りながら、米朝二国間交渉に持ち込む機会をうかがい始めた。北朝鮮の核・ミサイル問題への対応は「核のない世界」を目指すというオバマ大統領の壮大な目標達成を占う試金石ともなるが強硬・融和、いずれの路線も手詰まり感は否めない。

 「テポドン迎撃シミュレーションを実施せよ」――。

 三月上旬、ゲーツ米国防長官はハワイにある米太平洋軍司令部に陣取るキーティング司令官らにそう命じた。だが、答えは「ハワイ、アラスカなら何とかなるが、日本に着弾する場合は防ぎようがない」(米国防関係筋)というものだった。

 文字通り、虚を突かれた格好の米国。伏線は昨年十一月五日、ニューヨークで行われた米朝非公式会合にあった。参加したのは李根(リ・グン)北朝鮮外務省米州局長。一九九四年の枠組み合意当時から対米交渉の最前線に立ち、過去二十年近くの米国の対北朝鮮政策を熟知する人物である。

 米側参加者によれば、李氏は当時のブッシュ政権高官だけでなく、クリントン政権OB、オバマ政権の関係者とも面会。その際、米側の何人かはオバマ政権が対話重視であることを説明した上で、米朝関係好転に必要な十項目に及ぶ「べからず集」を伝えている。テポドン発射はもちろん、その筆頭格だった。

「べからず集」破る

 にもかかわらずミサイル発射を断行した北朝鮮の動機は何か。諸説飛びかう中で、訪朝経験もある元米政府高官はニューヨークでの会合を踏まえ「真の動機は北朝鮮国内の事情にあるのではないか」と分析する。

 昨年、脳卒中で倒れた北朝鮮の金正日総書記にとって焦眉(しょうび)の急は後継者問題。若い三男・金正雲(ジョンウン)氏が有力候補の一人とされる中、金正日総書記は軍部・官僚機構・労働党に「忠誠心を問い直す必要に迫られている」(米朝協議関係者)。テポドン発射はそのための「舞台装置」だったとの見立てである。

 「北朝鮮問題担当の特使を引き受けてはもらえないだろうか……」

「軸足定まらず」

 今年初め、オバマ政権で国務長官の要職に就いたクリントン氏は席上、そう切り出した。相手はブッシュ前政権でアジア政策を担当した元国務副長官のアーミテージ氏。だが「最終的な政策目標は何か」との問いに窮したクリントン氏を見てアーミテージ氏は要請を辞退した。その理由を同氏は「オバマ政権は対北朝鮮政策の軸足が定まっていないと感じた」と振り返る。

 オバマ大統領周辺によれば、米国は今後も中国の影響力が期待できる六カ国協議を中核に据えて、北朝鮮に核・ミサイル放棄の圧力を強めていく構えだ。しかし、米朝二国間協議を好む北朝鮮が再度、六カ国の交渉テーブルにつくかは不透明なまま。アーミテージ氏に代わり、元駐韓大使のボズワース氏を抜てきした背景には、姜錫柱(カン・ソクジュ)第一外務次官ら総書記側近を交渉の場に引きずり出し、米朝協議を「格上げ」させる狙いもあったが、現段階では、これも不発に終わっている。

 対話を前面に打ち出すオバマ政権に対して、テポドン発射という暴挙で応じた北朝鮮。先の見えない対立の構図を抱えたまま、オバマ政権は手探りで北朝鮮政策を立て直すことになる。
(編集委員 春原剛)


<関連記事>

あの人は今:リチャード・アーミテージ
http://y-sonoda.asablo.jp/blog/2008/08/09/3681624

Missile Defense and East Asia: Downside and Risks
Frank Jannuzi
http://www.icasinc.org/2000/2000f/2000ffsj.html